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心霊奇旅

ソウルフル・ワールド

張三堅 2022年2月4日 13:00

  最初にこの映画を見たのは、僕が重慶にいた時だと記憶している。
忙しい仕事の合間に仲間を引っ張って行って一緒に映画を見たら、最初は僕がアニメーションを選んだことに彼は困惑して理解に苦しみ──毎日の仕事でもうお疲れなので、映画館でアニメを見たら、きっと眠ってしまう……
  だけど僕らが映画館を出る頃には、彼は101分の間、精神的にすごい集中力で、尚且つ魂をひどく揺さぶられた!と明かした。

  多くの人はアニメは子供に見せてあげるものだと思ってるかもしれないが、僕はそうは思わない。
往々にして僕たちはアニメ映画の中に異なる精神世界を見つけることができる。例えば国産のものでは《ナタ~魔童降臨~》《紅き大魚の伝説》、海外作品では《ベイマックス》《カールじいさんの空飛ぶ家》、さらに僕の中で《ソウルフル・ワールド》と肩を並べる《リメンバー・ミー》がある。
  《リメンバー・ミー》は僕たちに、人類が本当に死ぬのは肉体が消滅した時ではなく、人に忘れ去られた時だと伝えている。
僕たちの多く偉人のように、彼らはすでにこの世はいないが、しかし彼らの精神思想は永遠に後人によって銘記され、学ばされる。

  さておき(言归正传yánguīzhèngzhuàn)、《ソウルフル・ワールド》に戻ろう。
  皆さんが僕と同じ感覚かどうかは分からないが、海外の小説に“かじりつく”のを難しくさせているのは、主人公の名前をなかなか覚えられないことだ。
人物の名前が複雑なために、僕にとっては物語の構成にもある種の混乱が生じて、それでこの本を有耶無耶のままでおしまい(不了了之bùliǎoliǎozhī 終わってないのに終わったことにする)にしてしまう。
だから僕はこの主人公にシンプルなコードネームをつけようと決めた。彼を“メガネ兄さん”と呼ぶことにした。
  メガネ兄さんが学校の音楽の先生なのは、父親の影響を受けたからだ。
彼はピアノの演奏とジャズミュージックを愛している。

  映画の始まりの日は、メガネ兄さんの人生で最も幸せな一日だと言えよう。
彼は学校の常勤の先生となり、卒業した学生の招待を受けて、自分が偉大だと考えていたサックス奏者と共にカルテット公演する機会を得た。
  災いは福の拠り所、福は災いの隠れ家(会兮福所倚,福兮祸所伏huòxīfúsuǒyǐ fúxīhuòsuǒfú 禍福は糾える縄の如し、災いと幸福はより合わせた縄のように表裏一体で一喜一憂しても仕方がない)、彼の人生で最も嬉しい一日は、楽しさ極まれば悲しみ生ず(乐极生悲lèjíshēngbēi 幸せが頂点に達すると悲しみに転じる)で、悲劇が訪れ、彼の肉体はこの世を去るのだった!

  この時、映画は別の世界にやって来る。
  この世界は三つのパートで構成されている。一つは死ぬ前の世界(生之彼岸shēngzhībǐ‘àn)と呼ばれる、魂(ソウル)の生まれ変わりへの道。
一つは生まれる前の世界(生之来处shēngzhīláichǔ)と呼ばれる、ソウルを育む場所。
ソウルのメンター(心灵导师xīnlíngdǎoshī)はより現代人的な言い方、つまり“ユーセミナー(心灵学院xīnlíngxuéyuàn)”を用いている。
もう一つは生死の狭間、ゾーン(忘我之境wángwǒzhījìng)だ。

  ユーセミナーで、メガネ兄さんのソウルは数千年もきらめき(火花huǒhuā スパーク)を見つけられず、地球への通行証を取れない22番に出会う。
  一つのソウルが地球への通行証を取得したければ、まずは自分の性格と趣味がいる。最も重要なのは自分だけのきらめきを見つけて、地球への通行証を獲得することで、それによって転生する。
  22番は数千年の間に、例えばガンジー、リンカーン、マザーテレサ、コペルニクス、フランス最後の王妃マリーなど、すでに多くの偉大なメンターを経験していたが、メガネ兄さんがひょんなことから手違いで(阴差阳错yīnchāyángcuò 偶然で間違いが起きること)ソウル22番のメンターとなろうとは。

