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第九集

1
00:00:22,800 --> 00:00:24,360
高崇:何者だ!

2
00:00:27,440 --> 00:00:28,840
鄧寛:師父!どうしました?

3
00:00:28,840 --> 00:00:30,000
高崇:暗器を放った者がいる

4
00:00:30,000 --> 00:00:31,040
鄧寛:何?!

5
00:00:31,040 --> 00:00:33,000
現在 高家荘全体を厳重に警備しています

6
00:00:33,000 --> 00:00:35,160
鬼谷の者にたとえ強大な実力があろうと

7
00:00:35,160 --> 00:00:37,080
入り込めるわけがありません

8
00:00:38,520 --> 00:00:40,000
高崇:ふむ……

9
00:00:42,160 --> 00:00:43,360
ん?

10
00:00:43,360 --> 00:00:45,320
矢に紙が付いている?

11
00:00:48,320 --> 00:00:54,040
張成嶺の命が欲しければ
引き換えに琉璃甲を持って来い……?

12
00:00:54,200 --> 00:00:56,980
鄧寛:張成嶺は周大侠に連れて行かれたのでは?

13
00:00:56,980 --> 00:00:58,040
それがどうして……?

14
00:00:58,040 --> 00:01:00,800
高崇:趙荘主 沈荘主と慈睦大師をこちらへ

15
00:01:00,800 --> 00:01:01,640
鄧寛:え……

16
00:01:01,640 --> 00:01:03,160
高崇:どうした?

17
00:01:03,160 --> 00:01:06,720
鄧寛:沈荘主は先ほど慌ただしく荘を出て行かれて
今はまだお戻りではありません

18
00:01:06,720 --> 00:01:08,640
高崇:何?!すぐ捜しに行け!

19
00:01:08,640 --> 00:01:09,560
鄧寛:はい

20
00:01:13,480 --> 00:01:14,760
武林人士:沈荘主──

21
00:01:14,760 --> 00:01:16,020
沈荘主いらっしゃいますか?

22
00:01:16,020 --> 00:01:17,360
沈荘主どこに行ったんですか?
沈荘主いらっしゃいますか?

23
00:01:17,360 --> 00:01:17,920
沈荘主どこに行ったんですか?
沈荘主……

24
00:01:17,920 --> 00:01:20,080
沈荘主……

25
00:01:21,520 --> 00:01:25,040
沈荘主!

26
00:01:25,040 --> 00:01:26,280
向こうに血の跡が……

27
00:01:26,280 --> 00:01:27,160
早く見に行くぞ!

28
00:01:28,220 --> 00:01:34,860
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品

29
00:01:35,200 --> 00:01:41,800
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
第九集「易容」

30
00:02:11,680 --> 00:02:13,320
張成嶺:師父

31
00:02:13,480 --> 00:02:15,360
教えてくださった口訣のことですが

32
00:02:15,360 --> 00:02:17,120
よく分かりません

33
00:02:17,440 --> 00:02:18,880
周子舒:お前のその頭……

34
00:02:21,280 --> 00:02:23,320
どこが分からないんだ?

35
00:02:24,200 --> 00:02:26,760
張成嶺:どこも分かりません……

36
00:02:27,240 --> 00:02:28,480
周子舒:小僧

37
00:02:28,480 --> 00:02:32,600
お前の首の上に付いてるそいつは一体
頭なのかそれとも夜壺(やこ)なのか?!

38
00:02:33,760 --> 00:02:34,960
張成嶺:私は……

39
00:02:34,960 --> 00:02:37,320
温客行:はいはい もういいでしょ

40
00:02:37,320 --> 00:02:38,880
弟子に教えてるんでしょう?

41
00:02:38,880 --> 00:02:40,920
どれだけ聡明でもあなたに馬鹿だって罵られる

42
00:02:40,920 --> 00:02:43,680
周子舒:どうしてできない
俺の師弟は俺が一手に教えた

43
00:02:43,680 --> 00:02:48,280
温客行:ならあなたの師弟が口訣を諳んじらなくて
型が練習できなかった時はどうしました?

44
00:02:49,440 --> 00:02:52,600
周子舒:彼に本門入門の練気口訣を
三百遍書き写させた

45
00:02:52,600 --> 00:02:54,315
練習できなければゆっくりやらせ

46
00:02:54,315 --> 00:02:56,040
それでできなければ飯を食わせない

47
00:02:56,040 --> 00:02:57,320
それでもできなければ……

48
00:02:57,320 --> 00:02:58,800
睡眠も不要だ

49
00:02:58,800 --> 00:03:02,000
夜中に彼の臥房を施錠させ
雪の中に行かせて己を悟らせた

50
00:03:02,000 --> 00:03:03,360
張成嶺:ひぃ──

51
00:03:04,880 --> 00:03:08,520
温客行:ご師弟どのは……まこと命拾いなさった

52
00:03:10,200 --> 00:03:11,800
周子舒:彼は命を拾ってない

53
00:03:13,600 --> 00:03:15,280
もう死んでる

54
00:03:15,680 --> 00:03:16,880
張成嶺:あ……

55
00:03:19,640 --> 00:03:21,080
周子舒:しっかり学ぶんだ

56
00:03:21,080 --> 00:03:25,080
お前が数日でも多く生きるつもりなら腕が必要だ

57
00:03:26,120 --> 00:03:27,200
張成嶺:うん!

58
00:03:29,040 --> 00:03:30,800
周子舒:俺は友人に会いに行く

59
00:03:30,800 --> 00:03:32,760
お前は先の酒楼に行って俺を待て

60
00:03:32,760 --> 00:03:34,160
俺の代わりにちょっとこいつを見てろ

61
00:03:34,160 --> 00:03:35,160
温客行:私が?

62
00:03:35,760 --> 00:03:36,480
あ……

63
00:03:36,480 --> 00:03:36,780
──阿絮!

64
00:03:36,780 --> 00:03:37,560
張成嶺:師父──
──阿絮!

65
00:03:37,560 --> 00:03:37,920
張成嶺:師父──
 

66
00:03:41,280 --> 00:03:45,320
──周子舒が軽功を使い振り返りもせず行くと
残された温客行と張成嶺は顔を見合わせた

67
00:03:45,920 --> 00:03:48,000
温客行:君の師父のおっしゃることは
本当にもっともで

68
00:03:48,000 --> 00:03:49,720
腕は必要だ──

69
00:03:50,720 --> 00:03:51,760
まあいい

70
00:03:51,760 --> 00:03:54,120
彼もいないし 頭を切り替えよう

71
00:03:55,440 --> 00:03:56,600
ところで

72
00:03:56,600 --> 00:03:59,480
私たちまるで三人家族みたいじゃない?

73
00:04:00,280 --> 00:04:04,920
君の師父が厳格な母なら 私はその慈愛の父だ……

74
00:04:05,440 --> 00:04:07,400
張成嶺:前輩……

75
00:04:07,400 --> 00:04:09,160
温客行:君も同意のようだな

76
00:04:09,160 --> 00:04:09,960
張成嶺:私は……

77
00:04:09,960 --> 00:04:14,080
温客行:前の続きで あの紅孩兒の
物語の後半を話してあげよう

78
00:04:14,080 --> 00:04:15,640
張成嶺:いいですね!

79
00:04:17,680 --> 00:04:20,840
温客行:その妖魔鬼怪どもを
どうすべきかだったかな?

80
00:04:21,000 --> 00:04:24,600
紅孩兒はとても長い間考えて 無数の方法を試した

81
00:04:24,600 --> 00:04:27,280
ついに彼は一つの良案を思いついた

82
00:04:27,280 --> 00:04:29,560
ただ一つの法宝が必要で──

83
00:04:29,560 --> 00:04:31,280
曹蔚寧:温兄! 張小兄弟!

84
00:04:31,280 --> 00:04:32,320
顧湘:主人!

85
00:04:34,080 --> 00:04:36,000
主人 捜してたんだ!

86
00:04:36,000 --> 00:04:38,600
一昨日の夜にあなたを見失って 捜しに行ったら

87
00:04:38,600 --> 00:04:43,120
こちらの曹兄さんが あなたと周絮が
その張家の坊やを連れて行ったって話すのを聞いて

88
00:04:43,120 --> 00:04:46,680
それで自ら進んであたしを連れ出して
あなたたちを捜してくれたんだ!
(*自告奋勇=進んで困難を引き受ける)

89
00:04:46,840 --> 00:04:49,360
曹蔚寧:当然のことをしたまでです

90
00:04:49,680 --> 00:04:52,040
顧湘:主人 曹兄さんは仗義の人なだけでなく

91
00:04:52,040 --> 00:04:53,880
めちゃくちゃ学があるんだ

92
00:04:53,880 --> 00:04:54,540
あなたと話してた……

93
00:04:54,540 --> 00:04:55,360
温客行:もういい

94
00:04:55,360 --> 00:04:56,600
分かったから

95
00:04:56,600 --> 00:04:58,720
我々はまず酒楼に行って一休みだ

96
00:04:58,720 --> 00:05:00,000
顧湘:主人!

97
00:05:01,200 --> 00:05:03,360
曹兄さん あたしらも行こうよ!

98
00:05:03,360 --> 00:05:04,360
曹蔚寧:ええ!

99
00:05:26,960 --> 00:05:29,640
銀荘の客:番頭さん この銀票の両替を頼みます

100
00:05:29,640 --> 00:05:31,680
番頭:はい 少々お待ちを

101
00:05:39,560 --> 00:05:40,800
番頭:周大人

102
00:05:42,720 --> 00:05:44,080
ひとまずお茶を

103
00:05:44,080 --> 00:05:46,780
うちの大当家はもうすぐ参ります

104
00:05:46,780 --> 00:05:48,280
周子舒:ああ

105
00:05:54,440 --> 00:05:55,800
宗平安(ソン・ピンアン):周……

106
00:05:56,160 --> 00:05:57,720
あなたさまは……

107
00:05:57,720 --> 00:05:59,680
周公子ですか?

108
00:06:00,600 --> 00:06:01,800
周子舒:どうした

109
00:06:02,240 --> 00:06:04,440
平安には分からんか?

