第十五集
1
00:00:21,260 --> 00:00:22,620
高崇:諸君
2
00:00:22,620 --> 00:00:25,620
趙世弟の負傷は決して高の所為ではない
3
00:00:25,620 --> 00:00:27,700
皆よ 高の言葉を聞いてくれ……
4
00:00:27,700 --> 00:00:29,020
武林人士:弁解は要らぬ!
5
00:00:29,020 --> 00:00:31,060
目下 趙大侠が重傷を負ったのを
6
00:00:31,060 --> 00:00:33,860
我らがもし発見していなければ
あんたはおそらくやってのけたんだろう!
7
00:00:33,860 --> 00:00:35,020
高崇!
8
00:00:35,020 --> 00:00:37,460
お前は恐らく吊死鬼 薛方と結託し
趙大侠を排除するつもりだったんだ!
9
00:00:37,460 --> 00:00:38,420
今や陰謀は暴かれた
10
00:00:38,420 --> 00:00:40,380
まだ何か弁明できるのか!
11
00:00:40,820 --> 00:00:43,460
高崇:これは奸人による離間の計だ
12
00:00:43,460 --> 00:00:46,460
同門諸氏よくれぐれも
計略にはまってはならぬぞ!
13
00:00:53,260 --> 00:00:57,180
高崇:李兄 なぜここに至ってしまったのだ!
14
00:00:57,180 --> 00:00:58,180
武林人士:高崇!
15
00:00:58,180 --> 00:01:01,340
我が泰山派掌門もお前の奸計の下に死んだのか!
16
00:01:01,340 --> 00:01:04,900
高崇 お前が計略を巡らせ
このように良心を捨て去ったのは
17
00:01:04,900 --> 00:01:07,500
恐らく全て琉璃甲のためだろう!
18
00:01:07,500 --> 00:01:09,540
英雄諸君よく考えてくれ
19
00:01:09,540 --> 00:01:12,180
それぞれの琉璃甲の位置を正確に知り
20
00:01:12,180 --> 00:01:13,940
その人ごとの弱点を知り
21
00:01:13,940 --> 00:01:16,460
今また自ら掠め取るのは……
22
00:01:16,460 --> 00:01:19,540
山河令の主 高崇を除き 他に誰ができる?
23
00:01:19,540 --> 00:01:20,500
そうだ!
24
00:01:20,500 --> 00:01:22,060
高崇:人に血を噴くでないわ!
25
00:01:22,060 --> 00:01:24,900
武林人士:高崇はきっと琉璃甲のため
悪鬼と内通しているのだ!
26
00:01:24,900 --> 00:01:29,180
先日は更に 自らでっち上げて
天下の英雄を掌の上で弄んだのだ
27
00:01:29,180 --> 00:01:32,260
お前のような武林の恥晒しは
江湖の者 皆で誅するべし!
28
00:01:32,260 --> 00:01:36,820
諸君! 考えてみれば 当時の容炫らが
各門派の武功の秘籍を窃盗したことにも
29
00:01:36,820 --> 00:01:38,260
高崇は関与していたんだ!
30
00:01:38,260 --> 00:01:42,380
彼は自分の名声のため人を殺し口を封じたんだ!
31
00:01:43,220 --> 00:01:44,140
高崇:おのれ……
32
00:01:44,140 --> 00:01:46,860
おぬしら……たわ言ばかりだ!
33
00:01:46,860 --> 00:01:50,860
武林人士:きっと張家の一家滅亡との関係も
高の盗人は免れることはできまい!
34
00:01:50,860 --> 00:01:51,940
そうだ! 奴を捕まえろ!
35
00:01:51,940 --> 00:01:53,740
張大侠一家のため 雪辱を果たすのだ!
36
00:01:53,740 --> 00:01:55,460
高崇 まだお縄に就かんのか
37
00:01:55,460 --> 00:01:57,780
高よ 琉璃甲を渡せ!
38
00:01:57,780 --> 00:01:59,980
替天行道(たいてんぎょうどう)で奴を殺せ!
39
00:02:02,340 --> 00:02:04,740
高崇:ははははは
40
00:02:04,740 --> 00:02:06,180
よかろう
41
00:02:06,180 --> 00:02:08,900
天に替わり道を行うがよい!
42
00:02:08,900 --> 00:02:12,380
諸君は英雄であることを誇り 正義を扶ける
43
00:02:12,380 --> 00:02:16,820
その実 むしろ目と耳を塞ぎ みだりに盲従する──
44
00:02:16,820 --> 00:02:19,660
おぬしたちでさえ正歪の是非が
はっきりしておらぬものを
45
00:02:19,660 --> 00:02:24,340
日々殴れ殺せと喚くのが
替天行道と称するのか?!
46
00:02:24,340 --> 00:02:26,780
この高は 問うてみたい
47
00:02:26,780 --> 00:02:28,540
おぬしらはどこの天に取って替わり
48
00:02:28,540 --> 00:02:30,380
誰の道を行うのだ?!
49
00:02:30,380 --> 00:02:31,060
武林人士:貴様──
50
00:02:31,060 --> 00:02:32,540
死に直面してもまだ口を割らんのか!
51
00:02:32,540 --> 00:02:33,140
皆一斉にかかれ!
死に直面してもまだ口を割らんのか!
52
00:02:33,140 --> 00:02:34,540
皆一斉にかかれ!
53
00:02:35,940 --> 00:02:38,420
高崇:ははははは!
54
00:02:41,180 --> 00:02:43,500
武林人士:やぁぁぁ──!
55
00:02:47,020 --> 00:02:53,700
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品
56
00:02:53,900 --> 00:03:01,140
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
第十五集「博徒」
57
00:03:12,000 --> 00:03:17,500
──馬道を行く 洛陽川の
蘭苑いまだ空かずとも 行人は老いゆく
58
00:03:17,500 --> 00:03:23,100
数多の歌舞の女が金台の上で 笙を奏で合い
洛陽の東に風が立てば 西へと香りが渡ったという
59
00:03:23,100 --> 00:03:26,960
子規の声が止めば 酒を携え酔う者あり
60
00:03:28,000 --> 00:03:32,000
東都の繁華はすでに落ち着き
痩せ馬が悠々と道を行く
61
00:03:32,000 --> 00:03:38,940
すらりとした二人の男のうち一人は何を
考えているか分からない病人の顔で
腰に提げた酒壺を味わうように飲んでいる
62
00:03:38,940 --> 00:03:43,240
丈夫そうな少年が彼らの後ろに付いていた
──まさしく周子舒一行である
63
00:03:43,240 --> 00:03:46,220
温客行:酒飲み ほどほどにしてよ
64
00:03:47,420 --> 00:03:49,140
周子舒:そんなとこまで管理か
65
00:03:49,140 --> 00:03:50,300
お前は俺の嫁か?
66
00:03:50,300 --> 00:03:53,020
温客行:肌さえも合わせた仲なのに
67
00:03:53,020 --> 00:03:56,260
もしかして私を遊んで棄てるつもり?
68
00:03:56,260 --> 00:03:58,220
周子舒:恐らく俺は後家を立てることになる
69
00:03:58,700 --> 00:04:00,100
温客行:大丈夫
70
00:04:00,300 --> 00:04:03,100
どうせ今だって見せて触らせてはくれても
役に立たせてくれないから
71
00:04:03,100 --> 00:04:05,980
私も夜な夜なはぐらかされてる後家暮らしだ
(*睁着眼睛说瞎话=見え透いた嘘を言うこと)
72
00:04:05,980 --> 00:04:06,840
周子舒:おま……
73
00:04:06,840 --> 00:04:08,780
張成嶺:ン ンン……
74
00:04:09,700 --> 00:04:12,700
──周子舒の手が滑り
酒壺は温客行の手に渡った
75
00:04:12,700 --> 00:04:16,180
張成嶺は彼らの後ろで俯き
地面の隙間に入り込みたがってるようだった
76
00:04:16,660 --> 00:04:18,340
温客行:良い酒じゃないようだけど
77
00:04:18,340 --> 00:04:20,540
でも味は……
78
00:04:20,540 --> 00:04:22,540
──横目で周子舒に笑いかけ
79
00:04:22,540 --> 00:04:24,580
温客行:実際 間違いない
80
00:04:24,580 --> 00:04:26,060
間違いない
81
00:04:30,700 --> 00:04:35,180
──呆れて見ていた周子舒が
唐突に馬を急き立て温客行の耳元に近寄った
82
00:04:35,180 --> 00:04:39,700
周子舒:奥さんは辛い独り寝で欲求不満なのか?
83
00:04:41,460 --> 00:04:43,860
夫として実際お前をぞんざいに扱っていた
84
00:04:44,500 --> 00:04:47,060
夜にはキレイに洗って俺を待ってろ
85
00:04:47,140 --> 00:04:49,740
きっとお前を呼んで……
86
00:04:50,140 --> 00:04:51,660
温客行:あぁ──
87
00:04:52,420 --> 00:04:56,540
──温客行が妄想を繰り広げているうちに
酒壺は奪い返された
88
00:04:57,820 --> 00:04:58,740
周子舒:うっ
89
00:04:58,740 --> 00:05:00,820
酒の中に何を……
90
00:05:00,940 --> 00:05:03,100
胡桃か──
91
00:05:03,420 --> 00:05:04,680
温客行
92
00:05:04,680 --> 00:05:05,740
この下衆野郎!
