第十三集
1
00:00:15,980 --> 00:00:17,280
温客行:誰だ!
2
00:00:22,360 --> 00:00:28,760
──大堂の石壁に葉白衣が空けた穴から
木製の車椅子がゆっくり滑り出て来た
3
00:00:33,600 --> 00:00:35,560
(周子舒):こいつが龍雀か?
4
00:00:35,560 --> 00:00:38,400
しかし彼はなぜ 四肢は子供の大きさに萎縮して
5
00:00:38,400 --> 00:00:41,400
それでも頭は成人並みで 一方に歪んでいるのか
6
00:00:41,560 --> 00:00:43,480
まるで人には見えないぞ……
7
00:00:43,920 --> 00:00:45,880
張成嶺:師 師父
8
00:00:45,880 --> 00:00:47,320
こ この人はどうして──
9
00:00:47,320 --> 00:00:48,440
周子舒:シーッ
10
00:00:51,640 --> 00:00:53,520
葉白衣:お前は龍雀ではない
11
00:00:53,520 --> 00:00:54,760
周子舒:ん?
12
00:00:55,260 --> 00:00:56,840
(周子舒):そうだ
13
00:00:57,200 --> 00:01:01,920
龍雀と傀儡荘はすでに
数十年前の江湖の伝説だ
14
00:01:01,920 --> 00:01:04,200
彼は三十歳ほどにしか見えない
15
00:01:04,200 --> 00:01:07,680
本物の龍雀がこんな年若いわけがない
16
00:01:09,040 --> 00:01:11,800
車椅子の怪人:当然私は違う
17
00:01:13,040 --> 00:01:14,280
温客行:阿絮
18
00:01:14,800 --> 00:01:18,320
見てよ彼の目 まるで落っこちそうじゃないの
19
00:01:20,080 --> 00:01:21,680
車椅子の怪人:貴様らは何者だ
20
00:01:21,680 --> 00:01:24,400
よくも傀儡荘に侵入できたな
21
00:01:24,400 --> 00:01:26,600
葉白衣:俺は龍雀に用がある
22
00:01:27,680 --> 00:01:31,600
車椅子の怪人:龍雀の死に損ないの
骨クズはもう灰になったぞ
23
00:01:31,600 --> 00:01:32,960
彼を捜してどうするんだ?
24
00:01:32,960 --> 00:01:34,400
葉白衣:龍雀が死んだ?
25
00:01:34,400 --> 00:01:35,920
なぜ死んだ?
26
00:01:36,360 --> 00:01:39,320
車椅子の怪人:当然 私が片付けたのだ
27
00:01:40,000 --> 00:01:41,200
葉白衣:たわ言を抜かすな
28
00:01:41,200 --> 00:01:43,360
もしお前のような動くのもままならぬ者が
龍雀を殺せるとしたら
29
00:01:43,360 --> 00:01:45,480
蜉蝣(カゲロウ)でも大樹を震わすぞ
30
00:01:45,480 --> 00:01:47,280
お前が龍雀の息子であって
31
00:01:47,280 --> 00:01:50,240
彼が横たわって動かずお前に
自由に叩き切らせない限りはな
32
00:01:50,240 --> 00:01:51,480
車椅子の怪人:貴様──
33
00:01:52,000 --> 00:01:52,920
温客行:しまった
34
00:01:52,920 --> 00:01:54,280
車椅子の怪人:死んでしまえ!
35
00:01:58,240 --> 00:02:02,520
──大堂の四方の壁にびっしりと人の形が
浮き出ているのが見えると、そこから何十もの
丸坊主の凶悪な偶人が湧き出てきた
36
00:02:02,520 --> 00:02:04,320
張成嶺:偶人がいっぱいです!!!
37
00:02:04,960 --> 00:02:11,800
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品
38
00:02:11,960 --> 00:02:18,560
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
第十三集「龍雀」
39
00:02:44,080 --> 00:02:49,120
──張成嶺が外に出ようとすると、正面から
ぶつかってきた偶人が無遠慮に腕を振り回し
彼の脳天をかち割ろうとした
40
00:02:49,120 --> 00:02:50,360
張成嶺:師父!
41
00:02:50,360 --> 00:02:51,440
周子舒:屈め!
42
00:02:52,760 --> 00:02:55,960
──周子舒は指弾を張成嶺の膝裏に当て屈ませた
43
00:02:56,620 --> 00:03:00,960
(周子舒):俺と“過保護”という言葉は
生まれつきの腐れ縁か
44
00:03:00,960 --> 00:03:03,200
周子舒:老温 俺に手を貸すな
45
00:03:05,680 --> 00:03:07,080
温客行:阿絮
46
00:03:07,520 --> 00:03:11,480
この偶人の多さ 随分フンパツしたみたいだね
47
00:03:19,640 --> 00:03:23,040
張成嶺:師父 私たちは死後の世界に
来てしまったんじゃないですか?
48
00:03:23,040 --> 00:03:25,680
周子舒:この人形は硬くて殴っても死なんが
49
00:03:25,680 --> 00:03:27,160
ただし弱点もある
50
00:03:27,160 --> 00:03:27,840
温客行:ん?
51
00:03:27,840 --> 00:03:29,360
周子舒:一つは跳べぬこと
52
00:03:29,360 --> 00:03:30,920
張成嶺:あぁぁ!偶人が来ました!
53
00:03:30,920 --> 00:03:32,760
周子舒:一つは間抜けなこと
54
00:03:32,960 --> 00:03:34,880
老温 躱せ!
55
00:03:34,880 --> 00:03:35,880
温客行:はっ!
56
00:03:35,880 --> 00:03:38,800
──温客行は張成嶺を提げると周子舒と
阿吽の呼吸で同時に両方向に飛び上がった
57
00:03:38,800 --> 00:03:41,080
張成嶺:この二体はぶつかり合ってます!
58
00:03:42,680 --> 00:03:46,200
──周子舒が着地するとすぐに偶人が立ちはだかり
棒を振り下ろしてきたため身を翻して躱した
59
00:03:47,000 --> 00:03:48,560
張成嶺:師父危ない!
60
00:03:48,560 --> 00:03:50,440
──再び横に薙いだ棒を周子舒は仰け反って躱した
61
00:03:50,440 --> 00:03:51,600
温客行:阿絮
62
00:03:51,600 --> 00:03:53,680
あなたの腰はまことに柔らかい
63
00:03:55,240 --> 00:03:56,440
坊主
64
00:03:56,440 --> 00:03:57,160
まだ師父を助けに行かないのか!
65
00:03:57,160 --> 00:03:57,720
張成嶺:あぁ!
まだ師父を助けに行かないのか!
66
00:03:57,720 --> 00:03:58,800
張成嶺:あぁ!