  ……
  22番はメガネ兄さんがただの普通で、孤独な一般庶民だと知って、彼に対して特大の興味が生まれていた。
それは、成功者として、地球に対して特別な感情を十分に持ち、彼らが人から尊敬され、歴史に刻まれていることから理解できる。
  しかしそれが、どうしてメガネ兄さんのような小人物が、生活は単調で味気なく、孤独で寂しく見えても、依然として道義上後に退けずに(义无反顾yìwúfǎngù)再び地球に戻ろうとするのか納得できず、22番はメガネ兄さんをゾーンに連れて来る。
  ムーンウィンドの助けがあって、偶然の巡り合わせ(机缘巧合jīyuánqiǎohě)で22番はメガネ兄さんの体に入り、そしてメガネ兄さんは一匹の猫になった。
  一言言わなければならないが、外国人は本当にピザという食べ物が好きだ。
まるで僕たち中国人が火鍋を食べるのが好きなのと同じかもしれないが、I don't understandなのは“ドリアンピザ”だ。

22


人を助ける

  ユーセミナーでは、22番は空腹を感じず、美食への興味もなかった。
苦しみを体験しておらず、苦難を克服したあとの幸福感を得ることもなかった。
ソウルとして、生命の長さと厚みを感じず、生命の意義を悟ることもなく、消防士が生命を救ったあとの心の慰めに共感することがなかった。

地球に来てから、22番がトロンボーンを学ぶ子が自身を取り戻すのを手伝ったら、彼女は口では学びたくないと言いながら、再度トロンボーンを鳴らすと、すっかり浸りきっていた。
これが音楽に対する本当の情熱であり、自分の心の意思に従うことこそ僕たちがすべきこと、じゃないかな?

人生の選択

  理髪師と会話している中で、22番は理髪師が最初に志したのは獣医になることだったと知った。
しかしその後に娘が病気になったために、理髪師の学校は獣医の学校に比べてずっと費用が安く、それで理髪師の仕事を始めたのだ。
  若い頃はたいてい未来には沢山の願望と憧憬があるが、運命のはからいは僕たちの手には負えない。
これと僕の前回の文章に挙げた”順命”が似通っているのは、まさに未来の不確実性こそが生命の多彩な豊かさを作り出しているからなのだ。
人生の辛酸甘苦を一つ一つ味わう必要があり、辛酸甘苦全ての中に幸福感を見つられけるのが、智者なのだ。
  どの仕事にも自らの魅力があって、理髪師は”椅子の魔法”を見つけた〜この不思議な椅子に座るだけで、人々はたった短い散髪の時間でも自分の興味と趣味を共有する。
この椅子はまるでおしゃべりのスイッチを入れて、無自覚に人が内心を打ち明けるのを助けるようなものだ。
この時間で人が適切な髪型を見つけるのを手助けすると、たとえメスを持ってなくても、一本のハサミでも同じ様に”救い出す(挽救wǎnjiù 危険な状態から救い出すこと)”ことができる人は少なくない。
  この二日間一人のファンの友人がくれた僕へのメッセージを見ると、一体書(潇月のウェブ小説)の中の一節を抜粋していた。
おおよその意味は”人生にはXXの窓、XXの窓、XXの窓、XXの窓があり……”といった感じだ(具体的なところを忘れて申し訳ない😅)。三堅はあなたたちがここで”ソウルの窓”を見つけられることを願う。
そうすると三堅の幸福感が、どんどんと上がっていく。
三堅は本当に未だかつて、公式アカウント(公众号gōngzhòngháo wechatの公式アカウント)の筆者になるとは思っていなかった。
考えれば考えるほど不思議に感じるが、これはまさか運命の贈り物なのでは?