110
00:06:04,440 --> 00:06:06,280
宗平安:あなたです あなたさまです

111
00:06:06,280 --> 00:06:09,480
満福(マンフー) お前はもう下がりなさい

112
00:06:09,480 --> 00:06:11,320
私と周公子は相談がある

113
00:06:11,320 --> 00:06:12,820
誰も寄越さぬように

114
00:06:12,820 --> 00:06:13,760
番頭:はい

115
00:06:14,660 --> 00:06:20,340
──噂によるとこの人は、元は南寧王府の家令で
主が逝去してから始めた商売は瞬く間に発展し
抜け目はないが温厚で全国を一年中走り回っていた

116
00:06:20,480 --> 00:06:22,160
宗平安:周公子

117
00:06:22,160 --> 00:06:24,160
手前は本来 揚州付近におりまして

118
00:06:24,160 --> 00:06:26,440
報せを聞いて すぐに参りましたが

119
00:06:26,440 --> 00:06:29,560
下男のもてなしに不行き届きは
ございませんでしたか?

120
00:06:32,000 --> 00:06:33,160
周子舒:大丈夫だ

121
00:06:34,800 --> 00:06:37,240
宗平安:当時 周公子が

122
00:06:37,240 --> 00:06:40,200
うちの主の離京の報せを伏せてくださったことで

123
00:06:40,200 --> 00:06:43,080
この幾年の太平の日々がございますこと
感謝申し上げます

124
00:06:43,260 --> 00:06:46,080
(周子舒):おたくの主が早めに
出て行ったからこそ静かになって

125
00:06:46,080 --> 00:06:49,000
皆もそれ以降太平の日々を送れたんだ

126
00:06:49,580 --> 00:06:51,280
周子舒:大した労じゃない

127
00:06:51,280 --> 00:06:52,880
七爺はあれから息災か?

128
00:06:53,160 --> 00:06:55,360
宗平安:大変ようございます

129
00:06:55,360 --> 00:06:57,160
公子にはご心労をお掛けしております

130
00:06:57,160 --> 00:07:00,200
小生があなたさまの知らせを受けて
文を送りましたところ

131
00:07:00,200 --> 00:07:02,480
昨日 ようやく主の返信が届き

132
00:07:02,480 --> 00:07:04,840
申しますに 大巫(ダーウー)と
こちらへ向かうとのことです

133
00:07:04,840 --> 00:07:08,640
十日から半月ほどで到着する算段でございます……

134
00:07:10,740 --> 00:07:13,480
周子舒:どうして七爺と大巫に
そんな面倒を掛けられる?

135
00:07:13,480 --> 00:07:15,560
(周子舒):中原武林はもう十分混乱している

136
00:07:15,560 --> 00:07:17,720
あの厄災がまた足を踏み込むつもりだとは

137
00:07:17,720 --> 00:07:21,680
まさに流年不利に天災人禍が揃い踏みだな
(*流年不利=運勢のよくない年)

138
00:07:21,800 --> 00:07:23,400
宗平安:なんてことございませんよ

139
00:07:23,400 --> 00:07:26,600
うちの主は南疆に安住し 暇も持て余しておりますし

140
00:07:26,600 --> 00:07:29,360
ちょうど身体を動かせます

141
00:07:29,360 --> 00:07:33,120
主が 当時の公子と約束したので

142
00:07:33,120 --> 00:07:39,080
将来必ず公子の代わりに 嫁に相応しい細腰で美貌の
南疆娘を世話してやると申しておりましたよ

143
00:07:39,840 --> 00:07:42,080
周子舒:戯言だ ただの戯言だ……

144
00:07:42,500 --> 00:07:46,320
宗平安:まさか周公子には
すでにお慕いする方がいらっしゃる?

145
00:07:46,320 --> 00:07:47,320
周子舒:えぇ?

146
00:07:47,320 --> 00:07:48,720
温客行:あなたがこんななので……

147
00:07:48,840 --> 00:07:51,760
温客行:私はむしろあなたと共に一生を過ごしたい

148
00:07:52,800 --> 00:07:55,200
周子舒:ンン……いない

149
00:07:55,600 --> 00:07:59,200
(周子舒):なぜこのヒネたゴロツキを
思い出すのか全くわけが分からんぞ?

150
00:08:01,200 --> 00:08:03,880
宗平安:公子がお尋ねの琉璃甲の事ですが

151
00:08:03,880 --> 00:08:07,080
手前がこの数日で少し分かりましたのは──

152
00:08:07,080 --> 00:08:08,920
公子はご存知でしょうか

153
00:08:08,920 --> 00:08:14,680
昨日 少林の方丈を伴い洞庭に姿を現した
沈慎と呼ばれる男が

154
00:08:14,680 --> 00:08:17,680
琉璃甲を一つ携えていた事

155
00:08:17,680 --> 00:08:20,120
周子舒:蜀中沈家の家主 沈慎が?

156
00:08:20,120 --> 00:08:20,920
宗平安:はい

157
00:08:20,920 --> 00:08:23,520
この人は久しく世事に関わっておりませんが

158
00:08:23,520 --> 00:08:24,680
此度は忽然と姿を現し

159
00:08:24,680 --> 00:08:26,000
沈慎:高世兄 趙世弟
此度は忽然と姿を現し

160
00:08:26,000 --> 00:08:26,520
沈慎:高世兄 趙世弟
 

161
00:08:26,520 --> 00:08:29,000
沈慎:各位に頼まれ 沈某が持って参った
 

162
00:08:29,000 --> 00:08:30,000
沈慎:各位に頼まれ 沈某が持って参った
宗平安:張家殺害の知らせをはっきりと聞くと

163
00:08:30,000 --> 00:08:31,920
宗平安:張家殺害の知らせをはっきりと聞くと

164
00:08:31,920 --> 00:08:33,680
じっとしていられなかった

165
00:08:34,000 --> 00:08:35,720
周子舒:……まさか

166
00:08:35,720 --> 00:08:40,480
伝説の五つの琉璃甲は
当時の五大家の手にあるということか?

167
00:08:40,960 --> 00:08:43,840
宗平安:周公子はやはり
一を聞いて十をお知りになる

168
00:08:44,080 --> 00:08:46,280
あの沈慎が姿を現し

169
00:08:46,280 --> 00:08:49,840
高崇までもが高家荘にも
琉璃甲が一つあることを認め

170
00:08:49,840 --> 00:08:52,560
ついにはこの物の経緯を語った

171
00:08:53,120 --> 00:08:58,680
あなたさまはこれまでに“陰陽冊”“六合神功”
そして“封山剣”をお聞きになったことは?

172
00:09:00,740 --> 00:09:04,160
周子舒:陰陽冊は嘘かまことか知らないが
少しだけ聞いたことがある

173
00:09:04,480 --> 00:09:06,440
話によると神医谷の聖物で

174
00:09:06,440 --> 00:09:08,520
癒せぬ病はないと言われている

175
00:09:09,000 --> 00:09:11,520
それから上古より伝わる“六合神功”は

176
00:09:11,520 --> 00:09:13,840
少なからず欠損しており とても曖昧で理解しがたく
(*晦涩难懂=文章などが難解で理解しにくい)

177
00:09:13,840 --> 00:09:15,920
至極容易に魔に魅入られる

178
00:09:15,920 --> 00:09:19,800
それでも威力は極めて大きく
天下にこれと争える者はない
(*天下莫能与之争《百谷王》老子)

179
00:09:20,200 --> 00:09:25,280
封山剣は三十年前 魔道に堕ちた
絶世の高手 容炫によって編み出された

180
00:09:25,280 --> 00:09:28,880
下半部は剣法だが 上半部の心法は

181
00:09:28,880 --> 00:09:31,840
彼が“六合神功”より悟ったもの……

182
00:09:32,240 --> 00:09:35,000
高崇の言う意味はもしや

183
00:09:35,000 --> 00:09:36,160
宗平安:まさに

184
00:09:36,160 --> 00:09:37,960
高大侠の話によれば

185
00:09:37,960 --> 00:09:40,680
容炫が当時魔に魅入られのは

186
00:09:40,680 --> 00:09:43,200
一方は亡くした妻の心痛であり

187
00:09:43,200 --> 00:09:45,680
またもう一方では行き過ぎた練功のせいだそうです

188
00:09:46,240 --> 00:09:47,640
容炫の死後

189
00:09:47,640 --> 00:09:53,520
彼らは二つの大いなる奇功と神医谷の聖物“陰陽冊”
いずれもが琉璃甲の中に含まれているのを見た

190
00:09:53,520 --> 00:09:57,160
しかし大半の武術を習う者
そのために傾倒せざるはなく

191
00:09:57,160 --> 00:10:01,400
琉璃甲を砕き割り 五大家が
それぞれ一片の保管を約束し

192
00:10:01,400 --> 00:10:03,520
同じ轍を踏まぬようにしたのです

193
00:10:11,120 --> 00:10:13,600
宗平安:手前の能力はどうしても限りがございます

194
00:10:15,320 --> 00:10:17,240
周子舒:三十年前の惨劇の内幕は

195
00:10:17,240 --> 00:10:20,160
天窗と四季荘でさえ詳細を知り得なかった

196
00:10:20,160 --> 00:10:22,520
ましてや一人の商売人ならなおさらだ

197
00:10:22,920 --> 00:10:25,200
高崇の言葉を全て信用してるわけじゃない

198
00:10:25,200 --> 00:10:27,400
因果関係を全部調査して明らかにし

199
00:10:27,400 --> 00:10:30,120
破綻がなくなってから ようやく結論を下せる

200
00:10:30,240 --> 00:10:32,800
これらの情報がすでに大いに助けとなった

201
00:10:32,800 --> 00:10:33,880
感謝する

202
00:10:34,640 --> 00:10:36,880
宗平安:恐れ入ります

203
00:10:36,880 --> 00:10:38,640
周子舒:しかし話を戻すが

204
00:10:39,040 --> 00:10:41,760
五大家がそれぞれ琉璃甲の欠片を握っているなら

205
00:10:41,760 --> 00:10:43,080
趙家のは?

206
00:10:44,080 --> 00:10:47,120
趙敬は説明しなかったのか?

207
00:10:48,040 --> 00:10:49,720
宗平安:趙家の家主は趙家の
琉璃甲は盗まれたと宣い

208
00:10:49,720 --> 00:10:52,360
趙敬:趙家の琉璃甲は 数日前に盗まれたのだ
宗平安:趙家の家主は趙家の
琉璃甲は盗まれたと宣い

209
00:10:52,360 --> 00:10:52,720
趙敬:趙家の琉璃甲は 数日前に盗まれたのだ
 
宗平安:所在は不明です

210
00:10:52,720 --> 00:10:53,600
封暁峰:趙大侠
宗平安:所在は不明です

211
00:10:53,600 --> 00:10:54,000
封暁峰:趙大侠
 

212
00:10:54,000 --> 00:10:55,360
封暁峰:あんたは我々をからかってるのか?
 

