洋館の中で見つけた日記 56 【落ち葉を踏む音】
20☓☓年。
研究所にて自分らしさを忘れてしまうP-ウイルスが流出した。
瞬く間にウイルスは蔓延。
世界はポカンハザードに陥る。
ポカンから逃れるため古い洋館に駆け込んだ。
そこである日記を見つけた。
◆落ち葉を踏む音
聞こえるのは落ち葉を踏む音。
世界はつつましい。
乾いた紅葉や柏の葉の絨毯。
聞こえるのは霜柱を踏む音。
大地は隆起する。
土と氷の結晶。
聞こえるのは霜が降りた葉を踏む音。
幻想の時刻。
三つ葉やオオバコが白く浮かぶ。
聞こえるのは氷の張った水たまりを踏む音。
早いもの勝ちの特権。
薄焼きせんべいのように小気味よく。
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