93
00:05:05,740 --> 00:05:07,260
温客行:なんのなんの
94
00:05:07,260 --> 00:05:09,220
恐悦 至極
95
00:05:09,220 --> 00:05:10,580
周子舒:貴様──
96
00:05:13,180 --> 00:05:15,860
温客行:あぁぁ 捨てないでよ!
97
00:05:16,460 --> 00:05:18,380
私が食べるからね
98
00:05:18,380 --> 00:05:19,860
──彼の手のひらの
胡桃を舌で巻き取った
99
00:05:19,860 --> 00:05:20,940
周子舒:おい──
100
00:05:20,940 --> 00:05:22,420
温客行:相公(シャンゴン)
(*相公=自分の夫への親しい呼びかけ)
101
00:05:22,420 --> 00:05:25,980
あなたはもうすっかり大人なのに
好き嫌いしていいと思ってるの?
102
00:05:25,980 --> 00:05:28,740
本当にどうしようもないね
103
00:05:35,580 --> 00:05:37,420
周子舒:……妻と離縁したい
104
00:05:37,420 --> 00:05:40,260
温客行:あははははは
105
00:05:42,860 --> 00:05:44,780
張成嶺:師 師父
106
00:05:44,780 --> 00:05:47,820
私たち どうして洛陽に行く必要があるんですか
107
00:05:48,300 --> 00:05:51,540
周子舒:誰がお前の命を
欲しがってるのかを見に行く
108
00:05:51,540 --> 00:05:52,660
張成嶺:え?
109
00:05:53,900 --> 00:05:56,680
温客行:あの時 二組の者が別々に蝎を雇っていた
110
00:05:56,980 --> 00:05:59,460
喜喪鬼は普通の殺し手を求め
111
00:05:59,460 --> 00:06:02,820
またとある連中は毒蝎の死士を求めた……
112
00:06:02,820 --> 00:06:04,820
周子舒:喜喪鬼は彼を殺すつもりはなかったはずだ
113
00:06:04,820 --> 00:06:07,540
やるならとっくにやってただろうし
114
00:06:07,540 --> 00:06:09,860
彼とそんな無駄に長時間 話をしないはずだ
115
00:06:11,180 --> 00:06:14,860
温客行:それであなたはその毒蝎の
死士の後ろ側の者を見つけ出すつもりなの?
116
00:06:15,380 --> 00:06:19,140
もしかして毒蝎の根城が洛陽にあると?
117
00:06:20,220 --> 00:06:21,700
張成嶺:温前輩 本当にすごい
118
00:06:21,700 --> 00:06:24,460
師父が一言言うだけですぐに分かるんですね!
119
00:06:24,460 --> 00:06:27,340
私みたいな愚図とは違う……
120
00:06:28,740 --> 00:06:30,300
温客行:少年
121
00:06:30,300 --> 00:06:31,820
君が愚鈍なんじゃなく
122
00:06:31,820 --> 00:06:34,580
私が聡明すぎるんだよ
123
00:06:35,760 --> 00:06:40,660
だけど もしかして周相公は毒蝎の
根城の具体的な位置を知ってるの?
124
00:06:40,660 --> 00:06:43,820
周子舒:お前が知らないということが
俺が知らないということを意味しない
125
00:06:43,820 --> 00:06:45,340
温客行:それはそれは
126
00:06:45,340 --> 00:06:48,540
周大人は実に英明で武勇を備え
手腕は天に通ずるほど
127
00:06:48,540 --> 00:06:51,900
どうして私などのような一般庶民が
その後ろ姿を望むことができましょうか?
128
00:06:54,340 --> 00:06:55,380
周子舒:チッ
129
00:06:55,620 --> 00:06:57,900
阿絮どうして飲まないの?
130
00:06:58,140 --> 00:06:59,380
周子舒:温客行
131
00:06:59,380 --> 00:07:02,300
俺は平生 人が美酒を粗末にするのを最も憎んでる
132
00:07:02,300 --> 00:07:03,360
この次があれば……
133
00:07:03,360 --> 00:07:05,980
温客行:おぉ? ならば私は
身を以て罪滅ぼししましょうか?
134
00:07:05,980 --> 00:07:07,340
周子舒:貴様……
135
00:07:07,340 --> 00:07:09,260
温客行:ふふふふ ははははは
136
00:07:09,260 --> 00:07:10,480
周子舒:はぁ……
温客行:ふふふふ ははははは
137
00:07:10,480 --> 00:07:11,300
温客行:ふふふふ ははははは
138
00:07:36,460 --> 00:07:38,500
客:さぁ 飲むぞ!
139
00:07:41,780 --> 00:07:44,300
給仕:お客さん休憩ですかお泊りですか?
140
00:07:44,300 --> 00:07:45,860
上階へどうぞ!
141
00:07:45,860 --> 00:07:47,540
客:おい!
142
00:07:47,540 --> 00:07:51,560
──三人はまっすぐに洛陽の城内まで来ると
一軒の酒楼で休息をとった
143
00:07:58,420 --> 00:07:59,140
周子舒:あぁ? お前は出て行け
144
00:07:59,140 --> 00:08:00,380
温客行:その……
周子舒:あぁ? お前は出て行け
145
00:08:00,380 --> 00:08:00,860
周子舒:あぁ? お前は出て行け
146
00:08:00,860 --> 00:08:01,740
周子舒:成嶺は入って来い
147
00:08:01,740 --> 00:08:02,460
温客行:何だって?
周子舒:成嶺は入って来い
148
00:08:02,460 --> 00:08:02,780
温客行:何だって?
張成嶺:私が?
149
00:08:02,780 --> 00:08:03,872
温客行:阿絮!
張成嶺:私が?
150
00:08:03,872 --> 00:08:04,820
温客行:二部屋しか取ってないのに……
張成嶺:はい
151
00:08:04,820 --> 00:08:06,140
温客行:二部屋しか取ってないのに……
152
00:08:06,460 --> 00:08:08,020
温客行:阿絮や
153
00:08:08,020 --> 00:08:10,260
あなた私に一人で空房を守らせるつもりなの?
154
00:08:10,260 --> 00:08:11,540
張成嶺:師父 何がある──
155
00:08:11,540 --> 00:08:14,180
うわぁ あぁぁ
156
00:08:14,620 --> 00:08:18,900
──周子舒が彼の肩を叩くと張成嶺は
いつもの考試だと理解したが反応は及ばず
身を縮め見苦しい姿で彼の腕をくぐった
157
00:08:18,900 --> 00:08:20,420
温客行:阿絮
158
00:08:20,420 --> 00:08:22,460
私たち着いたばかりだし
159
00:08:22,740 --> 00:08:25,620
成嶺に一休みさせようよ
160
00:08:26,460 --> 00:08:28,900
道中で何度も考試してたから
161
00:08:28,900 --> 00:08:30,780
あなたも休息すべきでしょ
162
00:08:32,500 --> 00:08:34,100
張成嶺:うわぁぁ!
163
00:08:34,100 --> 00:08:37,700
──周子舒は、どんなに瀟洒で美しい型でも
彼にかかるとロバが転がったように
大変見苦しくなる素質を発見した
164
00:08:37,700 --> 00:08:40,140
彼が座ったまま一掌で張成嶺に覆いかぶさると
165
00:08:40,140 --> 00:08:44,020
ドンと背中を床につきドジョウのように這い
ガマのように跳ねて四肢で着地し転がると
尻をついて後ずさった
166
00:08:44,020 --> 00:08:46,220
周子舒:店はお前にどれだけ恵んでくれたんだ
167
00:08:46,380 --> 00:08:50,700
お前はこんな全力で地面に寝転がって
人の床板を拭いてやってるのか?
168
00:08:53,020 --> 00:08:55,100
張成嶺:温 温前輩がおっしゃるには……
169
00:08:55,100 --> 00:08:57,420
おおよそ救命できる型は 全部よくて
170
00:08:57,420 --> 00:09:00,100
手を出す時に型に沿わずとも
171
00:09:00,100 --> 00:09:03,300
緊急の折りに忘れたなら自分で
臨機応変に対応すればいいと……
172
00:09:03,300 --> 00:09:04,740
温客行:ふふっ
173
00:09:07,100 --> 00:09:09,540
周子舒:温客行入って来てくれ
174
00:09:11,620 --> 00:09:14,340
己自身が不出来な瓜や棗(なつめ)で
その上若者に道を誤らせ
175
00:09:14,340 --> 00:09:16,700
お前と同じ不出来な瓜や棗に
なるよう 教え込むつもりか?
176
00:09:16,700 --> 00:09:17,660
温客行:アイヨ……
177
00:09:17,660 --> 00:09:19,500
相公
178
00:09:19,500 --> 00:09:20,900
あなた……
179
00:09:20,900 --> 00:09:24,060
あなた 妻をお見捨てになるのぉ?