67
00:03:59,920 --> 00:04:02,200
張成嶺:師父! 私がお助けします!
68
00:04:04,600 --> 00:04:06,280
温客行:君のそのふざけた手は何
69
00:04:06,280 --> 00:04:08,440
まるで痙攣した大ヒキガエルそっくりだ
70
00:04:08,440 --> 00:04:10,960
私が教えた剣技はご飯のおかずに食べたのか?
71
00:04:11,120 --> 00:04:12,160
張成嶺:前輩
72
00:04:12,160 --> 00:04:14,320
では……ではどんな手を使うべきですか?
73
00:04:14,360 --> 00:04:16,040
師父!
74
00:04:19,620 --> 00:04:21,440
周子舒:邪魔をするな
75
00:04:21,680 --> 00:04:23,080
戻れ
76
00:04:24,160 --> 00:04:24,840
張成嶺:うゎ!
77
00:04:24,840 --> 00:04:27,160
周子舒:流雲九宮歩を使って自分で上手く躱せ!
78
00:04:27,160 --> 00:04:28,080
張成嶺:はい!
79
00:04:41,120 --> 00:04:42,720
温客行:阿絮 見て
80
00:04:42,720 --> 00:04:44,680
あの怪人はしっかり仇を覚えてたんだ
81
00:04:44,680 --> 00:04:49,440
大半の偶人は葉白衣の方に行って
あっちは年越しみたいな賑わいだ
82
00:04:49,440 --> 00:04:51,040
周子舒:このままではダメだ
83
00:04:51,040 --> 00:04:53,000
恐らく長時間は保たない
84
00:04:53,000 --> 00:04:55,160
この碌でもない場所にどれだけの
傀儡がいるか誰が分かる?
85
00:04:55,160 --> 00:04:57,160
温客行:この場所は傀儡荘と呼ばれているし
86
00:04:57,160 --> 00:05:00,160
見たところ生き物は車椅子の上の一人だけで
87
00:05:00,160 --> 00:05:02,280
残りは全部その玩具みたいだね
88
00:05:02,440 --> 00:05:03,880
周子舒:もっともだ
89
00:05:03,880 --> 00:05:07,440
殴り殺せるのもただその一人だけだ
90
00:05:16,440 --> 00:05:18,600
車椅子の怪人:また一人死にたいのが来たか
91
00:05:19,600 --> 00:05:21,160
周子舒:またカラクリか!
92
00:05:21,160 --> 00:05:25,540
──車椅子の下から突然十本ほどの先端に
槍の付いた鎖が射出されると
周子舒は偶人の背後にまわった
93
00:05:25,540 --> 00:05:28,840
鉄の鎖は偶人をちまきのように包んだ
94
00:05:28,840 --> 00:05:30,920
周子舒:俺に暗器が使えないと思うのか?
95
00:05:32,360 --> 00:05:34,560
──怪人は車椅子の取っ手を叩くと鉄傘が開いた
96
00:05:34,560 --> 00:05:36,120
周子舒:驚いたか
97
00:05:36,820 --> 00:05:38,640
車椅子の怪人:私を騙せるとでも──
98
00:05:38,640 --> 00:05:40,480
温客行:ねえお馬鹿さん
99
00:05:40,760 --> 00:05:43,440
君はどうしてたたき棒を針にするの?
(*给个棒槌就当针=嘘を真に受ける)
100
00:05:44,200 --> 00:05:45,920
車椅子の怪人:死ぬがいい!
101
00:05:45,920 --> 00:05:48,980
──温客行が空中から
偶人の棒を手にして、怪人に迫った
102
00:05:48,980 --> 00:05:51,720
温客行:これまたどこから
この炸裂する球は涌いて出て来た?
103
00:05:52,900 --> 00:05:55,480
葉白衣:温の野郎 貴様死にたいか?!
104
00:05:56,520 --> 00:05:57,560
温客行:なぁ車椅子の
105
00:05:57,560 --> 00:05:59,440
ほら もう一球私に寄越して!
106
00:05:59,440 --> 00:06:01,240
もう一度あの老いぼれに当ててやる!
107
00:06:01,240 --> 00:06:02,400
車椅子の怪人:貴様!
108
00:06:02,400 --> 00:06:05,000
──怪人は剣が閃くのを見て
再び鉄傘を開き大堂から逃げようとした
109
00:06:05,000 --> 00:06:06,960
周子舒:この鉄傘では俺を阻めんぞ
110
00:06:07,880 --> 00:06:11,240
──だが相手が手にしていた剣が
自在に制御できる軟剣だとは思っていなかった
111
00:06:12,880 --> 00:06:14,120
車椅子の怪人:よくも……
112
00:06:14,120 --> 00:06:19,840
軟剣……一振りで……
113
00:06:22,760 --> 00:06:24,120
温客行:阿絮
114
00:06:27,720 --> 00:06:29,200
張成嶺:なぜ師父があの怪人を殺したのに
115
00:06:29,200 --> 00:06:31,200
この偶人たちはまだ動いてるんですか?
116
00:06:31,360 --> 00:06:33,040
周子舒:あの車椅子か!
117
00:06:46,800 --> 00:06:48,360
張成嶺:はぁ……
118
00:06:48,360 --> 00:06:50,760
これで動かなくなりましたね
119
00:06:53,780 --> 00:06:55,040
温客行:阿絮
120
00:06:55,040 --> 00:06:58,880
──周子舒がよろめくと、温客行はすぐに
手を伸ばして彼を支え頬に口付けた
121
00:06:58,880 --> 00:07:00,640
温客行:いい剣だ!
122
00:07:01,600 --> 00:07:03,000
周子舒:下賎だ
123
00:07:03,000 --> 00:07:05,320
葉白衣:おい温の──
124
00:07:05,320 --> 00:07:10,160
──葉白衣は大股で歩いてくると温客行に
一掌叩き付けたが温客行はニヤニヤしながら避けた
125
00:07:10,160 --> 00:07:11,800
温客行:アイヨ 大前輩
126
00:07:11,800 --> 00:07:15,720
また若輩とこんな塵芥な些事で
やり合ってどうするんです?
127
00:07:16,960 --> 00:07:19,320
周子舒:二人とも手を止めてください
128
00:07:19,320 --> 00:07:21,680
穀潰しではない葉大前輩でしょうから
129
00:07:21,680 --> 00:07:24,360
ただちに神通力でこれらのカラクリを見破って
130
00:07:24,360 --> 00:07:27,240
我々が脱出する方法を考えてください
131
00:07:28,720 --> 00:07:30,440
葉白衣:カラクリは全部お前に滅茶苦茶にされた
132
00:07:30,440 --> 00:07:31,840
何やってるんだ
133
00:07:36,440 --> 00:07:38,040
張成嶺:師父
134
00:07:38,040 --> 00:07:39,720
大丈夫ですか?
