第十一集
1
00:00:17,980 --> 00:00:21,780
──曹蔚寧は目下、とても困惑していた
2
00:00:21,780 --> 00:00:26,860
全身泥まみれで衣服はボロボロ
片目は腫れてわずかにしか開かない
3
00:00:28,540 --> 00:00:31,460
曹蔚寧:私は本当に腑抜けだ
4
00:00:31,460 --> 00:00:33,740
清風剣派の祖訓は
5
00:00:33,740 --> 00:00:37,660
“剣在りて人在り 剣断てば人亡う”
6
00:00:37,780 --> 00:00:41,660
“大義を匡扶(たす)け 妖を斬り魔を除く”なのに
7
00:00:41,940 --> 00:00:44,100
今や剣は折れ
8
00:00:44,100 --> 00:00:47,420
更には縛られてこの屋内に投げ込まれ──
9
00:00:47,860 --> 00:00:53,740
武林人士:清風剣派の者があのような悪辣な妖女と
一緒になっていたとは まこと同輩の恥!
10
00:00:53,740 --> 00:00:57,100
武林人士:そうだ!邪悪な外道は
天下の人々これを誅してよし!
(*人人得而诛之《庚桑楚》荘子)
11
00:00:57,380 --> 00:01:01,500
(曹蔚寧):案の定 私は邪悪な外道と
同じ扱いをされている
12
00:01:01,500 --> 00:01:04,140
武林人士:この曹蔚寧はよくも
自ら堕落に甘んじたのものだな!
13
00:01:07,840 --> 00:01:10,820
曹蔚寧:もともと私には
経天緯地の見込みもなければ
(*经天纬地=天地を治められるほどの偉大な才能)
14
00:01:10,820 --> 00:01:14,540
足を踏み鳴らせば武林を
震わすほどの大人物でもない
15
00:01:14,820 --> 00:01:16,980
何事も良心に顔向けできるよう
16
00:01:17,260 --> 00:01:19,660
心に恥じぬようにするだけだ
17
00:01:20,540 --> 00:01:24,620
私にはただ 周兄と温兄は
積徳善行しているように見えたんだ──
18
00:01:24,620 --> 00:01:24,900
周子舒:手間を掛けるが曹兄
この小僧を趙大侠のところに送り返してくれ
私にはただ 周兄と温兄は
積徳善行しているように見えたんだ──
19
00:01:24,900 --> 00:01:27,420
周子舒:手間を掛けるが曹兄
この小僧を趙大侠のところに送り返してくれ
20
00:01:27,420 --> 00:01:27,860
感謝する
21
00:01:27,860 --> 00:01:28,340
感謝する
温客行:人の世は 魑魅魍魎が
いるべきではありません
22
00:01:28,340 --> 00:01:31,980
温客行:人の世は 魑魅魍魎が
いるべきではありません
23
00:01:31,980 --> 00:01:36,380
我らが手を差し伸べぬなら 聖賢の書を読んだ
多くの歳月は無駄になってしまうのでは?
24
00:01:36,380 --> 00:01:37,380
我らが手を差し伸べぬなら 聖賢の書を読んだ
多くの歳月は無駄になってしまうのでは?
(曹蔚寧):ただ分かるのは
25
00:01:37,380 --> 00:01:37,940
(曹蔚寧):ただ分かるのは
26
00:01:37,940 --> 00:01:39,920
阿湘は一人の娘さんで
27
00:01:39,920 --> 00:01:41,900
命を懸けて張家の子供を護っていた──
28
00:01:41,900 --> 00:01:42,820
顧湘:忘れたのか?
命を懸けて張家の子供を護っていた──
29
00:01:42,820 --> 00:01:43,140
顧湘:忘れたのか?
30
00:01:43,140 --> 00:01:46,180
毒蝎の死士が その坊やを殺すつもりだって
31
00:01:47,380 --> 00:01:48,780
早く逃げろ!
32
00:01:48,980 --> 00:01:52,060
(曹蔚寧):逆にこの いわゆる
徳望高き正道の者たちが……
33
00:01:52,060 --> 00:01:53,980
しきりに牽制しあってる……
34
00:01:53,980 --> 00:01:54,940
封暁峰:高大侠はその子に聞いてみた方がいい
しきりに牽制しあってる……
35
00:01:54,940 --> 00:01:56,060
封暁峰:高大侠はその子に聞いてみた方がいい
36
00:01:56,060 --> 00:01:57,720
他の人が知らないことを何か知ってるかどうか
37
00:01:57,720 --> 00:01:58,780
他の人が知らないことを何か知ってるかどうか
武林人士:皆がいるこの時に
38
00:01:58,780 --> 00:01:59,220
武林人士:皆がいるこの時に
39
00:01:59,220 --> 00:02:02,140
武林人士:その坊主にはっきり
答えさせれば 彼のためにもなるし
40
00:02:02,140 --> 00:02:04,680
しょっちゅう彼の命を気にかける人も
減らせるんじゃないか?
41
00:02:04,680 --> 00:02:05,620
于丘烽:張家は結局 琉璃甲と関係があるのかどうか
しょっちゅう彼の命を気にかける人も
減らせるんじゃないか?
42
00:02:05,620 --> 00:02:07,980
于丘烽:張家は結局 琉璃甲と関係があるのかどうか
43
00:02:07,980 --> 00:02:09,780
その琉璃甲は今一体誰の手にあるのかもだ!
44
00:02:09,780 --> 00:02:10,980
その琉璃甲は今一体誰の手にあるのかもだ!
張成嶺:知らない……私は知らない……
45
00:02:10,980 --> 00:02:12,060
張成嶺:知らない……私は知らない……
46
00:02:12,060 --> 00:02:12,380
周子舒:諸君 大庭の公衆の下で子供を困らせるとは
張成嶺:知らない……私は知らない……
47
00:02:12,380 --> 00:02:15,860
周子舒:諸君 大庭の公衆の下で子供を困らせるとは
48
00:02:15,860 --> 00:02:17,300
これはどんな道理だ?
49
00:02:17,300 --> 00:02:17,420
温客行:阿絮
これはどんな道理だ?
50
00:02:17,420 --> 00:02:18,260
温客行:阿絮
51
00:02:18,740 --> 00:02:21,460
あなたは先……に行ってね
52
00:02:22,100 --> 00:02:26,180
私が彼……彼らを引き受けてあげます
53
00:02:36,140 --> 00:02:41,180
曹蔚寧:一体何が正で また何が邪なんだ?
54
00:02:41,780 --> 00:02:48,620
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品
55
00:02:48,860 --> 00:02:56,300
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
第十一集「奇才」
56
00:03:05,280 --> 00:03:08,860
(曹蔚寧):清風剣派が私に教えたのは善悪の道だ
57
00:03:08,860 --> 00:03:11,180
決して名利の道じゃない
58
00:03:11,940 --> 00:03:14,900
他の人が皆 私が悪いと言おうとも なんてことない
59
00:03:14,900 --> 00:03:19,220
どうせ各人がそれぞれの日々を過ごせば
誰かの妨げにはならない
60
00:03:19,620 --> 00:03:21,300
だけど……
61
00:03:21,900 --> 00:03:25,740
師父と師叔に申し訳が立たない気がする……
62
00:03:28,380 --> 00:03:31,220
阿湘もどうなったか分からない
63
00:03:31,620 --> 00:03:34,540
彼女一人で張小兄弟を連れて
64
00:03:34,900 --> 00:03:37,660
万一周兄と温兄を見つけられずに
65
00:03:38,100 --> 00:03:40,460
また毒蝎に遭ってしまったら──
66
00:03:41,420 --> 00:03:42,900
ダメだ!
67
00:03:46,500 --> 00:03:51,540
曹蔚寧:肋骨を柳緑翁に折られたみたいだ
68
00:03:54,300 --> 00:03:59,220
やはり気力を養って 機会を
見つけて逃げ出すしかない!
69
00:04:16,020 --> 00:04:19,460
莫懐空:我が清風剣派が
いつ邪悪な外道を出したと?
70
00:04:21,100 --> 00:04:25,940
むしろ桃紅と柳緑おぬしら二人の老いぼれ妖怪こそ
碌でもないもののようだな!
71
00:04:26,940 --> 00:04:27,140
曹蔚寧:師叔?
72
00:04:27,140 --> 00:04:28,500
柳緑翁:莫懐空!
曹蔚寧:師叔?
73
00:04:28,500 --> 00:04:28,700
柳緑翁:莫懐空!
74
00:04:28,700 --> 00:04:29,940
柳緑翁:それはどういう意味だ
75
00:04:29,940 --> 00:04:31,660
人を奪おうとでも言うのか?
76
00:04:31,660 --> 00:04:32,660
莫懐空:どいておれ!
77
00:04:33,460 --> 00:04:34,620
桃紅婆:じいさん!
78
00:04:34,620 --> 00:04:34,860
武林人士:莫大侠 何をしているんだ──
桃紅婆:じいさん!