213
00:10:55,360 --> 00:10:57,760
あんたが失くしたと言ったら失くしたのか?
 

214
00:10:57,760 --> 00:11:00,280
あんたは手の中の欠片を失くしてないだけでなく
 

215
00:11:00,280 --> 00:11:00,760
張家の欠片もあんたによって隠されてるんだろ!
 

216
00:11:00,760 --> 00:11:02,040
張家の欠片もあんたによって隠されてるんだろ!
宗平安:この一言で

217
00:11:02,040 --> 00:11:03,120
張家の欠片もあんたによって隠されてるんだろ!
宗平安:その時その場にいた衆人が騒ぎを起こし

218
00:11:03,120 --> 00:11:05,680
宗平安:その時その場にいた衆人が騒ぎを起こし

219
00:11:06,920 --> 00:11:10,640
華山掌門はまるで確実な証拠があるかのように

220
00:11:10,640 --> 00:11:14,840
趙敬が張家の瑠璃甲を
着服したようだと話しておりました

221
00:11:16,000 --> 00:11:18,240
昨日 手前が派遣した者が申すには

222
00:11:18,240 --> 00:11:21,560
華山掌門はもう少しで趙大侠に
手を出すところだったそうです

223
00:11:22,840 --> 00:11:24,360
周子舒:あぁ……

224
00:11:24,920 --> 00:11:29,880
(周子舒):その欠片は多分
于天傑か或いは穆雲歌に盗まれ

225
00:11:29,880 --> 00:11:34,000
その後その琉璃甲はまた温客行の手に落ち

226
00:11:34,000 --> 00:11:38,260
方不知に盗まれたが 今や方不知も死んだ

227
00:11:39,080 --> 00:11:42,120
それに喜喪鬼が手を下して
死んだのかも疑わしい……

228
00:11:42,880 --> 00:11:46,600
──周子舒はただ心の中を大きな石が
塞ぐような苦しさを感じた

229
00:11:47,320 --> 00:11:49,640
(周子舒):この案件はまだもう少し複雑なのでは?

230
00:11:52,440 --> 00:11:53,840
周子舒:了解した

231
00:11:53,840 --> 00:11:55,360
ではひとまず失礼する

232
00:11:55,680 --> 00:11:57,820
俺の代わりにおたくの七爺によろしく頼む

233
00:11:57,820 --> 00:11:58,880
宗平安:はい

234
00:11:59,840 --> 00:12:02,740
──心配だらけのまま平安と別れ
張成嶺のもとへ向かった

235
00:12:04,680 --> 00:12:07,880
彼は以前、大量の真偽の分からない情報を
処理する必要があった

236
00:12:07,880 --> 00:12:11,660
皇帝への報告は全て偽りを破棄し
真実だけを残したものでなければならず

237
00:12:11,660 --> 00:12:16,860
因果の検証をし破綻がなくなって
初めて上申できるため、何を聞いても
いつでも覆す準備をするのに慣れていた

238
00:12:19,240 --> 00:12:21,120
給仕:お客さまこちらへどうぞ

239
00:12:25,280 --> 00:12:27,080
曹蔚寧:……実のところ 私が一番心配なのは

240
00:12:27,080 --> 00:12:30,720
やはり正派の人の後院に火が付いて
皆がこの琉璃甲のために気まずくなることです
(*后院着火=裏庭の火事、内部の対立や争いの比喩)

241
00:12:30,720 --> 00:12:33,200
二人の“李”が三士を殺す物語を耳にしたことは?
(*二桃杀三士=策謀で人を殺す比喩)

242
00:12:33,200 --> 00:12:35,040
ただ恐らく武林の災禍はこれに起因しています
 

243
00:12:35,040 --> 00:12:36,240
ただ恐らく武林の災禍はこれに起因しています
(周子舒):曹蔚寧と顧湘もいるのか?

244
00:12:36,240 --> 00:12:37,280
(周子舒):曹蔚寧と顧湘もいるのか?

245
00:12:37,280 --> 00:12:40,000
曹蔚寧:今になって“逝く者斯くの如し”の情景が……

246
00:12:40,920 --> 00:12:42,160
顧湘:逝く者がなんて?

247
00:12:42,160 --> 00:12:43,600
(周子舒):何が起こったんだ?

248
00:12:43,600 --> 00:12:45,600
曹蔚寧:“子 河辺にありて曰く 逝く者斯くの如し”
 

249
00:12:45,600 --> 00:12:46,760
曹蔚寧:“子 河辺にありて曰く 逝く者斯くの如し”
(周子舒):どうして温客行でさえ重苦しい顔なんだ?

250
00:12:46,760 --> 00:12:47,320
曹蔚寧:というのは かの老子です
(周子舒):どうして温客行でさえ重苦しい顔なんだ?

251
00:12:47,320 --> 00:12:48,360
曹蔚寧:というのは かの老子です
 

252
00:12:48,360 --> 00:12:52,080
ある日 眠って夢に耽っていると
河辺のようなところに辿り着き

253
00:12:52,080 --> 00:12:55,640
下を見ると 死人が流れていった

254
00:12:55,640 --> 00:12:58,520
とても悲しく 感じたままを言葉にした……
(*子在川上曰 逝者如斯夫=人生は川の流れのようなもの《論語》孔子)

255
00:13:00,520 --> 00:13:03,100
顧湘:主人 曹兄さんはほんとに沢山知ってる

256
00:13:03,100 --> 00:13:04,560
まだまだ書嚢を振り回すぞ!
(*掉书袋=好んで古文を引用し学をひけらかすこと)

257
00:13:04,560 --> 00:13:05,760
温客行:あ その……

258
00:13:06,640 --> 00:13:07,600
張成嶺:あぁ……

259
00:13:08,480 --> 00:13:09,760
(周子舒):怪しい……

260
00:13:10,720 --> 00:13:12,120
やはり行こう──

261
00:13:12,480 --> 00:13:13,800
温客行:阿絮!

262
00:13:13,920 --> 00:13:15,600
どうしてよそに行くんです?

263
00:13:15,600 --> 00:13:17,040
長いこと待ってたのに

264
00:13:17,040 --> 00:13:18,120
こっち来て!

265
00:13:18,120 --> 00:13:22,680
(周子舒):この病気の鬼谷谷主は
本気のクソッタレで八生分の大徳が欠けてる

266
00:13:24,920 --> 00:13:26,080
温客行:阿絮

267
00:13:26,080 --> 00:13:27,360
座って

268
00:13:29,960 --> 00:13:32,680
早くこの店の良酒を味わってみて

269
00:13:33,280 --> 00:13:35,800
味は正直いけますよ

270
00:13:38,680 --> 00:13:40,000
阿絮

271
00:13:41,040 --> 00:13:42,920
どうしてずっと私を見てるんです?

272
00:13:42,920 --> 00:13:45,220
まだ真っ昼間ですよ……

273
00:13:45,220 --> 00:13:45,940
周子舒:俺は……

274
00:13:45,940 --> 00:13:46,840
顧湘:アイヤ

275
00:13:46,840 --> 00:13:46,980
曹蔚寧:顧……
顧湘:アイヤ

276
00:13:46,980 --> 00:13:47,960
曹蔚寧:顧……
顧湘:子供は見ちゃだめだ

277
00:13:47,960 --> 00:13:48,200
顧湘:子供は見ちゃだめだ

278
00:13:48,200 --> 00:13:50,120
犬の目だって潰れるぞ

279
00:13:51,240 --> 00:13:52,280
曹蔚寧:顧姑娘

280
00:13:52,280 --> 00:13:56,760
じっ 実のところ周兄と温兄がこれだけ
愛情深くても羨む必要はありません

281
00:13:56,760 --> 00:13:58,520
姑娘は花のように美しい方なので

282
00:13:58,520 --> 00:14:04,640
きっと……密かに慕ってやまない者が
もういるでしょう……

283
00:14:04,640 --> 00:14:06,320
顧湘:あぁ? そうなの?

284
00:14:06,920 --> 00:14:07,960
どこにいるんだ?

285
00:14:07,960 --> 00:14:09,000
温客行:阿湘

286
00:14:09,520 --> 00:14:11,654
お前の目が潰れかけてるようだな

287
00:14:11,880 --> 00:14:12,800
顧湘:あ?

288
00:14:12,800 --> 00:14:14,800
主人は何を言ってんだ?

289
00:14:15,120 --> 00:14:16,240
曹蔚寧:顧姑娘

290
00:14:16,240 --> 00:14:19,160
わ 私も呼んでいいかな?

291
00:14:19,160 --> 00:14:20,880
阿湘って

292
00:14:22,400 --> 00:14:24,720
(周子舒):礼に非ざれば見るなかれ
礼に非ざれば聞くなかれ……
(*非礼勿视非礼勿听=見ざる聞かざる《論語》)

293
00:14:24,720 --> 00:14:27,240
──針のむしろに座っているようで
生まれて初めて杯の中の味がしない気がした

294
00:14:27,240 --> 00:14:28,640
周子舒:ん?

295
00:14:38,800 --> 00:14:41,040
客人たち:うわぁ……これはどこから来た仙女だ?

296
00:14:41,040 --> 00:14:42,160
美しすぎるわ……
客人たち:うわぁ……これはどこから来た仙女だ?

297
00:14:42,160 --> 00:14:42,480
美しすぎるわ……
 

298
00:14:43,320 --> 00:14:44,760
給仕:あああ すみませんすみません!

299
00:14:44,760 --> 00:14:46,960
く 姑娘は 何名様で?

300
00:14:47,600 --> 00:14:49,320
美人:人を捜してます

301
00:14:49,960 --> 00:14:51,240
給仕:あぁ はい どうぞ!

302
00:14:51,600 --> 00:14:52,760
顧湘:彼女を見ろ

303
00:14:52,760 --> 00:14:54,720
仙女じゃないのか?

