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第十八集

1
00:00:19,280 --> 00:00:23,680
張成嶺:本当に 趙おじ上なのか?!

2
00:00:27,200 --> 00:00:29,680
蝎:良い剣法だ

3
00:00:32,360 --> 00:00:36,440
この世にはそんな幸運に恵まれた者がいる

4
00:00:36,440 --> 00:00:38,200
いい子だ

5
00:00:38,200 --> 00:00:40,800
君の前途は計り知れない

6
00:00:41,640 --> 00:00:44,560
だがうちの子ときたら……

7
00:00:46,560 --> 00:00:48,440
惜しいことに

8
00:00:48,440 --> 00:00:50,600
顔が台無しだ

9
00:00:51,720 --> 00:00:53,440
少年:うぅぅ……

10
00:00:54,040 --> 00:00:57,440
──その少年は不自然な角度で首を傾げた

11
00:00:58,080 --> 00:01:01,560
蝎:諸君 またお会いしよう

12
00:01:02,960 --> 00:01:06,600
──蝎は彼を顧みることもなく
幾人かの毒蝎に頷くと背を向けて去った

13
00:01:10,640 --> 00:01:11,720
曹蔚寧:張小兄弟

14
00:01:11,720 --> 00:01:12,840
その……

15
00:01:12,840 --> 00:01:15,040
実際私たちも意外でした

16
00:01:15,040 --> 00:01:16,840
でも彼も良い人には見えませんでした

17
00:01:16,840 --> 00:01:18,560
言ってることもきっと本当じゃない

18
00:01:18,560 --> 00:01:21,200
周兄温兄 あなたたちが言うのも──

19
00:01:23,000 --> 00:01:24,760
周子舒:事情を知る者はほどんど死んで

20
00:01:24,760 --> 00:01:28,120
残っているのは一人 勝敗は見えた

21
00:01:28,540 --> 00:01:32,360
曹蔚寧:勝敗は……見えた?

22
00:01:33,480 --> 00:01:36,080
(曹蔚寧):つまりあのとき彼らは──

23
00:01:36,680 --> 00:01:38,800
高小怜:あの人が言っていたのは……

24
00:01:38,800 --> 00:01:40,240
私の父も……

25
00:01:40,240 --> 00:01:41,920
曹蔚寧:高さん……

26
00:01:41,920 --> 00:01:43,040
張成嶺:師父

27
00:01:43,680 --> 00:01:46,520
あの日あの人がどんな姿だったか思い出しました

28
00:01:47,000 --> 00:01:48,560
私はたった今……

29
00:01:48,560 --> 00:01:50,280
さっきのあのびっこの少年を見たら

30
00:01:50,280 --> 00:01:52,360
思い出したんです──

31
00:01:53,040 --> 00:01:55,800
彼はこんなに背が高く 肩幅も広く

32
00:01:55,800 --> 00:01:57,120
片方の脚……

33
00:01:57,120 --> 00:01:59,320
片方の脚もその人と同じ様に

34
00:01:59,320 --> 00:02:01,400
あまり目立たないのですが

35
00:02:01,400 --> 00:02:04,120
私を追っていた時 急いで来たら

36
00:02:04,120 --> 00:02:06,320
少し足を引きずっていた──

37
00:02:06,640 --> 00:02:08,040
彼だった

38
00:02:08,040 --> 00:02:09,880
重傷の李おじさんを

39
00:02:10,280 --> 00:02:11,000
殺……

40
00:02:11,000 --> 00:02:11,760
顧湘:あっ
殺……

41
00:02:11,760 --> 00:02:12,520
張成嶺:殺した……

42
00:02:12,520 --> 00:02:12,920
顧湘:足を引きずって?
張成嶺:殺した……

43
00:02:12,920 --> 00:02:13,760
顧湘:足を引きずって?
 

44
00:02:13,760 --> 00:02:14,840
あっ!

45
00:02:15,120 --> 00:02:16,520
あぁ……

46
00:02:27,680 --> 00:02:28,720
顧湘:主人……

47
00:02:28,720 --> 00:02:30,080
温客行:阿湘

48
00:02:30,560 --> 00:02:33,240
お前は嫁に行った姑娘で 撒いた水だから
(*嫁出去的女儿 拨出去的水=嫁に出したら元の家族とは無関係)

49
00:02:33,480 --> 00:02:37,160
この件は今後 お前にはもう関係ない

50
00:02:37,600 --> 00:02:41,320
明日 お前は葉白衣を探しに行くはずだろ

51
00:02:41,320 --> 00:02:43,800
私は当然 お前の嫁荷を欠かしはしないから

52
00:02:43,800 --> 00:02:45,440
あそこに戻る必要はない

53
00:02:45,440 --> 00:02:46,880
顧湘:あたし──

54
00:02:47,080 --> 00:02:48,960
曹蔚寧:阿湘

55
00:02:52,680 --> 00:02:54,280
周子舒:小僧 こっちに来い

56
00:02:54,280 --> 00:02:57,520
──温客行はもう誰も見ず部屋に戻った

57
00:03:08,540 --> 00:03:10,560
張成嶺:師 師父

58
00:03:10,920 --> 00:03:11,680
私は

59
00:03:11,680 --> 00:03:13,800
泣きたくはないのですが

60
00:03:13,800 --> 00:03:15,000
私は……

61
00:03:15,000 --> 00:03:19,600
私は……私……すぐ治まります……

62
00:03:19,600 --> 00:03:23,400
──あの暗黒の日々に常にそばにいて、英雄の前で
自分のために正義を取り戻すと言った彼が……

63
00:03:23,400 --> 00:03:24,960
張成嶺:師父

64
00:03:24,960 --> 00:03:26,880
この世に

65
00:03:26,880 --> 00:03:30,440
まだ何か信頼できるものはありますか?

66
00:03:30,440 --> 00:03:34,000
──周子舒は手を伸ばし、懐に彼を引き入れた

67
00:03:34,000 --> 00:03:35,280
周子舒:泣け……

68
00:03:36,800 --> 00:03:38,000
張成嶺:師……

69
00:03:40,200 --> 00:03:45,260
──内衣の上に外袍を羽織っただけの極めて薄着の
彼の胸に顔を埋めると、体温が簡単に伝わった

70
00:03:45,260 --> 00:03:49,620
そのひと時はまるで永遠に崩れない山に
寄り掛かっているようだった

71
00:03:50,040 --> 00:03:57,360
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品

72
00:03:57,500 --> 00:04:04,240
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
第十八集「分かれ道」

73
00:04:12,400 --> 00:04:18,400
──曹蔚寧は何も言わず顧湘を引っ張って行き
高小怜は心配げに部屋に戻り
師弟二人が中庭に残った

74
00:04:25,120 --> 00:04:27,040
七爺:坊主 受け取れ

75
00:04:28,480 --> 00:04:30,040
張成嶺:七爺

76
00:04:30,280 --> 00:04:31,840
本当に私に?

77
00:04:31,840 --> 00:04:33,240
七爺:どうした

78
00:04:33,240 --> 00:04:35,240
自分には要らないと思うのか?

79
00:04:35,240 --> 00:04:37,000
張成嶺:私は……

80
00:04:38,040 --> 00:04:39,460
師父?