79
00:04:34,860 --> 00:04:35,780
武林人士:莫大侠 何をしているんだ──
80
00:04:35,780 --> 00:04:36,100
武林人士:莫大侠 何をしているんだ──
桃紅婆:莫懐空の愚か者め何をする!
81
00:04:36,100 --> 00:04:38,220
桃紅婆:莫懐空の愚か者め何をする!
82
00:04:38,220 --> 00:04:38,900
武林人士:皆よ いずれに是非があるか はやり
曹少侠に問うてはっきりさせるべきではないか
桃紅婆:莫懐空の愚か者め何をする!
83
00:04:38,900 --> 00:04:42,020
武林人士:皆よ いずれに是非があるか はやり
曹少侠に問うてはっきりさせるべきではないか
84
00:04:42,020 --> 00:04:42,780
武林人士:皆よ いずれに是非があるか はやり
曹少侠に問うてはっきりさせるべきではないか
武林人士:清風剣派はまさか私情を挿むとでも?
85
00:04:42,780 --> 00:04:45,100
武林人士:清風剣派はまさか私情を挿むとでも?
86
00:04:45,100 --> 00:04:46,820
莫懐空:それは我が師甥(しせい)だ
87
00:04:46,820 --> 00:04:51,020
彼が何か悪事を働いたならば
当然我が掌門師兄が門戸を整理するのだ
88
00:04:51,020 --> 00:04:54,080
老いぼれた妖怪どもめ 犬が暖簾を舐める
口先を見せながら あれこれ口出しできるのか?!
89
00:04:54,080 --> 00:04:56,060
武林人士:莫懐空どういうつもりだ!
老いぼれた妖怪どもめ 犬が暖簾を舐める
口先を見せながら あれこれ口出しできるのか?!
90
00:04:56,060 --> 00:04:58,180
武林人士:お前たち清風剣派は
自分の門内の者も管理できずに
91
00:04:58,180 --> 00:05:00,380
周りに向かって喚き散らしてるのか!
92
00:05:00,380 --> 00:05:03,260
(曹蔚寧):師叔は癇癪持ちだと言うのに
93
00:05:03,260 --> 00:05:05,540
それでも やはり私の肩を持ってくれる……
94
00:05:05,540 --> 00:05:06,700
莫懐空:犬を殴るなら主人に伺わねばならん!
それでも やはり私の肩を持ってくれる……
95
00:05:06,700 --> 00:05:07,620
莫懐空:犬を殴るなら主人に伺わねばならん!
96
00:05:08,540 --> 00:05:08,960
(曹蔚寧):……もういい
97
00:05:08,960 --> 00:05:09,900
武林人士:清風剣派がそういう態度なら
(曹蔚寧):……もういい
98
00:05:09,900 --> 00:05:11,580
武林人士:清風剣派がそういう態度なら
99
00:05:11,580 --> 00:05:12,700
こっちにも考えがある
100
00:05:12,700 --> 00:05:15,020
武林人士:清風剣派はそんな無理を通すのか!
101
00:05:15,020 --> 00:05:17,100
封暁峰:これが清風剣派か
102
00:05:17,100 --> 00:05:19,460
あんたの立派な師甥がどんな善事を
やってのけたか聞いてもみないのか?
103
00:05:19,460 --> 00:05:23,380
彼と一緒だった小妖女が
阿山の目を毒で潰したんだぞ
104
00:05:23,380 --> 00:05:24,900
その小妖女を捕まえられなければ
105
00:05:24,900 --> 00:05:26,580
俺はこの若造の目を抉り出すぞ!
106
00:05:26,580 --> 00:05:27,260
莫懐空:ふん──
俺はこの若造の目を抉り出すぞ!
107
00:05:27,260 --> 00:05:27,460
莫懐空:ふん──
108
00:05:27,460 --> 00:05:31,140
武林人士:年端も行かぬ女子が
手を出すとこのように悪辣なのだ
109
00:05:31,140 --> 00:05:34,820
曹少侠は何ゆえこの類の者と一緒だったのか
教えていただきたい
110
00:05:34,820 --> 00:05:36,020
莫懐空:ふん──
111
00:05:36,940 --> 00:05:37,720
曹蔚寧:師叔……
112
00:05:37,720 --> 00:05:39,620
莫懐空:誰がお前の師叔だ!
113
00:05:39,980 --> 00:05:41,220
ふん!
114
00:05:41,220 --> 00:05:44,020
彼らの言うお前と共にいた者とは一体誰だ?
115
00:05:45,080 --> 00:05:46,180
曹蔚寧:それは……
116
00:05:46,180 --> 00:05:47,940
阿……阿湘……
117
00:05:47,940 --> 00:05:49,340
桃紅婆:阿湘?
118
00:05:49,340 --> 00:05:50,860
まこと親しげに呼ぶんだね
119
00:05:50,860 --> 00:05:51,660
曹蔚寧:阿湘は悪人じゃない
まこと親しげに呼ぶんだね
120
00:05:51,660 --> 00:05:52,100
曹蔚寧:阿湘は悪人じゃない
121
00:05:52,100 --> 00:05:54,780
師叔 阿湘……阿湘は……
122
00:05:54,780 --> 00:05:55,260
于丘烽:若い者が色香に惑うのも
師叔 阿湘……阿湘は……
123
00:05:55,260 --> 00:05:56,940
于丘烽:若い者が色香に惑うのも
124
00:05:56,940 --> 00:05:58,380
幾らか理解はできる……
(*无可厚非=非難するほどのことでもない)
125
00:05:58,380 --> 00:05:59,220
莫懐空:于丘烽 おぬしの話はどういう意味だ!
幾らか理解はできる……
(*无可厚非=非難するほどのことでもない)
126
00:05:59,220 --> 00:06:01,220
莫懐空:于丘烽 おぬしの話はどういう意味だ!
127
00:06:01,900 --> 00:06:05,500
于丘烽:目下 高大侠 趙大侠と慈睦大師らは
128
00:06:05,500 --> 00:06:08,260
沈兄の後事で手が離せぬ
129
00:06:08,260 --> 00:06:12,700
曹少侠の一件は当然 我らが
謹んで処理すべきというもの
130
00:06:12,700 --> 00:06:15,040
少侠に改過自新さえしていただければ
(*改过自新=心を入れ替え生まれ変わる)
131
00:06:15,040 --> 00:06:19,180
この場にいる諸氏も 度量の狭い
良識に疎い者はいまい……
132
00:06:19,180 --> 00:06:20,740
封暁峰:俺はあの妖女の目を抉りたい!
133
00:06:20,740 --> 00:06:21,940
于丘烽:封暁峰 貴様……
134
00:06:21,940 --> 00:06:22,700
武林人士:小僧 白状しろ!
135
00:06:22,700 --> 00:06:23,620
張家の子供はその小妖女に連れて行かれたんだ!
武林人士:小僧 白状しろ!
136
00:06:23,620 --> 00:06:25,380
張家の子供はその小妖女に連れて行かれたんだ!
137
00:06:25,380 --> 00:06:26,540
今はどんな状況か定かじゃない……
138
00:06:26,540 --> 00:06:27,460
お前とその妖女はどんな関係だ
今はどんな状況か定かじゃない……
139
00:06:27,460 --> 00:06:27,580
なぜ彼女を庇うんだ!
今はどんな状況か定かじゃない……
140
00:06:27,580 --> 00:06:28,260
なぜ彼女を庇うんだ!
141
00:06:28,260 --> 00:06:29,060
なぜ彼女を庇うんだ!
この小僧はきっとその妖女にたぶらかされたんだ!
142
00:06:29,060 --> 00:06:29,980
この小僧はきっとその妖女にたぶらかされたんだ!
143
00:06:29,980 --> 00:06:30,820
兎にも角にも名門の後人なのに
この小僧はきっとその妖女にたぶらかされたんだ!
144
00:06:30,820 --> 00:06:31,780
兎にも角にも名門の後人なのに
145
00:06:31,780 --> 00:06:32,740
妖女一匹に惑わされるとは……
146
00:06:32,740 --> 00:06:34,220
包み隠さず言え 張家の小僧の命に関わるのだ
妖女一匹に惑わされるとは……
147
00:06:34,220 --> 00:06:35,460
包み隠さず言え 張家の小僧の命に関わるのだ
148
00:06:35,460 --> 00:06:37,420
どう言った理由でこの小僧はやたらと庇うんだ!
149
00:06:37,420 --> 00:06:38,420
莫懐空:たわけ
150
00:06:38,420 --> 00:06:39,700
白状せよ
151
00:06:39,700 --> 00:06:43,180
あの小妖女は張家の子供をどこに奪い去ったのだ?
152
00:06:43,780 --> 00:06:45,540
曹蔚寧:阿湘がいない……
153
00:06:47,500 --> 00:06:48,540
武林人士:誰だ!