304
00:14:54,720 --> 00:14:56,760
曹蔚寧:この女子のゆっくりと漂う眼差しは

305
00:14:56,760 --> 00:14:58,920
書によると桃花眼と呼ばれていて

306
00:14:58,920 --> 00:15:03,880
心根はきっと曲がっており 敵い……ません……

307
00:15:03,880 --> 00:15:06,800
──美人を見つめている顧湘は気付かなかった

308
00:15:06,800 --> 00:15:08,080
温客行:阿絮

309
00:15:08,840 --> 00:15:11,400
この曹蔚寧は己の気が利かないものだから

310
00:15:11,400 --> 00:15:14,120
他の人の臈長(ろうた)けた視線も見慣れてない

311
00:15:14,520 --> 00:15:18,760
惹かれるのは阿湘のようなつぶらな瞳ばかりだ
(*直眉楞眼=真っ直ぐな眼差し)

312
00:15:20,600 --> 00:15:22,920
私たちが惹かれ合ったのも……

313
00:15:22,920 --> 00:15:24,160
周子舒:誰がお前と……

314
00:15:24,160 --> 00:15:27,840
張成嶺:えぇ? 彼女はどうして
私たちの卓に向かって来るんです?

315
00:15:31,720 --> 00:15:33,840
美人:そちらの公子

316
00:15:33,840 --> 00:15:37,440
私にお酒を奢ってくださらない?

317
00:15:37,440 --> 00:15:39,873
張成嶺:えぇ? 捜してたのは師父?

318
00:15:39,873 --> 00:15:43,680
──隣から手を伸ばすと無遠慮に周子舒の
懐に手を差し込み引っ張りだした銭袋を
堂々と己の懐に押し込んだ

319
00:15:43,680 --> 00:15:44,920
温客行:姑娘

320
00:15:44,920 --> 00:15:46,280
無理だと思います

321
00:15:46,280 --> 00:15:48,120
彼は今 銭を持ってない

322
00:15:49,560 --> 00:15:50,640
周子舒:姑娘

323
00:15:50,640 --> 00:15:53,440
私めと面識が?

324
00:15:53,440 --> 00:15:55,800
美人:まさかあなたは面識がないと

325
00:15:55,800 --> 00:15:58,320
私にお酒を奢りたくはないのかしら?

326
00:15:59,080 --> 00:16:00,440
周子舒:ないわけない

327
00:16:00,760 --> 00:16:02,360
酒はおろか

328
00:16:02,360 --> 00:16:04,880
俺の肉を食べて血を飲んでもらっても

329
00:16:04,880 --> 00:16:07,160
私めは絶対にまばたき一つしない──

330
00:16:08,080 --> 00:16:10,200
兄さん いい酒を追加だ

331
00:16:10,200 --> 00:16:12,120
給仕:あい!今すぐ!

332
00:16:14,000 --> 00:16:17,320
私どものところの最高の酒です ごゆっくりどうぞ!

333
00:16:18,340 --> 00:16:19,440
周子舒:彼に付けてくれ

334
00:16:19,440 --> 00:16:20,120
温客行:私──

335
00:16:20,120 --> 00:16:22,040
給仕:はいな どうぞごゆっくり

336
00:16:22,040 --> 00:16:23,120
温客行:阿絮

337
00:16:23,120 --> 00:16:24,360
彼女──

338
00:16:25,400 --> 00:16:29,520
顧湘:あたしやっぱり主人の顔に
こんな百花繚乱の表情を見るのは初めてだ
(*姹紫嫣红=色とりどりの花が咲き乱れる様子)

339
00:16:29,520 --> 00:16:32,000
この食事は死ぬほど価値があるぞ

340
00:16:33,840 --> 00:16:36,040
美人:感謝するわ公子

341
00:16:36,960 --> 00:16:38,560
周子舒:姑娘も掛けてくれ

342
00:16:39,440 --> 00:16:41,040
美人:結構よ

343
00:16:41,040 --> 00:16:43,120
飲み終わればすぐ行くわ

344
00:16:43,120 --> 00:16:44,160
周子舒:あぁ

345
00:16:44,160 --> 00:16:45,040
温客行:そうだ

346
00:16:45,040 --> 00:16:47,960
この卓は実際ちょっと混み合ってる

347
00:16:49,200 --> 00:16:50,640
ほら 阿絮

348
00:16:50,640 --> 00:16:52,640
もっと菜を食べて……

349
00:16:57,320 --> 00:17:00,560
──その美人は温客行をちらりと見てから
杯を上げて飲み干した

350
00:17:00,560 --> 00:17:03,560
一挙手一投足、酒を飲む姿さえ
全く美しくないところがなかった

351
00:17:03,560 --> 00:17:05,480
美人:もう行くわ

352
00:17:05,720 --> 00:17:07,440
あなたは付いて来ない?

353
00:17:08,240 --> 00:17:09,320
周子舒:ああ

354
00:17:09,840 --> 00:17:11,200
姑娘どうぞ

355
00:17:15,160 --> 00:17:16,600
──温客行の手の中の箸が二つに折れた

356
00:17:16,600 --> 00:17:17,640
温客行:ふん……

357
00:17:17,640 --> 00:17:17,800
顧湘:え……あっ

358
00:17:17,800 --> 00:17:19,360
張成嶺:え……
顧湘:え……あっ

359
00:17:19,360 --> 00:17:22,680
──顧湘と張成嶺はすぐに俯いて
何も見ていないふりをした

360
00:17:23,400 --> 00:17:25,200
曹蔚寧:温兄の彼に焦がれる想いは無駄なのか

361
00:17:25,200 --> 00:17:28,760
彼はどうしてこんな 色を見ては……色を見て……

362
00:17:28,760 --> 00:17:32,160
温客行:曹兄……君は彼がどうこうできると……

363
00:17:32,160 --> 00:17:34,280
曹蔚寧:ですが温兄 この件は……

364
00:17:34,280 --> 00:17:36,680
私はどうもそんな簡単な事じゃないと思うんです

365
00:17:38,120 --> 00:17:39,480
先ほどは口が滑りました

366
00:17:39,480 --> 00:17:40,800
決して気にしないでください

367
00:17:40,800 --> 00:17:42,440
周兄はそんな人ではありません

368
00:17:42,440 --> 00:17:45,680
きっと何か苦衷があってやむを得ず
この下策に出たのでしょう

369
00:17:45,680 --> 00:17:47,000
彼を誤解しないであげてください

370
00:17:47,000 --> 00:17:48,200
顧湘:そうだよ主人

371
00:17:48,200 --> 00:17:50,480
ほら周絮は踵もすっかりあなたに向けてるから

372
00:17:50,480 --> 00:17:52,280
どれだけ無理して彼が行ったか分かるよね

373
00:17:52,280 --> 00:17:53,800
曹蔚寧:え?それって……

374
00:17:53,800 --> 00:17:56,080
張成嶺:顧湘姐さん 喋らないでください

375
00:17:58,600 --> 00:17:59,760
温客行:ふん

376
00:18:00,240 --> 00:18:03,400
──温客行が周子舒を追いかけていくと
三人は顔を見合わせた

377
00:18:04,200 --> 00:18:06,320
顧湘:うちの主人が焦ってる

378
00:18:06,880 --> 00:18:08,880
曹蔚寧:まこと夜来風雨の声に
(*夜来风雨声《春暁》孟浩然)

379
00:18:08,880 --> 00:18:11,080
どれだけ涙を流すのか……

380
00:18:11,080 --> 00:18:14,640
いにしえより情の一文字は 最も深く人を傷つける

381
00:18:15,040 --> 00:18:16,880
何か手立てはあるだろうか?

382
00:18:16,880 --> 00:18:19,440
──張成嶺は黙って食事するしかなかった

383
00:18:23,300 --> 00:18:27,800
その美人は周子舒を連れて路地を進み
左右に曲がって小院に入った

384
00:18:27,800 --> 00:18:31,620
庭に植わった梅の木はまだ花の季節ではなかったが

385
00:18:31,620 --> 00:18:35,900
美人が戸を開くと
どこからともなく微かな香りが鼻をついた

386
00:18:37,500 --> 00:18:40,520
美人は玉すだれをまくり上げて戸口に寄りかかった

387
00:18:41,200 --> 00:18:42,560
美人:どうしたの

388
00:18:42,560 --> 00:18:44,400
入らないの?

389
00:18:45,960 --> 00:18:47,440
周子舒:姑娘の閨房に

390
00:18:47,440 --> 00:18:50,600
私めのような胡散臭い男が
どうして勝手に入れるのか

391
00:18:52,480 --> 00:18:55,320
美人:あなたは今さら君子然として

392
00:18:55,800 --> 00:18:59,240
私がお願いしても 入って来ないの?

393
00:18:59,640 --> 00:19:01,120
周子舒:姑娘お許しを

394
00:19:01,800 --> 00:19:07,520
私めにもう一つ度胸があっても この焚き上がった
“ほお紅塚”の中に突っ込む勇気はない

395
00:19:08,800 --> 00:19:12,440
それは立って入れば 横になって出て来るのだろう

396
00:19:19,880 --> 00:19:21,400
美人:あなたたち男は

397
00:19:21,400 --> 00:19:25,600
牡丹の花の下に死せば
鬼となろうとも風流 なのでは?
(*牡丹花下死做鬼也风流=佳人のせいでなら死んでもいい)

398
00:19:26,120 --> 00:19:30,160
あなただって付いて来たのに
今になって役に立たないのはなぜかしら?

399
00:19:31,160 --> 00:19:32,640
周子舒:そうはおっしゃるが

400
00:19:32,640 --> 00:19:35,640
生きられるなら やはりちゃんと生きねば

401
00:19:36,000 --> 00:19:39,640
少しでも長生きすれば 幾度か多く
牡丹の花の下を過ることができる

402
00:19:39,640 --> 00:19:41,000
そう思わないか?

403
00:19:41,840 --> 00:19:43,080
さらに言えば

404
00:19:43,080 --> 00:19:47,960
私には幾千万の人の中で君に見初められ
君に非ずば嫁がず の魅力はない

405
00:19:47,960 --> 00:19:51,280
そこは弁えているし それに
(*自知之明=自分の状況や能力を理解していること)

406
00:19:51,280 --> 00:19:54,040
我々は直截な方がいい

407
00:19:54,240 --> 00:19:56,440
端的に申し上げるが 君の企みは何だ

408
00:19:56,680 --> 00:19:57,760
保証はできんが……

409
00:19:58,240 --> 00:19:59,600
相談に乗ってもいい

410
00:20:05,440 --> 00:20:09,280
美人:あなたに近付かないで 誰に近付けと?