81
00:04:39,460 --> 00:04:40,760
周子舒:うん

82
00:04:43,300 --> 00:04:48,720
──その剣は幅が極めて広く、光は一切反射せず
古拙な雰囲気と、刃には殺意が凝固していた

83
00:04:49,160 --> 00:04:51,040
七爺:この剣の名は“大荒”

84
00:04:51,040 --> 00:04:53,000
配下の者が私に送ってきたのだ

85
00:04:53,000 --> 00:04:54,600
風格は申し分ない

86
00:04:54,600 --> 00:04:56,800
しかし私は芸不精で

87
00:04:56,800 --> 00:04:58,040
持っていても使えない

88
00:04:58,040 --> 00:05:00,640
手にも馴染んでいないし 重すぎる

89
00:05:00,720 --> 00:05:03,520
君の師父はすでに君があの小娘たちに
同行することを同意した

90
00:05:03,520 --> 00:05:04,840
だから君にあげよう

91
00:05:04,840 --> 00:05:06,360
張成嶺:あ……あぁ

92
00:05:06,360 --> 00:05:08,200
七爺:宝剣は英雄に

93
00:05:08,200 --> 00:05:10,480
せめて未来の英雄にあげるべきだ

94
00:05:10,920 --> 00:05:12,480
私には何の見込みもないし

95
00:05:12,480 --> 00:05:15,640
この人生は一人の富貴な閑人が関の山

96
00:05:15,840 --> 00:05:17,080
取っておいて

97
00:05:17,080 --> 00:05:19,360
将来こいつを裏切るんじゃないぞ

98
00:05:19,880 --> 00:05:21,560
周子舒:すまない七爺

99
00:05:22,320 --> 00:05:24,880
張成嶺:感謝します七爺

100
00:05:25,980 --> 00:05:27,200
七爺:子舒

101
00:05:27,480 --> 00:05:29,840
私も君とは幾年かの交友があったつもりだし

102
00:05:29,840 --> 00:05:32,640
共に喧嘩し 命も賭けたが

103
00:05:32,640 --> 00:05:35,280
君は他の人とそのようにすっかり浮かれはしゃいで

104
00:05:35,280 --> 00:05:36,840
どうして私に対しては

105
00:05:36,840 --> 00:05:40,480
こんなに真面目腐って つまらないんだ?

106
00:05:40,640 --> 00:05:42,000
周子舒:私は──

107
00:05:44,720 --> 00:05:46,080
七爺:子舒よ

108
00:05:46,720 --> 00:05:48,720
私は南寧王なんかじゃないし

109
00:05:48,720 --> 00:05:50,840
君も周大人じゃないんだ

110
00:05:51,840 --> 00:05:53,600
君の聡明さをもってしても

111
00:05:54,240 --> 00:05:56,400
まだ理解する気がないのか?

112
00:06:02,360 --> 00:06:04,840
周子舒:冗談を飛ばせないわけではないが

113
00:06:05,920 --> 00:06:07,880
七爺のような花月の容貌では

114
00:06:07,880 --> 00:06:11,020
うちの酢甕(すがめ)がひっくり返るのが怖い

115
00:06:11,020 --> 00:06:12,920
七爺:君はほんと……

116
00:06:14,160 --> 00:06:15,400
はぁ

117
00:06:15,400 --> 00:06:21,360
──七爺は腹を立てたりはしなかったが
ただ、泣きも笑いもできず背を向けて首を振った

118
00:06:23,640 --> 00:06:26,000
大巫:まだ少し想像し難い

119
00:06:26,000 --> 00:06:28,240
周荘主は一体……

120
00:06:29,320 --> 00:06:33,080
彼はいつからあのような 慰めをできたのか……

121
00:06:35,880 --> 00:06:38,600
七爺:彼はこれまでもそんなだったんじゃないかな

122
00:06:38,880 --> 00:06:41,520
当時の梁九霄に対しても

123
00:06:42,280 --> 00:06:46,680
表面上はこれまでずっと父や兄の如く
辞色を繕わぬ姿だったが

124
00:06:46,680 --> 00:06:50,040
その実 裏では何にでも
彼のために しっかりした意図があった

125
00:06:50,640 --> 00:06:54,720
だが惜しいことに 他の者は
決して彼の情を理解しなかった

126
00:06:55,000 --> 00:06:56,120
大巫:うん……

127
00:06:59,080 --> 00:07:02,040
七爺:君がもし 彼は仁義礼智か何かの
素晴らしい人だと言えば

128
00:07:02,040 --> 00:07:05,520
彼自身も認めることはないかもしれない

129
00:07:05,520 --> 00:07:08,000
もし碌なものじゃないと言えば……

130
00:07:08,320 --> 00:07:11,440
彼は天雷が打ち裂くような事をやってきたが
(*天打雷劈=天罰が下る)

131
00:07:11,440 --> 00:07:16,280
私欲によっての 彼自身のことは一つもなかった

132
00:07:29,920 --> 00:07:32,480
周子舒:荷物はほぼ片付いたか──

133
00:07:32,720 --> 00:07:34,080
ん?

134
00:07:34,080 --> 00:07:35,280
これは何だ?

135
00:07:35,280 --> 00:07:36,240
張成嶺:あぁ……

136
00:07:36,240 --> 00:07:38,560
昨晩あなたに教わった剣法です

137
00:07:38,560 --> 00:07:40,960
型を紙に描いておいたのです

138
00:07:40,960 --> 00:07:42,200
記してあるのは口訣と……

139
00:07:42,200 --> 00:07:43,720
周子舒:それを描いてどうするんだ?

140
00:07:43,720 --> 00:07:45,560
戻ってきて練功ではダメなのか?

141
00:07:46,640 --> 00:07:48,320
張成嶺:師父

142
00:07:48,320 --> 00:07:51,040
この間教わったのがまだ習熟できてません

143
00:07:51,040 --> 00:07:53,480
わ……私は自分が馬鹿だと分かっているので

144
00:07:53,480 --> 00:07:55,520
自分に規則を定めてやりました

145
00:07:55,520 --> 00:07:57,840
どの手も練功一万遍やってから

146
00:07:57,840 --> 00:08:00,040
次の手の練功を始めます

147
00:08:00,040 --> 00:08:06,640
そうして毎日早朝に起きて
暗誦してしょっちゅう復習するんです……

148
00:08:08,600 --> 00:08:12,320
(周子舒):大智は愚のごとく 大功は拙のごとし
(*大智若愚 大巧若拙=馬鹿と天才は紙一重《老子》)

149
00:08:12,320 --> 00:08:15,440
急かず焦らず 地に足をつける──

150
00:08:16,480 --> 00:08:18,880
蝎が成嶺は幸運だと言っていた

151
00:08:18,880 --> 00:08:22,600
その実 俺の方こそ幸運なんだ……

152
00:08:22,600 --> 00:08:25,720
天下の英才を教えることができた
(*得天下英才而教育之=《君子有三楽》孟子)

153
00:08:29,240 --> 00:08:32,080
周子舒:お前は顧湘たちと葉前輩を探しに行く

154
00:08:32,080 --> 00:08:33,280
力量に則して行え
(*量力而行=能力に応じて事を進める)

155
00:08:33,280 --> 00:08:35,240
くれぐれも……

156
00:08:37,000 --> 00:08:39,440
七爺がくれた剣に申し訳が立たぬことをするな

157
00:08:39,760 --> 00:08:40,960
張成嶺:はい

158
00:08:42,800 --> 00:08:44,920
周子舒:道中で趙敬に遭遇したら

159
00:08:45,160 --> 00:08:47,200
決して無鉄砲な事はするんじゃない

160
00:08:47,200 --> 00:08:49,760
張成嶺:師父 分かりました

161
00:08:49,760 --> 00:08:50,860
周子舒:うん

162
00:08:51,680 --> 00:08:52,800
まあいい

163
00:08:52,800 --> 00:08:54,920
急いで片付けて出発しろ

164
00:08:54,920 --> 00:08:57,000
お前の顧湘姐さんが待ってるぞ

165
00:08:57,480 --> 00:08:58,920
時間を無駄にはできない

166
00:08:58,920 --> 00:09:00,280
張成嶺:はい

167
00:09:09,040 --> 00:09:09,960
周子舒:成嶺

168
00:09:09,960 --> 00:09:12,160
張成嶺:あ 師父?