家族愛

  メガネ兄さんがどのように自分の母親と意思疎通して誤解を解いたかを22番も見ていた。両親のサポートがあることはどんなに幸せな事だろう〜 どの両親も自分の子供が大きくなったら、放浪したり、住所不定(居无定所jūwúdìngsuǒ)ではなく、安定した生活と仕事を持てることを望んでいる。
  僕たちは映画の中で”慈母手中の線、遊子身上の衣(慈母手中线,游子身上衣 慈母は旅立つ息子に着物を縫う、母の愛は大きい《遊子吟》孟郊)”の母の愛を見る。
家族愛は世界で最も切り離すことができないもので、血は水より濃い(血浓于水xiěnóngyúshuǐ)のであり、骨に刻まれたDNAなのだ。
自分と両親との世代間ギャップがまるでヤルンツァンポ大渓谷(ブラマプトラ川の世界一深い渓谷)のように”広大壮観”であろうとも──意思疎通し、交流することこそが大渓谷に橋を架ける最も良い方法なのだ。

  22番は空から舞い落ちる楓の葉を見て、その一瞬に自分のきらめきに値するものを見つけ、生命の意義を見つけたのかもしれない。
  集めたピザの縁、半分のベーグル、棒付き飴とママが使っていた糸巻き、これらのほんの些細なものでも22番の世界に対する愛おしさと愛着を体現している。
この全ては22番が過ごして来た痕跡でもある。

  22番は地球への通行証をメガネ兄さんに”投げつけ”、メガネ兄さんはついに念願かなって(如愿以偿rúyuànyǐcháng 思い通りになり満足する)今回の公演へのチャンスを掴み、そして完璧なパフォーマンスで幕を閉じた。
  彼は成功した。ついに成功した。彼はこの一日はきっと普段とは違い(非同寻常fēitóngxúncháng)、この一日はこれまでとは全く違うものだと思った……
  そこでサックスの演奏家は彼と二匹の魚の話をした──

   小さい魚:海というものを見つけたいんだ。

   老いた魚:海?お前は海にいるぞ〜

   小さい魚:これが?これはただの水、僕が探してるのは海だ。

  彼は22番を思い出した。いわゆる自分の成功を達成するために、手段を選ばないのは正しいのだろうか?
人の苦痛の上に築いた自分の幸せに、安心できるのか?
22番が今回生まれ変わる機会をメガネ兄さんに譲ったなら、22番のきらめきは結局のところ何だったのだろう?
僕はどうして全然気にならなかったのか。
  集めたピザの縁、半分のベーグル、棒付き飴とママが使っていた糸巻き?
  メガネ兄さんは成功を実感したあと、自分がこんなに身勝手であってはいけないと気付いた──22番はやっとの思い(好不容易hǎobúróngyì)で見つけたきらめきで、ついに地球に行って世界のあらゆる物事を体験する資格を得たのに、無情にも剥奪されてしまったのだ……

  メガネ兄さんはゾーンを通ってユーセミナーに戻ってくると、迷子のソウルの中から22番を救い出して、地球への通行証を彼に返した。
しかし22番は地球に行くのを恐れていた。メガネ兄さんはそれの手を引いて──
  ”君と一緒に行こう。”
  ”できないって思ってるんだろう。”
  ”分かってる、でもできる限りのことをするよ。”
  人を救い出すのと同時に、見失うかもしれない自分のソウルも掴んでおけるのだろうか。

  もし君に生まれ変わる機会をあげたら、君は何をするのかな?
  僕は生きている毎分を味わうだろう。

  突然《王様ランキング(国王排名guówángpáimíng 日本の漫画、アニメ)》の一節を思い出した。”もし生物が年を取らず死なず、病気もしないなら、そんな人が一番最初に失っていくものは心だ。我々には死があり、それが我々に悲しみを理解させ、人間性を育んでいく、そうだろう?そして不老不死の躰を得た者にそんなものは必要なく、彼はもう人間ではない。”

  映画が終われば、皆さんはハルク、スーパーマン、コンボイ、ロケット・ラクーン、グルート、ネビュラ、ヴェノム……これらのスーパーヒーローがどうしてこんなに地球を愛しているのか、理解できるのではないだろうか?

  ハハ、地球にはピザがあるからだ。









 パソコンの前に座っていたら突然”ゾーン”に突入して、覚醒したら身体が凍えてぶるぶる震えていた〜〜@#¥%……&*。
  もしいつか三堅がいなくなったら、皆さんは僕を忘れないように。美しく、楽しく、喜ばしい、幸せな思い出は全部覚えておこう。悲しくなった?
  悲しいことは一発の”屁”だと思えば、プッと音がして散っていくだけ……僕はまたギターを弾いたので皆さんに聞かせるよ。”夢を持つのは難しくない、先をゆく僕についてきて。独りでいるのは難しくない、付き添う音楽がある。”👇

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