154
00:06:49,420 --> 00:06:51,300
顧湘:小妖女はここだぞ
155
00:06:51,300 --> 00:06:52,340
お前らこの老いぼれた恥知らずどもに
156
00:06:52,340 --> 00:06:53,020
武林人士:妖女か
お前らこの老いぼれた恥知らずどもに
157
00:06:53,020 --> 00:06:53,380
武林人士:妖女か
顧湘:あたしを捕まえる腕があるのかよ!
158
00:06:53,380 --> 00:06:54,900
顧湘:あたしを捕まえる腕があるのかよ!
159
00:06:55,420 --> 00:06:55,900
武林人士:あれは誰?!
160
00:06:55,900 --> 00:06:56,380
妖女?
武林人士:あれは誰?!
161
00:06:56,380 --> 00:06:56,980
妖女?
162
00:06:56,980 --> 00:06:57,940
曹蔚寧:阿湘!
163
00:06:57,940 --> 00:06:59,900
──顧湘は堂々と戸口に現れた
164
00:07:00,220 --> 00:07:02,500
顧湘:あんたどうしてこんな怪我してるんだ──
165
00:07:03,140 --> 00:07:08,340
いわゆる名門正派どもは人に勝てないからこそ
群れて攻めると言った通りだな
166
00:07:08,420 --> 00:07:10,580
張成嶺 出てきてくれ
167
00:07:10,580 --> 00:07:11,700
教えてやれ
168
00:07:11,700 --> 00:07:13,780
あたしがあんたをどこに奪い去ったって?
169
00:07:14,140 --> 00:07:17,840
──よく見ると彼女の後ろに少年がいて、凶悪な
封暁峰たちに怯えながら顧湘に一歩ずつ近寄った
170
00:07:17,840 --> 00:07:20,100
張成嶺:顧湘姐さんは私を攫ってません
171
00:07:20,100 --> 00:07:21,660
私が彼らに付いて行ったんです
172
00:07:21,660 --> 00:07:22,700
柳緑翁:デタラメだ
173
00:07:22,700 --> 00:07:25,580
張家の小僧 お前はいくつになったのだ
174
00:07:25,580 --> 00:07:29,340
色香に耽けることでも学んで
その妖人どもに騙されたんじゃあるまいな?
175
00:07:29,340 --> 00:07:32,140
封暁峰:クソアマめ お前の目を残していけ!
176
00:07:34,380 --> 00:07:38,860
──顧湘は半身で三歩退き、彼の激しい刀刃を
躱すと部屋の梁に飛び上がった
177
00:07:41,900 --> 00:07:43,340
武林人士:梁の上だよ さっさと仕留めて!
178
00:07:43,340 --> 00:07:47,860
顧湘:封矮人 お前と一緒だったあの
馬鹿でかいのも八生分の不運に見舞われたな
179
00:07:50,100 --> 00:07:51,580
姑娘は優しいし手加減して
180
00:07:51,580 --> 00:07:53,460
あいつの一対のお飾りを潰しただけだったけど
181
00:07:53,460 --> 00:07:54,580
もし出くわしたのが他の奴なら
あいつの命まで欲しがってただろうな
182
00:07:54,580 --> 00:07:56,820
武林人士:一斉にかかれ!妖女を逃がすな!
もし出くわしたのが他の奴なら
あいつの命まで欲しがってただろうな
183
00:07:56,820 --> 00:07:57,140
武林人士:一斉にかかれ!妖女を逃がすな!
顧湘:お前自身が余計に事を荒立てて
あいつを巻き添えにしたんじゃないか
184
00:07:57,140 --> 00:07:59,980
顧湘:お前自身が余計に事を荒立てて
あいつを巻き添えにしたんじゃないか
185
00:07:59,980 --> 00:08:01,020
ふん……
186
00:08:01,500 --> 00:08:02,620
武林人士:早く行け!
187
00:08:02,620 --> 00:08:03,860
黄道人:妖女め!
188
00:08:03,860 --> 00:08:08,220
──同じく梁に上がった黄道人が攻めて来たが
顧湘は相手にせず身を屈めて大梁に飛び移ると
横木に手をかけ空中で旋回した
189
00:08:08,220 --> 00:08:09,100
顧湘:くらえ!
190
00:08:09,100 --> 00:08:10,340
黄道人:暗器か!
191
00:08:10,840 --> 00:08:14,100
顧湘:何もないぞ ブサイク 驚いたか!
192
00:08:15,740 --> 00:08:16,920
曹蔚寧:師叔 阿湘は──
193
00:08:16,920 --> 00:08:18,060
莫懐空:何を申すか
194
00:08:18,980 --> 00:08:22,020
この小姑娘は明らかに逃げ仰せたのに
またお前を助けに戻って来た
195
00:08:22,020 --> 00:08:24,700
これには情義があると見える……
196
00:08:25,100 --> 00:08:27,220
やや少し御しがたいだけだ
197
00:08:27,480 --> 00:08:28,860
曹蔚寧:阿湘……
198
00:08:29,760 --> 00:08:31,580
(莫懐空):御しがたいと言えど
199
00:08:31,580 --> 00:08:33,380
どのみち喜ぶ者がいるならば
200
00:08:33,380 --> 00:08:35,500
将来 河東獅を娶るのも
(*河东狮=ヤキモチ焼きの妻、恐妻)
201
00:08:35,500 --> 00:08:37,940
殴ったり食らったりというものだ
(*一个愿打 一个愿挨=立場をすんなり受け入れる)
202
00:08:39,020 --> 00:08:40,620
曹蔚寧:阿湘危ない!
203
00:08:41,760 --> 00:08:43,140
柳緑翁:妖女めくらえ!
204
00:08:44,020 --> 00:08:49,400
──桃紅と柳緑が左右から顧湘を挟撃したが
彼女も躊躇わず足を上げて、つま先から
匕首を出し柳緑の額を狙った
205
00:08:49,400 --> 00:08:50,980
靴の先に刃を隠していたか!
206
00:08:50,980 --> 00:08:54,860
桃紅婆:ふん!この妖女は思った通り腹黒い
207
00:08:55,540 --> 00:08:56,320
顧湘:ねぇちょっと!
208
00:08:56,320 --> 00:08:57,940
老いぼれ二人は対応しきれないよ
209
00:08:57,940 --> 00:09:00,560
あたし死んじゃうぞ!
あんたたちはまだ見物なのか!
210
00:09:01,140 --> 00:09:03,620
胡桃の男:そんな簡単に死ぬものか
211
00:09:04,960 --> 00:09:06,700
桃紅婆:何奴だ? うっ
212
00:09:06,700 --> 00:09:09,020
柳緑翁:ばあさん! うぁぁ!
213
00:09:13,700 --> 00:09:15,020
これは……
214
00:09:15,020 --> 00:09:16,980
胡桃の殻?
215
00:09:19,560 --> 00:09:24,640
──胡桃の実を美味しそうに口に入れる醜い男と
その傍らに、同じ母親から生まれたような
青黄色い腫れた眉目のさらに醜悪な容姿の男がいた
216
00:09:24,640 --> 00:09:26,540
胡桃の男:本当にいらない?
217
00:09:26,540 --> 00:09:28,780
傍らの男:お前はそいつを持って離れてろ
218
00:09:28,780 --> 00:09:33,780
胡桃の男:堂々たる……
胡桃を食べるのが怖いって?
219
00:09:33,780 --> 00:09:35,260
傍らの男:そいつは気味が悪い
220
00:09:35,860 --> 00:09:38,900
風味は不気味で 見た目は人の脳そのものだ
221
00:09:38,900 --> 00:09:40,420
胡桃の男:馬鹿だね
222
00:09:40,420 --> 00:09:42,020
これは良いものだ
223
00:09:42,180 --> 00:09:44,980
沢山食べれば賢くなるし 頭に良い
224
00:09:44,980 --> 00:09:46,820
傍らの男:豚の脳でもまた同じだろ
225
00:09:46,820 --> 00:09:48,660
于丘烽:そなたたちは何者だ?
226
00:09:50,780 --> 00:09:51,780
傍らの男:小僧
227
00:09:52,340 --> 00:09:55,380
この于という奴が目障りなんだ 殴ってくれ
228
00:09:55,380 --> 00:09:56,460
張成嶺:師……私……
229
00:09:56,460 --> 00:09:56,900
傍らの男:お前は何なんだ
張成嶺:師……私……
230
00:09:56,900 --> 00:09:57,580
傍らの男:お前は何なんだ
231
00:09:57,580 --> 00:09:59,500
奴らはお前の顧湘姐さんを虐めてるのに
232
00:09:59,500 --> 00:10:01,300
お前はそばで見ているだけか?
233
00:10:01,300 --> 00:10:02,460
男じゃないのか?
234
00:10:02,460 --> 00:10:04,420
張成嶺:その……あの……
235
00:10:04,540 --> 00:10:05,060
傍らの男:行け!
236
00:10:05,060 --> 00:10:05,500
張成嶺:あぁぁ!
傍らの男:行け!
237
00:10:05,500 --> 00:10:05,620
張成嶺:あぁぁ!