135
00:07:42,280 --> 00:07:45,680
(周子舒):この子はさっき俺たち二人に
幾度も投げられたが
136
00:07:45,680 --> 00:07:47,840
意外なことに完全に恨みを忘れて
137
00:07:48,200 --> 00:07:50,560
一心に俺の怪我の事を思うだけだ……
138
00:07:52,560 --> 00:07:55,600
これでは俺が少し碌でもない奴に見えるぞ
139
00:07:57,880 --> 00:07:59,320
周子舒:大事ない
140
00:08:00,240 --> 00:08:02,960
張成嶺:師父 私がおぶって行きます
141
00:08:03,960 --> 00:08:07,400
周子舒:いいんだ お前に期待してない
142
00:08:08,060 --> 00:08:10,880
──二歩も行かないうちに
温客行が近寄って来て腰に手を回した
143
00:08:10,880 --> 00:08:12,920
周子舒:おい お前──
144
00:08:14,320 --> 00:08:17,120
(周子舒):この野郎 上手く
ありつくだけじゃ足りなかったのか……
145
00:08:17,640 --> 00:08:20,800
温客行:力を無駄にしないで
私に手を貸させておいて
146
00:08:20,800 --> 00:08:23,560
後であの老いぼれ食道楽が
万一これらのカラクリを持て余したら
147
00:08:23,560 --> 00:08:25,760
またあなたのケンカに期待することになるんです
148
00:08:29,340 --> 00:08:36,120
──周子舒もそうだと思い彼に寄り掛かると
気が緩み、身体がバラバラになるような感覚で
一気に崩れそうになった
149
00:08:39,160 --> 00:08:40,960
葉白衣:全員こっちに来い
150
00:08:43,600 --> 00:08:45,000
周子舒:行こう
151
00:08:46,080 --> 00:08:49,440
──三人は葉白衣に続いて壁の穴に入って行った
152
00:08:51,880 --> 00:08:56,640
その中は別天地で、壁一面に
複雑に入り組んだ線が描かれていた
153
00:08:59,120 --> 00:09:00,280
張成嶺:この
154
00:09:00,280 --> 00:09:02,400
この壁一面にあるのは──
155
00:09:02,400 --> 00:09:04,680
葉白衣:傀儡荘の地図だ
156
00:09:06,640 --> 00:09:08,240
温客行:これは……
157
00:09:09,360 --> 00:09:12,200
たとえ私がもらっても 理解できないね
158
00:09:13,340 --> 00:09:16,880
周子舒:良かったな 俺もだ
159
00:09:18,400 --> 00:09:19,920
葉前輩
160
00:09:19,920 --> 00:09:22,160
我々はどうやって出るんです?
161
00:09:37,080 --> 00:09:39,320
葉白衣:この中にあるはずだ……
162
00:09:47,120 --> 00:09:49,640
張成嶺:あ! 壁が開きました!
163
00:10:06,400 --> 00:10:10,160
周子舒:これを造った傀儡荘の者も
まことの奇人だな
164
00:10:10,160 --> 00:10:11,560
張成嶺:階段です!
165
00:10:11,560 --> 00:10:12,880
葉白衣:行くぞ
166
00:10:17,360 --> 00:10:20,080
──四人は慎重に上に向かった
167
00:10:20,080 --> 00:10:24,680
どれだけ上ったか分からないほど
上ると、再び地上に戻った
168
00:10:24,680 --> 00:10:28,840
風があり、陽光があり、植物がある──
169
00:10:28,840 --> 00:10:31,800
悪くない中庭だった
170
00:10:41,800 --> 00:10:44,680
葉白衣:これこそが正真正銘の傀儡荘だ
171
00:10:45,040 --> 00:10:46,720
張成嶺:えぇ? 師父
172
00:10:46,720 --> 00:10:49,200
あそこの部屋はどうして……
173
00:10:50,120 --> 00:10:52,800
周子舒:開口部はすべて完全に封鎖されている
174
00:10:52,800 --> 00:10:56,480
まさか何かを閉じ込めているのか?
175
00:11:05,080 --> 00:11:07,360
張成嶺:師父 葉前輩は入って行きましたよ
176
00:11:07,360 --> 00:11:08,240
私たちは──
177
00:11:08,240 --> 00:11:09,520
周子舒:付いて来い
178
00:11:10,640 --> 00:11:12,600
温客行:少年 私の後を行って
179
00:11:12,600 --> 00:11:13,720
張成嶺:はい
180
00:11:28,520 --> 00:11:30,680
温客行:なんて匂い……
181
00:11:32,000 --> 00:11:37,120
──小さな牢監の中に牀があり、牀の上に
太い鉄の鎖に繋がれた一人の人が見えた
182
00:11:37,360 --> 00:11:41,720
龍雀:誰…… 誰じゃ──
183
00:11:43,160 --> 00:11:47,140
──鎖は巻きつけられているのではなく
琵琶骨、膝蓋骨を穿いていた
184
00:11:47,140 --> 00:11:50,840
老人の衣服は元の色が分からず
体を覆うこともできていない
185
00:11:51,040 --> 00:11:53,840
張成嶺:こ…… この……
186
00:11:54,060 --> 00:11:57,640
(周子舒):この老人は傷口のところが腐って
骨だけになっている
187
00:11:57,640 --> 00:11:59,600
身体はどうしようもないほど不潔で
188
00:11:59,600 --> 00:12:03,120
鉄鎖が骨を穿(うが)ち 目は物を見る力がない……
189
00:12:03,440 --> 00:12:05,200
これでまだ生きているのは
190
00:12:05,200 --> 00:12:07,520
至難の業だ……
191
00:12:09,240 --> 00:12:11,440
龍雀:その──
192
00:12:11,440 --> 00:12:13,280
おぬしらは……
193
00:12:13,280 --> 00:12:16,320
だ……誰じゃ?
194
00:12:17,760 --> 00:12:21,200
龍……龍孝(ロン・シャオ)は?
195
00:12:21,600 --> 00:12:24,480
龍孝とはあの車椅子の上の動けぬ者か?
196
00:12:24,480 --> 00:12:25,880
奴は死んだ
197
00:12:25,880 --> 00:12:27,540
龍雀:死……
198
00:12:27,540 --> 00:12:29,200
死んだ……?
199
00:12:29,200 --> 00:12:31,080
葉白衣:それはお前の何だ?