411
00:20:10,760 --> 00:20:13,080
あなたたち一行は 女人か

412
00:20:13,080 --> 00:20:15,280
事を分かってない坊や

413
00:20:15,840 --> 00:20:20,720
それからお馬鹿さんは
心まるごとお馬鹿な姑娘に捧げていた

414
00:20:21,480 --> 00:20:24,120
別の一人は更にとても奇妙だったわ

415
00:20:24,400 --> 00:20:28,040
私が入って行ってから 私を一目も見ないで

416
00:20:28,040 --> 00:20:31,480
目にはただ あなた“胡散臭い男”一人だけを映してた

417
00:20:31,480 --> 00:20:33,960
おかしいかしら?

418
00:20:36,280 --> 00:20:38,160
どこから見たって

419
00:20:38,160 --> 00:20:41,000
まともな男はあなた一人だけだったし

420
00:20:41,000 --> 00:20:44,880
あなたに近付かないで 誰に近付けって?

421
00:20:47,880 --> 00:20:49,800
周子舒:姑娘の立ち居振る舞いは

422
00:20:49,800 --> 00:20:54,400
私が出会ったあらゆる女子の中でも
群を抜いているようだ

423
00:20:54,960 --> 00:20:57,160
たとえ目鼻立ちが並でも

424
00:20:57,160 --> 00:20:59,120
別種の麗しさを覆い隠すのは難しい

425
00:20:59,120 --> 00:21:02,880
何ゆえ面容に執着し 却って
下品に落ちる必要があるんだ?

426
00:21:04,480 --> 00:21:06,600
とある友人が言っていたのだが

427
00:21:06,600 --> 00:21:08,160
外見は天が成し

428
00:21:08,160 --> 00:21:11,520
どんな姿でもそれがあるべき姿だ

429
00:21:11,520 --> 00:21:15,680
少しばかりの手直しでも
人に端緒を見つけられてしまう

430
00:21:18,760 --> 00:21:21,480
美人:私の易容を見抜いてたとすると

431
00:21:21,480 --> 00:21:23,480
私に付いて来たのは

432
00:21:23,480 --> 00:21:26,160
まさか私を辱めるためなの?

433
00:21:26,960 --> 00:21:28,960
周子舒:決してそんなつもりはない

434
00:21:28,960 --> 00:21:33,160
(周子舒):この女人は婀娜(あだ)で美しいが
年若くはないだろう

435
00:21:33,440 --> 00:21:37,440
しかしながら顔から首筋ないし
手肌の色はとても自然で

436
00:21:37,440 --> 00:21:39,080
少しの綻びもない

437
00:21:39,640 --> 00:21:42,200
天下にこれほどのことができるのは……

438
00:21:42,640 --> 00:21:45,480
四季荘に伝わる絶技だけだ

439
00:21:46,480 --> 00:21:48,400
彼女はどこで学んだんだ?

440
00:21:49,480 --> 00:21:50,640
美人:いいわ

441
00:21:50,640 --> 00:21:53,840
ならあなたに私の顔を見せてあげる

442
00:21:54,640 --> 00:21:58,840
──懐から華やかな手巾と薬瓶を取り出し
それで顔を拭った

443
00:21:58,840 --> 00:22:04,160
少しずつ絵のような美人が剥がれ落ち
肌は色を変え、目鼻立ちは形を変えた

444
00:22:07,960 --> 00:22:12,000
周子舒:あんたは……
緑妖 柳千巧(リウ・チェンチャオ)?

445
00:22:14,160 --> 00:22:18,440
あんたは封山剣じゃなく 陰陽冊のためか

446
00:22:18,680 --> 00:22:20,080
柳千巧:そうよ

447
00:22:20,080 --> 00:22:23,360
世間の人は皆 私の顔半分がやけどの痕で
被われてるのを知ってるわ

448
00:22:23,360 --> 00:22:26,400
一生涯 お日様の下に出られないの

449
00:22:26,600 --> 00:22:30,160
昨日あの高崇が陰陽冊の在り処を明かしたわ

450
00:22:30,160 --> 00:22:31,800
私が見逃すとでも?

451
00:22:31,800 --> 00:22:33,480
周子舒:だが張家の琉璃甲は

452
00:22:33,480 --> 00:22:35,920
本当に我ら誰一人 持ってない

453
00:22:37,560 --> 00:22:41,520
柳千巧:あなたがないというのを
一体何を頼りに信じろと?

454
00:22:41,520 --> 00:22:44,680
お前たち男は人を騙すのが
一等好きなんじゃないの?

455
00:22:45,080 --> 00:22:48,180
──声も掛けず手の中から一振りの短剣を
出してみせると周子舒に突き刺した

456
00:22:49,880 --> 00:22:54,400
周子舒が躱して手首を取って引くと
その手首から突然ハリネズミのような針が飛び出し
青く光って霧が吹き出した

457
00:22:54,400 --> 00:22:55,480
(周子舒):毒だ!

458
00:22:57,160 --> 00:22:58,640
柳千巧:待ってなさい!

459
00:23:04,600 --> 00:23:08,480
(周子舒):今日は緑妖で
明日はまた誰が来るんだ?

460
00:23:09,920 --> 00:23:14,640
張成嶺の奴は 全くこの世で最大のお荷物だな

461
00:23:14,880 --> 00:23:20,240
道理であの日 高崇趙敬の古狐二匹が
この厄災を好きに連れて行かせたわけだ

462
00:23:20,800 --> 00:23:22,940
──戸を押し開けると突然横から手が伸びて
稲妻のように彼の肩を押さえた

463
00:23:22,940 --> 00:23:25,240
周子舒は反射的に身を沈め
肘が空を切るとすぐに側掌を出した

464
00:23:25,240 --> 00:23:26,280
温客行:アイヤ

465
00:23:26,280 --> 00:23:28,880
夫殺しするのか──

466
00:23:29,000 --> 00:23:31,720
──周子舒は彼を蹴り飛ばすと
胸の前で両腕を組み眉をひそめた

467
00:23:31,720 --> 00:23:32,760
周子舒:温谷主

468
00:23:33,000 --> 00:23:35,960
あんたは今日も薬を飲むのを忘れたのか?

469
00:23:37,040 --> 00:23:39,200
温客行:私の目の前で女人と出て行くなんて!

470
00:23:39,920 --> 00:23:42,240
彼女とこんな場所で逢い引きして

471
00:23:42,240 --> 00:23:45,040
お日様の下で未婚の男女二人っきりなんて……

472
00:23:45,040 --> 00:23:47,680
周子舒:あんたは朝から晩まで 勾欄院で
浮気する時間じゃないのか?

473
00:23:49,560 --> 00:23:51,680
(周子舒):俺はきっと怒りで混乱してるんだ

474
00:23:51,680 --> 00:23:53,520
どうしてこんな話をしてるんだ?

475
00:23:54,920 --> 00:23:56,000
温客行:阿絮

476
00:23:56,400 --> 00:23:58,440
あなたとくっつくと決めてから

477
00:23:58,440 --> 00:24:00,600
もう他の人に触れたことはありません

478
00:24:01,720 --> 00:24:03,440
周子舒:谷主のご厚愛に感謝する

479
00:24:03,920 --> 00:24:05,080
実に申し訳ないが

480
00:24:05,080 --> 00:24:08,800
私は“谷主”とくっつくとは決めてない

481
00:24:08,800 --> 00:24:10,160
温客行:それはそう──

482
00:24:10,640 --> 00:24:13,800
ですが あなたが好きに逢い引きできるなら

483
00:24:13,800 --> 00:24:16,000
私も好きな時に壁の片隅で聞いててもいいでしょう

484
00:24:16,000 --> 00:24:17,000
周子舒:温谷主

485
00:24:17,440 --> 00:24:19,480
あんたは“無恥”の二文字をどう書くかご存知か?

486
00:24:19,480 --> 00:24:21,640
温客行:無恥であるべき時は 無恥であらねば

487
00:24:21,640 --> 00:24:22,480
周子舒:おま──

488
00:24:22,480 --> 00:24:24,520
──やっと開いた五本の指がそれぞれ恋しがって
必死によせ集まろうとうごめいていた

489
00:24:24,520 --> 00:24:25,520
周子舒:はぁ……

490
00:24:25,640 --> 00:24:26,880
温客行:阿絮

491
00:24:27,800 --> 00:24:28,880
柳千巧:あぁぁ──!

492
00:24:28,880 --> 00:24:29,680
周子舒:ん?

493
00:24:29,680 --> 00:24:31,880
温客行:あの狐の化け物の声?

494
00:24:33,940 --> 00:24:36,840
──二人の目の前を白い影がひらめき
柳千巧が麻袋のように地面に投げ出された

495
00:24:38,560 --> 00:24:42,080
体を反転して起きようとしたが点穴か何かを
封じられたのか、またうつ伏せになってしまった

496
00:24:42,080 --> 00:24:43,400
周子舒:葉前輩?

497
00:24:44,040 --> 00:24:46,600
葉白衣:この狂犬のような醜女はどうしたんだ?

498
00:24:47,040 --> 00:24:48,400
柳千巧:おのれ──

499
00:24:50,160 --> 00:24:54,120
(周子舒):この葉という異形は多分
半生を独り身で生きたせいで

500
00:24:54,120 --> 00:24:55,920
どうやらこんな代物なのだ

501
00:24:55,920 --> 00:24:58,240
もし彼と過ごしたい女人がいるとしたら

502
00:24:58,240 --> 00:25:01,680
母豚は樹に登るまでもなく 天に登るに違いない!

503
00:25:01,840 --> 00:25:03,000
温客行:阿絮……

504
00:25:03,720 --> 00:25:06,280
どうしてまた あなたの背後霊は退散しないんです?

505
00:25:06,640 --> 00:25:08,560
葉白衣:俺は一匹の盗人を追って来たのだ

506
00:25:08,560 --> 00:25:10,160
そいつを捕まえようとしたら

507
00:25:10,480 --> 00:25:12,280
この女人が突然飛び出してきて

508
00:25:12,280 --> 00:25:14,840
一言も言わず俺の行く手を阻んだ

509
00:25:14,840 --> 00:25:16,760
その盗人を逃してしまうとはな

510
00:25:16,760 --> 00:25:17,880
周子舒:盗人?