238
00:10:06,660 --> 00:10:08,380
于丘烽:張家の子よ
239
00:10:08,380 --> 00:10:10,180
来なさい 于おじはここだ
240
00:10:10,180 --> 00:10:11,100
張成嶺:私は……
241
00:10:11,580 --> 00:10:13,380
胡桃の男:あなたも酷いものだな
242
00:10:13,380 --> 00:10:16,100
傍らの男:幼い鷹は成長したら 皆
大人の鷹に巣から蹴り出されるものだろ
243
00:10:16,100 --> 00:10:17,140
于丘烽:坊主 こっちに来い 私はここだ
傍らの男:幼い鷹は成長したら 皆
大人の鷹に巣から蹴り出されるものだろ
244
00:10:17,140 --> 00:10:19,180
于丘烽:坊主 こっちに来い 私はここだ
傍らの男:俺のも彼のためだ
245
00:10:19,180 --> 00:10:20,700
張成嶺:私 私は……
246
00:10:20,700 --> 00:10:22,540
封暁峰:この小僧にそんなに話掛けても無駄だ
247
00:10:22,540 --> 00:10:23,980
捕まえるまでだ!
248
00:10:24,500 --> 00:10:25,620
張成嶺:あぁ母さま〜
249
00:10:25,620 --> 00:10:27,420
師父 捕まってしまいます!
250
00:10:27,580 --> 00:10:28,580
胡桃の男:ねえ
251
00:10:28,700 --> 00:10:30,740
あなたのとこの幼い鷹が毛を逆立てますよ
252
00:10:31,060 --> 00:10:32,660
傍らの男:腐った泥は壁には塗れん
253
00:10:32,660 --> 00:10:33,620
張成嶺:師父
254
00:10:33,860 --> 00:10:36,820
──その男が空中に一掌を打ち出すと張成嶺は
大きな力が押し寄せたように感じた
255
00:10:36,820 --> 00:10:39,900
張成嶺:私の体は どうして
言うことを聞かないんでしょう!
256
00:10:40,560 --> 00:10:41,220
周子舒:拳を出せ!
257
00:10:41,220 --> 00:10:41,580
張成嶺:え?
周子舒:拳を出せ!
258
00:10:41,580 --> 00:10:41,860
張成嶺:え?
封暁峰:あぁぃ!
259
00:10:41,860 --> 00:10:42,500
張成嶺:あ!
封暁峰:あぁぃ!
260
00:10:42,500 --> 00:10:42,740
張成嶺:あ!
261
00:10:46,500 --> 00:10:48,380
張成嶺:わ 私の手はどうして──
262
00:10:48,380 --> 00:10:50,060
周子舒:愚か者 何を呆けてる
263
00:10:50,060 --> 00:10:51,300
奴の膻中穴を蹴れ!
(*膻中穴=みぞおちの経穴)
264
00:10:51,300 --> 00:10:52,420
張成嶺:はい!
265
00:10:56,660 --> 00:10:57,980
于丘烽:おぬしたちは結局何者なのだ!
266
00:10:58,580 --> 00:10:59,660
周子舒:行け
267
00:10:59,660 --> 00:11:00,860
張成嶺:あぁ!
268
00:11:02,660 --> 00:11:04,420
張成嶺:師父!彼が剣を抜きました!
269
00:11:04,420 --> 00:11:05,740
師父助けてください!
270
00:11:05,740 --> 00:11:07,980
周子舒:奴の剣先が僅かに振れている
奥の手があるはずだ
271
00:11:07,980 --> 00:11:10,900
歩を退いて九宮を踏め 奴の内肘を取れ
272
00:11:11,280 --> 00:11:14,540
──張成嶺は意を決して斜め前に一歩踏み出し
身を捩って于丘烽の剣先を引き離した
273
00:11:14,540 --> 00:11:16,500
(張成嶺):内肘を取る……
274
00:11:16,700 --> 00:11:18,580
──于丘烽もすぐに剣を振るって
影のように追いかけた
275
00:11:21,220 --> 00:11:27,860
張成嶺は流れを変えず右足をまた一歩踏み出すと
姿勢を崩したように思えて奇妙な感じがしたが
いつの間にか于丘烽の剣を躱していた
276
00:11:27,860 --> 00:11:30,820
温客行:ははははは 阿絮
277
00:11:31,940 --> 00:11:35,020
あなたがあの少年に教えた流雲九宮歩
278
00:11:35,020 --> 00:11:38,140
重要なのは流雲飛絮の如き動きで
279
00:11:38,140 --> 00:11:42,460
繰り出せば まるで天外の飛仙のように
瀟洒で美しいはず
280
00:11:43,140 --> 00:11:49,300
それがこの軽功の絶学を熊の舞のように
踏める者がいると初めて知りました
281
00:11:49,300 --> 00:11:50,540
周子舒:黙ってろ
282
00:11:50,540 --> 00:11:55,180
(周子舒):この小僧 動作は不器用だが
足元はまだ一歩も踏み間違えていない
283
00:11:55,660 --> 00:12:00,780
どうやら口訣を学んだ後 彼は恐らく
何千回 何万回と同じ歩を踏んで
284
00:12:00,780 --> 00:12:02,820
このような成長を果たしたのだろう
285
00:12:02,820 --> 00:12:05,260
足元は危急にも乱れていない
286
00:12:06,940 --> 00:12:07,900
周子舒:腕だ
287
00:12:07,900 --> 00:12:09,100
張成嶺:はい!
288
00:12:13,820 --> 00:12:16,420
師父 彼の剣を打ち落としました!
289
00:12:16,420 --> 00:12:19,180
于丘烽:彼らを捕えよ! 逃がすでないぞ!
290
00:12:19,180 --> 00:12:20,420
武林人士:行く手を阻め!
291
00:12:21,540 --> 00:12:23,860
張成嶺:師父!取り囲まれました!
292
00:12:25,500 --> 00:12:26,740
温客行:持ってて
293
00:12:26,740 --> 00:12:27,780
周子舒:チッ……
294
00:12:27,780 --> 00:12:30,620
温客行:この爺さまが孫どもに教え込んでやる!
295
00:12:31,580 --> 00:12:38,020
──周子舒は胡桃を二本の指でつまむと
極力自分から離し、引き続き“伝音入室”で
張成嶺を指導しながら騒動を眺めた
296
00:12:38,020 --> 00:12:39,780
武林人士:奴が使う技は何なんだ?
297
00:12:39,780 --> 00:12:41,260
気をつけて!
298
00:12:42,700 --> 00:12:45,780
周子舒:あの大馬鹿野郎はわざと俺に
胡桃を持たせたんじゃないか?
299
00:12:46,100 --> 00:12:47,000
張成嶺:師父
300
00:12:47,000 --> 00:12:49,740
周子舒:小僧 俺のところに
逃げてくるのは許さんぞ──
301
00:12:50,060 --> 00:12:51,520
身を躱せ しゃがめ
302
00:12:51,520 --> 00:12:52,620
奴の脚を攻めろ!
303
00:12:52,620 --> 00:12:53,740
張成嶺:はい!
304
00:12:56,420 --> 00:12:58,940
于丘烽:皆で奴らを止めるのだ! 早く!
305
00:13:01,940 --> 00:13:04,980
──顧湘は機会に乗じて曹蔚寧の方へと向かった
306
00:13:08,280 --> 00:13:09,160
于丘烽:まずいぞ!
307
00:13:09,160 --> 00:13:11,460
妖女を先に足止めしろ
308
00:13:12,520 --> 00:13:15,700
──彼女を阻止しようとする者を蹴り飛ばすと
厳しく莫懐空を睨みつけた
309
00:13:15,700 --> 00:13:18,300
莫懐空:この妖女め 我が師甥に近づけると思うな!
310
00:13:18,300 --> 00:13:20,300
顧湘:あたしの道を遮るなら
恥をかかせるぞ!
311
00:13:20,300 --> 00:13:21,780
曹蔚寧:阿湘……師叔……ダメだ──
312
00:13:21,780 --> 00:13:23,180
莫懐空:アイヨ!
313
00:13:24,140 --> 00:13:24,980
顧湘:あぁ?
314
00:13:24,980 --> 00:13:25,540
莫懐空:この……
315
00:13:25,540 --> 00:13:26,220
曹蔚寧:あ!
莫懐空:この……
316
00:13:26,220 --> 00:13:26,660
曹蔚寧:あ!
莫懐空:この妖女は……非常に手厳しい
317
00:13:26,660 --> 00:13:29,140
莫懐空:この妖女は……非常に手厳しい
318
00:13:29,140 --> 00:13:32,500
わしは彼女には敵わん! アイヨェー!
319
00:13:33,840 --> 00:13:36,700
顧湘:あたし今……手を出したっけ?
320
00:13:36,700 --> 00:13:39,260
莫懐空:まだ逃げんのか 馬鹿か?
321
00:13:39,260 --> 00:13:40,220
顧湘:あっうん
322
00:13:40,840 --> 00:13:42,300
曹蔚寧:感謝します師叔
323
00:13:42,300 --> 00:13:43,820
莫懐空:ぐずぐずするな!