169
00:09:12,849 --> 00:09:15,040
周子舒:道中気を付けろ

170
00:09:15,600 --> 00:09:17,000
張成嶺:……はい

171
00:09:53,080 --> 00:09:55,280
周子舒:扉があるのに 窓からか

172
00:09:55,280 --> 00:09:58,440
お前の好みは まことに風変わりだな

173
00:10:00,020 --> 00:10:02,480
温客行:私が訪ねるのはあなたの窓だけ

174
00:10:08,440 --> 00:10:09,440
周子舒:おい

175
00:10:09,440 --> 00:10:10,800
彼らは行ったのか?

176
00:10:10,800 --> 00:10:12,360
温客行:うん

177
00:10:17,840 --> 00:10:19,040
阿絮

178
00:10:19,840 --> 00:10:21,000
周子舒:ん?

179
00:10:22,536 --> 00:10:24,760
温客行:私も行かないと

180
00:10:27,480 --> 00:10:29,240
周子舒:風崖山に戻るのか?

181
00:10:29,960 --> 00:10:31,680
温客行:うん

182
00:10:32,600 --> 00:10:35,840
出て来て十分長い時間ぶらついて

183
00:10:36,160 --> 00:10:40,440
人生で見たことのなかった
人と風景もほとんど見て回った

184
00:10:41,320 --> 00:10:45,920
戻って用件を片付けておかないとね

185
00:10:48,840 --> 00:10:50,480
阿絮……

186
00:10:54,240 --> 00:10:57,840
あなたは……しっかり傷を治して

187
00:10:57,840 --> 00:11:00,800
でも塀から紅杏を覗かせるのは許さない
(*红杏出墙=春気分、浮気する)

188
00:11:01,120 --> 00:11:03,760
戻って来たら長明山のあなたのところに行くから

189
00:11:03,760 --> 00:11:04,540
もし……

190
00:11:04,540 --> 00:11:06,360
周子舒:分かってる

191
00:11:11,200 --> 00:11:12,680
出ていけ……

192
00:11:13,400 --> 00:11:15,440
だが死ぬな

193
00:11:18,160 --> 00:11:19,920
温客行:元気で

194
00:11:27,160 --> 00:11:34,080
──温客行が片足を外にぶら下げて座っていた
窓は、最初から誰もいなかったかのように
窓格子だけが風に吹かれていた

195
00:12:02,120 --> 00:12:06,400
七爺と大巫が沢山の薬材を抱え帰ってきた時
周子舒は中庭で笛を削っていた

196
00:12:06,400 --> 00:12:12,540
彼の腕前は大したものではなく、その場で
選んだ材を何本も削っては廃棄するので
辺りは木屑だらけだった

197
00:12:15,540 --> 00:12:18,680
七爺が近付くと最後の一本が形になっていた

198
00:12:32,040 --> 00:12:33,440
七爺:子舒

199
00:12:33,440 --> 00:12:36,120
それは何をしてるんだい?

200
00:12:38,600 --> 00:12:40,040
周子舒:精神修養だ

201
00:12:40,040 --> 00:12:42,920
七爺:それのどこが自己修養なのか

202
00:12:42,920 --> 00:12:45,560
明らかに聞き手の忍耐力を修養してるね

203
00:12:47,280 --> 00:12:49,520
その笛は削りがなってない

204
00:12:58,080 --> 00:12:59,240
試してみて

205
00:12:59,240 --> 00:13:00,440
周子舒:ふっ

206
00:13:22,200 --> 00:13:27,840
周子舒:七爺はさすが詩歌詞賦(しいかしふ)に
食う飲む打つ買う様々 掴んでは放す京城一の練絹袴
(*诗词歌赋=伝統芸能 *吃喝嫖赌=悪習、道楽 *拿得起放得下=度量が大きい *纨绔=道楽息子)

207
00:13:27,840 --> 00:13:30,240
こんな小細工さえできてしまう

208
00:13:32,000 --> 00:13:33,640
七爺:あの人は行ったのか?

209
00:13:34,980 --> 00:13:36,480
周子舒:……うん

210
00:13:36,480 --> 00:13:38,040
七爺:付いて行かない?

211
00:13:38,800 --> 00:13:40,760
周子舒:当然行くが

212
00:13:41,080 --> 00:13:44,400
でも彼らの辺りは混乱していて

213
00:13:44,800 --> 00:13:48,600
蝉を捕る蟷螂一匹に 百羽の黄雀が背後にいる

214
00:13:48,600 --> 00:13:51,560
俺はもう少ししてから行く

215
00:13:51,640 --> 00:13:55,640
成り行きを見て 時が来たら彼を引っ張り上げる

216
00:13:58,320 --> 00:14:02,080
七爺:引っ張り上げるだけで 他はしないのか?

217
00:14:02,920 --> 00:14:06,840
彼が九霄だったら 君はこんなに安心してないだろう

218
00:14:07,880 --> 00:14:10,000
周子舒:どうして九霄と比べられる?

219
00:14:10,000 --> 00:14:12,320
九霄はただの子供だが

220
00:14:12,760 --> 00:14:14,600
彼は……

221
00:14:14,800 --> 00:14:17,480
己が何をすべきかを知っているんだ

222
00:14:19,880 --> 00:14:23,080
彼の事には俺も首を突っ込まない

223
00:14:23,680 --> 00:14:26,440
彼自身でけりを付けるしかない

224
00:14:32,680 --> 00:14:34,640
笛をありがとう──

225
00:14:34,640 --> 00:14:36,780
七爺:君はどうするつもりだ?

226
00:14:36,780 --> 00:14:39,040
周子舒:俺の推測が間違ってなければ

227
00:14:39,320 --> 00:14:42,000
蝎子は一羽目の黄雀なだけだ

228
00:14:42,880 --> 00:14:46,680
彼はわざわざびっこの少年を張成嶺に差し向けて

229
00:14:46,680 --> 00:14:51,120
老温に蝉が一体誰なのかを知らせた

230
00:14:51,120 --> 00:14:54,480
八割方 彼らが龍争虎闘で
敗れたか傷を負ったかしたあと

231
00:14:54,480 --> 00:14:56,960
そいつらをごった煮にするつもりだろう

232
00:14:57,320 --> 00:14:59,720
俺は先にめでたい紹興酒を一壺準備できたら

233
00:14:59,720 --> 00:15:01,560
彼を追って飛んで行く

234
00:15:02,720 --> 00:15:04,280
七爺:早く行って早く戻って来て

235
00:15:04,280 --> 00:15:06,560
治療の時期を見誤るなよ

236
00:15:06,800 --> 00:15:08,040
周子舒:うん

237
00:15:30,680 --> 00:15:32,280
七爺:小毒物

238
00:15:32,480 --> 00:15:33,920
大巫:うん?

239
00:15:33,920 --> 00:15:35,760
七爺:君は知ってるかな?

240
00:15:36,080 --> 00:15:38,760
当時我々が京城にいた頃は

241
00:15:38,760 --> 00:15:41,560
私はまだ百応の南寧王と呼ばれていて
(*一呼百应=一声で百が応じる)

242
00:15:41,560 --> 00:15:44,600
子舒はまだ暗所縦横の天窗首領で

243
00:15:45,360 --> 00:15:50,480
我ら二人 同じ種類の人間だと思っていた

244
00:15:50,800 --> 00:15:52,560
大巫:……違うと?