511
00:25:18,760 --> 00:25:20,920
俗世の煮炊きしたものも食わぬような前輩が

512
00:25:20,920 --> 00:25:23,080
意外にも盗人の捕縛に当たっておられるのか?

513
00:25:23,080 --> 00:25:26,320
盗人なんぞが そのような神通力で
盗む物とは何なんです?

514
00:25:26,520 --> 00:25:28,280
葉白衣:お前たちが逃げたあの日の夜

515
00:25:28,280 --> 00:25:29,760
高家荘は窃盗に遭った

516
00:25:30,040 --> 00:25:33,200
お前は どんな物が盗まれたと思うんだ?

517
00:25:33,640 --> 00:25:35,080
周子舒:琉璃甲?

518
00:25:37,160 --> 00:25:40,400
目下厳重に警備された高家荘から
それを盗んで逃げられる者とは?

519
00:25:41,000 --> 00:25:41,920
葉白衣:小僧

520
00:25:41,920 --> 00:25:43,800
お前も気をつけるんだな

521
00:25:43,800 --> 00:25:45,320
沈慎は死んだ

522
00:25:45,320 --> 00:25:46,680
温客行:それまたどうして?

523
00:25:46,680 --> 00:25:48,080
周子舒:それが俺と何の関係が?

524
00:25:48,080 --> 00:25:50,640
黄道人:当然おぬしと関係がある

525
00:25:51,500 --> 00:25:55,320
あの日 高大侠と沈大侠がそれぞれ
受け取った一枚の書き付けには

526
00:25:55,320 --> 00:25:59,960
“張成嶺の命が欲しければ 引き換えに
琉璃甲を持って来い”と書いてあった

527
00:25:59,960 --> 00:26:04,600
沈大侠は大方 旧友の子が心配で
一人で追って出ていったのだ

528
00:26:05,520 --> 00:26:09,440
我々が彼を捜し出した時には
すでに一体の屍体となっておった

529
00:26:09,440 --> 00:26:13,440
手には高大侠と同じ書き付けを握ってな

530
00:26:13,440 --> 00:26:18,720
我らは沈大侠の屍体を運び戻った後
高家荘の窃盗を発見したのだ

531
00:26:18,720 --> 00:26:21,480
申せ どうしておぬしと関係がないと言えるのだ?

532
00:26:22,160 --> 00:26:25,400
于丘烽:そちらの周公子に 説明していただけるかな

533
00:26:25,400 --> 00:26:29,720
あなたは当日 衆目の下から
その張家の子を連れ去った

534
00:26:29,920 --> 00:26:32,040
今またどこに行ってしまったのだ?

535
00:26:33,680 --> 00:26:35,040
周子舒:なんと

536
00:26:35,360 --> 00:26:36,960
諸君の考えでは……

537
00:26:36,960 --> 00:26:38,440
私が張成嶺を連れ去り

538
00:26:38,440 --> 00:26:40,720
張家の琉璃甲を得たと言うことか

539
00:26:40,720 --> 00:26:44,520
更に彼を人質にして 高家荘に
他の二つを強請してると?

540
00:26:44,520 --> 00:26:46,160
黄道人:まさか違うのか?

541
00:26:48,840 --> 00:26:49,920
周子舒:私が間違ってた

542
00:26:50,920 --> 00:26:55,000
どうして豚の頭が 人の案を
思いつけると思っていたのか……

543
00:26:55,000 --> 00:26:58,080
温客行:誤ち知りて能く改むる
善これより大なるは莫し
(*知错能改 善莫大焉=間違いを改めるのは最大の善《春秋左氏伝》)

544
00:26:58,080 --> 00:26:59,080
黄道人:貴様ら……

545
00:26:59,080 --> 00:27:00,280
于丘烽:周公子

546
00:27:00,280 --> 00:27:01,400
それならばお尋ねするが

547
00:27:01,400 --> 00:27:06,720
我々と葉少侠は高家荘でこそこそしていた
盗人を追いかけてこの場所に来たのだが

548
00:27:06,720 --> 00:27:08,880
何ゆえ盗人は見失い

549
00:27:08,880 --> 00:27:11,280
代わりにお二人と……

550
00:27:11,560 --> 00:27:12,680
ん?

551
00:27:13,680 --> 00:27:15,200
こちらのご婦人は

552
00:27:15,200 --> 00:27:18,560
もしや伝説の緑妖 柳千巧か?

553
00:27:18,560 --> 00:27:21,520
千変万化で予測不能

554
00:27:21,520 --> 00:27:25,240
この于某に何の徳があって
今日 この方のまことの容姿に……

555
00:27:25,240 --> 00:27:29,520
お目にかかれたのか 実に三世に渡る幸運

556
00:27:30,040 --> 00:27:31,640
封暁峰:緑妖 柳千巧か

557
00:27:31,640 --> 00:27:34,520
千枚の画皮を被り 魅了の術に精通し

558
00:27:34,520 --> 00:27:37,000
美人に化けて 年若い男子を引っ掛けるのが大好きだ

559
00:27:37,000 --> 00:27:38,960
なんと こんな容姿だったのか?

560
00:27:39,720 --> 00:27:40,680
武林人士:彼女が?

561
00:27:40,680 --> 00:27:44,040
おい彼女の顔半分を見ろ 醜すぎるぞ!

562
00:27:45,400 --> 00:27:46,920
彼女の顔がこんなとはな

563
00:27:46,920 --> 00:27:47,720
こんなだったのか
彼女の顔がこんなとはな

564
00:27:47,720 --> 00:27:48,120
こんなだったのか
だから易容が必要なのか

565
00:27:48,120 --> 00:27:48,680
だから易容が必要なのか

566
00:27:48,680 --> 00:27:50,120
俺は頼まれてもいやだぞ!
だから易容が必要なのか

567
00:27:50,120 --> 00:27:51,320
俺は頼まれてもいやだぞ!
 

568
00:27:54,320 --> 00:27:55,400
妖女め!

569
00:27:55,400 --> 00:27:57,240
葉白衣:盗人は彼じゃない

570
00:27:57,640 --> 00:27:59,400
于丘烽:葉少侠はまだ年若く

571
00:27:59,400 --> 00:28:01,200
それに 長明山の上に安居しており

572
00:28:01,200 --> 00:28:04,960
まだ世人の心の陰険さを理解しておられぬのだ──

573
00:28:05,440 --> 00:28:08,880
周公子がもし全くの無関係だとおっしゃるなら

574
00:28:08,880 --> 00:28:10,200
上下の衣を脱いで

575
00:28:10,200 --> 00:28:14,040
我らにそなたの腰に鬼面があるかどうか見せてみよ

576
00:28:14,040 --> 00:28:15,080
温客行:何を?

577
00:28:15,080 --> 00:28:18,600
脱ぐとしてもあなたにじゃない
何様のつもりなんです?

578
00:28:18,960 --> 00:28:20,880
于丘烽:周公子ができぬということは

579
00:28:20,880 --> 00:28:24,960
もしや身体に人に見せられぬものがあるのでは?

580
00:28:25,560 --> 00:28:27,400
周子舒:人に見せられない?

581
00:28:27,880 --> 00:28:30,040
(周子舒):俺の腰には何もないが

582
00:28:30,040 --> 00:28:32,360
胸には七本の釘がある

583
00:28:33,840 --> 00:28:35,880
しかしその鬼面と同じように

584
00:28:35,880 --> 00:28:37,960
人に見せられぬものなのか?

585
00:28:38,840 --> 00:28:40,680
何か人に見せられぬものが俺にあるのか?

586
00:28:41,160 --> 00:28:43,680
十五歳で四季山荘を支え立て

587
00:28:44,200 --> 00:28:49,000
十八歳で出会った太子の赫連翊に
少年の豪気をかき立てられ

588
00:28:49,520 --> 00:28:52,200
ニ十三歳で“天窗”を一手に組み立て

589
00:28:53,560 --> 00:28:56,400
一連の朝廷のダニを引きずり出した者は俺で

590
00:28:56,400 --> 00:28:59,400
蛮族を食い止め程武門を死守した者も俺だ

591
00:28:59,880 --> 00:29:03,920
この大慶の江山は今 風雨に漂揺した
満身創痍から徐々に再起しつつある

592
00:29:03,920 --> 00:29:06,520
お前たち全ての者を安穏に暮らさせ

593
00:29:06,520 --> 00:29:09,760
腹一杯になって犬同士が
噛み合う事がないよう支える──

594
00:29:10,200 --> 00:29:13,160
全ての繁華の世情の背後で 光に晒せぬ事は

595
00:29:13,160 --> 00:29:15,160
全て俺の手で処理した──

596
00:29:15,760 --> 00:29:18,160
その半分人だが鬼ではない十数年のうちに

597
00:29:18,160 --> 00:29:21,720
俺は冷酷な手を使ってでも 人を害してきた

598
00:29:22,280 --> 00:29:25,600
しかし今は 残躯賎命を抱え
善行で徳を積むこともできている

599
00:29:27,280 --> 00:29:29,640
始めから終いまで 俺の心に恥じるところはない

600
00:29:30,200 --> 00:29:32,120
人に見せられぬものが何かあるか?

601
00:29:32,120 --> 00:29:33,160
于丘烽:どうした?

602
00:29:33,160 --> 00:29:38,480
周公子がずっと動かぬということは
まことに何かを隠しておられるのでは?

603
00:29:41,520 --> 00:29:44,440
周子舒:そうか あんたは何様のつもりだ

604
00:29:44,440 --> 00:29:45,440
于丘烽:貴様……

605
00:29:45,440 --> 00:29:46,680
黄道人:奴に話すことなどあろうか

606
00:29:46,680 --> 00:29:48,560
捕まえて取り調べれば分かることだ!

607
00:29:49,360 --> 00:29:50,600
え?

608
00:29:50,600 --> 00:29:52,200
──于丘烽は山水画の扇子を数回あおいだ

609
00:29:52,200 --> 00:29:54,200
黄道人:み 皆よ……

610
00:29:54,200 --> 00:29:56,520
──于丘烽も後ろの者たちも彼を見るだけで
誰も一歩も動かなかった

611
00:29:56,520 --> 00:29:58,040
温客行:ねえ皆さん

612
00:29:58,560 --> 00:30:01,920
これってまさか ちゃんと舞台稽古をしてなくて
台詞を忘れたのかな?