180
00:09:24,060 --> 00:09:25,240
周子舒:おま……
181
00:09:25,240 --> 00:09:29,180
──張成嶺は、少し常識はずれだが強心臓で
厨房では得難い人材の彼が、師父に
愛想を尽かされるのは気の毒だと思った
182
00:09:29,180 --> 00:09:29,940
周子舒:成嶺
183
00:09:29,940 --> 00:09:31,060
張成嶺:あぁ
184
00:09:31,060 --> 00:09:34,540
周子舒:お前は自分で一先ず酒楼に
数日滞在して 俺を待ってろ
185
00:09:34,540 --> 00:09:36,740
俺は毒蝎の潜伏先を探ってくる
186
00:09:36,740 --> 00:09:39,260
張成嶺:師父 私も共に参ります!
187
00:09:39,700 --> 00:09:40,900
周子舒:足を引っ張りに行くのか?
188
00:09:40,900 --> 00:09:42,020
張成嶺:わ……
189
00:09:43,780 --> 00:09:45,980
師父……
190
00:09:47,300 --> 00:09:49,980
周子舒:お前はお乳まで飲ませてもらうつもりか?
191
00:09:49,980 --> 00:09:51,580
張成嶺:私は……
192
00:09:51,620 --> 00:09:52,740
周子舒:俺が戻って来て
193
00:09:52,740 --> 00:09:55,020
もしもお前の功夫がまだそんな熊のようだったら
194
00:09:55,020 --> 00:09:57,300
お前のチンケな脚を折ってやる
195
00:09:57,520 --> 00:10:00,460
温客行:阿絮 私は一緒に……
196
00:10:00,460 --> 00:10:02,260
周子舒:お前はというと──
197
00:10:02,260 --> 00:10:04,340
温客行:あぁ……胡桃は食べない
198
00:10:04,340 --> 00:10:06,060
食べない
199
00:10:06,140 --> 00:10:07,380
周子舒:ふん
200
00:10:07,380 --> 00:10:13,580
──温客行は機嫌を伺うように笑い
胡桃の紙包みをテキパキと懐に押し込み
手を擦ってから、彼に付いて行った
201
00:10:16,860 --> 00:10:22,820
周子舒に付いて、洛陽郊外の小路を曲がり
青々と茂る植物の並んだ道を通り抜け見上げると
202
00:10:22,820 --> 00:10:28,340
そこは非常に見覚えのある──淡い灯火と
花に酒の香り漂う、明らかに煙花の地だった
203
00:10:32,540 --> 00:10:34,700
温客行:毒蝎の根城……
204
00:10:34,700 --> 00:10:37,620
こ こんな場所にあるの?
205
00:10:37,620 --> 00:10:39,060
周子舒:そうだ
206
00:10:39,580 --> 00:10:41,340
お前が上品ぶるな
207
00:10:41,340 --> 00:10:44,580
まるで温谷主は一輪の汚れなき睡蓮の花みたいだな
208
00:10:44,580 --> 00:10:46,060
──行こうとする彼を引き留め
209
00:10:46,060 --> 00:10:47,700
温客行:そうじゃなく……
210
00:10:48,060 --> 00:10:51,660
もう所帯持ちでしょ? 周相公
211
00:10:51,660 --> 00:10:54,060
──周子舒が彼の顎をつまむと
温客行は愛情を込めて彼を見ていた
212
00:10:54,060 --> 00:10:56,060
周子舒:温娘子(ニャンズ)
(*娘子=妻への親しい呼びかけ)
213
00:10:56,340 --> 00:10:58,780
お前は本当に人をムカつかせる
214
00:10:59,660 --> 00:11:01,100
温客行:あぁ──
215
00:11:05,140 --> 00:11:06,020
妓女:見目麗しいお客さんね
216
00:11:06,020 --> 00:11:06,540
妓女:見目麗しいお客さんね
周子舒:ありがとう
217
00:11:06,540 --> 00:11:07,540
妓女:公子お目当ての姑娘はいるの?
周子舒:ありがとう
218
00:11:07,540 --> 00:11:08,260
妓女:公子お目当ての姑娘はいるの?
219
00:11:08,260 --> 00:11:09,500
妓女:それとも今日は趣向を変えてみる?
220
00:11:09,500 --> 00:11:10,500
妓女:それとも今日は趣向を変えてみる?
周子舒:いらない
221
00:11:10,500 --> 00:11:10,660
妓女:それとも今日は趣向を変えてみる?
222
00:11:10,780 --> 00:11:11,540
周子舒:ありがとう
223
00:11:11,540 --> 00:11:11,860
妓女:ねぇ公子 こっち見て
周子舒:ありがとう
224
00:11:11,860 --> 00:11:11,980
妓女:ねぇ公子 こっち見て
225
00:11:11,980 --> 00:11:13,660
妓女:ねぇ公子 こっち見て
温客行:いいよ
226
00:11:13,660 --> 00:11:13,860
妓女:ねぇ公子 こっち見て
周子舒:姑娘ありがとう……
227
00:11:13,860 --> 00:11:15,340
周子舒:姑娘ありがとう……
温客行:私の目の前でも敢えてつまみ食いして
228
00:11:15,340 --> 00:11:16,740
温客行:私の目の前でも敢えてつまみ食いして
229
00:11:16,740 --> 00:11:18,540
私が死んだみたいに扱うなら
230
00:11:18,940 --> 00:11:22,580
何が河東獅吼(かとうしこう)が分からせてやろう
(*河东狮吼=嫉妬深い妻がガミガミ言う《寄呉徳仁兼簡陳季常詩》蘇軾)
231
00:11:22,860 --> 00:11:24,720
──叫びかけて結局気が抜けた
232
00:11:24,720 --> 00:11:25,520
周子舒:ありがとう……
233
00:11:25,520 --> 00:11:25,940
周子舒:ありがとう……
温客行:三従四徳
234
00:11:25,940 --> 00:11:26,460
温客行:三従四徳
235
00:11:26,460 --> 00:11:26,700
妓女:公子行かないでよお
236
00:11:26,700 --> 00:11:28,100
妓女:公子行かないでよお
温客行:三従四徳
237
00:11:28,100 --> 00:11:28,180
妓女:公子行かないでよお
238
00:11:28,180 --> 00:11:28,340
妓女:銭持ちの公子は誰のところにいくの
温客行:三 従 四 徳
239
00:11:28,340 --> 00:11:30,380
妓女:銭持ちの公子は誰のところにいくの
温客行:三 従 四 徳
240
00:11:30,380 --> 00:11:30,660
温客行:三 従 四 徳
241
00:11:30,660 --> 00:11:31,740
はぁ!
242
00:11:31,740 --> 00:11:34,340
妓女:公子お二方は馴染みの姑娘がいるの?
243
00:11:34,340 --> 00:11:34,740
男:氷肌玉骨 自ら清涼にして汗はなし──
妓女:公子お二方は馴染みの姑娘がいるの?
244
00:11:34,740 --> 00:11:36,980
男:氷肌玉骨 自ら清涼にして汗はなし──
245
00:11:36,980 --> 00:11:38,980
男:娘さん そうじゃない?
246
00:11:38,980 --> 00:11:43,060
美人さん知ってるかい?“羅衫 解き初めぬ
小蛮の腰の 軽く寄せたる鬢の絲揺れる砕歩”
247
00:11:43,060 --> 00:11:45,940
妓女:公子 あたしを助けておくれよ……
美人さん知ってるかい?“羅衫 解き初めぬ
小蛮の腰の 軽く寄せたる鬢の絲揺れる砕歩”
248
00:11:45,940 --> 00:11:46,500
美人さん知ってるかい?“羅衫 解き初めぬ
小蛮の腰の 軽く寄せたる鬢の絲揺れる砕歩”
249
00:11:49,960 --> 00:11:56,340
──周子舒が大胆に衆目の中で飛び上がると
温客行が後に続き、二人はそっと歌楼の屋根瓦を
踏みながら、止まらずに飛び移って行った
250
00:11:56,780 --> 00:12:00,060
周子舒は綺麗な弧を描き小さな裏庭に下りた
251
00:12:00,340 --> 00:12:01,900
周子舒:あっちだ
252
00:12:01,900 --> 00:12:03,060
行くぞ
253
00:12:13,080 --> 00:12:15,180
妓女:早く早く 来てよぉ
254
00:12:22,560 --> 00:12:23,940
温客行:阿絮
255
00:12:24,660 --> 00:12:27,780
壁越しに音を聞くのにどうして
そんなに真面目な顔ができるの
256
00:12:27,780 --> 00:12:29,860
実に大したものだ
257
00:12:29,860 --> 00:12:31,580
周子舒:この中だ
258
00:12:44,620 --> 00:12:46,420
温客行:これは……
259
00:12:50,260 --> 00:12:51,980
ほぅ……
260
00:12:52,540 --> 00:12:56,020
(温客行):この姑娘は耳が
聞こえないのかそれとも阿呆か
261
00:12:56,300 --> 00:12:58,580
牀板の真下が空洞の
262
00:12:58,580 --> 00:13:02,500
大きな蝎の巣穴にいることを 彼女は分かってない?
263
00:13:03,260 --> 00:13:03,780
温客行:誰──
264
00:13:03,780 --> 00:13:04,700
周子舒:シーッ
265
00:13:05,500 --> 00:13:09,740
(温客行):しゃべれないなら 書けばいいか
266
00:13:09,740 --> 00:13:11,980
──周子舒の手を引いて
267
00:13:11,980 --> 00:13:14,820
(温客行):誰の部屋?