245
00:15:54,320 --> 00:15:59,600
七爺:今になって ようやく
我らは決して同じじゃないと気付いた──

246
00:16:00,240 --> 00:16:04,440
私は結局 彼のように掴んでは放す
江湖気質ではないんだ

247
00:16:05,240 --> 00:16:07,920
今 彼があんな磊落に生きているのを見ると

248
00:16:08,080 --> 00:16:12,240
僅かながら私にも羨慕の念が出てきたよ

249
00:16:14,040 --> 00:16:15,800
大巫:羨望は不要だ

250
00:16:15,960 --> 00:16:17,760
私がいる

251
00:16:19,740 --> 00:16:21,360
七爺:うん

252
00:16:45,720 --> 00:16:54,280
──たとえいい加減に作っただけの粗末な笛でも
彼に吹かせれば盛世の華音のようで、おおらかで
風雅な音色はまるで彼を見送るようだった

253
00:17:13,560 --> 00:17:16,160
毒蝎:遅れるな 付いて行け

254
00:17:16,560 --> 00:17:20,120
(周子舒):黄雀がやっと
彼の毒蝎を連れて出発した……

255
00:17:20,520 --> 00:17:22,560
ただ この道を行くと

256
00:17:22,560 --> 00:17:25,240
蝎子は彼らを連れて風崖山に直行せず

257
00:17:25,240 --> 00:17:25,880
毒蝎:早く
蝎子は彼らを連れて風崖山に直行せず

258
00:17:25,880 --> 00:17:26,640
毒蝎:早く
途中わざわざ迂回することに……

259
00:17:26,640 --> 00:17:28,360
途中わざわざ迂回することに……

260
00:17:28,360 --> 00:17:30,680
何かが起こるというのか?

261
00:17:48,280 --> 00:17:49,760
(周子舒):ん?

262
00:17:52,000 --> 00:17:55,080
こんな別苑で留まってどうするんだ?

263
00:17:57,080 --> 00:17:59,700
毒蝎:主 連れてきました

264
00:17:59,700 --> 00:18:01,080
蝎:うん

265
00:18:01,520 --> 00:18:03,680
毒蝎:行け! 大人しくしろ!

266
00:18:09,040 --> 00:18:11,640
暴れるな!行け!

267
00:18:11,640 --> 00:18:13,600
(周子舒):于丘烽か?

268
00:18:13,600 --> 00:18:17,320
なんと……彼は毒蝎に捕まっていたのか

269
00:18:17,840 --> 00:18:19,520
あの様子では

270
00:18:19,520 --> 00:18:22,040
蝎子の手の内で
だいぶ痛めつけられているだろう……

271
00:18:22,040 --> 00:18:23,200
蝎:おや

272
00:18:23,960 --> 00:18:26,080
于掌門だな

273
00:18:26,080 --> 00:18:27,440
于丘烽:違う……

274
00:18:28,280 --> 00:18:29,920
私のところには……

275
00:18:29,920 --> 00:18:31,520
いない……

276
00:18:35,160 --> 00:18:37,960
蝎:太湖の趙家荘の外でのあの夜に

277
00:18:37,960 --> 00:18:41,000
実際に死んでいたのは全部で三人……

278
00:18:41,000 --> 00:18:45,200
一人は断剣三荘荘主の穆雲歌

279
00:18:45,200 --> 00:18:48,640
一人はあなたの一人息子の于天傑

280
00:18:48,640 --> 00:18:54,320
あとの一人は 鬼谷の長舌鬼

281
00:18:57,280 --> 00:18:59,760
于掌門は興味がおありか?

282
00:19:00,160 --> 00:19:03,680
あなたはあなたの息子に
太湖で張家の小僧を見張らせて

283
00:19:03,680 --> 00:19:05,760
琉璃甲を盗み取る機会を伺っていると思っていたが

284
00:19:05,760 --> 00:19:09,280
琉璃甲を高望みしては
いけないとは考えなかったようで

285
00:19:09,280 --> 00:19:12,880
却ってあなたの息子の命を手折ってしまった

286
00:19:14,240 --> 00:19:16,720
于丘烽:あ あの夜──

287
00:19:20,440 --> 00:19:22,160
蝎:実のところ……

288
00:19:22,160 --> 00:19:24,640
あの日の夜 穆雲歌のことを睨んでいたのは

289
00:19:24,640 --> 00:19:26,880
あと二人いた

290
00:19:28,600 --> 00:19:31,080
一人は喜喪鬼孫鼎

291
00:19:31,080 --> 00:19:35,160
でも彼は鬼谷谷主に全権を
与えられた無常鬼老孟もいたので

292
00:19:35,160 --> 00:19:36,800
手を出すのはまずいと気付いた……

293
00:19:36,800 --> 00:19:38,480
そして別の一人は

294
00:19:38,480 --> 00:19:40,840
かつての薛方の配下であり

295
00:19:40,840 --> 00:19:46,280
後にまた内部で矛先を反した老孟一派の長舌鬼
(*倒戈=寝返る)

296
00:19:51,200 --> 00:19:52,520
蝎:チッ

297
00:19:53,000 --> 00:19:55,200
しかし非常にまずいことに

298
00:19:55,200 --> 00:19:57,560
当時あの神通広大なる鬼主が

299
00:19:57,560 --> 00:20:02,000
ちょうど月に柳の梢が架かる中で
彼の恋人さんと会っていた

300
00:20:02,000 --> 00:20:04,680
だから老孟は顔を出せず

301
00:20:04,680 --> 00:20:09,200
長舌鬼が仕方なく彼の以前の主である
吊死鬼の絶技を用いてあなたの息子を殺し

302
00:20:09,200 --> 00:20:12,200
鬼主を誤導しようとした

303
00:20:12,600 --> 00:20:15,760
ところが実は あの御方の足が非常に速かった

304
00:20:15,760 --> 00:20:19,080
すぐに長舌鬼に隠れさせても間に合わず

305
00:20:19,080 --> 00:20:20,800
そこで……

306
00:20:26,240 --> 00:20:28,960
蝎:どのような者が一番嘆かわしいのだろうか?

307
00:20:28,960 --> 00:20:33,960
己の身の程を知らず みだりに大志を抱く者か──

308
00:20:33,960 --> 00:20:35,560
于掌門

309
00:20:36,200 --> 00:20:38,360
あなたは同じ心というものが

310
00:20:38,360 --> 00:20:42,440
あなたの胸中に芽生えるのと
私の胸中に芽生えるのとで

311
00:20:42,440 --> 00:20:45,160
どんな違いがあるかお分かりかな?

312
00:20:45,160 --> 00:20:49,680
私の胸中に芽生えれば それは野心というが

313
00:20:49,680 --> 00:20:52,120
あなたの胸中に芽生えれば

314
00:20:53,160 --> 00:20:57,520
それは痴心妄想というのだ

315
00:21:01,400 --> 00:21:03,120
于丘烽:私……

316
00:21:03,360 --> 00:21:05,280
黄道人

317
00:21:05,280 --> 00:21:07,160
封暁峰……

318
00:21:07,960 --> 00:21:10,000
我々全員

319
00:21:10,360 --> 00:21:13,880
これまでに得た不明瞭な情報は

320
00:21:14,200 --> 00:21:15,500
全部お前だった……

321
00:21:15,500 --> 00:21:17,000
蝎:確かに

322
00:21:17,000 --> 00:21:19,580
老孟は私の稀なる客人で

323
00:21:19,580 --> 00:21:23,040
私を利用し 声色一つ変えず人を殺すつもりだった
(*不动声色=動じない)

324
00:21:23,040 --> 00:21:24,880
趙敬は私の客人で

325
00:21:24,880 --> 00:21:28,320
私を利用し 彼の相棒である
老孟を牽制するつもりだった

326
00:21:28,320 --> 00:21:30,560
孫鼎も私の客人で

327
00:21:30,560 --> 00:21:33,360
私を利用し 様々な虚像を作り出し

328
00:21:33,360 --> 00:21:38,320
彼がやった事で起きる 全ての災禍を
今になっても行方の分からない薛方になすりつけ

329
00:21:38,320 --> 00:21:43,640
鬼主の手を借りて 彼の宿敵を
取り除くつもりだった……

330
00:21:44,000 --> 00:21:49,480
私はね もともと人殺しと物を
売ることから事業を始めた商売人だ

331
00:21:49,480 --> 00:21:51,920
濁水の魚を掴むような一稼ぎをせず
(*浑水摸鱼=どさくさで利益を得る)

332
00:21:51,920 --> 00:21:55,040
どう毒蝎の名号に申し訳が立つのか

333
00:21:55,040 --> 00:21:58,760
于掌門 そうですよね?

