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洋館の中で見つけた日記 97 【鍋焼きうどん】

20☓☓年。
研究所にて自分らしさを忘れてしまうP-ウイルスが流出した。
瞬く間にウイルスは蔓延。
世界はポカンハザードに陥る。
ポカンから逃れるため古い洋館に駆け込んだ。
そこである日記を見つけた。

読んでいただき、ありがとうございます。
ポカンハザードの世界で日記を書いております。
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◆鍋焼きうどん

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小さいときの記憶。

私は気まぐれに起き、昨晩作ったレゴの城にブロックを足していく。

すでに姉は小学校、父は会社に行ったようだ。

一人でいるときだけ気がつくのは時計の秒針と冷蔵庫のブーンという音。

10:30になりコナンの再放送を見ていると、母が台所でトントン何かを切っている。

ほどなくテーブルの上に置かれた直径20センチほどの土鍋。

鍋の下にひかれた赤い文字のスーパーのチラシ。

回りは銀紙で覆われている。

母が鍋つかみで蓋を開けると白い湯気が上がり、醤油の香ばしい匂いを感じた。

汁は煮立ち、ほとんど残っていない。

うどんは出汁を吸って柔らかく、醤油色に染まっている。

白くなった卵をスプーンで割ると黄身が流れるが、すぐに予熱で固まった。

紅白のかまぼこが三枚、椎茸、斜め切りされた長ネギ。

どれも甘辛く味が染みている。

うどんを切り分けながらゆっくり食べた。

土鍋は最後まで熱いままだった。

小さい頃うどんを美味しく食べた思い出である。

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