268
00:13:14,820 --> 00:13:16,540
──彼の手のひらに書いた
269
00:13:16,540 --> 00:13:18,900
(周子舒):大蝎(おおさそり)だ
270
00:13:19,020 --> 00:13:20,900
(温客行):はぁ?
271
00:13:21,220 --> 00:13:27,740
毒蝎のお頭が 娼妓に彼自身の臥房で
接客させてるってこと?
272
00:13:28,860 --> 00:13:32,900
まさかこちらの蝎のお頭は窮状に陥って
273
00:13:32,900 --> 00:13:35,740
兼業で体の商売までしてるとでも言うの?
274
00:13:39,020 --> 00:13:41,420
(温客行):メスの大蝎?
275
00:13:42,860 --> 00:13:44,620
(周子舒):いや
276
00:13:53,900 --> 00:13:55,580
(温客行):違う
277
00:13:56,020 --> 00:13:58,900
この部屋にはまだ第三の者がいる
278
00:13:59,460 --> 00:14:01,860
この者の吐息は極めて軽い……
279
00:14:06,720 --> 00:14:09,820
この蝎の親玉の嗜好はまことに──
280
00:14:11,780 --> 00:14:16,860
(温客行):彼は不能なのでは?
281
00:14:19,480 --> 00:14:20,780
(周子舒):……うん
282
00:14:20,780 --> 00:14:22,580
──横顔に昇ったばかりの月光が映った
283
00:14:22,580 --> 00:14:24,300
(温客行):アイヨ
284
00:14:24,500 --> 00:14:27,220
阿絮のこの公務をこなしてるみたいな顔は
285
00:14:27,220 --> 00:14:29,380
壁際の盗み聞きじゃなく
286
00:14:29,380 --> 00:14:32,300
国家の重大な仕事を処理してるみたい
287
00:14:33,700 --> 00:14:35,980
天下に道貌岸然な者は
288
00:14:35,980 --> 00:14:37,940
うちの阿絮が二番目で
289
00:14:37,940 --> 00:14:40,580
誰も一番にはなれない
290
00:14:42,660 --> 00:14:44,700
だけど彼の本気になってる様は
291
00:14:44,700 --> 00:14:47,060
まことにそそるね……
292
00:14:52,300 --> 00:14:54,260
(周子舒):終わったか……
293
00:14:58,180 --> 00:15:00,620
どうしてまた始めるんだ……
294
00:15:00,980 --> 00:15:01,180
周子舒:おま……
295
00:15:01,180 --> 00:15:02,700
温客行:しーっ……
296
00:15:02,700 --> 00:15:04,260
──彼は片手を周子舒の腰に掛けた
297
00:15:04,260 --> 00:15:06,820
(温客行):中のお二人はかなり興が乗ってるけど
298
00:15:06,820 --> 00:15:09,620
阿絮は聞き飽きてる……
299
00:15:10,020 --> 00:15:14,500
常日頃言われる 礼に非ざれば
聞くなかれ 礼に非ざれば視るなかれ……
300
00:15:14,620 --> 00:15:19,740
自分とこの者は“礼に非ざれば”に含まないよね……
301
00:15:19,740 --> 00:15:22,940
──温客行は調子付いて
ゆっくり手のひらを下に動かした
302
00:15:23,780 --> 00:15:24,340
温客行:しーっ
303
00:15:24,340 --> 00:15:24,660
周子舒:おま──
温客行:しーっ
304
00:15:24,660 --> 00:15:25,420
周子舒:おま──
305
00:15:25,620 --> 00:15:27,340
──周子舒は過敏すぎだと思い放置した
306
00:15:27,340 --> 00:15:30,540
(温客行):阿絮の体つきはまこと極上のもの
307
00:15:30,660 --> 00:15:32,740
少々痩せているけど
308
00:15:33,660 --> 00:15:36,020
痩せているのも良いところ
309
00:15:36,020 --> 00:15:41,180
もし衣服を剥いで この腰を掴むことができれば……
310
00:15:42,980 --> 00:15:44,340
周子舒:チッ
311
00:15:44,340 --> 00:15:48,300
──周子舒は弱みを見せまいと
彼の臀部を掴んで捻り上げた
312
00:15:48,300 --> 00:15:51,700
(周子舒):触り心地は悪くない
313
00:15:51,700 --> 00:15:58,540
──周子舒が横目でちらりと温客行を見て微笑むと
温客行はすぐに落ち着きを見せて彼を抱きしめ
周子舒の笑みが消える前に口付けた
314
00:15:58,540 --> 00:16:02,140
どちらも動くことを憚って
限られた余地で勝負するしかなかった
315
00:16:02,140 --> 00:16:07,060
一人は花の叢に流れ 交わった花魁は数知れず
遍く天下の色遊びを己の役目とし
316
00:16:07,060 --> 00:16:12,340
もう一人は三十里の望月河のほとりから抜け出し
杯を合わせ、調子を合わせの芝居に慣れ
317
00:16:12,340 --> 00:16:14,780
いずれも雅事に長けており
318
00:16:14,780 --> 00:16:20,860
唇歯がもつれようと、東風が西風を
圧倒するのでなければ、西風が東風を圧倒した
319
00:16:22,960 --> 00:16:26,300
温客行は笑みもせず静かに周子舒を見ていた
320
00:16:26,300 --> 00:16:29,820
温客行は周子舒を放し、彼の片手を
握りしめ極めて近くに寄り──
321
00:16:29,820 --> 00:16:36,020
歌女:……杏子のごとく紅い 双鬢は鴉雛の色
(*《西洲曲》)
322
00:16:36,020 --> 00:16:39,500
西洲何処に在り
323
00:16:39,500 --> 00:16:42,580
両の櫂にて橋頭より渡る……
324
00:16:42,580 --> 00:16:44,180
両の櫂にて橋頭より渡る……
(温客行):ただ願わくば 君が心が我が心に似て
325
00:16:44,180 --> 00:16:45,980
(温客行):ただ願わくば 君が心が我が心に似て
326
00:16:45,980 --> 00:16:50,300
定めて相思の意に負かざらんことを
(*《卜算子》李之儀)
327
00:16:50,300 --> 00:16:54,260
── 一筆一筆彼の手のひらに書いた
328
00:16:55,980 --> 00:16:58,260
温客行:阿絮……
329
00:16:59,180 --> 00:17:04,740
──周子舒はしばらく彼を見つめ、手のひらを
合わせると、そっと指を握りしめすぐに放した
330
00:17:04,740 --> 00:17:08,940
彼は目を伏せ、もう一度温客行の視線を避けた
331
00:17:09,660 --> 00:17:16,260
温客行は指に残ったぬくもりが夜風で儚く消えると
何とも言えない気分で自嘲するように苦笑した
332
00:17:24,300 --> 00:17:25,940
蝎:もういい
333
00:17:25,940 --> 00:17:27,980
お前たちは出て行きなさい
334
00:17:28,380 --> 00:17:31,660
──周子舒は燕雀のように屋根に躍り上がった
335
00:17:36,980 --> 00:17:39,340
蝎:お二人がもし一緒に見たいのなら
336
00:17:39,340 --> 00:17:41,540
戸を叩き入ってきても大いに結構だった
337
00:17:41,540 --> 00:17:44,260
何の必要があってこのようにコソコソするのか
338
00:17:47,340 --> 00:17:48,660
どうした?
339
00:17:48,660 --> 00:17:50,860
お二人はまだ聞き飽きておらず
340
00:17:50,860 --> 00:17:53,020
次の回を待っているのか?
341
00:17:53,100 --> 00:17:59,100
──周子舒は、とっくに気付かれていたかと思うと
あまり小心なのも決まりが悪く屋根から下りた
342
00:18:00,100 --> 00:18:01,940
周子舒:厚意に感謝するが──
343
00:18:01,940 --> 00:18:03,460
その必要はない
344
00:18:03,460 --> 00:18:04,900
実を言うと
345
00:18:04,900 --> 00:18:07,540
我々は助けてもらいたい事があって来た
346
00:18:07,540 --> 00:18:09,780
温客行:招かれざる客は押し掛けるものですし
347
00:18:09,780 --> 00:18:11,860
ご主人にはご了承を
348
00:18:11,860 --> 00:18:14,500
──素衣の男が手に茶を持ち二人を交互に見た
349
00:18:14,500 --> 00:18:18,260
蝎:私のところに来るのは
大半は二つの要件しかない
350
00:18:18,940 --> 00:18:22,580
私の子供たちに殺人放火しに行かせたいか
351
00:18:23,340 --> 00:18:28,580
私の子供たちに殺人放火しに行かせたのが
誰なのかを聞きたいかだ
352
00:18:28,580 --> 00:18:31,180
お二人の身体能力を以てすれば
353
00:18:31,180 --> 00:18:33,540
恐らく二つ目かな?
354
00:18:33,540 --> 00:18:35,300
周子舒:その通り
355
00:18:37,140 --> 00:18:39,500
蝎:ならばあなたは私に何をくれる?
356
00:18:39,700 --> 00:18:41,700
周子舒:なんなりと言え
357
00:18:44,060 --> 00:18:45,780
蝎:一般にこのように言うのは
358
00:18:45,780 --> 00:18:47,700
自惚れが過ぎるか
359
00:18:47,700 --> 00:18:49,100
もしくは……
360
00:18:49,100 --> 00:18:51,340
──借金をあらかじめ踏み倒す気でいるか
361
00:18:51,340 --> 00:18:55,700
蝎:まさか あなたに一晩を共にさせても
あなたは応じるのか?