334
00:22:00,160 --> 00:22:04,680
目下この武林は もう私の掌中にある……

335
00:22:04,680 --> 00:22:05,840
于掌門

336
00:22:05,840 --> 00:22:07,880
あなたは本当に運が良い

337
00:22:07,880 --> 00:22:11,280
ここまで来て 私に出会えた

338
00:22:11,280 --> 00:22:16,120
だが惜しいことに 老孟と趙敬が
私にあなたを取り除かせることにした

339
00:22:17,240 --> 00:22:20,120
私も心苦しいのだが……

340
00:22:20,120 --> 00:22:22,320
何か方法があったか?

341
00:22:22,760 --> 00:22:25,520
あなたにはできるだけ明白な
幽霊になってもらうしかない

342
00:22:25,520 --> 00:22:27,440
于丘烽:貴様 ──

343
00:22:29,240 --> 00:22:31,600
蝎:有難がる必要はない

344
00:22:32,560 --> 00:22:35,160
于丘烽:うぁっ……う……

345
00:22:36,120 --> 00:22:37,560
周子舒:なんで

346
00:22:37,680 --> 00:22:39,400
于丘烽:あああ……

347
00:22:39,400 --> 00:22:42,800
──毒蝎は鉄鈎で背中から刺して引き抜くと
急いで仲間の後を追った

348
00:22:45,600 --> 00:22:50,840
于丘烽:助け……て……

349
00:22:50,840 --> 00:22:53,080
周子舒:平江に柳の色青し

350
00:22:53,080 --> 00:22:55,360
花月遥か相い守り

351
00:22:55,360 --> 00:22:57,640
歳々復た年々

352
00:22:58,000 --> 00:22:58,720
于丘烽:うっ……
 

353
00:22:58,720 --> 00:22:59,120
于丘烽:うっ……
周子舒:逢いし此の何だ?

354
00:22:59,120 --> 00:22:59,400
周子舒:逢いし此の何だ?

355
00:22:59,400 --> 00:23:00,400
于丘烽:千……
周子舒:逢いし此の何だ?

356
00:23:00,400 --> 00:23:01,640
于丘烽:千……
 

357
00:23:01,640 --> 00:23:04,440
柳千巧:平江に柳の色青し

358
00:23:04,440 --> 00:23:06,960
花月遥か相い守り

359
00:23:06,960 --> 00:23:09,160
歳々復た年々

360
00:23:09,200 --> 00:23:12,440
逢いし此の氷の消える後に

361
00:23:15,080 --> 00:23:17,920
下半句は何が来るの?

362
00:23:17,920 --> 00:23:21,000
──柳千巧、なんとも醜い女子が痴心妄想した

363
00:23:21,000 --> 00:23:24,840
于丘烽:逢いし此の……氷の消える後に

364
00:23:24,840 --> 00:23:31,360
幾たび滄海ならせども

365
00:23:31,800 --> 00:23:37,280
山雪……雲岫に別る

366
00:23:37,560 --> 00:23:45,920
一眼…一眼は万年に軽く

367
00:23:48,000 --> 00:23:52,200
唯だ此の……

368
00:23:52,680 --> 00:23:57,400
唯だ此の……

369
00:23:57,680 --> 00:23:59,280
柳千巧:──唯だ此の

370
00:23:59,280 --> 00:24:02,240
于丘烽:心旧の如し……

371
00:24:02,240 --> 00:24:05,080
柳千巧:心旧の如し
于丘烽:心旧の如し……

372
00:24:05,080 --> 00:24:05,480
柳千巧:心旧の如し
 

373
00:24:05,480 --> 00:24:08,560
── 万年に眼をやれば短く、この心だけ変わらず

374
00:24:08,560 --> 00:24:13,420
彼の何気ない一句を一人の女だけが死ぬまで銘記し
心から向き合ったが、すれ違いいなくなった

375
00:24:13,420 --> 00:24:18,760
周子舒は手を伸ばすと、彼の十万幽冥の
森厳にして陰冷たる道を映す両目を閉じた

376
00:24:19,720 --> 00:24:21,400
周子舒:告白に礼を言う

377
00:24:24,380 --> 00:24:27,400
──立ち上がり、蝎の後を追った

378
00:24:34,280 --> 00:24:36,400
客:おい こっちにもう一杯素麺をくれ

379
00:24:36,400 --> 00:24:37,600
給仕:はいな お待ちを

380
00:24:37,600 --> 00:24:40,000
お客さまご所望の龍井……

381
00:24:43,760 --> 00:24:47,360
兵卒1:李兄 久しぶりだな 会えてよかった

382
00:24:47,480 --> 00:24:51,600
兵卒2:黄兄も英雄帖を受け取ったから 趙敬
趙大侠の召集に応じて風崖山に来たんだろう?

383
00:24:51,600 --> 00:24:54,240
兵卒1:“正道を匡扶ける” 我らの
義として辞することは許されぬ
(*义不容辞=道義から辞退は許されない)

384
00:24:54,240 --> 00:24:55,720
この妖魔鬼怪が出尽くした世も

385
00:24:55,720 --> 00:25:01,080
一度徹底的に清め 人の世の正道を
清浄の地に還す時が来たのだ!

386
00:25:01,080 --> 00:25:02,120
兵卒2:その通り!

387
00:25:02,120 --> 00:25:03,120
なあ だが

388
00:25:03,120 --> 00:25:05,440
聞いた話では趙大侠は英雄帖を発布したが

389
00:25:05,440 --> 00:25:07,600
却って山河令は出せなかったそうだ

390
00:25:07,600 --> 00:25:09,520
兵卒1:そうだな 高崇が死んで

391
00:25:09,520 --> 00:25:11,280
慈穆大師は“危篤”で

392
00:25:11,280 --> 00:25:12,680
その……

393
00:25:13,560 --> 00:25:15,360
兵卒2:山河令のもうひとりの所有者

394
00:25:15,360 --> 00:25:19,480
長明古僧の後人 葉白衣も行方知れずだ……

395
00:25:20,320 --> 00:25:22,960
顧湘:今回の集結に葉白衣が来ると思ったけど

396
00:25:23,360 --> 00:25:26,040
まさか趙敬が山河令を出せなかったとはな……

397
00:25:26,040 --> 00:25:27,640
張成嶺:趙おじ……

398
00:25:28,000 --> 00:25:30,320
趙敬は意外にもまだ英雄帖を
公布できる面子があって

399
00:25:30,320 --> 00:25:33,240
言うに事欠いて天下の英雄を
統率して 鬼谷を討伐するとは

400
00:25:33,240 --> 00:25:36,000
明らかに彼こそが人の皮を被った悪鬼だ!

401
00:25:36,000 --> 00:25:37,320
高小怜:私は思うのですが

402
00:25:37,320 --> 00:25:39,080
趙敬が山河令を出せなかったのは

403
00:25:39,080 --> 00:25:42,640
もしや他のお二人の前輩も
彼に疑心を持ったからなのでは?

404
00:25:42,640 --> 00:25:44,200
私の父は……

405
00:25:44,200 --> 00:25:45,480
私の父はたぶん

406
00:25:45,480 --> 00:25:48,400
何かを察知したからこそ……

407
00:25:50,600 --> 00:25:52,000
顧湘:だけど曹兄さん

408
00:25:52,000 --> 00:25:54,960
今回の集結にあんたの師父も来てる

409
00:25:55,240 --> 00:25:58,240
まさか彼はそのまま趙敬に付いて行くのか?