200
00:12:36,000 --> 00:12:38,400
龍雀:はははは……
201
00:12:42,260 --> 00:12:45,880
──目尻ににじみ出た濁った涙は滑り落ちて消えた
202
00:12:46,040 --> 00:12:47,320
葉白衣:周の小僧
203
00:12:47,320 --> 00:12:49,440
お前の剣を寄越せ
204
00:12:51,280 --> 00:12:53,080
周子舒:どうぞ
205
00:12:59,400 --> 00:13:00,720
周子舒:チッ──
206
00:13:00,720 --> 00:13:04,360
(周子舒):この鉄鎖はびくともしないのか?
207
00:13:10,080 --> 00:13:11,480
龍雀:はは……
208
00:13:11,480 --> 00:13:14,640
力を……無駄に消費するでない
209
00:13:14,640 --> 00:13:16,600
無意味じゃ
210
00:13:17,440 --> 00:13:19,840
葉白衣:お前はどんな
天の怒りと人の恨みを買う事をしたんだ
211
00:13:19,840 --> 00:13:22,240
あの動けぬ者はお前に
どんな恨みを抱いていたのだ?
212
00:13:23,080 --> 00:13:24,840
龍雀:わしか
213
00:13:26,080 --> 00:13:27,760
わしの行いは……
214
00:13:27,760 --> 00:13:32,320
ただ一つ 彼に申し訳ない事をした事だ
215
00:13:33,040 --> 00:13:38,680
生かし育てたのじゃ 彼のような……息子を
216
00:13:38,680 --> 00:13:39,000
周子舒:ハッ!
217
00:13:39,000 --> 00:13:39,960
温客行:はっ?
周子舒:ハッ!
218
00:13:39,960 --> 00:13:40,720
温客行:はっ?
219
00:13:41,160 --> 00:13:43,840
(周子舒):この老いぼれ食道楽は全く神だな
220
00:13:43,840 --> 00:13:47,440
こんな常軌を逸した事も彼には言い当てられるのか
221
00:13:47,440 --> 00:13:49,800
温客行:あなたが龍雀?
222
00:13:49,800 --> 00:13:51,720
ねぇ彼は龍……
223
00:13:53,440 --> 00:13:55,920
孝行できず の孝と言うんですか?
224
00:13:55,920 --> 00:13:57,160
周子舒:シッ──
225
00:13:57,160 --> 00:13:58,880
温客行:チッ……阿絮……
226
00:13:58,880 --> 00:14:02,880
──周子舒が肘鉄を食らわせると温客行は
避けもせずあばらをさすって彼を見た
227
00:14:03,320 --> 00:14:11,440
龍雀:わしは前世で殺人放火の極悪な大罪を犯し
228
00:14:11,840 --> 00:14:17,080
この一世で報いを受けておるのじゃ
229
00:14:19,240 --> 00:14:23,260
──老人は牀の柱に凭れ、橘の皮ような手で
その牀の柱をさすった
230
00:14:23,260 --> 00:14:28,040
龍雀:ここは当時の わしと
羽追(ユージュイ)の臥房で
231
00:14:29,320 --> 00:14:34,400
あの小畜生は まさにここで生まれたんじゃ
232
00:14:34,840 --> 00:14:42,280
思うにわしら夫婦二人とも
奴の手で死んでしまうのだろう
233
00:14:45,520 --> 00:14:50,120
さだめではないのか?
234
00:14:52,000 --> 00:14:55,040
周子舒:羽追というのはご令室ですか?
235
00:14:55,040 --> 00:14:58,840
──「羽追」と聞くと深く刻まれた溝が緩み
涙が口元の皺に引っかかり落ちることなく光った
236
00:14:58,840 --> 00:15:02,120
龍雀:子が生まれたために亡くした
237
00:15:02,600 --> 00:15:07,520
羽追が亡くなって以降 わしは傀儡荘を築き
238
00:15:07,520 --> 00:15:10,400
奴僕を解雇した……
239
00:15:11,600 --> 00:15:13,080
張成嶺:それって……
240
00:15:13,400 --> 00:15:15,920
(張成嶺):温前輩は本当に神だ……
241
00:15:15,920 --> 00:15:20,200
以前 身を隠す人は人に殺されるのを恐れてるか
242
00:15:20,200 --> 00:15:22,520
悲しみであるかだとおっしゃってた
243
00:15:22,520 --> 00:15:25,000
最も会いたい人に会えないなら
244
00:15:25,000 --> 00:15:28,160
いっそのこと自分をここに埋めるのだと……
245
00:15:28,360 --> 00:15:34,000
龍雀:わしは羽追に あの小畜生を
しっかり大切に育て上げると約束した
246
00:15:34,000 --> 00:15:39,440
だが彼はなんと生来立てぬ者じゃった
247
00:15:39,440 --> 00:15:44,040
わしは平生で学んだことを
全て授けることに傾倒した
248
00:15:44,040 --> 00:15:48,640
たとえ別の能力がなかろうとも
249
00:15:48,640 --> 00:15:52,200
身を立て落ち着くことができるならばとな
250
00:15:53,400 --> 00:15:54,720
葉白衣:そうである以上
251
00:15:54,720 --> 00:15:57,000
奴は一体何をしてお前を
監禁することになったんだ?
252
00:15:59,040 --> 00:16:04,520
龍雀:それは陰陽冊のためじゃ
253
00:16:06,960 --> 00:16:14,920
生死肉骨 逆転陰陽──
254
00:16:18,360 --> 00:16:24,200
周子舒:しかし陰陽冊は封山剣や六合心法と
その時一緒に琉璃甲に封印されたのでは?
255
00:16:24,200 --> 00:16:27,960
まさか彼は琉璃甲があなたのところに
あると考えていたんですか?
256
00:16:28,760 --> 00:16:31,000
龍雀:琉璃甲?
257
00:16:33,320 --> 00:16:35,000
おぬしらのぅ
258
00:16:35,000 --> 00:16:37,600
みな間違いじゃ
259
00:16:37,800 --> 00:16:44,360
あの琉璃甲はわしが当時作ったが それはただの錠前
260
00:16:44,360 --> 00:16:47,640
中の物を手に入れたいのならば
261
00:16:47,640 --> 00:16:51,440
五つの琉璃甲では役に立たぬ
262
00:16:51,440 --> 00:16:55,840
七つ八つであっても役には立たぬ
263
00:16:56,840 --> 00:16:59,760
それに足りぬのは“鍵”じゃ
264
00:17:01,480 --> 00:17:03,480
葉白衣:鍵はお前の手にあるのか?
265
00:17:04,120 --> 00:17:05,480
龍雀:わしは持っておらん
266
00:17:05,480 --> 00:17:08,600
葉白衣:お前の手にないなら 誰の手にあるんだ?