362
00:18:56,540 --> 00:18:58,220
温客行:ははははは
363
00:18:58,220 --> 00:18:59,780
彼がどうして応えることができると……
364
00:18:59,780 --> 00:19:00,380
周子舒:……いいぞ
365
00:19:00,380 --> 00:19:01,180
温客行:何を!
366
00:19:01,180 --> 00:19:02,420
ダメだ!
367
00:19:02,420 --> 00:19:04,740
私たち二人 あんなに長い間
同じ床で枕を共にしたのに
368
00:19:04,740 --> 00:19:06,260
あなたがそんな颯爽と答えるのは見たことがない!
369
00:19:06,260 --> 00:19:07,460
周子舒:俺が聞いたら
370
00:19:07,460 --> 00:19:08,540
お前は答えを知ってるのか?
371
00:19:08,540 --> 00:19:09,360
温客行:私は──
372
00:19:10,700 --> 00:19:12,340
蝎:そういうことなら
373
00:19:12,380 --> 00:19:14,180
私と賭けをしよう
374
00:19:14,180 --> 00:19:17,820
一局勝てば あなたたちに一件教える
375
00:19:17,820 --> 00:19:19,380
負けた場合……
376
00:19:19,380 --> 00:19:22,620
温客行:やっと分かったよどうして彼が
急に焦って金儲けしたいのか
377
00:19:22,620 --> 00:19:24,220
この嗜好があるから
378
00:19:24,220 --> 00:19:26,740
どれだけの家業であっても
彼の敗けの足しにならないんだ
379
00:19:26,860 --> 00:19:28,020
聞いたことがあるかな
380
00:19:28,100 --> 00:19:32,940
“一心に勝ち金を取り 両の目を血走らせ 三食は
喉を通らず 四肢は無力 五業は荒廃し 六親は
知らんふり 七穴は煙を噴き 八方に負債を抱え……”
381
00:19:32,940 --> 00:19:33,980
周子舒:黙れ
382
00:19:34,420 --> 00:19:35,820
温客行:おぉ
383
00:19:36,140 --> 00:19:38,460
蝎:あなたの言うことも 一理ある
384
00:19:38,460 --> 00:19:42,980
しかし人の一生とは 一種の大博打でもあるのでは
385
00:19:43,060 --> 00:19:44,980
大勢の人が私を殺したい
386
00:19:44,980 --> 00:19:47,380
私が死んだら 彼らの勝ちで
387
00:19:47,380 --> 00:19:48,820
私が死なないと
388
00:19:48,820 --> 00:19:51,100
彼らは常におどおど落ち着かないまま
389
00:19:51,100 --> 00:19:53,940
いつか分からぬが命の催促は来るのだ
390
00:19:53,940 --> 00:19:55,140
ほら
391
00:19:55,140 --> 00:19:57,660
もし人生が平坦で順調だったら
392
00:19:57,660 --> 00:20:00,140
あまりにも面白味がなくないか?
393
00:20:00,140 --> 00:20:01,980
周子舒:お前に負けたら一体どうなる?
394
00:20:01,980 --> 00:20:03,180
蝎:心配は無用だ
395
00:20:03,180 --> 00:20:04,580
私はあなたの銭は欲しくない
396
00:20:04,580 --> 00:20:06,620
命も欲しくない
397
00:20:06,900 --> 00:20:09,220
負けた場合
398
00:20:09,220 --> 00:20:12,420
あなたたち二人には
ヤッてるところを見せてもらおう
399
00:20:12,580 --> 00:20:15,860
見て私の気分がすっきりすればいいだろう──
400
00:20:15,860 --> 00:20:20,900
ただしお二人には 負けが込むと
結末も良くないと考えておいてほしい
401
00:20:20,900 --> 00:20:21,540
周子舒:ではまた会おう
402
00:20:21,540 --> 00:20:22,900
温客行:私はこの賭物がいいと思う!
403
00:20:22,900 --> 00:20:23,820
周子舒:チッ
温客行:私はこの賭物がいいと思う!
404
00:20:23,820 --> 00:20:23,860
温客行:私はこの賭物がいいと思う!
405
00:20:24,220 --> 00:20:25,980
蝎:これは怖いな
406
00:20:25,980 --> 00:20:28,820
さっきまで自由に値段を決めろと言っていたのに
407
00:20:29,020 --> 00:20:30,860
周子舒:俺もすっかりいい年の男だ
408
00:20:31,060 --> 00:20:31,900
挑発には乗らない
409
00:20:31,900 --> 00:20:33,140
温客行:それなら……
410
00:20:33,140 --> 00:20:35,420
蝎子(シエズ)兄にはご諒察願おう
411
00:20:35,420 --> 00:20:38,700
うちの人は 他のは何でもいいが
412
00:20:38,700 --> 00:20:42,460
照れ屋で 面の皮があまりに薄い……
413
00:20:43,380 --> 00:20:45,460
(周子舒):俺の面の皮が薄い?
414
00:20:46,580 --> 00:20:47,940
周子舒:言え
415
00:20:48,060 --> 00:20:49,700
どんな賭けだ?
416
00:20:49,700 --> 00:20:52,580
──挑発は誰がするかでも効果が変わる
417
00:20:52,940 --> 00:20:54,540
蝎:これだ
418
00:20:55,060 --> 00:20:56,540
周子舒:極細の針か……
419
00:20:56,540 --> 00:20:57,980
蝎:心配するな
420
00:20:57,980 --> 00:21:00,100
これらはまだ毒を焼き入れてないものだ──
421
00:21:00,780 --> 00:21:02,740
我々が賭けるのは
422
00:21:02,740 --> 00:21:05,060
どちらがより多く飲めるか
423
00:21:05,060 --> 00:21:06,460
どうかな?
424
00:21:06,980 --> 00:21:10,020
(温客行):どうしてここに葉白衣がいないんだ?
(周子舒):どうしてここに葉白衣がいないんだ?
425
00:21:10,660 --> 00:21:12,460
蝎:まずは私がいこう
426
00:21:13,240 --> 00:21:18,360
──蝎は目を細めて針を口に入れると、麺のように
少しずつ噛み、そのまま針を飲み込んだ
427
00:21:18,360 --> 00:21:20,820
周子舒と温客行は顔を見合わせた
428
00:21:20,820 --> 00:21:23,180
蝎:一本
429
00:21:23,980 --> 00:21:25,700
お二人は賭けるか
430
00:21:25,700 --> 00:21:27,540
それとも衣を寛げるか
431
00:21:27,540 --> 00:21:27,960
温客行:我々が選ぶのは後──
432
00:21:27,960 --> 00:21:29,700
周子舒:賭ける
433
00:21:30,780 --> 00:21:35,260
──卓上の杯を取り
自分の酒壺からなみなみと注いだ
434
00:21:38,820 --> 00:21:40,500
周子舒:二本だ
435
00:21:41,900 --> 00:21:46,380
──手を伸ばして二本の針を取り、指先で
一つまみすると二本は粉になり一瞬で酒に溶けた
436
00:21:46,380 --> 00:21:51,060
蝎に促され杯を呷ると、温客行は
胡桃の酒より旨くはないだろうと思った
437
00:21:51,980 --> 00:21:55,380
蝎:そちらの兄さん 先に
言っておかなかったことを責めないでくれ
438
00:21:55,380 --> 00:21:58,380
あなたがこのように針を揉んで
粉にして酒と飲むのは
439
00:21:58,380 --> 00:22:01,260
私が飲んだのに比べ腹に貯まる
440
00:22:01,260 --> 00:22:04,700
もしや あなたたち二人で共に
私一人に対応するつもりだったのか?
441
00:22:04,700 --> 00:22:05,940
温客行:いえいえ
442
00:22:05,940 --> 00:22:08,620
私めには雅興と咀嚼力がございませんので
443
00:22:08,620 --> 00:22:10,820
あなた方はご自由にどうぞ
444
00:22:12,300 --> 00:22:16,140
周子舒:俺は二本飲んで あんたは一本だ
445
00:22:16,140 --> 00:22:17,980
十分あんたに勝ったと思うぞ
446
00:22:17,980 --> 00:22:19,420
蝎:ん?
447
00:22:19,900 --> 00:22:23,820
──彼が卑劣な一掌を卓の上に叩きつけると
極細の針は四方に飛び散った
448
00:22:24,660 --> 00:22:26,860
周子舒:針は現在 全て壁に叩き込まれ
449
00:22:26,860 --> 00:22:29,860
取り出せないので 俺の勝ちだ
450
00:22:30,220 --> 00:22:32,900
(温客行):阿絮のこの手はまこと無恥の極み
451
00:22:32,900 --> 00:22:34,660
私のやり口みたい
452
00:22:35,100 --> 00:22:38,860
さすがは なんとか唱なんとか随だ
(*夫唱妇随=夫婦仲がとても良い)
453
00:22:40,980 --> 00:22:43,100
蝎:兄さん苗字を伺っても?