613
00:30:02,220 --> 00:30:03,520
引っ込んでろ

614
00:30:03,760 --> 00:30:07,440
場数も踏まずに大芝居で歌えるとでも?

615
00:30:07,640 --> 00:30:09,680
ご祝儀はないよ

616
00:30:09,680 --> 00:30:10,680
葉白衣:ふん

617
00:30:10,680 --> 00:30:12,680
どれもこれもめちゃくちゃだ

618
00:30:15,320 --> 00:30:17,800
周子舒:温客行 行くぞ

619
00:30:17,800 --> 00:30:20,000
黄道人:若造止まれ!はぁぁ!──

620
00:30:20,000 --> 00:30:23,400
──飛びかかってくると周子舒は
振り返らずに身を引いた

621
00:30:23,400 --> 00:30:24,320
周子舒:失せろ!

622
00:30:24,320 --> 00:30:25,560
黄道人:アイヤ!

623
00:30:25,560 --> 00:30:27,160
温客行:本当に転がってった?
(*滚=失せろ、転がる)

624
00:30:27,160 --> 00:30:29,720
──長い袖が巻き起こした二つの力が
彼の肩と膝に当たり黄道人は言葉通り転がった

625
00:30:29,720 --> 00:30:30,680
温客行:阿絮

626
00:30:30,680 --> 00:30:33,120
私は本当にますますあなたが好きになりましたよ

627
00:30:34,720 --> 00:30:37,480
──大勢の視線が周子舒に集中した隙に
突然、于丘烽の剣先が温客行の首筋を突いた

628
00:30:37,880 --> 00:30:39,680
温客行:于掌門これはどういうことです?

629
00:30:39,680 --> 00:30:43,480
どうしてまるで温某があなたの女房を
横取りしたみたいな目で見てるんです?

630
00:30:44,400 --> 00:30:48,800
天地に誓って 私はうちの阿絮一筋です

631
00:30:49,040 --> 00:30:50,040
周子舒:ほう?

632
00:30:50,560 --> 00:30:53,360
温兄が良家のご婦人にも
興味があるのを見抜けなかった

633
00:30:53,360 --> 00:30:54,440
温客行:阿絮!

634
00:30:54,440 --> 00:30:55,880
濡れ衣ですよ!

635
00:30:56,140 --> 00:30:57,680
于丘烽:何のたわ言だ!

636
00:30:58,200 --> 00:31:01,000
邪悪な外道は 天下の人としてこれを誅する

637
00:31:01,000 --> 00:31:02,920
本来ならば人々に袋叩きされる類だが
(*老鼠过街 人人喊打=街に出た鼠は叩かれる、迷惑者の比喩)

638
00:31:02,920 --> 00:31:04,240
死ぬがいい!

639
00:31:04,840 --> 00:31:09,240
──于丘烽は風采の優れた華山派掌門として
大勢の前で転んで顔から突っ込んだ恨みを
晴らせなければ男でないと思った

640
00:31:09,240 --> 00:31:11,480
温客行は半身で剣先を躱すと正確に
二本の指を出して于丘烽の剣を挟んだ

641
00:31:11,480 --> 00:31:13,280
温客行:人々に袋叩き?

642
00:31:13,640 --> 00:31:16,240
申し訳ない 私は鼠じゃない

643
00:31:16,520 --> 00:31:18,200
お願いですから

644
00:31:18,200 --> 00:31:21,920
まるであなた自身が殺鼠剤のように
目の敵にしないで見逃してください!
(*苦大仇深=抑圧され搾取されたものの深い恨み)

645
00:31:24,720 --> 00:31:28,320
──武林において相手の武器を壊すのは
父を殺し妻を奪うことに次ぐ大侮辱である

646
00:31:28,320 --> 00:31:29,460
于丘烽:貴様──

647
00:31:29,460 --> 00:31:34,420
温客行の胸に一掌当てて飛び上がるとまるで
決まった型のように素早く彼を狙って蹴ったが
幸い誰も華山掌門の“撩陰脚”を見ていなかった

648
00:31:34,420 --> 00:31:37,800
温客行が躱して膝を上げると彼の脚の骨に当たり
同時に一掌受けると海のような内力が押し寄せた

649
00:31:40,640 --> 00:31:42,280
温客行:柳千巧?

650
00:31:42,280 --> 00:31:44,480
于丘烽を助けるのか?

651
00:31:45,080 --> 00:31:46,480
あぁ〜!

652
00:31:47,080 --> 00:31:49,040
阿絮早く来て

653
00:31:49,040 --> 00:31:51,360
不義を見つけました!

654
00:32:03,480 --> 00:32:05,000
周子舒:たわ言はよせ 行くぞ!

655
00:32:05,000 --> 00:32:06,360
温客行:いいよ──

656
00:32:08,080 --> 00:32:10,320
どうしてこの狐の化け物を連れていくの?

657
00:32:21,280 --> 00:32:26,880
──跳梁の道化どもを置き去りに、二人は
軽功でどれだけ離れたか分からないほど駆けた

658
00:32:27,780 --> 00:32:31,280
周子舒はようやく足を止め息も絶え絶えの
柳千巧を木の下に落とすと幾つかの点穴を封じた

659
00:32:31,760 --> 00:32:33,800
温客行:あなたが彼女を共に連れて来て

660
00:32:33,800 --> 00:32:36,840
この邪悪な外道という名声は
更に確実になりました

661
00:32:40,160 --> 00:32:41,400
いいか

662
00:32:41,920 --> 00:32:43,960
どうせ私には名声なんてものもありませんし

663
00:32:44,280 --> 00:32:48,320
あなたは私の人で これも
苦楽を共にしたと見なせます

664
00:32:48,600 --> 00:32:49,440
周子舒:老温

665
00:32:49,440 --> 00:32:50,280
温客行:ん?

666
00:32:50,280 --> 00:32:52,240
口はしゃべって食うために使うものだ

667
00:32:52,240 --> 00:32:54,000
屁をひるためのものじゃない──

668
00:32:54,400 --> 00:32:58,120
もう少し力を加えれば 彼女は
あの場でお前に打たれて死んでいただろう

669
00:32:58,120 --> 00:32:59,600
温客行:”老温”って呼びました?

670
00:32:59,600 --> 00:33:01,080
周子舒:この薬を飲め

671
00:33:01,080 --> 00:33:02,640
温客行:間違いない!

672
00:33:04,600 --> 00:33:07,400
柳千巧:おのれ……親切のふり?

673
00:33:10,800 --> 00:33:12,120
周子舒:聞くが

674
00:33:12,840 --> 00:33:14,520
あんたの易容の手法は

675
00:33:14,920 --> 00:33:16,400
誰から学んだんだ?

676
00:33:17,840 --> 00:33:19,600
柳千巧:お前にどんな関係が?

677
00:33:21,440 --> 00:33:22,760
温客行:柳姑娘

678
00:33:23,680 --> 00:33:25,880
もしかして あなたが容貌を変えたのも

679
00:33:25,880 --> 00:33:27,800
琉璃甲を奪ったのも

680
00:33:27,800 --> 00:33:29,440
全て于丘烽のため?

681
00:33:30,960 --> 00:33:32,800
ならば一句お勧めしよう

682
00:33:33,240 --> 00:33:36,320
女人不器量恐れず 阿呆も恐れず

683
00:33:36,320 --> 00:33:38,800
最も恐れるは見る目のないこと

684
00:33:38,800 --> 00:33:42,160
あの類の代物は 惚れたところで損をする

685
00:33:43,040 --> 00:33:45,280
あなたはどうやって于丘烽が
我らを見つけたと思うんです?

686
00:33:46,020 --> 00:33:50,680
葉白衣もまたどうして黒衣の男を追って
その路地まで来たのでしょう?

687
00:33:51,360 --> 00:33:52,880
誰が故意に誘導し

688
00:33:52,880 --> 00:33:56,360
あなたにその逃げた黒衣の男は于丘烽だと思わせ

689
00:33:56,360 --> 00:33:58,960
その上で葉白衣の相手をさせた?

690
00:33:59,600 --> 00:34:03,760
誰が全ての人の前であなたの正体を明かした?

691
00:34:04,680 --> 00:34:06,840
馬鹿だな

692
00:34:08,400 --> 00:34:10,360
彼はあなたを盾にしたのでしょう

693
00:34:10,360 --> 00:34:11,920
周子舒:お前は黙れ

694
00:34:12,480 --> 00:34:13,960
温客行:分かったよ

695
00:34:14,600 --> 00:34:16,160
周子舒:柳姑娘……

696
00:34:16,360 --> 00:34:17,840
あんたは幼い頃

697
00:34:18,000 --> 00:34:23,040
眉毛がなく怪我をして飢えて死にかけの
変わり者に遭わなかったか?

698
00:34:23,200 --> 00:34:25,040
あんたは彼に飯を食わせてやらなかったか?

699
00:34:25,040 --> 00:34:26,400
柳千巧:あなたは……

700
00:34:26,720 --> 00:34:28,400
どうして知ってるの?

701
00:34:28,400 --> 00:34:31,240
──師父の秦懐章は若い時、敵に追われ
重症を負い、一軒の農荘に逃げ落ちた

702
00:34:31,840 --> 00:34:33,540
周子舒:それは私の師父だ

703
00:34:33,840 --> 00:34:37,520
──その時、顔に傷跡のある少女が食事を運んで
最も困難な時期を乗り切るのを助けてくれたという

704
00:34:38,280 --> 00:34:39,800
周子舒:この薬を取っておけ

705
00:34:40,600 --> 00:34:43,960
今後は自分でちゃんとしろ
(*好自为之=自ら好くこれを為す、自分を律する戒め)

706
00:34:44,920 --> 00:34:49,120
──秦懐章は他に報いる術がなく彼女の
損なった容貌を惜しみいくつか易容を教えたが
後になって彼女を傷つけるとは思わなかっただろう

707
00:34:49,320 --> 00:34:51,040
温客行:彼女はあなたを謀ったのに

708
00:34:51,560 --> 00:34:53,960
彼女にそんな良くするなんて

709
00:34:53,960 --> 00:34:55,600
全く……

710
00:34:56,640 --> 00:34:59,560
──周子舒は歩きながら別の薬瓶を
懐から取り出し顔を拭った

711
00:34:59,560 --> 00:35:00,800
温客行:ん?