410
00:25:58,240 --> 00:25:59,000
曹蔚寧:うん

411
00:25:59,000 --> 00:26:01,880
当時 清風剣派が僕と師叔を下山させたのは

412
00:26:01,880 --> 00:26:04,040
師父がちょうど閉関していたからなんだ

413
00:26:04,040 --> 00:26:06,880
どうして今 出関したのか分からない

414
00:26:07,600 --> 00:26:10,360
師父は結局 趙敬の偽君子の正体を
知っているんだろうか?

415
00:26:10,360 --> 00:26:11,360
このように出向くとは──

416
00:26:11,360 --> 00:26:13,080
顧湘:おい 一先ず焦るな

417
00:26:13,400 --> 00:26:15,320
あたしがずっと観察してきて

418
00:26:15,320 --> 00:26:18,520
莫掌門もそんな単純な人物じゃなさそうだし

419
00:26:18,720 --> 00:26:21,520
簡単に騙されることはないはず……

420
00:26:22,720 --> 00:26:24,680
曹蔚寧:思い切って
師父と師叔のところに直接行って

421
00:26:24,680 --> 00:26:26,640
趙敬の正体を暴露しよう!

422
00:26:26,640 --> 00:26:29,600
顧湘:曹兄さん そんな事絶対ダメだ!

423
00:26:29,600 --> 00:26:30,640
考えてよ

424
00:26:30,640 --> 00:26:32,400
もしあんたが軽々しく
あんたの師父に話しに行ったら

425
00:26:32,400 --> 00:26:33,560
彼はあんたを信じるか

426
00:26:33,560 --> 00:26:36,160
それともあの趙“大侠”を信じるか

427
00:26:36,160 --> 00:26:39,440
──彼女の言う通りだったので
曹蔚寧は婦唱夫随で頷いた

428
00:26:41,080 --> 00:26:42,640
曹蔚寧:分かった

429
00:26:42,640 --> 00:26:44,160
君の言うことを聞くよ

430
00:26:44,360 --> 00:26:47,120
高小怜:顧姑娘 ならば我らはどうすれば?

431
00:26:47,760 --> 00:26:49,000
顧湘:待とう

432
00:26:49,000 --> 00:26:51,080
あたしら今はまだ葉白衣を探してないし

433
00:26:51,080 --> 00:26:54,480
あたしら数人では 天をひっくり返すような
大騒ぎでも大したことにはならない

434
00:26:54,480 --> 00:26:55,680
あんな大人数はなおのこと

435
00:26:55,680 --> 00:26:58,760
趙敬一人だとしても あたしらなんか
一壺飲んだら十分だ
(*够喝一壶=話にならない)

436
00:26:59,200 --> 00:27:01,600
彼らが鬼谷に向かってる以上は

437
00:27:01,600 --> 00:27:03,280
鬼谷も柔らかい柿じゃない
(*软柿子=いじめられる立場のもの)

438
00:27:03,280 --> 00:27:06,200
時が来たら必ず大きな戦になる……

439
00:27:08,240 --> 00:27:09,480
(顧湘):違う

440
00:27:09,480 --> 00:27:12,720
じゃあ主人はどうしてあの時あたしに
葉白衣を探しに行かせたんだ

441
00:27:12,920 --> 00:27:15,160
七爺たちは暇なことこの上ないし

442
00:27:15,160 --> 00:27:18,320
彼らはあたしより手づるが多くないか?

443
00:27:18,640 --> 00:27:20,040
温客行:阿湘

444
00:27:20,160 --> 00:27:23,600
お前は嫁に行った姑娘で 撒いた水だから

445
00:27:23,680 --> 00:27:27,640
この件は今後 お前にはもう関係ない──

446
00:27:30,600 --> 00:27:32,400
(顧湘):もしかして彼は

447
00:27:32,400 --> 00:27:34,040
この鬼谷の戦いに

448
00:27:34,040 --> 00:27:36,360
勝算がないと思ってるのか……

449
00:27:38,200 --> 00:27:39,840
主人……

450
00:27:43,240 --> 00:27:44,600
曹蔚寧:阿湘

451
00:27:46,280 --> 00:27:48,520
顧湘:ああ うん

452
00:27:51,560 --> 00:27:53,680
今はあたしたちはなんにも力になれないし

453
00:27:53,680 --> 00:27:56,320
彼らについて行って 情勢を
静観するしかできないけど

454
00:27:56,320 --> 00:27:57,920
葉白衣の動向に気を付けておいて

455
00:27:57,920 --> 00:27:58,280
曹蔚寧:分かった

456
00:27:58,280 --> 00:27:58,520
高小怜:うん
曹蔚寧:分かった

457
00:27:58,520 --> 00:27:59,040
張成嶺:うん
高小怜:うん
曹蔚寧:分かった

458
00:27:59,040 --> 00:27:59,160
張成嶺:うん
高小怜:うん
 

459
00:27:59,160 --> 00:28:01,440
高小怜:では顧姑娘の言う通りに

460
00:28:01,440 --> 00:28:02,720
顧湘:ああ

461
00:28:04,280 --> 00:28:06,680
さあ行くぞ

462
00:28:15,400 --> 00:28:19,080
──四方を千尋の風崖山に
囲まれた中に青竹嶺はある

463
00:28:22,000 --> 00:28:25,760
まさに初夏の草木が鬱蒼と茂り始め鳥は飛び交い
曲りくねった小道が谷の中に入っていく

464
00:28:25,760 --> 00:28:29,600
漆黒の馬を連れた温客行はどのような
道を行ったのか、誰よりも早く鬼谷に到着していた

465
00:28:30,960 --> 00:28:36,080
その畜生はまるで知恵があるかのように
石牌の近くをイライラと歩き
足を踏み入れたくないようだった

466
00:28:37,120 --> 00:28:39,960
温客行は手を伸ばして馬の鼻先を擦った

467
00:28:42,240 --> 00:28:44,120
温客行:行くんだ

468
00:28:44,840 --> 00:28:50,280
──馬は人間のように大きな目を瞬かせて
しばらく彼を見たあと、小走りして
名残り惜しそうに振り返った

469
00:28:50,800 --> 00:28:52,160
温客行:行け

470
00:28:53,040 --> 00:28:55,720
──彼が手を振るとようやく大股で走り去った

471
00:28:58,080 --> 00:28:59,680
温客行:行け

472
00:29:00,800 --> 00:29:04,160
行くなら遠ければ遠いほどいい……

473
00:29:15,680 --> 00:29:18,640
“生魂止步(生魂は歩を止めよ)”

474
00:29:20,360 --> 00:29:24,880
──この四文字がなければ
風景優美な桃源郷のようである

475
00:29:24,880 --> 00:29:28,040
これが鬼谷だ

476
00:29:29,540 --> 00:29:32,880
灰衣の小鬼:何者だ 無断で鬼谷に侵入か……

477
00:29:37,400 --> 00:29:39,640
谷……谷主

478
00:29:39,640 --> 00:29:41,360
お帰りなさいませ谷主!

479
00:29:46,120 --> 00:29:48,280
温客行:老孟と孫鼎は戻って来たか?

480
00:29:48,960 --> 00:29:50,880
彼らを私のところへ

481
00:29:50,880 --> 00:29:54,120
灰衣の小鬼:は……はい 部下はすぐに参ります

482
00:29:55,240 --> 00:29:59,260
──彼の顔に恨みの表情が浮かんだが
黙って林に消えた

483
00:29:59,260 --> 00:30:04,320
鬼谷谷主、それこそまことの気狂いの悪魔で
笑って話していた次の瞬間には相手の首を
むざむざむしり取るかも知れないのだ

484
00:30:05,600 --> 00:30:07,080
灰衣の小鬼:無常大人

485
00:30:09,120 --> 00:30:10,360
老孟:彼が?