267
00:17:09,360 --> 00:17:11,120
龍雀:そうじゃ
268
00:17:11,120 --> 00:17:12,960
おぬしは信じぬ
269
00:17:12,960 --> 00:17:15,480
奴も信じぬ
270
00:17:17,880 --> 00:17:19,600
周子舒:龍前輩
271
00:17:19,880 --> 00:17:22,440
あなたは鍵が誰の手にあるかご存知なんですか?
272
00:17:23,480 --> 00:17:25,000
龍雀:確かに
273
00:17:25,200 --> 00:17:27,520
わしは知っておる──
274
00:17:30,220 --> 00:17:32,360
わしは当時誓いを立てた
275
00:17:32,360 --> 00:17:37,160
鍵の行方は 誰にも教えはせぬと
276
00:17:37,680 --> 00:17:39,760
龍孝……
277
00:17:39,760 --> 00:17:42,480
龍孝の奴は正気でなかった
278
00:17:44,960 --> 00:17:46,160
葉白衣:そう申すなら
279
00:17:46,160 --> 00:17:50,960
三十年前 容炫らに何が起こったか
お前は事情に詳しい者なのか?
280
00:17:54,280 --> 00:17:55,360
龍雀:うむ……
281
00:17:55,360 --> 00:17:55,840
葉白衣:お前は──
282
00:17:55,840 --> 00:17:58,200
龍雀:だがわしは言うことができぬ
283
00:17:58,200 --> 00:18:01,800
容炫夫婦にはわしの命を救った恩がある
284
00:18:01,800 --> 00:18:06,040
わしは容夫人と約束した 言うことはできぬ
285
00:18:06,200 --> 00:18:08,400
葉白衣:お前の勝手にはできんぞ
286
00:18:08,400 --> 00:18:10,820
龍雀:ははははは……
287
00:18:15,240 --> 00:18:18,840
おぬしがわしをどのようにできるんじゃ?
288
00:18:19,040 --> 00:18:21,880
龍孝の小畜生が……
289
00:18:21,880 --> 00:18:25,800
すでにわしを鎖で繋いで三年じゃ
290
00:18:25,800 --> 00:18:31,000
おぬしは一体 わしをどのようにできるのだ?
291
00:18:31,000 --> 00:18:34,680
──何食わぬ顔の彼を見て周子舒は“臣死すら且つ
避けず 卮酒安くんぞ辞するに足らんや”を思い出した
292
00:18:34,680 --> 00:18:37,200
(周子舒):このような驚くほど
秀でた才能のある龍雀が
(*惊才绝艳=才能ある人や文学《今生説》王晫)
293
00:18:37,200 --> 00:18:40,000
紛れもなく傀儡の技術で頂点を極めていながら
294
00:18:40,000 --> 00:18:42,560
むしろ一人のために人煙を遠ざけ
295
00:18:42,560 --> 00:18:45,760
摩訶不思議な傀儡山荘を一手に築き上げた
(*神鬼莫测=神や鬼でも予測できない《三国演義》)
296
00:18:49,960 --> 00:18:53,260
また一つの誓約のため 三年の
人の世の煉獄のような日々を過ごした──
297
00:18:53,260 --> 00:18:54,800
龍孝:教えろ! 私に教えろ!
また一つの誓約のため 三年の
人の世の煉獄のような日々を過ごした──
298
00:18:54,800 --> 00:18:56,560
龍孝:教えろ! 私に教えろ!
299
00:18:56,560 --> 00:18:59,000
龍雀:うぁぁぁぁ──!
300
00:19:07,760 --> 00:19:09,760
(周子舒):たとえ実の息子であっても
301
00:19:09,760 --> 00:19:12,240
彼の口を割らせることはできなかった……
302
00:19:12,720 --> 00:19:14,400
江湖を見渡しても
303
00:19:14,400 --> 00:19:19,360
彼以外に 誰を英雄好漢と呼ぶことができるのか
304
00:19:23,640 --> 00:19:26,000
──温客行の彼を抱く腕が急にきつくなった
305
00:19:26,000 --> 00:19:27,480
周子舒:老温
306
00:19:27,480 --> 00:19:30,360
──温客行はぼんやりと龍雀を見つめていた
307
00:19:30,640 --> 00:19:32,800
周子舒:老温 どうした──
308
00:19:33,280 --> 00:19:35,600
──彼の黒い瞳に水が光ったように見えたが
一瞬で消えてしまった
309
00:19:35,600 --> 00:19:38,280
温客行:なぁ老いぼれ怪物
310
00:19:38,440 --> 00:19:42,080
言いたくないのに 人が嫌がることをするな
311
00:19:42,080 --> 00:19:43,000
葉白衣:龍雀
312
00:19:43,000 --> 00:19:43,400
龍雀:わしは……
313
00:19:43,400 --> 00:19:43,920
龍雀:わしは……
葉白衣:俺も琉璃甲やら鍵やら知りたくはない
314
00:19:43,920 --> 00:19:45,400
葉白衣:俺も琉璃甲やら鍵やら知りたくはない
315
00:19:45,400 --> 00:19:46,600
俺が聞きたいのは
316
00:19:46,600 --> 00:19:50,240
当時容炫と彼の妻が一体なぜ死んだのかだけだ
317
00:19:50,240 --> 00:19:51,520
──葉白衣は龍雀の腕を掴んだ
318
00:19:51,520 --> 00:19:52,580
温客行:少年
319
00:19:52,580 --> 00:19:53,280
君の師父を支えてあげて
320
00:19:53,280 --> 00:19:53,740
葉白衣:言え
君の師父を支えてあげて
321
00:19:53,740 --> 00:19:54,340
周子舒:老温?
葉白衣:言え
322
00:19:54,340 --> 00:19:54,580
周子舒:老温?
323
00:19:54,580 --> 00:19:54,880
周子舒:老温?
張成嶺:はい
324
00:19:54,880 --> 00:19:55,840
葉白衣:当時一体何が起こったのだ!
張成嶺:はい
325
00:19:55,840 --> 00:19:57,040
葉白衣:当時一体何が起こったのだ!
326
00:19:57,280 --> 00:19:58,600
温客行:老いぼれ怪物
327
00:19:58,600 --> 00:19:58,740
龍雀:わしは……
温客行:老いぼれ怪物
328
00:19:58,740 --> 00:20:00,000
龍雀:わしは……
温客行:いい加減にしろ!
329
00:20:00,000 --> 00:20:00,260
温客行:いい加減にしろ!
330
00:20:00,260 --> 00:20:02,640
──温客行は突然葉白衣の後心を襲った
331
00:20:03,700 --> 00:20:05,760
葉白衣:小僧 貴様──
332
00:20:07,840 --> 00:20:08,840
何をとち狂った!