324
00:13:44,060 --> 00:13:45,860
顧湘:曹兄さん 早く行こう
325
00:13:45,860 --> 00:13:46,820
曹蔚寧:うん
326
00:13:46,820 --> 00:13:50,060
師叔 蔚寧はまた後日 あなたにお詫びしに参ります
327
00:13:50,060 --> 00:13:52,420
顧湘:お爺さん あんたの大恩大徳 一生忘れない
328
00:13:52,420 --> 00:13:54,700
帰ったら必ずあんたに
牌坊(はいぼう)を立ててやる!
(*牌坊=優秀な人を表彰するための二本柱の楼)
329
00:13:54,900 --> 00:13:55,540
莫懐空:ふんっ
330
00:13:55,540 --> 00:13:56,420
顧湘:行くぞ
331
00:13:57,300 --> 00:13:58,820
莫懐空:くそったれめ
332
00:13:58,820 --> 00:14:00,100
お前こそ牌坊を立てておれ
333
00:14:00,100 --> 00:14:02,100
お前の一族皆 牌坊を立てろ!
334
00:14:02,100 --> 00:14:05,420
人の顔した犬のような小娘め
335
00:14:05,420 --> 00:14:08,420
話すとこんな小憎たらしいのか!
336
00:14:11,580 --> 00:14:14,020
周子舒:もういい 彼らは逃げた
337
00:14:15,980 --> 00:14:17,660
小僧 行くぞ
338
00:14:17,660 --> 00:14:19,140
張成嶺:師父!
339
00:14:19,260 --> 00:14:20,500
黄道人:どこへ逃げる!
340
00:14:20,780 --> 00:14:22,860
周子舒:しっかり掴め 脚を伸ばせ!
341
00:14:22,860 --> 00:14:23,940
張成嶺:はい!
342
00:14:26,300 --> 00:14:27,340
黄道人:うぁぁ!
343
00:14:27,340 --> 00:14:28,140
武林人士:奴らの退路を塞げ!
344
00:14:28,140 --> 00:14:29,100
皆で行って 左右から攻めるんだ!
武林人士:奴らの退路を塞げ!
345
00:14:29,100 --> 00:14:29,500
皆で行って 左右から攻めるんだ!
346
00:14:29,500 --> 00:14:30,220
皆で行って 左右から攻めるんだ!
奴らを行かせてはならんぞ──
347
00:14:30,220 --> 00:14:31,020
奴らを行かせてはならんぞ──
348
00:14:33,840 --> 00:14:36,900
周子舒:お前は楽しくて蜀を忘れたか
まだ行かないのか?
(*乐不思蜀=楽しさのあまり帰るのを忘れる)
349
00:14:41,900 --> 00:14:43,580
周子舒:お前の胡桃だぞ!
350
00:14:43,700 --> 00:14:46,620
温客行:青山は改めず 緑水長流す
351
00:14:46,620 --> 00:14:49,300
皆さん お構いもせず失礼を!
352
00:14:50,580 --> 00:14:51,780
武林人士:あの二人はどこの者だ?
353
00:14:51,780 --> 00:14:53,060
逃げられるぞ!
武林人士:あの二人はどこの者だ?
354
00:14:53,060 --> 00:14:53,260
逃げられるぞ!
急いで追いかけて!
355
00:14:53,260 --> 00:14:53,860
急いで追いかけて!
356
00:14:53,860 --> 00:14:54,060
奴らに張家の小僧を連れて行かせるな!
急いで追いかけて!
357
00:14:54,060 --> 00:14:55,660
奴らに張家の小僧を連れて行かせるな!
358
00:14:56,700 --> 00:15:02,860
──そして張成嶺を抱えた周子舒と出ていくと
二人の卓越した全力の軽功には誰も
付いて行けず、あっという間に姿を消した
359
00:15:15,500 --> 00:15:21,660
遠く離れてようやく止まると、周子舒は
張成嶺を下ろし、人皮面具を剥ぎ取って襟を整えた
360
00:15:23,100 --> 00:15:24,300
周子舒:顧姑娘たちは……
361
00:15:24,300 --> 00:15:25,460
温客行:心配ご無用
362
00:15:25,460 --> 00:15:27,540
阿湘は問題ありませんよ
363
00:15:28,760 --> 00:15:30,100
阿絮
364
00:15:30,220 --> 00:15:32,780
あなたの易容の術はまことに使い勝手がいい
365
00:15:32,780 --> 00:15:36,340
次回また顔を貼り替えれば
彼らはもう我らが分からない
366
00:15:37,380 --> 00:15:38,660
周子舒:うん
367
00:15:42,520 --> 00:15:43,540
小僧
368
00:15:43,540 --> 00:15:45,500
張成嶺:はい! 師父!
369
00:15:46,140 --> 00:15:47,860
(周子舒):彼の目つき……
370
00:15:47,860 --> 00:15:50,220
どうして褒美をねだる小動物に見えるのだ──
371
00:15:50,500 --> 00:15:52,340
以前 九霄を連れていた頃は
372
00:15:52,340 --> 00:15:57,100
間違えたところは 打つを忘れ
食うを忘れずを防ぐため罰だけを与え
(*记吃不记打=教訓を忘れ利益だけ思い出す)
373
00:15:57,380 --> 00:16:01,500
良いところは 彼が有頂天に
なるのを防ぐため褒めたりはしなかった
374
00:16:02,220 --> 00:16:04,020
だがこの小僧は……
375
00:16:04,020 --> 00:16:05,860
張成嶺:師父 私は先ほど……
376
00:16:05,860 --> 00:16:07,620
周子舒:ンン……
377
00:16:08,220 --> 00:16:09,900
軽功はまずまずだ
378
00:16:10,500 --> 00:16:11,160
張成嶺:へへ
379
00:16:11,160 --> 00:16:12,860
周子舒:何を得意になってる
380
00:16:12,860 --> 00:16:14,820
その微々たる肝っ玉を見ろ
381
00:16:14,820 --> 00:16:17,020
知ってるのは何かあったら泣き言を言うことだけ
382
00:16:17,020 --> 00:16:18,340
みっともない
383
00:16:18,740 --> 00:16:21,420
張成嶺:師父の教訓は……
384
00:16:21,420 --> 00:16:23,700
──後頭部を突然温かい手が覆った
385
00:16:23,700 --> 00:16:25,740
温客行:師父の言うことを聞くんじゃない
386
00:16:26,180 --> 00:16:29,500
彼の薄い顔の皮は紙と同じ
387
00:16:29,500 --> 00:16:31,660
面具を脱げば いとも容易く照れてしまう……
388
00:16:31,660 --> 00:16:32,860
周子舒:老温
389
00:16:32,860 --> 00:16:34,620
お前は何を言ってるんだ?
390
00:16:35,200 --> 00:16:38,860
温客行:あなたはまるで変事に慌てず
雷に打たれても動じず
391
00:16:38,860 --> 00:16:40,780
顔の皮は少しも薄くありませんし
392
00:16:40,780 --> 00:16:44,380
恥も外聞もなく 錐(きり)でも突き通せないのです
393
00:16:46,100 --> 00:16:47,620
周子舒:そうか?
394
00:16:47,620 --> 00:16:50,020
──突然片手を伸ばし彼の頬を持ち上げた
395
00:16:50,020 --> 00:16:52,700
温客行:阿絮……あの──
396
00:16:52,700 --> 00:16:54,340
こんな近づいて……
397
00:16:56,520 --> 00:16:59,940
──周子舒は両眼で深々と彼を見つめ
まばたきもしなかった
398
00:17:04,860 --> 00:17:09,420
張成嶺は二人を交互に見回したが
何をしているのかさっぱり分からなかった
399
00:17:20,420 --> 00:17:24,040
周子舒は少し笑って温客行を放すと
指先で彼の耳たぶを弾いた
400
00:17:24,040 --> 00:17:26,540
周子舒:耳が赤くなったな
401
00:17:32,500 --> 00:17:33,500
張成嶺:師父
402
00:17:33,500 --> 00:17:36,260
温前輩はどうして同じ手と足が出てるんでしょう?
403
00:17:37,100 --> 00:17:40,660
周子舒:はははははは──
404
00:17:40,740 --> 00:17:41,860
ん?
405
00:17:41,860 --> 00:17:44,600
──白衣の男がそう遠くない場所に立ち
無表情でこちらを見ていた
406
00:17:44,600 --> 00:17:46,060
温客行:お前か
407
00:17:46,220 --> 00:17:47,820
周子舒:葉前輩
408
00:17:48,900 --> 00:17:50,740
(温客行):この死に損ないめ
409
00:17:50,740 --> 00:17:53,420
ずっとうちの阿絮を見て何をしてる……
410
00:17:54,700 --> 00:17:59,140
阿絮に何か持つべきでない考えを
持ってるんじゃないだろうな……
411
00:17:59,540 --> 00:18:01,100
葉白衣:なんだお前か
412
00:18:01,380 --> 00:18:03,380
なかなか人間らしいじゃないか
413
00:18:03,380 --> 00:18:06,180
何をしたら己を常にあのクソ面にしておけるんだ?