486
00:30:10,360 --> 00:30:13,120
灰衣の小鬼:谷主は沐浴を済ませて
閻羅殿であなたをお待ちです

487
00:30:13,120 --> 00:30:14,760
表情から喜怒は読み取れません

488
00:30:14,760 --> 00:30:16,480
実際思い当たることもなく……

489
00:30:16,480 --> 00:30:18,840
大人 ご注意ください──

490
00:30:18,840 --> 00:30:20,000
老孟:構わんさ

491
00:30:20,000 --> 00:30:22,800
目下俺には七、八分の勝算がすでにある

492
00:30:22,800 --> 00:30:24,440
まさか……

493
00:30:25,560 --> 00:30:27,680
まさか彼はまことに三頭六臂で
(*三头六臂=八面六臂)

494
00:30:27,680 --> 00:30:29,200
天をひっくり返せるとでも?

495
00:30:29,200 --> 00:30:30,880
灰衣の小鬼:大人は英明です

496
00:30:31,280 --> 00:30:35,600
ですがあの吊死鬼は今に至っても
なお不確定要素のまま……

497
00:30:37,040 --> 00:30:38,880
老孟:薛方の所在は分からぬが

498
00:30:38,880 --> 00:30:41,560
彼が捕まるのも時間の問題だ

499
00:30:41,560 --> 00:30:44,360
彼が鍵を持っているのは武庫を開くためだ

500
00:30:44,360 --> 00:30:46,280
目下 琉璃甲は出尽くし

501
00:30:46,280 --> 00:30:48,840
よもや彼も耐えきれまい

502
00:30:49,600 --> 00:30:50,840
まあいい

503
00:30:50,840 --> 00:30:52,840
具体的な事はあとでまた話す

504
00:30:52,840 --> 00:30:55,200
まずはあの者に会いに行ってみるさ

505
00:31:09,540 --> 00:31:10,680
端女:谷主

506
00:31:10,680 --> 00:31:13,160
奴婢が御髪をお梳きします……

507
00:31:13,160 --> 00:31:14,200
温客行:うん

508
00:31:14,200 --> 00:31:20,000
──温客行はすでに長旅でくたびれた衣から
暗色の長袍に着替え、ゆったりした椅子に
だらしなく座っていた

509
00:31:20,000 --> 00:31:22,000
老孟:お帰りなさいませ谷主

510
00:31:23,000 --> 00:31:26,840
──温客行の顔の半分は漆黒の髪の下に隠れ
口角には笑みを浮かべていた

511
00:31:26,840 --> 00:31:31,020
黒ずんだ赤の長袍は、暗紅色の腰帯で
適当に締められ、全身に少しの妖気を帯びていた

512
00:31:31,020 --> 00:31:33,720
彼の様子に、老孟はなぜか
骨の内側から寒さが滲み出た

513
00:31:33,720 --> 00:31:36,080
温客行:どうして梳かないんだ?

514
00:31:36,320 --> 00:31:38,440
端女:あ……は はい……

515
00:31:39,640 --> 00:31:42,900
──温客行は少し首を傾げて、まるで
子供のように好奇の目で老孟を見た

516
00:31:42,900 --> 00:31:45,800
老孟はすでに疑念が芽生え
身震いを抑える術がなかった

517
00:31:45,800 --> 00:31:48,000
老孟:谷主の今回の帰谷は……

518
00:31:48,000 --> 00:31:50,120
温客行:孫鼎は?

519
00:31:52,320 --> 00:31:53,880
老孟:報告します谷主

520
00:31:54,160 --> 00:31:58,480
あの高崇と趙敬が琉璃甲のせいで内輪揉めを……

521
00:31:58,480 --> 00:32:00,400
──今一人で戦っても勝算はない

522
00:32:00,400 --> 00:32:02,400
老孟は慌てず用意した答えを話した

523
00:32:03,960 --> 00:32:07,040
老孟:孫鼎は薛方の行方を聞いて
軽率に捕縛に向かいましたが

524
00:32:07,040 --> 00:32:08,840
今もって行方不明のまま……

525
00:32:08,840 --> 00:32:12,960
あの趙敬が武林人士を ちょうど
鬼谷に寄越そうと召集したので

526
00:32:12,960 --> 00:32:14,960
部下は先に戻って参りました

527
00:32:16,360 --> 00:32:17,520
温客行:あぁ

528
00:32:18,400 --> 00:32:20,480
ということは

529
00:32:20,480 --> 00:32:23,520
孫鼎は裏で折られた可能性が高いのか?

530
00:32:23,800 --> 00:32:26,200
老孟:部下の不手際です

531
00:32:32,440 --> 00:32:36,160
──この男は八年もの間、人を戦慄させる存在で
静寂の時こそ人を怯えさせた

532
00:32:37,200 --> 00:32:39,640
温客行:客人たちが来るというなら

533
00:32:39,680 --> 00:32:41,880
お前は行って準備をしなさい

534
00:32:43,480 --> 00:32:49,080
江湖の名宿ばかりだ 粗相があってはならない
(*名宿=名望の高い人《後漢書》)

535
00:32:50,000 --> 00:32:51,320
老孟:はい

536
00:32:52,520 --> 00:32:54,560
承知しました

537
00:32:57,140 --> 00:32:59,000
温客行:まだ何かあるのか?

538
00:32:59,000 --> 00:33:00,840
老孟:いいえ 部下は

539
00:33:00,840 --> 00:33:03,040
失礼します

540
00:33:06,040 --> 00:33:07,520
温客行:ちょっと待て

541
00:33:07,520 --> 00:33:10,600
──老孟は僅かに顔を引き攣らせ
顔は上げずにそのまま立ち止まった

542
00:33:10,600 --> 00:33:14,800
老孟:谷主 まだ何かご下命が?

543
00:33:15,160 --> 00:33:17,360
温客行:阿湘が嫁に行く

544
00:33:17,680 --> 00:33:21,720
彼女に通り二条半の嫁荷を持たせてやる約束をした

545
00:33:21,840 --> 00:33:24,040
お前は準備に行ってくれ

546
00:33:24,240 --> 00:33:26,360
みすぼらしくするなよ

547
00:33:28,120 --> 00:33:29,280
老孟:はい

548
00:33:29,800 --> 00:33:32,240
温客行:うん 行け

549
00:33:32,760 --> 00:33:34,680
老孟:失礼します

550
00:33:37,340 --> 00:33:41,160
──温客行は鉢植えの花の葉に手を伸ばして弄び
侍女は慎重に彼の髪を梳いていた

551
00:33:41,160 --> 00:33:43,720
温客行:しばらくの間 戻って来なかったが

552
00:33:43,720 --> 00:33:46,320
この閻羅殿の花は

553
00:33:46,320 --> 00:33:48,720
どうして枯れてしまったのか……

554
00:33:48,720 --> 00:33:50,000
ッ……

555
00:33:50,960 --> 00:33:53,160
端女:谷 谷主……

556
00:33:53,160 --> 00:33:54,560
奴婢は愚鈍です

557
00:33:54,560 --> 00:33:57,000
お助けください谷主……

558
00:33:58,320 --> 00:34:01,200
温客行:頭髪を一本引き千切ったに過ぎない

559
00:34:01,200 --> 00:34:04,540
──温客行が手を伸ばし彼女の顎をそっと
持ち上げると、少女の顔は青褪めていた

560
00:34:04,540 --> 00:34:05,920
温客行:どうした

561
00:34:07,120 --> 00:34:09,120
人の機嫌を損ねて

562
00:34:09,640 --> 00:34:13,480
他の者の身代わりを押し付けられて
私に仕えに来たのか?