333
00:20:08,840 --> 00:20:12,600
温客行:お前が目障りだから
お前を殴りたい いけないか?
334
00:20:17,960 --> 00:20:19,040
張成嶺:師父……
335
00:20:19,040 --> 00:20:20,320
前輩たちはどうして
336
00:20:20,320 --> 00:20:22,320
どうして突然殴り合いを始めたんですか?
337
00:20:23,120 --> 00:20:25,720
(周子舒):三十年前……
338
00:20:27,900 --> 00:20:31,280
張成嶺:師父……琉璃甲って一体何ですか?
339
00:20:31,280 --> 00:20:34,120
それに三十年あまり前に一体
どんな事が起きたんですか?
340
00:20:34,120 --> 00:20:35,960
周子舒:鬼主がずっとこの子に付いて来たのは
それに三十年あまり前に一体
どんな事が起きたんですか?
341
00:20:35,960 --> 00:20:36,120
周子舒:鬼主がずっとこの子に付いて来たのは
342
00:20:36,120 --> 00:20:38,400
もしや彼が何か知ってると思ったからじゃないのか
343
00:20:38,400 --> 00:20:39,600
もしや彼が何か知ってると思ったからじゃないのか
温客行:二十年余りだ
344
00:20:39,600 --> 00:20:40,180
温客行:二十年余りだ
345
00:20:40,640 --> 00:20:43,440
今でも まだ彼の剣法を知る人がいるとはね
346
00:20:43,440 --> 00:20:45,800
ずっと何年も前
347
00:20:45,800 --> 00:20:48,680
私は路端で一つの死屍を見ていた
348
00:20:48,680 --> 00:20:49,700
頭髪はすっかり枯れていて……
349
00:20:49,700 --> 00:20:50,680
琉璃甲には
頭髪はすっかり枯れていて……
350
00:20:50,680 --> 00:20:51,160
琉璃甲には
351
00:20:51,160 --> 00:20:53,320
絶世の武功の可能性があり
352
00:20:53,640 --> 00:20:56,160
敵国の宝の可能性がある
353
00:20:56,920 --> 00:20:59,280
あなたは欲しくない?
354
00:21:04,280 --> 00:21:06,480
(周子舒):そういうことか……
355
00:21:08,080 --> 00:21:09,640
周子舒:成嶺
356
00:21:09,640 --> 00:21:11,360
俺を端に座らせろ
357
00:21:11,360 --> 00:21:14,040
張成嶺:はい 師父ご注意を
358
00:21:21,060 --> 00:21:23,560
龍雀:おぬしは怪我か?
359
00:21:23,740 --> 00:21:25,880
周子舒:あなたの息子がやった
360
00:21:27,740 --> 00:21:30,000
龍雀:そうかい……
361
00:21:30,000 --> 00:21:32,280
わしを見てみよ
362
00:21:32,520 --> 00:21:36,040
おぬしはまだ良い方じゃ
363
00:21:36,760 --> 00:21:38,800
(周子舒):カラクリと言っても
364
00:21:38,800 --> 00:21:42,760
俺は十の秘訣のうち九に通じて一には通じてない
(*つまり全然知らない)
365
00:21:42,760 --> 00:21:45,000
だがもし刑具についてなら
366
00:21:45,000 --> 00:21:47,200
俺は天窗の首領をあれだけ長くやっていたんだ
367
00:21:47,200 --> 00:21:49,720
まだ少し研究の余地がある……
368
00:21:54,160 --> 00:21:56,040
周子舒:ん……?
369
00:21:56,140 --> 00:21:58,960
この鎖は一体どんな材質なのか……
370
00:22:01,580 --> 00:22:03,360
申し訳ない龍前輩
371
00:22:03,680 --> 00:22:07,280
この鎖 私はどうにもできない
372
00:22:07,640 --> 00:22:09,520
今やあなたの息子は死んだ
373
00:22:09,520 --> 00:22:11,280
あなたはどうしますか?
374
00:22:12,580 --> 00:22:15,400
龍雀:ならばわしも死ぬしかない──
375
00:22:15,400 --> 00:22:17,720
わしはとうに死んでいるはずじゃった
376
00:22:17,720 --> 00:22:19,600
奴はさせなかった
377
00:22:19,600 --> 00:22:23,840
今やわしに構う者はいなくなった
378
00:22:24,700 --> 00:22:26,520
この一世
379
00:22:26,520 --> 00:22:29,520
最も後悔しておる事の一つは
380
00:22:29,520 --> 00:22:34,600
羽追の息子をちゃんと躾けられなかったことじゃ
381
00:22:35,160 --> 00:22:36,800
分かっておる
382
00:22:36,800 --> 00:22:39,560
わしの息子でもある
383
00:22:40,840 --> 00:22:46,120
むしろ常に奴が羽追の命を奪ったと思っておった
384
00:22:46,360 --> 00:22:48,160
もしも……
385
00:22:48,160 --> 00:22:50,160
もしこの幾年か
386
00:22:50,160 --> 00:22:55,000
父親として少しでも良いところがありさえすれば
387
00:22:55,000 --> 00:22:58,080
彼を害なものにすることもなかったじゃろう
388
00:23:01,200 --> 00:23:03,000
周子舒:……確かに
389
00:23:10,140 --> 00:23:11,560
龍雀:これは
390
00:23:11,560 --> 00:23:14,520
これは光が入ってきたのか?
391
00:23:16,160 --> 00:23:17,560
周子舒:あぁ……
392
00:23:17,560 --> 00:23:19,960
彼らが屋根をめくった
393
00:23:20,360 --> 00:23:21,400
龍雀:そうか
394
00:23:21,400 --> 00:23:22,480
そうか
395
00:23:22,480 --> 00:23:24,600
めくれてよかった……
396
00:23:24,600 --> 00:23:28,600
ははは……
397
00:23:31,640 --> 00:23:33,680
葉白衣:温の野郎 何を騒いてるんだ?
398
00:23:33,960 --> 00:23:35,120
おい龍の
399
00:23:35,120 --> 00:23:37,520
俺は当時の容炫がどんなだったか
知っておかねばならん
400
00:23:37,520 --> 00:23:39,640
あれは俺の弟子だ!
401
00:23:41,160 --> 00:23:43,360
温客行:あんたの弟子──
402
00:23:44,440 --> 00:23:47,120
(温客行):容炫と龍雀は同世代
403
00:23:47,120 --> 00:23:49,600
彼がもし容炫の師父なら……
404
00:23:49,600 --> 00:23:54,040
この葉ってのはまさか王八千年なのか?