454
00:22:43,460 --> 00:22:45,900
周子舒:周と呼んでくれ
455
00:22:46,140 --> 00:22:49,540
蝎:周兄は功夫に優れ 着想も良い
456
00:22:50,100 --> 00:22:51,700
しかし……
457
00:22:51,700 --> 00:22:54,060
私の手にまだ一本ある
458
00:22:54,060 --> 00:22:56,680
今回は 恐らく引き──
459
00:22:56,860 --> 00:22:58,380
周子舒:偶然
460
00:22:58,540 --> 00:23:01,980
俺の手にもまだ一本ある
461
00:23:02,020 --> 00:23:03,740
──周子舒は開いた手のひらを出した
462
00:23:03,740 --> 00:23:05,060
周子舒:えぇ?
463
00:23:05,060 --> 00:23:09,620
蝎子兄の手にあるのはどうして
俺のより一回り短いんだ?
464
00:23:09,620 --> 00:23:11,600
──この男の掌力で削れていた
465
00:23:11,600 --> 00:23:14,420
蝎:いつの間にやったんだ──
466
00:23:18,200 --> 00:23:20,980
周子舒:今俺の手にあるのもなくなったぞ
467
00:23:20,980 --> 00:23:24,220
二本と一本半 どうする?
468
00:23:26,060 --> 00:23:30,780
──大蝎の人品は大したものではないが
意外にも賭品はそこそこだった
469
00:23:30,980 --> 00:23:32,300
蝎:分かった
470
00:23:32,300 --> 00:23:34,100
潔く負けを認めよう
471
00:23:34,100 --> 00:23:36,220
何を聞くつもりだ?
472
00:23:36,980 --> 00:23:38,900
周子舒:孫鼎以外で
473
00:23:38,900 --> 00:23:42,460
銭を払って張成嶺の命を買ったのは誰だ?
474
00:23:43,100 --> 00:23:45,420
蝎:張成嶺?
475
00:23:45,420 --> 00:23:46,900
ほぅ
476
00:23:46,900 --> 00:23:49,500
お二人が誰か分かったよ……
477
00:23:49,500 --> 00:23:52,780
ただ私の者は洞庭で あなたたちの
足跡を見失ったのだが
478
00:23:52,780 --> 00:23:55,660
まさか既にここを見つけていたとは
479
00:23:55,660 --> 00:23:58,900
大した神通力だな──
480
00:24:06,860 --> 00:24:08,820
付いて来てくれ
481
00:24:09,540 --> 00:24:12,500
温客行:隠し通路が本当に牀板の下にあるとは──
482
00:24:12,500 --> 00:24:13,300
周子舒:行くぞ
483
00:24:13,300 --> 00:24:14,380
温客行:うん
484
00:24:28,740 --> 00:24:33,220
──この場所は、外面は紅白粉で
裏は異常で陰森としていて不気味だった
485
00:24:33,220 --> 00:24:38,340
蝎は二人を連れ、幾段もの
曲がりくねった階段を下りて行った
486
00:24:39,880 --> 00:24:42,260
(周子舒):この下は地下牢になってるのか──
487
00:24:42,260 --> 00:24:44,940
温客行:阿絮 気をつけて
488
00:24:44,940 --> 00:24:45,900
周子舒:うん
489
00:24:54,380 --> 00:24:56,940
蝎:お二人はこいつを見てみるといい
490
00:24:56,940 --> 00:24:59,700
古馴染みに違いないぞ
491
00:25:03,540 --> 00:25:05,340
周子舒:これは──
492
00:25:05,340 --> 00:25:07,620
(周子舒):あの洞穴の中の──
493
00:25:09,660 --> 00:25:11,260
周子舒:川に何かいる!
494
00:25:12,960 --> 00:25:15,140
温客行:こいつらは何なんです?
495
00:25:18,740 --> 00:25:21,180
蝎:これらは我々の薬人
496
00:25:21,180 --> 00:25:23,220
一歳になるまでは人だったが
497
00:25:23,220 --> 00:25:26,220
満一歳になってからはずっと
薬物を口に流し入れ養い
498
00:25:26,220 --> 00:25:28,500
育った今では
499
00:25:28,500 --> 00:25:32,500
身体は銅皮鉄骨で殺気が滾る
500
00:25:32,500 --> 00:25:35,740
実に素晴らしい子供だ……
501
00:25:36,180 --> 00:25:38,020
ただあまり話を聞かない
502
00:25:38,020 --> 00:25:41,220
用いた薬が脳を損傷したのだろう
503
00:25:41,220 --> 00:25:44,060
今後また調整が必要だ
504
00:25:44,300 --> 00:25:46,740
温客行:ならば洞穴はあなたの布置で
505
00:25:46,740 --> 00:25:49,220
買い手は長舌鬼?
506
00:25:50,540 --> 00:25:51,860
蝎:その通り
507
00:25:51,860 --> 00:25:53,220
温客行:くだらない
508
00:25:53,380 --> 00:25:55,580
長舌鬼はすでに私に始末されてる
509
00:25:55,580 --> 00:25:59,940
その後 洞庭で張成嶺を狙った者は 一体誰なんです?
510
00:26:01,140 --> 00:26:03,500
蝎:私はただ買ったのは長舌鬼と言っただけで
511
00:26:03,500 --> 00:26:07,860
決して 彼の背後に指図した者が
いないとは言ってない
512
00:26:09,100 --> 00:26:11,300
周子舒:これはまた別の問題か
513
00:26:11,300 --> 00:26:12,900
あんたはつまり
514
00:26:12,900 --> 00:26:14,780
答えを知りたいなら
515
00:26:14,780 --> 00:26:17,060
更にもう一度賭けをしろと言うことか
516
00:26:18,260 --> 00:26:20,140
蝎:周兄は寛大だ
517
00:26:20,140 --> 00:26:21,140
周子舒:言え
518
00:26:21,140 --> 00:26:22,580
どんな賭けだ?
519
00:26:24,020 --> 00:26:25,740
蝎:賭けるのはちょっとしたことだ
520
00:26:25,740 --> 00:26:27,420
私の功夫は周兄には及ばないし
521
00:26:27,420 --> 00:26:29,860
発想も周兄の器用さに及ばないので
522
00:26:29,860 --> 00:26:31,900
恐らくまた負けるだろう
523
00:26:36,660 --> 00:26:40,100
天命を聞くとにしよう
524
00:26:40,100 --> 00:26:43,620
ここから上がって 門を出て街の入り口へ行く
525
00:26:43,620 --> 00:26:46,540
あなたたち二人のうち一人が目を覆い
526
00:26:46,540 --> 00:26:50,580
その人の手が街の入り口の
獅子像に触れてから数え始め
527
00:26:50,580 --> 00:26:55,860
目の前を通る二十人目は 男かそれとも女か
528
00:26:55,860 --> 00:26:56,680
いかがかな?
529
00:26:57,540 --> 00:26:59,980
温客行:この賭けには全然意味がない
530
00:26:59,980 --> 00:27:02,420
あなたに何の利益があるのか不明だ
531
00:27:02,420 --> 00:27:04,700
蝎:どんな賭けでもどうでもいい
532
00:27:04,700 --> 00:27:08,180
私にとって 重要なのは賭の一文字だけ
533
00:27:08,180 --> 00:27:12,060
他の者が腹を空かせば飯を食い
喉が渇けば水を飲むのと同じく
534
00:27:12,060 --> 00:27:15,700
私に賭けをさせなければ
私は生きていけないのだ……
535
00:27:15,700 --> 00:27:17,980
あなたたちはどうする?
536
00:27:19,180 --> 00:27:21,660
温客行:ならば彼の目を覆うとしよう
537
00:27:22,020 --> 00:27:24,540
私がズルしたと彼が思わないで済む
538
00:27:24,540 --> 00:27:28,200
──温客行は懐をさぐり、手巾を
取り出し周子舒の目を覆った
539
00:27:28,200 --> 00:27:30,540
ほら 私を頼って
540
00:27:31,300 --> 00:27:34,740
蝎子兄 お先にどうぞ
541
00:27:35,860 --> 00:27:37,620
蝎:どうぞ
542
00:27:40,580 --> 00:27:44,780
──三人はそのまま地上に移動し、ずっと
隠れんぼのような格好で花街の入り口まで行った
543
00:27:44,780 --> 00:27:48,900
妓女:アイヤ お客さんどこから来たの?
544
00:27:48,900 --> 00:27:53,260
久しく“お客様中へどうぞ”に会ってない
545
00:28:03,300 --> 00:28:07,300
蝎:周兄 あなたが手を上げれば
その獅子に触れられる
546
00:28:07,300 --> 00:28:09,100
客人が先にどうぞ
547
00:28:09,100 --> 00:28:11,100
性別に掛けてください
548
00:28:11,100 --> 00:28:11,300
周子舒:男だ
549
00:28:11,300 --> 00:28:12,100
温客行:男だ
周子舒:男だ
550
00:28:12,100 --> 00:28:12,380
温客行:男だ
551
00:28:14,140 --> 00:28:15,060
蝎:いいぞ
552
00:28:15,060 --> 00:28:17,460
ならば私が数えよう
553
00:28:17,940 --> 00:28:19,220
一
554
00:28:19,380 --> 00:28:20,500
二
555
00:28:20,860 --> 00:28:22,220
三
556
00:28:22,420 --> 00:28:23,700
四
557
00:28:25,880 --> 00:28:29,940
──ここは頻繁に街娼が行き来するが
歓楽を求める客は更に多い
558
00:28:29,940 --> 00:28:33,620
蝎の頭が太っ腹である以上
彼ら二人も辞退はできなかった
559
00:28:33,620 --> 00:28:35,060
十八
560
00:28:36,580 --> 00:28:38,660
十九
561
00:28:39,700 --> 00:28:41,020
二十
562
00:28:41,020 --> 00:28:43,340
妓女:こちらの公子 ここで結構ですわ……
563
00:28:43,340 --> 00:28:45,180
──長袍を纏う、長髪入冠の男性だった!