414
00:18:06,180 --> 00:18:09,700
古人でさえ“行いて名を更えず
座して姓改めず”と言うのに
415
00:18:09,700 --> 00:18:12,060
ましてや親から授かった容姿
416
00:18:12,060 --> 00:18:16,460
まさかお前は“光明磊落”というのを知らないのか?
417
00:18:17,140 --> 00:18:18,600
──周子舒は空を見上げた
418
00:18:18,860 --> 00:18:21,500
(周子舒):こいつは本当に殴ってやりたいな……
419
00:18:21,500 --> 00:18:22,720
──頭を下げ謙虚に微笑んだ
420
00:18:22,720 --> 00:18:24,580
周子舒:前輩の教訓はごもっとも
421
00:18:24,740 --> 00:18:26,940
葉白衣:うむ 俺に付いて来い
422
00:18:26,940 --> 00:18:28,620
温客行:お前は何者だ
423
00:18:28,620 --> 00:18:30,300
知り合いか?
424
00:18:30,300 --> 00:18:32,020
なんで付いて行く必要が?
425
00:18:33,200 --> 00:18:34,740
葉白衣:三十年前
426
00:18:34,740 --> 00:18:36,840
容炫と彼の妻 岳鳳兒(ユエ・フォンアル)
427
00:18:36,840 --> 00:18:40,540
それから琉璃甲のごたごたが
一体どういう状況だったのか
428
00:18:40,780 --> 00:18:42,420
お前たちは知りたくないのか?
429
00:18:42,420 --> 00:18:43,380
温客行:あ
430
00:18:44,800 --> 00:18:47,960
──温客行は顔を地面に向けて
人に悲喜を悟らせなかった
431
00:18:48,260 --> 00:18:49,900
やがて顔を上げた
432
00:18:51,140 --> 00:18:53,180
温客行:私たちが何ゆえ……
433
00:18:53,180 --> 00:18:56,020
容炫と彼の妻の事を知りたがってると?
434
00:18:57,540 --> 00:19:00,700
葉白衣:お前も俺の年まで生きれば 分かるだろう
435
00:19:00,780 --> 00:19:03,180
時に一人の人が何を欲するかを見抜くのは
436
00:19:03,180 --> 00:19:05,500
お前たちが想像するみたいに
そんな難しいことじゃない
437
00:19:07,100 --> 00:19:09,500
周子舒:前輩は何かご存知だとでも?
438
00:19:10,300 --> 00:19:12,100
葉白衣:俺が何を知ってるか?
439
00:19:12,220 --> 00:19:16,620
俺は長明山で天も日も見ずに
何年も生きてきた一人の老愚なだけだ
440
00:19:16,620 --> 00:19:18,140
何が分かるんだ?
441
00:19:18,660 --> 00:19:19,940
俺が分かるのは
442
00:19:19,940 --> 00:19:22,740
ある人が当時の事を知っている
かも知れないということだけだ
443
00:19:25,220 --> 00:19:26,820
周子舒:小僧 来い
444
00:19:26,820 --> 00:19:27,820
張成嶺:はい
445
00:19:28,720 --> 00:19:31,820
温客行:どんな人がそんな神通力を?
446
00:19:32,260 --> 00:19:35,300
葉白衣:傀儡荘の 龍雀(ロン・チュエ)だ
447
00:19:36,380 --> 00:19:38,060
張成嶺:傀儡荘?
448
00:19:39,120 --> 00:19:43,380
周子舒:言い伝えでは蜀中の地に
確かにその傀儡荘があり
449
00:19:43,740 --> 00:19:48,380
荘主の龍雀は各種カラクリ
及び奇門遁甲の術に精通していた
450
00:19:49,860 --> 00:19:52,820
だがその荘は移動するものらしい
451
00:19:52,980 --> 00:19:55,620
私はかつて幾度となく人に地図を描かせたが
452
00:19:55,620 --> 00:19:59,980
そのたびに地図を修正する者は
誓って問題はないと言う
453
00:20:00,540 --> 00:20:02,100
再び出向くと
454
00:20:02,100 --> 00:20:05,100
その神出鬼没の荘はぽっかり姿を消してしまう……
455
00:20:05,420 --> 00:20:06,740
思うに
456
00:20:06,740 --> 00:20:09,260
何か荘の方位を隠蔽する
陣法があるのかも知れない……
457
00:20:09,260 --> 00:20:11,100
葉白衣:ならばお前は役立たずだな
458
00:20:12,860 --> 00:20:15,660
(周子舒):……まことに
犬の口から象牙は出て来ないな
(*狗嘴里吐不出象牙来=碌な話をしない)
459
00:20:16,580 --> 00:20:18,300
よく見ると
460
00:20:18,580 --> 00:20:20,900
この年寄りの頭の形はうまい具合に
461
00:20:20,900 --> 00:20:23,460
人から殴られるのに非常に適している──
462
00:20:25,300 --> 00:20:27,140
張成嶺:師父……
463
00:20:27,580 --> 00:20:29,300
周子舒:十を過ぎたいい年の若者が
464
00:20:29,300 --> 00:20:31,060
話があるならはっきり言え
465
00:20:31,060 --> 00:20:33,660
何をびくびくと新嫁みたいになってるんだ?
466
00:20:33,660 --> 00:20:35,060
張成嶺:私は……
467
00:20:36,260 --> 00:20:37,700
周子舒:何を言いたいんだ
468
00:20:39,380 --> 00:20:43,900
張成嶺:師父 私たちは真っ直ぐ
蜀中に向かうのですか?
469
00:20:44,780 --> 00:20:46,180
(周子舒):そうか
470
00:20:46,540 --> 00:20:50,380
ここから蜀中に至るまではまだかなり長い道のりだ
471
00:20:51,100 --> 00:20:55,180
張成嶺:私 私は言ってみただけです……
472
00:20:55,380 --> 00:20:56,740
周子舒:こっちに来い
473
00:20:58,060 --> 00:21:00,020
張成嶺:師父 私は聞いてません──
474
00:21:00,020 --> 00:21:01,180
周子舒:おい
475
00:21:01,180 --> 00:21:03,020
倒立して付いて来い
476
00:21:03,020 --> 00:21:04,820
張成嶺:師父──
477
00:21:09,700 --> 00:21:12,900
師父! 待ってください──
478
00:21:36,540 --> 00:21:38,940
張成嶺:師……師父
479
00:21:38,940 --> 00:21:41,180
私は動けません……
480
00:21:43,420 --> 00:21:45,020
周子舒:もうダメなのか
481
00:21:45,020 --> 00:21:46,900
やっと数日歩いただけだぞ?
482
00:21:48,600 --> 00:21:49,780
温客行:阿絮
483
00:21:50,420 --> 00:21:54,260
この道中ずっと片手で運気して
抑え付けたまま彼を行かせて
484
00:21:54,260 --> 00:21:56,380
彼に少しの休憩もさせてない
485
00:21:57,100 --> 00:21:59,500
あまりに苛酷と言わざるを得ないね……
486
00:21:59,500 --> 00:22:00,580
周子舒:そういうなら
487
00:22:00,580 --> 00:22:03,220
前のように真気を逆行させるか──
488
00:22:03,220 --> 00:22:04,100
張成嶺:いやいや いや……
489
00:22:04,100 --> 00:22:04,700
わ……
490
00:22:04,700 --> 00:22:07,580
私は大丈夫です いけます……
491
00:22:09,300 --> 00:22:10,900
温客行:葉さんや
492
00:22:11,740 --> 00:22:13,340
あんたと……
493
00:22:13,340 --> 00:22:16,420
容炫はどんな関係だ?
494
00:22:16,700 --> 00:22:19,220
何ゆえ三十年前の事を知る必要がある?
495
00:22:25,700 --> 00:22:28,100
葉白衣:お前はどうして舌の根を
噛むのが好きなババアどものように
496
00:22:28,100 --> 00:22:29,340
何でも聞くのだ?
497
00:22:29,340 --> 00:22:30,820
お前に何か関わる事か?
498
00:22:30,820 --> 00:22:32,220
温客行:貴様──
499
00:22:32,220 --> 00:22:35,020
──握りつぶした胡桃の殻は四分五裂し
辺り一丈の強風を伴い、まるで暗器のようだった
500
00:22:35,020 --> 00:22:36,380
周子舒:何を避けてる
501
00:22:36,600 --> 00:22:38,460
張成嶺:温前輩の胡桃の殻が……
502
00:22:38,460 --> 00:22:39,500
周子舒:戻れ
503
00:22:39,500 --> 00:22:43,100
倒立の換わりに 真気逆行だ
504
00:22:43,500 --> 00:22:44,780
張成嶺:……はい
505
00:22:50,740 --> 00:22:51,980
温客行:わぁ
506
00:22:51,980 --> 00:22:53,460
葉さんよ
507
00:22:53,460 --> 00:22:55,280
あんた白髪が生えてるぞ
508
00:22:55,280 --> 00:22:56,700
葉白衣:白……
509
00:22:59,920 --> 00:23:02,180
お前は白髪すら見たことがないのか?