712
00:35:03,360 --> 00:35:07,000
──何度も拭うと青黄色い肌が徐々に流れ落ち
刀で削いだような顎の輪郭が現れた

713
00:35:07,280 --> 00:35:08,920
周子舒:はぁ……

714
00:35:08,920 --> 00:35:11,720
こんな長い間ずっとこれを着けてると

715
00:35:11,720 --> 00:35:14,080
ほとんど己の顔だと思ってしまう

716
00:35:14,080 --> 00:35:16,520
この顔は面倒事を招く

717
00:35:16,520 --> 00:35:18,040
もう使えん……

718
00:35:18,040 --> 00:35:20,560
今後はもしかして三日に二度は
人皮面具を貼り替えるべきなのか?

719
00:35:20,560 --> 00:35:22,160
温客行:そうです……

720
00:35:22,680 --> 00:35:24,680
私の心の中にいるあなたは

721
00:35:25,120 --> 00:35:27,560
このような容姿でした

722
00:35:28,960 --> 00:35:33,160
岳陽城の花咲くような笑顔の
ありふれた小公子みたいではなく

723
00:35:33,760 --> 00:35:38,720
洞庭の楼上の眉目秀麗な人気の青倌みたいでもない
(*青倌=芸姑)

724
00:35:39,280 --> 00:35:41,480
色とは言えない

725
00:35:41,680 --> 00:35:43,680
ただ黒白(こくびゃく)があるだけ

726
00:35:44,880 --> 00:35:46,840
でもこのように……

727
00:35:47,680 --> 00:35:52,760
あなたのその濃墨に彩られた
双眸にこそ相応しい……

728
00:35:53,360 --> 00:35:54,960
周子舒:ん?

729
00:35:55,200 --> 00:35:56,760
何を言ってるんだ?

730
00:36:02,760 --> 00:36:04,200
温客行:阿絮……

731
00:36:04,760 --> 00:36:05,880
周子舒:うん

732
00:36:06,320 --> 00:36:07,480
温客行:私は……

733
00:36:08,320 --> 00:36:10,240
言ったことありました?

734
00:36:10,240 --> 00:36:13,640
本当は男の人が好きだと

735
00:36:14,360 --> 00:36:15,800
周子舒:くだらん

736
00:36:16,600 --> 00:36:19,680
温客行:だから私を誘惑してるんですよね?

737
00:36:20,520 --> 00:36:22,080
周子舒:お前は視力が悪いか

738
00:36:22,080 --> 00:36:24,720
心の眼に少し問題があるんじゃないか──

739
00:36:25,000 --> 00:36:27,880
そうでなければ どうして街のどこかで
美しい姑娘や若い奴に付き纏わず

740
00:36:27,880 --> 00:36:29,640
専ら俺に絡んでるんだ?

741
00:36:31,320 --> 00:36:32,720
これはお前にやる

742
00:36:32,720 --> 00:36:34,520
面倒を掛け続ける気がないなら

743
00:36:34,520 --> 00:36:36,160
この面具を着けろ

744
00:36:37,160 --> 00:36:38,120
温客行:あぁあの──

745
00:36:38,120 --> 00:36:39,400
ダメですよ

746
00:36:39,440 --> 00:36:41,360
この面具はものすごく目の毒です

747
00:36:41,360 --> 00:36:43,520
あなたは価値を分かってない 交換して!

748
00:36:43,520 --> 00:36:44,720
ダメダメダメ

749
00:36:44,720 --> 00:36:46,240
別のもダメです

750
00:36:46,240 --> 00:36:48,480
あなた自身の顔が一番素敵です!

751
00:36:48,660 --> 00:36:51,900
──周子舒は温客行の鎖骨を殴ったが
温客行は躱そうとせずに隙をついて手を掴んだ

752
00:36:52,480 --> 00:36:53,840
周子舒:俺を煩わせるな

753
00:36:55,840 --> 00:36:57,440
温客行:分かってます

754
00:36:58,040 --> 00:37:01,560
阿絮がどうして私を殴るのをためらわないのか

755
00:37:03,480 --> 00:37:04,960
温客行:ものは相談ですが

756
00:37:05,400 --> 00:37:08,240
あなたもね 独り身だと思いますし

757
00:37:08,240 --> 00:37:11,000
我ら二人で折り合いをつけては?

758
00:37:11,160 --> 00:37:13,160
周子舒:お前を何に使えと?

759
00:37:13,160 --> 00:37:15,500
──温客行は彼の手を持ち上げて
そっと自分の顎先でこすった

760
00:37:15,500 --> 00:37:17,640
周子舒が鳥肌を立て全力で
手を引いた瞬間に彼の顔に手を出した

761
00:37:17,640 --> 00:37:18,800
周子舒:おい!

762
00:37:18,800 --> 00:37:19,920
面具を返せ!

763
00:37:19,920 --> 00:37:22,000
温客行:ねえ何に使うんです?

764
00:37:22,880 --> 00:37:23,920
周子舒:ふっ

765
00:37:24,720 --> 00:37:28,560
お前を飼っておいて飢饉の時に捌いて肉を食うか?

766
00:37:28,740 --> 00:37:33,320
──彼の顔は蒼白で影が深くどこか冷酷な印象だが
笑った時だけ目元が和らぎ色の薄い唇が
少し色づき、どこか可愛く見えた

767
00:37:33,320 --> 00:37:34,720
温客行:阿絮

768
00:37:37,240 --> 00:37:39,920
あなたは笑うと本当に素敵です……

769
00:37:39,920 --> 00:37:42,640
──温客行は彼が何と言ったか深く理解する前に
重い蹴りを食らい五体投地しそうになった

770
00:37:42,640 --> 00:37:44,080
周子舒:ふん

771
00:37:44,800 --> 00:37:47,320
温客行:どうして先ほどより醜悪な顔に?

772
00:37:47,920 --> 00:37:49,480
阿絮──

773
00:37:50,200 --> 00:37:55,480
──周子舒は再び人皮面具を着け、肩で風を切って
勝ち誇ったように大股で歩いて行った

774
00:38:12,440 --> 00:38:16,400
張成嶺:私はどうしてこんな役立たずなんだ
どうしていつも他の人を巻き込むんだ

775
00:38:16,400 --> 00:38:17,440
七爺:どうして覚えがないのか

776
00:38:17,440 --> 00:38:20,680
洞庭の気風がかくも悪化の一途を辿っていたとは

777
00:38:20,680 --> 00:38:24,360
温客行:あなたの弟子なら私の弟子です
我ら二人誰と誰だと?

778
00:38:24,360 --> 00:38:27,560
(周子舒):温客行はまことに神だな
一発で言い当てるとは

779
00:38:27,560 --> 00:38:28,560
温客行:どうしたんです

780
00:38:28,560 --> 00:38:31,080
阿絮はまた遊んでポイ捨てするつもりじゃ
ないでしょうね?

781
00:38:31,080 --> 00:38:34,000
周子舒:この身の功夫を廃して
私にまだ何があるのだ?

782
00:38:34,740 --> 00:38:36,280
私はまだ私なのか?

783
00:38:37,440 --> 00:38:39,640
“这人间困境几何”
(この世に苦境 幾ばくか)

784
00:38:39,640 --> 00:38:43,320
“得超脱又几个”
(逃れ得るのは幾人か)

785
00:38:43,320 --> 00:38:46,480
“如敢以生死来涉”
(敢えて生死を賭ければ)

786
00:38:46,480 --> 00:38:49,560
“孑然是天涯客”
(それは独りの天涯客)

787
00:38:49,560 --> 00:38:53,040
“谁辞别庙堂 醉山河”
(廟堂を離れ 山河に酔う人が)

788
00:38:53,040 --> 00:38:55,960
“沐得天光赏春色”
(天光浴びて 春色を味わえば)

789
00:38:55,960 --> 00:39:02,840
“欲做闲云鹤 偏又生纠葛”
(たゆたう雲間の鶴ならんとも しがらみまた生じる)

790
00:39:02,920 --> 00:39:05,960
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)

791
00:39:05,960 --> 00:39:09,400
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)

792
00:39:09,400 --> 00:39:12,440
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)

793
00:39:12,440 --> 00:39:15,840
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)

794
00:39:15,840 --> 00:39:21,960
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)

795
00:39:21,960 --> 00:39:28,840
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)

796
00:39:55,160 --> 00:39:57,520
“正邪道人心叵测”
(正邪で人心は測れず)

797
00:39:57,520 --> 00:40:00,920
“甘苦自取自舍”
(甘苦を自ら選び取り)

798
00:40:00,920 --> 00:40:04,360
“遇知己明眸澈澈”
(巡り合った知己の瞳は明澄にして)

799
00:40:04,360 --> 00:40:07,400
“如举灯过渊泽”
(灯を掲げ沢の淵を渡るなら)

800
00:40:07,400 --> 00:40:10,800
“谁以鬼行世 恨善恶”
(世を行く鬼として 善悪を恨む誰かの)

801
00:40:10,800 --> 00:40:13,680
“红袍褪身识得”
(紅い袍を落とせば見える)

802
00:40:13,680 --> 00:40:20,480
“一眼竟万年 情痴终不赦”
(一眼万年の恋情 ついぞ赦されることなし)

803
00:40:20,560 --> 00:40:23,560
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)

804
00:40:23,560 --> 00:40:27,000
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)

805
00:40:27,000 --> 00:40:30,120
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)

806
00:40:30,120 --> 00:40:33,720
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)

807
00:40:33,720 --> 00:40:39,640
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)

808
00:40:39,640 --> 00:40:46,000
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)

809
00:40:46,440 --> 00:40:49,640
“天欲晚 风雪袭巴蜀”
(天は暗きを欲し 風雪が巴蜀を襲う)

810
00:40:49,640 --> 00:40:53,080
“何幸借这温存 不孤独”
(幸いにもこの温もりがあれば孤独でなく)

811
00:40:53,080 --> 00:40:56,040
“问余生 怎舍好眉目”
(余生に問う 眉目の好しを)

812
00:40:56,040 --> 00:40:59,600
“三秋如梦也愿赴”
(三秋の夢の願いを手放せるかを)

813
00:40:59,600 --> 00:41:05,800
“六合渺渺 自有自在处”
(六合遙かに 己の居場所があれば)

814
00:41:05,800 --> 00:41:12,800
“竹林响 忘沉浮 寻光欲渡”
(竹林は響き 浮沈を忘れ 光を求め渡らん)





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