(*千年王八万年龟=ご長寿)
405
00:24:02,400 --> 00:24:06,040
葉白衣:当時容炫は俺のところから
六合心法の半本を盗んで下山した
406
00:24:06,040 --> 00:24:07,960
以来一度も戻って来ぬ
407
00:24:07,960 --> 00:24:10,120
今また奴の残した物のため
408
00:24:10,120 --> 00:24:12,680
中原武林は山河令を召集した──
409
00:24:12,680 --> 00:24:14,200
なぁ龍の
410
00:24:14,200 --> 00:24:17,440
まさか俺は当時 何が起こったのか
知るべきでないのか?
411
00:24:19,560 --> 00:24:22,240
龍雀:あなたは……あなたは
412
00:24:22,240 --> 00:24:24,400
葉……葉……
413
00:24:24,400 --> 00:24:27,040
葉白衣:俺がその葉白衣だ
414
00:24:31,360 --> 00:24:37,040
龍雀:前輩がまだ 人の世に
いらっしゃるとは思いもよらず……
415
00:24:38,680 --> 00:24:39,200
張成嶺:あの……
416
00:24:39,200 --> 00:24:40,760
周子舒:龍雀前輩
417
00:24:41,000 --> 00:24:42,960
私は傀儡荘のカラクリに誤って闖入してしまい
418
00:24:42,960 --> 00:24:45,560
男と女の偶人二人に遭遇しました
419
00:24:45,560 --> 00:24:47,600
この荘内には非常に多くの偶人がいましたが
420
00:24:47,600 --> 00:24:49,400
どれも頭にも顔にも何もなく
421
00:24:49,400 --> 00:24:53,480
その一組みたいに 髪一本に至るまで
まるで人のようなのは一体もなかった
422
00:24:53,800 --> 00:24:55,320
龍前輩
423
00:24:55,320 --> 00:24:59,120
その一組の偶人に 彫ってあったのは
あなたとご令室ですか
424
00:24:59,120 --> 00:25:01,400
それとも容炫夫婦ですか?
425
00:25:04,000 --> 00:25:07,440
龍雀:容炫夫婦じゃ
426
00:25:08,520 --> 00:25:13,320
周子舒:その後 それらは互いに
それぞれの頭を叩き割りました
427
00:25:15,600 --> 00:25:17,600
龍雀:そうなのか……
428
00:25:19,000 --> 00:25:21,360
葉白衣:容炫は魔に魅入られたのか?
429
00:25:22,360 --> 00:25:23,800
龍雀:……その通り
430
00:25:23,800 --> 00:25:29,520
容夫人の死の前に 彼は魔に魅入られた
431
00:25:30,400 --> 00:25:35,840
容夫人は 彼の手で死んだのだ
432
00:25:39,260 --> 00:25:44,320
その頃の容炫とわし それからその他の幾人か
433
00:25:44,320 --> 00:25:46,400
皆まだ年若かった
434
00:25:46,400 --> 00:25:49,840
自信に溢れ 意気投合し いくらか付き合いを持ち
435
00:25:49,840 --> 00:25:51,320
容炫の仲間たち:ほら 酒を!
自信に溢れ 意気投合し いくらか付き合いを持ち
436
00:25:51,320 --> 00:25:51,720
容炫の仲間たち:ははは 満杯に!
自信に溢れ 意気投合し いくらか付き合いを持ち
437
00:25:51,720 --> 00:25:52,360
容炫の仲間たち:ははは 満杯に!
龍雀:共に酒を飲んでは切磋琢磨した……
438
00:25:52,360 --> 00:25:54,320
容炫の仲間たち:満たせ! 酔うまで帰るな!
龍雀:共に酒を飲んでは切磋琢磨した……
439
00:25:54,320 --> 00:25:54,760
容炫:飲もう!
龍雀:共に酒を飲んでは切磋琢磨した……
440
00:25:54,760 --> 00:25:55,440
青年龍雀:ああ!
容炫:飲もう!
441
00:25:55,440 --> 00:25:55,840
青年龍雀:ああ!
442
00:25:55,840 --> 00:25:57,240
容炫の仲間たち:満杯だ!いっぱい注げ!
443
00:25:57,240 --> 00:25:59,400
容炫の仲間たち:ほらほら!もっと飲め!
444
00:25:59,400 --> 00:26:06,160
龍雀:容炫はわしらの中で最も
功夫が高く 悟性が素晴らしかった
445
00:26:06,160 --> 00:26:11,960
ある日酒を飲んだ後 容炫は
大いに感慨に浸っておった……
446
00:26:13,640 --> 00:26:15,320
容炫:男としてこの世に生まれて
447
00:26:15,320 --> 00:26:17,440
もし一つの功績も上げずに
448
00:26:17,440 --> 00:26:19,600
無名のままの一生であるのは
449
00:26:19,600 --> 00:26:21,520
残念じゃないか?
450
00:26:21,520 --> 00:26:24,160
武学の道は 博大にして精深
451
00:26:24,160 --> 00:26:26,880
江湖の各大門派の武功の絶学は
452
00:26:26,880 --> 00:26:28,440
皆それぞれ長短があり
453
00:26:28,440 --> 00:26:33,880
数十年ごとに 武林中の奇才が
燦然と出現し 自ら一派を成す
(*横空出世=雲を突き抜け突然現れる)
454
00:26:33,880 --> 00:26:36,880
華山 昆山 蒼山など全部そうだが
455
00:26:36,880 --> 00:26:39,280
往々にして後継に力がない
456
00:26:39,280 --> 00:26:41,600
先人の伝えたことを
紋切り型で模倣しているに過ぎぬ
457
00:26:41,600 --> 00:26:43,680
一代は一代に及ばぬままで
(*一代不如一代=世代が下るほど悪くなる)
458
00:26:43,680 --> 00:26:46,560
必ず衰ありて 必ず亡あり
459
00:26:48,000 --> 00:26:53,480
だがよりによって各大門派は そのわずかな
功夫を箱の底に仕舞い込んで人に見せもしない
460
00:26:53,520 --> 00:26:58,800
このままでは どれだけ神功絶学の
伝承が途絶えるかも分からぬ
461
00:26:58,800 --> 00:27:03,360
なぁ君たち 門派というのはとても愚かだよな……
462
00:27:03,780 --> 00:27:05,760
葉白衣:その話は本来俺が話したものだ
463
00:27:05,760 --> 00:27:08,440
あいつがなぞって読み上げたに過ぎぬ
(*照本宣科=書かれたものをそのまま棒読みする)
464
00:27:08,640 --> 00:27:12,000
いずれの門派を自称しようとも驕った者は
465
00:27:12,000 --> 00:27:15,200
見るまでもなく 必然的に穀潰しだと分かる
466
00:27:15,200 --> 00:27:19,120
他人が教えれば学び 学べば何でも能力を得るとして
467
00:27:19,120 --> 00:27:22,480
それは見世物芸人が仕込んだ獅子と
何か区別があるか?