510
00:23:02,180 --> 00:23:04,460
おめでたい奴だ
(*少见多怪=見識が浅くなんでも珍しがる)
511
00:23:07,060 --> 00:23:09,780
(温客行):でもこの老怪物はいい年だから
512
00:23:09,780 --> 00:23:13,500
もし人だったとしたら 屍骨は
すっかり冷たくなってるはずだ
513
00:23:13,500 --> 00:23:17,460
白髪が生えても確かに何てことないのか
514
00:23:17,460 --> 00:23:20,900
──葉白衣には人に有無を言わせない能力があり
彼もそれ以上は話が見つからなかった
515
00:23:24,700 --> 00:23:26,220
張成嶺:アイヨ……
516
00:23:29,620 --> 00:23:31,340
周子舒:少し転んだだけじゃないか
517
00:23:31,340 --> 00:23:33,540
いつまで鳴いてるんだ
518
00:23:36,100 --> 00:23:39,340
真気を聚斂し 四肢百骸に送れ
519
00:23:39,340 --> 00:23:41,660
海に流れ入るがごとくだ
520
00:23:42,160 --> 00:23:43,980
張成嶺:はい はい!
521
00:23:44,580 --> 00:23:49,420
周子舒:経脈を通し 順来と逆転 全てを自在に
522
00:23:51,780 --> 00:23:53,100
温客行:私に従え
523
00:23:53,380 --> 00:23:56,220
君の内息は安定せず 功力はごく浅い
524
00:23:56,220 --> 00:23:58,820
内息は散じて 集めてはいけない
525
00:23:58,820 --> 00:24:00,580
順を追って進めるべきだ
526
00:24:00,580 --> 00:24:03,940
君の真気を感じて 自然の成り行きに任せる
527
00:24:03,940 --> 00:24:06,900
張成嶺:あ…… 私……
528
00:24:06,900 --> 00:24:09,180
周子舒:お前は何なんだ 真気を聚斂しろ!
529
00:24:09,180 --> 00:24:10,860
張成嶺:あぁ はい……
530
00:24:12,900 --> 00:24:16,100
温客行:内息は散じて集めるべからず
531
00:24:16,100 --> 00:24:17,380
張成嶺:あぁ……
532
00:24:18,700 --> 00:24:21,900
それはつまるところ
集めるのでしょうか散じるのでしょうか……
533
00:24:21,900 --> 00:24:23,340
周子舒:老温お前どういうつもりだ?
534
00:24:23,340 --> 00:24:24,740
温客行:何のつもりでもないよ
535
00:24:24,740 --> 00:24:28,380
後輩が曲がった道に行くのを心配して
一、ニ 指示しただけです
536
00:24:29,620 --> 00:24:32,020
葉白衣:貴様ら二人は牀の上に
転がって掴み合う腕があるのに
537
00:24:32,020 --> 00:24:33,260
何をべらべらしゃべってる
538
00:24:33,260 --> 00:24:34,900
まるで二匹の大コオロギのようだ
539
00:24:34,900 --> 00:24:38,340
下が立ち上がらないのか それとも
年ごろの娘が男に扮装したのか
540
00:24:39,060 --> 00:24:40,420
何を自重したふりをしてる
541
00:24:40,540 --> 00:24:42,420
いちゃつきやがって
542
00:24:42,420 --> 00:24:43,700
黙ってろ!
543
00:24:43,980 --> 00:24:45,540
──暗黙のうちに二人は目を合わせ
544
00:24:45,540 --> 00:24:48,420
(周子舒):この葉白衣が傀儡荘を
見つけられると言ってなければ……
545
00:24:49,080 --> 00:24:51,420
(温客行):このクソジジイ……
546
00:24:51,900 --> 00:24:53,340
しかし……
547
00:24:53,340 --> 00:24:56,140
──温客行は秀麗な顔をちらりと見た後
目が下に向かうのを止められなかった
548
00:24:56,140 --> 00:24:58,500
(温客行):牀の上に転がって掴む……
549
00:24:58,500 --> 00:25:01,020
彼の話にも一理ある
550
00:25:02,300 --> 00:25:03,740
周子舒:老温
551
00:25:04,020 --> 00:25:06,100
どこに目をやってるんだ?
552
00:25:06,100 --> 00:25:07,660
──彼の襟の重ねを透して内側の身体を想像した
553
00:25:07,660 --> 00:25:10,500
温客行:やるべきところにやってますよ
554
00:25:10,500 --> 00:25:14,420
阿絮の見た目はこんなに私の気持ちに
ぴったりなのにまだ見せてくれないんです?
555
00:25:18,800 --> 00:25:20,180
阿絮
556
00:25:20,860 --> 00:25:23,340
照れてるんでしょ?
557
00:25:23,340 --> 00:25:24,180
周子舒:はぁ……
558
00:25:32,740 --> 00:25:35,660
張成嶺:どうして どうして
またケンカを始めたんですか!
559
00:25:35,660 --> 00:25:36,740
葉白衣:ふん
560
00:25:37,060 --> 00:25:39,380
道中こういった演し物がまだ足りないのか?
561
00:25:39,380 --> 00:25:42,980
これは切磋琢磨という名の
不軌(ふき)の行いをしているのだ
562
00:25:42,980 --> 00:25:45,460
張成嶺:ふ 不軌……?
563
00:25:47,180 --> 00:25:50,780
師父 温前輩 ケンカをやめてください──
564
00:25:50,780 --> 00:25:52,460
あなた方はまず私に教えてください
565
00:25:52,460 --> 00:25:55,900
私の気は結局 集めるのですか散じるのですか
566
00:25:58,300 --> 00:25:58,660
周子舒:集めろ!
567
00:25:58,660 --> 00:25:59,840
温客行:散じろ!
周子舒:集めろ!
568
00:25:59,840 --> 00:26:00,140
温客行:散じろ!
569
00:26:00,640 --> 00:26:06,600
──一人で教えればいくらか境地を見出だせるが
二人では決まってケンカになって出て行き
最後には二人揃って耳まで真っ赤にして帰ってくる
570
00:26:06,600 --> 00:26:09,220
葉白衣:奴らの功夫はもとより一つの手ではない
571
00:26:09,220 --> 00:26:12,700
この数日学んで お前自身の感覚はどうだ?
572
00:26:12,740 --> 00:26:14,340
張成嶺:感覚……
573
00:26:14,860 --> 00:26:18,020
少し後退したみたいです
574
00:26:20,780 --> 00:26:23,380
葉白衣:お前の学んだ功夫の方式は危険極まりない
575
00:26:23,380 --> 00:26:27,180
もし周の若造がずっとお前の肩を押さえていた手で
576
00:26:27,180 --> 00:26:29,620
知らぬうちにお前の代わりに
内息の調節をしていなければ
577
00:26:29,620 --> 00:26:33,340
その二人にこうやって翻弄されて
お前はとうに魔に魅入られていた
578
00:26:37,740 --> 00:26:39,820
葉白衣:あの二人もどれだけ
殴り合うつもりか分からん
579
00:26:39,820 --> 00:26:42,460
乳繰り合って 時間の無駄だ……
(*打情骂俏=男女がじゃれ合うこと)
580
00:26:43,140 --> 00:26:45,380
張成嶺:前輩 待ってください!
581
00:26:46,500 --> 00:26:49,140
師父!温前輩! 打ち合いをやめてください!
582
00:26:49,140 --> 00:26:50,900
葉前輩は行きましたよ
583
00:26:51,260 --> 00:26:53,140
師父!
584
00:26:55,340 --> 00:26:59,580
──わきぜりふのように
説明する葉白衣がいるかと思えば
585
00:26:59,580 --> 00:27:05,380
あれこれ思い浮かべて気まずく思いながら
結局何も分からない張成嶺がいるだけだった
586
00:27:13,300 --> 00:27:18,060
彼らの足は非常に速く、あの厄介な洞庭の地を
離れてからあまり日を置かず蜀中に着いた
587
00:27:26,060 --> 00:27:27,460
温客行:阿絮
588
00:27:27,780 --> 00:27:31,580
その少年を洞庭から蜀中まで押さえてますけど
589
00:27:31,740 --> 00:27:36,420
彼の顔色を見ると 実際少し冴えませんね……
590
00:27:41,100 --> 00:27:42,180
周子舒:どうした
591
00:27:42,180 --> 00:27:44,420
音を上げるのか?
592
00:27:44,420 --> 00:27:45,780
続けろ!