564
00:28:45,180 --> 00:28:46,740
温客行:蝎子兄
565
00:28:46,860 --> 00:28:49,460
どうやら今回も我々の──
566
00:28:49,900 --> 00:28:51,220
──蝎は急に前に出て
567
00:28:51,220 --> 00:28:53,140
蝎:ここは煙花の地
568
00:28:53,140 --> 00:28:55,220
お嬢さんが入るのは不都合が多い
569
00:28:55,220 --> 00:28:57,060
若い娘さんならば清い評判も大事でしょうから
570
00:28:57,060 --> 00:28:58,020
どうぞお帰りを
571
00:28:58,020 --> 00:28:58,420
“男”:あぁ!
572
00:28:58,420 --> 00:28:58,780
“男”:あぁ!
蝎:お許しを
573
00:28:58,780 --> 00:28:59,820
蝎:お許しを
574
00:29:00,460 --> 00:29:02,100
“男”:あぁっ!
575
00:29:04,340 --> 00:29:06,300
(周子舒):世間は本当に変わったな
576
00:29:06,540 --> 00:29:08,300
人心古からず
(*人心不古=社会の気風が昔のように純朴でない)
577
00:29:08,300 --> 00:29:13,860
真夜中に一人の年頃の娘が男装して
花柳の地に楽しみを探しに来るとは
578
00:29:15,140 --> 00:29:16,260
蝎:周兄
579
00:29:16,260 --> 00:29:18,140
これまたどうする?
580
00:29:18,140 --> 00:29:19,780
周子舒:これは……
581
00:29:20,020 --> 00:29:24,100
蝎:文化人こだわりの“言必ず行 行必ず果”は
582
00:29:24,100 --> 00:29:28,700
我々江湖子女の言う“君子の一言 快馬の一鞭”だ
583
00:29:28,700 --> 00:29:33,540
その辺の与太者でも 唾を吐くことは
釘を打つことだと知ってる
(*一个口唾沫一个钉=一諾千金)
584
00:29:33,660 --> 00:29:36,860
周兄まさか食言するつもりなのか?
585
00:29:36,860 --> 00:29:38,340
温客行:おっしゃる通り
586
00:29:38,340 --> 00:29:40,540
ズルい手で勝つのはいいが
587
00:29:40,540 --> 00:29:44,260
言ったことを守らないのはあまりに恥知らずです
588
00:29:44,260 --> 00:29:46,940
私ですら あなたと組むのは耐えられない
589
00:29:47,220 --> 00:29:48,780
(周子舒):お前が情けを掛けてまで
590
00:29:48,780 --> 00:29:51,100
俺と組む必要はないぞ
591
00:29:53,260 --> 00:29:55,180
周子舒:……潔く負けを認める
592
00:29:56,980 --> 00:29:59,540
蝎:周兄こちらへどうぞ
593
00:30:02,620 --> 00:30:08,860
──蝎は実は良い顔をしているが、笑うと
少し口が歪んでとても底意地が悪そうで
また目つきも軽薄で、全く下品だった
594
00:30:08,860 --> 00:30:15,220
温客行は周子舒の後ろ姿を見て、傍の人を見て
誰それの前でなんたらな事をすることに
ある種の危機感を覚えた
595
00:30:19,460 --> 00:30:26,260
蝎:お二人は沐浴と着替えや
何か興を添える物は……不要なのか?
596
00:30:26,260 --> 00:30:27,580
周子舒:いらん
597
00:30:28,020 --> 00:30:30,260
あんたのその筆と墨をちょっと借りる
598
00:30:34,300 --> 00:30:37,100
蝎:周兄はまた何の小細工を弄しているのか
599
00:30:37,100 --> 00:30:39,380
周子舒:あんたは一日中肉の塊がゴロゴロと
転がってるのを見てるようだが
600
00:30:39,380 --> 00:30:40,900
うんざりしないのか?
601
00:30:40,900 --> 00:30:42,100
ほんの片刻待てば
602
00:30:42,100 --> 00:30:44,340
あんたに新鮮なのを見せてやろう
603
00:30:45,140 --> 00:30:46,900
少々お待ちを
604
00:30:49,500 --> 00:30:56,140
──筆に迷いのない周子舒のその構えは
絵画の大家のようで、ほんの数回筆を走らせ
横へやっては乾かし、また次の紙に魔手を伸ばす
605
00:30:57,260 --> 00:30:59,820
(温客行):阿絮がもし賭けの借金を踏み倒せるなら
606
00:30:59,820 --> 00:31:01,500
それもいい
607
00:31:01,500 --> 00:31:03,820
この大蝎にいい目を見させるのを防げる
608
00:31:03,820 --> 00:31:06,140
もし誠意を見せるなら……
609
00:31:06,660 --> 00:31:07,980
はぁ
610
00:31:08,500 --> 00:31:11,140
鶏に嫁げば鶏に従い 犬に嫁げば犬に従うだ
611
00:31:11,220 --> 00:31:16,140
私も当然 及ばずながら引き受けて
君子に従い命を捨てねばならない
612
00:31:16,940 --> 00:31:18,460
これ……
613
00:31:19,100 --> 00:31:21,580
阿 阿絮これは……
614
00:31:23,780 --> 00:31:25,500
周子舒:いいぞ
615
00:31:25,860 --> 00:31:28,820
蝎子兄 ご覧に
616
00:31:29,940 --> 00:31:34,520
──非常に簡潔な春宮図は、丸で頭を示し
僅かな線だけで四肢が表現されていたが
動きは生き生きとしていた
617
00:31:34,520 --> 00:31:36,260
蝎:周兄……
618
00:31:36,540 --> 00:31:39,140
──一枚ずつに、衣の解き方から最後まで
過程が描かれ、まるで動いていると錯覚する
619
00:31:39,140 --> 00:31:40,500
温客行:阿絮
620
00:31:40,980 --> 00:31:44,100
見抜けなかった あなたにはまだこんな能力がある
621
00:31:44,100 --> 00:31:45,540
周子舒:彫虫の小技だ
(*雕虫小技=取るに足らない技能)
622
00:31:45,540 --> 00:31:47,460
慚愧に堪えない
623
00:31:50,340 --> 00:31:52,980
蝎:一山の春宮図を描いて数だけ揃えて
(*滥竽充数=実力のないものを混ぜて誤魔化す)
624
00:31:52,980 --> 00:31:56,580
周兄 私をからかっているのか?
625
00:31:57,300 --> 00:31:59,780
周子舒:この話はまたどう言おうか
626
00:31:59,780 --> 00:32:03,340
俺が聞いたのは張成嶺を殺そうとしたのは誰かだ
627
00:32:03,340 --> 00:32:05,740
閣下が俺たちに教えたのは買い手が誰かなだけ
628
00:32:05,740 --> 00:32:08,660
決して彼の背後で指示しているのが
誰かは言わなかった
629
00:32:08,660 --> 00:32:10,900
これは隙に付け入ってるのではないか?
630
00:32:10,900 --> 00:32:12,580
そうである以上は
631
00:32:12,580 --> 00:32:15,500
あんたは俺たち二人に
ヤッてみせろと言っただけなので……
632
00:32:15,500 --> 00:32:20,540
俺たち二人のヤッてるのを
あんたに見せてやった──
633
00:32:20,540 --> 00:32:22,460
絵に似てないところがあるのは
634
00:32:22,460 --> 00:32:24,780
はやり閣下にはよろしくご指導賜りたい
635
00:32:24,900 --> 00:32:26,860
温客行:実に申し訳ないことだが
636
00:32:26,860 --> 00:32:28,620
うちの人は腕がよろしくない
637
00:32:28,620 --> 00:32:29,420
さぁさぁ
638
00:32:29,420 --> 00:32:30,580
あなたが見て分からないなら
639
00:32:30,580 --> 00:32:31,780
私が説明してあげてもいい
640
00:32:31,780 --> 00:32:34,420
上側のちっぽけなのがね 私ですよ……
641
00:32:34,420 --> 00:32:37,820
周子舒:説明は誤魔化しだ 必要ないだろ?
642
00:32:39,460 --> 00:32:41,900
蝎:馬鹿にするとは許せん
643
00:32:41,900 --> 00:32:43,820
誰か!
644
00:32:46,660 --> 00:32:48,300
温客行:私めのこんな艶事を
645
00:32:48,300 --> 00:32:49,540
諸兄にも見物されるとは
646
00:32:49,540 --> 00:32:52,140
全くお恥ずかしい限りだ
647
00:32:55,540 --> 00:33:00,300
──周子舒は小卓を叩いて
ひっくり返し、その機に後ろに退いた
648
00:33:00,300 --> 00:33:02,420
(周子舒):既にもう子夜(しや)も近い
649
00:33:02,420 --> 00:33:04,060
七竅三秋釘が……
650
00:33:04,680 --> 00:33:06,340
周子舒:お前に任せる
651
00:33:06,740 --> 00:33:07,580
毒蝎:逃げるな! 奴を止めろ!