563
00:34:13,480 --> 00:34:15,760
端女:谷主にお仕えすること は……

564
00:34:15,760 --> 00:34:18,640
奴婢の幸せ……

565
00:34:21,000 --> 00:34:23,480
温客行:気が進まないなら進まないと言え

566
00:34:24,040 --> 00:34:26,080
私がお前だったら

567
00:34:26,080 --> 00:34:30,200
きっと大魔頭の面前で自ら死を求めはしないだろう

568
00:34:32,280 --> 00:34:34,920
だが実際お前は……

569
00:34:39,280 --> 00:34:41,360
もう行け

570
00:34:43,040 --> 00:34:44,680
端女:はい

571
00:34:47,320 --> 00:34:52,400
──だだっ広い閻王殿に温客行と花だけが残ると
丸八年住み慣れたこの安心できる環境も
外から戻るとまるで人を窒息させるように感じた

572
00:34:52,400 --> 00:34:56,920
(温客行):だが実際お前たちの心配は不要だ……

573
00:34:58,400 --> 00:35:01,720
本当の人の世へ戻る道をみつけたら

574
00:35:02,880 --> 00:35:05,440
人に戻るのだ

575
00:35:05,440 --> 00:35:08,280
まるで私が“外側”にいた時のように

576
00:35:08,280 --> 00:35:10,960
自分らしく人当たりよく

577
00:35:12,920 --> 00:35:15,080
もう気まぐれになることはなく

578
00:35:15,080 --> 00:35:17,280
気狂いでもなく

579
00:35:18,320 --> 00:35:21,480
手当り次第に人を殺して生きているのでもない

580
00:35:23,520 --> 00:35:25,560
それで……

581
00:35:26,160 --> 00:35:28,760
ある人が私と共にいて……

582
00:35:29,680 --> 00:35:31,840
彼は私を恐れず

583
00:35:31,840 --> 00:35:34,080
私も彼によくして

584
00:35:35,280 --> 00:35:38,680
私たちは一生一緒にいられる……

585
00:35:39,880 --> 00:35:45,920
──彼は何かを思い出したかのように目を伏せ
不気味でも冷淡でもない笑顔で
巻き付けた植物を優しく解き放った

586
00:35:50,360 --> 00:35:54,480
莫懐陽:蔚寧よ お前たちの世代の者で

587
00:35:54,480 --> 00:35:57,080
お前を最も可愛がっていたのだ

588
00:35:57,080 --> 00:36:00,240
顧湘:お前ら殺してやる お前ら全員殺してやる

589
00:36:00,240 --> 00:36:02,240
あたしが殺してやる……

590
00:36:02,240 --> 00:36:06,120
温客行:本来 花嫁が嫁ぐのには
そんなに沢山のこだわりがあったんだな

591
00:36:06,120 --> 00:36:08,800
こんな庭いっぱいの嫁荷

592
00:36:08,800 --> 00:36:11,200
阿湘の奴に見せてやったら

593
00:36:11,200 --> 00:36:13,080
どれだけ喜ぶか分からないな

594
00:36:13,080 --> 00:36:18,600
“客行天涯谁敌谁友”
(天涯の客行 誰が敵で友なのか)

595
00:36:19,480 --> 00:36:25,200
“十载烟云一杯酒”
(雲烟る十年に一杯の酒)

596
00:36:25,960 --> 00:36:31,220
“身似飞絮过江南锦绣”
(飛絮のごとき身で江南錦繍を過れば)

597
00:36:31,220 --> 00:36:38,080
“冰销后 花月遥对平江柳”
(氷の融けたる後 花月遥か対う柳の平江)

598
00:36:38,480 --> 00:36:41,640
“江湖一醉大梦三秋”
(江湖に酔えば 三秋の大夢)

599
00:36:41,640 --> 00:36:45,420
“人心善恶只为情仇”
(人心の善悪ただ恩仇のため)

600
00:36:45,420 --> 00:36:52,200
“却不枉萍水知交许白首”
(それでも萍水の知己 白首なろうとも悔いはなし)

601
00:36:52,600 --> 00:36:54,760
“不过 蓬蒿旧梦”
(ただ 草葉の旧き夢に過ぎぬ)

602
00:36:54,760 --> 00:36:58,720
“自在余生 懒知欢与恨”
(自在なる余生に 愛憎を知ることなく)

603
00:36:58,720 --> 00:37:01,200
“偏要 刀剑交锋”
(ひとえに 刀剣を交え)

604
00:37:01,200 --> 00:37:05,480
“把盏笑问 慰这孤独人”
(盃を掲げ笑って問えば 孤独なる人の慰めになろう)

605
00:37:05,480 --> 00:37:08,720
“渺渺黄泉 只葬狂嗔”
(渺渺たる黄泉に ただ葬られし狂気)

606
00:37:08,720 --> 00:37:13,040
“茫茫鬼蜮 谁为谁掌灯”
(茫々たる悪意の中で 誰がために火を灯すのか)

607
00:37:13,040 --> 00:37:18,920
“此处长明 有红尘”
(ここは長明 紅塵に有り)

608
00:37:45,400 --> 00:37:51,840
“万鬼成窟寸光微漏”
(万鬼の巣窟 かすかな光を漏らす)

609
00:37:51,840 --> 00:37:58,480
“以免惊鸿白衣瘦”
(細き白衣の美しき君を離さぬよう)

610
00:37:58,480 --> 00:38:03,360
“倾心日久薄衾胜貉裘”
(日々心寄せれば毛皮に勝る薄衾)

611
00:38:03,360 --> 00:38:10,680
“如厮守 巴山夜雪也暖昼”
(寄り添い合えば 巴山の夜雪も昼は暖かく)

612
00:38:10,680 --> 00:38:13,920
“玉壶冰心碾转谁手”
(一片の氷心 誰の手に渡ろうとも)

613
00:38:13,920 --> 00:38:17,800
“情丝剥尽才知剔透”
(情の糸を解けば透徹たるを知る)

614
00:38:17,800 --> 00:38:24,360
“最不忍一眼春风难如旧”
(吹きゆく春風 耐え難くともいつかは変わる)

615
00:38:25,040 --> 00:38:27,160
“不过 蓬蒿旧梦”
(ただ 草葉の旧き夢に過ぎぬ)

616
00:38:27,160 --> 00:38:31,320
“自在余生 懒知欢与恨”
(自在なる余生に 愛憎を知ることなく)

617
00:38:31,320 --> 00:38:33,600
“偏要 刀剑交锋”
(ひとえに 刀剣を交え)

618
00:38:33,600 --> 00:38:38,000
“把盏笑问 慰这孤独人”
(盃を掲げ笑って問えば 孤独なる人の慰めになろう)

619
00:38:38,000 --> 00:38:41,120
“渺渺黄泉 只葬狂嗔”
(渺渺たる黄泉に ただ葬られし狂気)

620
00:38:41,120 --> 00:38:45,440
“茫茫鬼蜮 谁为谁掌灯”
(茫々たる悪意の中で 誰がために火を灯すのか)

621
00:38:45,440 --> 00:38:50,480
“此处长明 有红尘”
(ここは長明 紅塵に有り)

622
00:38:50,480 --> 00:38:53,120
“不过 天光一缕”
(ただ 一縷の天光に過ぎぬ)

623
00:38:53,120 --> 00:38:57,280
“生死几轮 何幸付热忱”
(重ねた生死に 情熱注ぐことの幸運を)

624
00:38:57,280 --> 00:38:59,560
“哪管 前尘旧闻”
(どんな過去の風聞でも)

625
00:38:59,560 --> 00:39:03,840
“是假是真 心动有余温”
(嘘か真か 心動かす余熱があり)

626
00:39:03,840 --> 00:39:06,960
“迢迢风崖 无可容身”
(迢迢たる風崖 身の置き場なく)

627
00:39:06,960 --> 00:39:11,200
“痴痴人间 从不止方寸”
(痴れたる人の世 思いのままに)

628
00:39:11,200 --> 00:39:17,280
“天涯解剑 好寻春”
(天涯に剣を放ち 春を尋ねる)






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