593
00:27:53,060 --> 00:27:54,340
温客行:阿絮や……
594
00:27:54,340 --> 00:27:55,540
周子舒:黙ってろ
595
00:27:57,120 --> 00:27:59,220
今日はまだ十里そこそこ来ただけだ
596
00:27:59,220 --> 00:28:01,500
こんな生きるだ死ぬだと騒いで──
597
00:28:02,420 --> 00:28:03,780
小僧
598
00:28:04,220 --> 00:28:06,660
歩き続けろと言ってるんだ
599
00:28:14,580 --> 00:28:17,820
(張成嶺):この道は どうしてまるで
600
00:28:17,820 --> 00:28:20,420
永遠に続いてるみたいなんだ……
601
00:28:21,740 --> 00:28:25,220
──無理に頭を上げ師父の顔を見たが
その秀麗な横顔は冷たく
無情無欲の石像のようだった
602
00:28:25,220 --> 00:28:27,460
周子舒:お前に口訣を教える
603
00:28:28,160 --> 00:28:30,900
呑吐を続け 任督を廻らせ
604
00:28:30,900 --> 00:28:32,500
百川が海に入るが如く
605
00:28:32,500 --> 00:28:34,940
痕跡を残さず──
606
00:28:35,220 --> 00:28:38,220
内息を意識し 精神は遊蛇の如く
607
00:28:38,220 --> 00:28:41,460
絶えず断たず 自在に来往する──
608
00:28:44,500 --> 00:28:47,620
(張成嶺):散じて絶せず!
609
00:28:48,500 --> 00:28:52,680
──胸が急に充満した気がして視界が
曖昧になったが、四肢百骸に散っていた
内息の存在を感じて、急に大きな力が湧いてきた
610
00:28:52,680 --> 00:28:54,620
周子舒:小僧 おい──
611
00:28:54,620 --> 00:28:56,940
──彼の肩を押さえていた周子舒の手が弾かれた
612
00:28:56,940 --> 00:28:58,780
張成嶺:あぁぁぁ──!!!
613
00:28:58,940 --> 00:29:00,140
温客行:阿絮
614
00:29:00,380 --> 00:29:01,780
周子舒:俺は平気だ
615
00:29:04,660 --> 00:29:06,380
この小僧は……
616
00:29:07,500 --> 00:29:10,340
──周子舒は眉間に皺を寄せて
弾かれた手のひらを見た
617
00:29:13,500 --> 00:29:14,940
葉白衣:よくやった
618
00:29:15,180 --> 00:29:17,540
ようやくそいつを死に追い詰めたな
619
00:29:17,540 --> 00:29:19,260
満足か?
620
00:29:23,160 --> 00:29:25,900
温客行:坊主 目を覚ませ……
621
00:29:27,820 --> 00:29:33,180
──温客行だけは比較的良心的で
彼を“拾い”上げると、彼の背中に手のひらを当て
ごく細くした真気を彼の体に打ち入れた
622
00:29:34,920 --> 00:29:36,540
温客行:この坊主……
623
00:29:36,540 --> 00:29:39,780
経脈が生まれつき 普通の人に比べてずっと広いのか
624
00:29:39,780 --> 00:29:42,900
もしかして奇才なのか?
625
00:29:42,900 --> 00:29:44,140
周子舒:そうだ
626
00:29:44,980 --> 00:29:47,820
あの時 魅音の衝撃で傷を負って
627
00:29:47,820 --> 00:29:50,060
俺がこいつの調息を手伝った時気付いたんだ
628
00:29:50,060 --> 00:29:52,940
この子の内功の土台は十分堅牢にできてる
629
00:29:52,940 --> 00:29:56,380
ただ彼自身が使えていないだけだ
630
00:29:57,620 --> 00:30:02,180
温客行:まるで利器を持っていても
手に鶏を縛る力がない幼子のようなものか
631
00:30:02,180 --> 00:30:03,700
葉白衣:面白い
632
00:30:05,940 --> 00:30:08,180
世界にこのような者がいたとは
633
00:30:08,180 --> 00:30:11,860
頭はとびきり間抜けで 筋骨は
むしろ生来 極めて立派だ
634
00:30:12,020 --> 00:30:16,780
お天道さまは彼を良くしたかったのか
それとも悪くしたかったのか
635
00:30:16,900 --> 00:30:18,100
はぁ
636
00:30:19,180 --> 00:30:22,220
そいつの経脈は広く滑らかで 本来は極上の素材だが
637
00:30:22,220 --> 00:30:23,860
理解力があまりに悪い
638
00:30:23,860 --> 00:30:26,820
むしろ他の者に比べ コツを探るのが難しいのだ……
639
00:30:28,220 --> 00:30:29,980
お前はまだこいつに厳しくしていい──
640
00:30:29,980 --> 00:30:32,020
どの道すぐには死なんだろう
641
00:30:32,020 --> 00:30:34,100
温客行:ひとまず客桟を見つけて泊まろう
642
00:30:34,100 --> 00:30:37,340
この坊主は もうしばらく寝てるだろうし
643
00:30:37,340 --> 00:30:38,500
周子舒:ああ
644
00:30:38,700 --> 00:30:40,700
ならば明日また山に入るとしよう
645
00:30:42,420 --> 00:30:46,660
──彼の褲子の裾は足首の上にあり
わずか一月半でまた少し背が伸びていた
646
00:30:48,160 --> 00:30:52,660
周子舒:以前の俺は このあり余った三年を
一種の恩典だと思っていた
647
00:30:53,220 --> 00:30:54,820
しかし今ようやく分かった
648
00:30:55,820 --> 00:30:58,260
これはある種の酷刑だったのだと
649
00:30:59,060 --> 00:31:00,460
温客行:痛むの?
650
00:31:02,720 --> 00:31:04,340
周子舒:他の者には分かるまいが
651
00:31:04,420 --> 00:31:07,980
まさかお前も分からないのか?
652
00:31:07,980 --> 00:31:11,100
温客行:そう 私は分かってます
653
00:31:11,280 --> 00:31:13,480
“这人间困境几何”
(この世に苦境 幾ばくか)
654
00:31:13,480 --> 00:31:17,160
“得超脱又几个”
(逃れ得るのは幾人か)
655
00:31:17,160 --> 00:31:20,320
“如敢以生死来涉”
(敢えて生死を賭ければ)
656
00:31:20,320 --> 00:31:23,400
“孑然是天涯客”
(それは独りの天涯客)
657
00:31:23,400 --> 00:31:26,880
“谁辞别庙堂 醉山河”
(廟堂を離れ 山河に酔う人が)
658
00:31:26,880 --> 00:31:29,800
“沐得天光赏春色”
(天光浴びて 春色を味わえば)
659
00:31:29,800 --> 00:31:36,680
“欲做闲云鹤 偏又生纠葛”
(たゆたう雲間の鶴ならんとも しがらみまた生じる)
660
00:31:36,760 --> 00:31:39,800
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)
661
00:31:39,800 --> 00:31:43,240
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)
662
00:31:43,240 --> 00:31:46,280
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)
663
00:31:46,280 --> 00:31:49,680
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)
664
00:31:49,680 --> 00:31:55,800
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)
665
00:31:55,800 --> 00:32:02,680
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)
666
00:32:29,000 --> 00:32:31,360
“正邪道人心叵测”
(正邪で人心は測れず)
667
00:32:31,360 --> 00:32:34,760
“甘苦自取自舍”
(甘苦を自ら選び取り)
668
00:32:34,760 --> 00:32:38,200
“遇知己明眸澈澈”
(巡り合った知己の瞳は明澄にして)
669
00:32:38,200 --> 00:32:41,240
“如举灯过渊泽”
(灯を掲げ沢の淵を渡るなら)
670
00:32:41,240 --> 00:32:44,640
“谁以鬼行世 恨善恶”
(世を行く鬼として 善悪を恨む誰かの)
671
00:32:44,640 --> 00:32:47,520
“红袍褪身识得”
(紅い袍を落とせば見える)
672
00:32:47,520 --> 00:32:54,320
“一眼竟万年 情痴终不赦”
(一眼万年の恋情 ついぞ赦されることなし)
673
00:32:54,400 --> 00:32:57,400
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)
674
00:32:57,400 --> 00:33:00,840
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)
675
00:33:00,840 --> 00:33:03,960
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)
676
00:33:03,960 --> 00:33:07,560
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)
677
00:33:07,560 --> 00:33:13,480
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)
678
00:33:13,480 --> 00:33:19,840
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)
679
00:33:20,280 --> 00:33:23,480
“天欲晚 风雪袭巴蜀”
(天は暗きを欲し 風雪が巴蜀を襲う)
680
00:33:23,480 --> 00:33:26,920
“何幸借这温存 不孤独”
(幸いにもこの温もりがあれば孤独でなく)
681
00:33:26,920 --> 00:33:29,880
“问余生 怎舍好眉目”
(余生に問う 眉目の好しを)
682
00:33:29,880 --> 00:33:33,440
“三秋如梦也愿赴”
(三秋の夢の願いを手放せるかを)
683
00:33:33,440 --> 00:33:39,640
“六合渺渺 自有自在处”
(六合遙かに 己の居場所があれば)
684
00:33:39,640 --> 00:33:46,540
“竹林响 忘沉浮 寻光欲渡”
(竹林は響き 浮沈を忘れ 光を求め渡らん)
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