652
00:33:07,580 --> 00:33:08,260
毒蝎:逃げるな! 奴を止めろ!
温客行:これはまことに生まれて初めての
どさくさの尻拭いだ……
653
00:33:08,260 --> 00:33:11,700
温客行:これはまことに生まれて初めての
どさくさの尻拭いだ……
654
00:33:14,980 --> 00:33:18,900
温客行:彼に手を付けたくて 私に聞いてるのか?
655
00:33:18,900 --> 00:33:22,140
──周子舒の姿が見えなくなると
早速容赦なく手下に一掌を叩き込んだ
656
00:33:22,140 --> 00:33:26,020
彼の目の前にいた蝎は精血を吸い取られたように
電光石火で干からびて死んだ
657
00:33:26,020 --> 00:33:27,380
蝎:下がれ──
658
00:33:28,020 --> 00:33:29,900
──温客行は自分の手のひらを見た
659
00:33:29,900 --> 00:33:32,020
温客行:ちょっとした冗談です
660
00:33:32,020 --> 00:33:34,820
蝎子兄が何か怒る必要が?
661
00:33:34,820 --> 00:33:36,660
蝎:お前は何者だ?
662
00:33:37,460 --> 00:33:39,020
温客行:今に至っても
663
00:33:39,020 --> 00:33:41,820
まだ私が何者か分からないとすれば
664
00:33:41,820 --> 00:33:46,020
毒蝎もあまり使い物にならないのでは?
665
00:33:47,460 --> 00:33:50,180
蝎:あんたか──
666
00:33:51,560 --> 00:33:53,860
温客行:同じ邪悪な外道として
667
00:33:53,860 --> 00:33:56,620
お互い何を困らせる必要があるんです?
668
00:33:56,620 --> 00:34:01,500
──彼が身を翻すと、それまで悪意のなかった
気配が、その瞬間から強烈な血生臭さとなり
大勢いた蝎は誰も彼を止めようとしなかった
669
00:34:01,500 --> 00:34:03,580
蝎:あんたはもう知りたくないのか
670
00:34:03,580 --> 00:34:06,860
誰が死士を買ったのか……
671
00:34:09,200 --> 00:34:10,820
温客行:感謝しよう
672
00:34:11,260 --> 00:34:13,500
おおむね理解できた
673
00:34:15,100 --> 00:34:18,680
──彼は窓から飛び出し、周子舒の
後を追って一瞬で姿を消した
674
00:34:18,680 --> 00:34:21,660
温客行:私がもし間抜けで
いつまで経っても理解できないとすれば
675
00:34:21,660 --> 00:34:27,540
あの虎視眈々と狙う小鬼どもに
皮を剥ぎ筋を抜かれているのでは?
676
00:34:27,540 --> 00:34:30,540
──風崖山 青竹峰に悪鬼衆あり
677
00:34:33,580 --> 00:34:34,940
張成嶺:あぁ?
678
00:34:35,060 --> 00:34:37,620
あれは高大侠のご令嬢 高さんじゃないか?
679
00:34:37,620 --> 00:34:38,420
周子舒:はぁ
680
00:34:38,420 --> 00:34:40,860
この体勢は あまりにもおかしい……
681
00:34:40,860 --> 00:34:41,700
温客行:あなたは……
この体勢は あまりにもおかしい……
682
00:34:41,700 --> 00:34:42,100
温客行:あなたは……
683
00:34:42,500 --> 00:34:43,620
私を養うと言うの?
684
00:34:43,620 --> 00:34:44,380
私を養うと言うの?
周子舒:琉璃甲は実際は于丘烽のところにあり
685
00:34:44,380 --> 00:34:47,100
周子舒:琉璃甲は実際は于丘烽のところにあり
686
00:34:47,100 --> 00:34:50,020
彼は逃げ あんたに奴らを引き付けさせた
687
00:34:50,020 --> 00:34:50,940
そうだろ?
688
00:34:50,940 --> 00:34:54,800
七爺:一つの局面に 長期の
安定的結末を望むとすれば
689
00:34:54,800 --> 00:34:56,680
必然的に均衡が必要になる
690
00:34:56,680 --> 00:35:02,200
“客行天涯谁敌谁友”
(天涯の客行 誰が敵で友なのか)
691
00:35:03,080 --> 00:35:08,800
“十载烟云一杯酒”
(雲烟る十年に一杯の酒)
692
00:35:09,560 --> 00:35:14,820
“身似飞絮过江南锦绣”
(飛絮のごとき身で江南錦繍を過れば)
693
00:35:14,820 --> 00:35:21,680
“冰销后 花月遥对平江柳”
(氷の融けたる後 花月遥か対う柳の平江)
694
00:35:22,080 --> 00:35:25,240
“江湖一醉大梦三秋”
(江湖に酔えば 三秋の大夢)
695
00:35:25,240 --> 00:35:29,020
“人心善恶只为情仇”
(人心の善悪ただ恩仇のため)
696
00:35:29,020 --> 00:35:35,800
“却不枉萍水知交许白首”
(それでも萍水の知己 白首なろうとも悔いはなし)
697
00:35:36,200 --> 00:35:38,360
“不过 蓬蒿旧梦”
(ただ 草葉の旧き夢に過ぎぬ)
698
00:35:38,360 --> 00:35:42,320
“自在余生 懒知欢与恨”
(自在なる余生に 愛憎を知ることなく)
699
00:35:42,320 --> 00:35:44,800
“偏要 刀剑交锋”
(ひとえに 刀剣を交え)
700
00:35:44,800 --> 00:35:49,080
“把盏笑问 慰这孤独人”
(盃を掲げ笑って問えば 孤独なる人の慰めになろう)
701
00:35:49,080 --> 00:35:52,320
“渺渺黄泉 只葬狂嗔”
(渺渺たる黄泉に ただ葬られし狂気)
702
00:35:52,320 --> 00:35:56,640
“茫茫鬼蜮 谁为谁掌灯”
(茫々たる悪意の中で 誰がために火を灯すのか)
703
00:35:56,640 --> 00:36:02,520
“此处长明 有红尘”
(ここは長明 紅塵に有り)
704
00:36:29,000 --> 00:36:35,440
“万鬼成窟寸光微漏”
(万鬼の巣窟 かすかな光を漏らす)
705
00:36:35,440 --> 00:36:42,080
“以免惊鸿白衣瘦”
(細き白衣の美しき君を離さぬよう)
706
00:36:42,080 --> 00:36:46,960
“倾心日久薄衾胜貉裘”
(日々心寄せれば毛皮に勝る薄衾)
707
00:36:46,960 --> 00:36:54,280
“如厮守 巴山夜雪也暖昼”
(寄り添い合えば 巴山の夜雪も昼は暖かく)
708
00:36:54,280 --> 00:36:57,520
“玉壶冰心碾转谁手”
(一片の氷心 誰の手に渡ろうとも)
709
00:36:57,520 --> 00:37:01,400
“情丝剥尽才知剔透”
(情の糸を解けば透徹たるを知る)
710
00:37:01,400 --> 00:37:07,960
“最不忍一眼春风难如旧”
(吹きゆく春風 耐え難くともいつかは変わる)
711
00:37:08,640 --> 00:37:10,760
“不过 蓬蒿旧梦”
(ただ 草葉の旧き夢に過ぎぬ)
712
00:37:10,760 --> 00:37:14,920
“自在余生 懒知欢与恨”
(自在なる余生に 愛憎を知ることなく)
713
00:37:14,920 --> 00:37:17,200
“偏要 刀剑交锋”
(ひとえに 刀剣を交え)
714
00:37:17,200 --> 00:37:21,600
“把盏笑问 慰这孤独人”
(盃を掲げ笑って問えば 孤独なる人の慰めになろう)
715
00:37:21,600 --> 00:37:24,720
“渺渺黄泉 只葬狂嗔”
(渺渺たる黄泉に ただ葬られし狂気)
716
00:37:24,720 --> 00:37:29,040
“茫茫鬼蜮 谁为谁掌灯”
(茫々たる悪意の中で 誰がために火を灯すのか)
717
00:37:29,040 --> 00:37:34,080
“此处长明 有红尘”
(ここは長明 紅塵に有り)
718
00:37:34,080 --> 00:37:36,720
“不过 天光一缕”
(ただ 一縷の天光に過ぎぬ)
719
00:37:36,720 --> 00:37:40,880
“生死几轮 何幸付热忱”
(重ねた生死に 情熱注ぐことの幸運を)
720
00:37:40,880 --> 00:37:43,160
“哪管 前尘旧闻”
(どんな過去の風聞でも)
721
00:37:43,160 --> 00:37:47,440
“是假是真 心动有余温”
(嘘か真か 心動かす余熱があり)
722
00:37:47,440 --> 00:37:50,560
“迢迢风崖 无可容身”
(迢迢たる風崖 身の置き場なく)
723
00:37:50,560 --> 00:37:54,800
“痴痴人间 从不止方寸”
(痴れたる人の世 思いのままに)
724
00:37:54,800 --> 00:38:00,880
“天涯解剑 好寻春”
(天涯に剣を放ち 春を尋ねる)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?