468
00:27:23,280 --> 00:27:23,720
葉白衣:絶学となると──
469
00:27:23,720 --> 00:27:24,920
容炫:……絶学となると
葉白衣:絶学となると──
470
00:27:24,920 --> 00:27:25,400
容炫:……絶学となると
471
00:27:25,400 --> 00:27:28,320
容炫:絶学も人が書き上げたものじゃないのか
472
00:27:28,320 --> 00:27:31,240
競って人の書いた秘籍をむしり取り合い
473
00:27:31,240 --> 00:27:33,760
他人の言を拾っては規範のごとく信奉するなど
474
00:27:33,760 --> 00:27:36,240
人に二つ頭が生えていると思っているのか
475
00:27:36,240 --> 00:27:38,160
それとも己に頭がないのか
476
00:27:39,600 --> 00:27:40,960
葉白衣:何を笑う
477
00:27:40,960 --> 00:27:44,960
お前こそ秦懐章の出来損ないの奴に
教えられてダメになったのだ
478
00:27:47,240 --> 00:27:49,040
龍雀:前輩は
479
00:27:49,040 --> 00:27:53,000
思った通り世俗を離れた奇人じゃ
480
00:27:54,240 --> 00:27:59,240
その後 容炫はある考えを思いついた
481
00:27:59,240 --> 00:28:04,320
わしら数人で それぞれ己の家の武功を盗み出し
482
00:28:04,320 --> 00:28:04,800
共に置くための 武庫を建て──
483
00:28:04,800 --> 00:28:08,480
容炫:共に置くための 武庫を建て
共に置くための 武庫を建て──
484
00:28:08,480 --> 00:28:13,320
容炫:あらゆる知識に通じることで
諸家の長所を集めた絶学が創出できる
485
00:28:13,320 --> 00:28:16,360
容炫の仲間たち:良い考えだ なかなか面白いぞ
486
00:28:16,360 --> 00:28:18,600
どうして思いつかなかったのか 悪くないぞ
487
00:28:18,600 --> 00:28:21,000
武庫を建てよう
488
00:28:21,000 --> 00:28:25,560
容炫:龍兄 その武庫は君が製作を担当するんだぞ?
489
00:28:25,560 --> 00:28:27,120
青年龍雀:よかろう
490
00:28:28,200 --> 00:28:34,880
龍雀:その武庫こそ言い伝えにある
完全なる琉璃甲じゃ
491
00:28:34,880 --> 00:28:38,240
琉璃甲はわしらが別々に保管し
492
00:28:38,240 --> 00:28:42,840
鍵は容夫人に管理を任せた……
493
00:28:42,960 --> 00:28:45,480
葉白衣:諸家の長けたるを寄せ集める?
494
00:28:45,480 --> 00:28:47,760
この世界の長短は相生(そうしょう)し
495
00:28:47,760 --> 00:28:50,080
一つとして 短なく長だけのものはない──
496
00:28:50,080 --> 00:28:51,560
奴のそれはデタラメだ
497
00:28:51,560 --> 00:28:55,160
金剛掌と峨嵋刺を一緒にできるのか?
498
00:28:55,160 --> 00:28:59,480
大きく逞しい漢を 小さき女子の
裙子に押し込めるのか?
(*五大三粗=大きな手足耳肩尻と太い首脚腰)
499
00:28:59,480 --> 00:29:02,240
もしお前がまことの武学の
真諦(しんてい)を理解できるなら
500
00:29:02,240 --> 00:29:05,880
飛花落葉や 潮位の変化でも 悟ることができよう
501
00:29:05,880 --> 00:29:07,280
もしできぬなら
502
00:29:07,280 --> 00:29:11,640
天下の典籍を盗んだとて ただの写本に過ぎぬ
503
00:29:18,040 --> 00:29:22,680
(周子舒):無論 他家の秘籍を盗み取ろうと
また他人に己の門の功夫を漏らそうと
504
00:29:22,680 --> 00:29:25,080
いずれも江湖においては禁忌である──
505
00:29:27,240 --> 00:29:29,520
周子舒:龍前輩のおっしゃるその人たち
506
00:29:29,520 --> 00:29:32,360
当時の五大家の優秀な新人というのは
507
00:29:32,360 --> 00:29:36,960
たとえば趙敬 高崇 沈慎の類ですか?
508
00:29:38,000 --> 00:29:39,760
龍雀:その通り
509
00:29:39,920 --> 00:29:45,240
おかしなことに わしらはその頃はまだ全ての門派の
510
00:29:45,240 --> 00:29:48,960
境界を打ち破る先駆けだと思い込んでいた──
511
00:29:49,640 --> 00:29:52,160
それで容炫が持ち出したのが
512
00:29:52,160 --> 00:29:56,440
六合心法の半本なのだ
513
00:29:58,000 --> 00:29:59,360
周子舒:葉前輩
514
00:29:59,360 --> 00:30:03,160
六合心法とは 一体どんなものですか?
515
00:30:12,280 --> 00:30:14,800
葉白衣:六合心法の伝説は上古の物
516
00:30:14,800 --> 00:30:17,600
真正の六合心法は実際は 早うに伝承が途絶えた
517
00:30:17,600 --> 00:30:19,520
俺が一人で……
518
00:30:20,280 --> 00:30:22,840
友人が偶然その断片を手に入れ
519
00:30:22,840 --> 00:30:25,520
二十年の時を掛けて 己で補完し一つにまとめた
520
00:30:25,520 --> 00:30:27,400
上下の二巻に分かれており
521
00:30:27,400 --> 00:30:29,280
下巻は容炫に盗まれ
522
00:30:29,280 --> 00:30:31,680
上巻は当時 長明山に残っていたが
523
00:30:31,680 --> 00:30:33,240
彼に……
524
00:30:34,080 --> 00:30:36,440
俺たちに破棄された
525
00:30:40,960 --> 00:30:42,520
(周子舒):ん?
526
00:30:42,920 --> 00:30:47,840
長明山には葉白衣と同世代の論議できる者がいて
527
00:30:47,840 --> 00:30:52,000
その人が上古の物を補完できたのか──
528
00:30:52,000 --> 00:30:54,600
葉白衣:俺が古僧だといつ言った
529
00:30:54,600 --> 00:30:57,840
(周子舒):まさかその人こそ
正真正銘の長明山の古僧か?
530
00:30:59,080 --> 00:31:02,560
ならば葉白衣が古僧の名号で一人下山したのは
531
00:31:02,880 --> 00:31:05,440
本物の古僧には行動する術がないからか
532
00:31:05,880 --> 00:31:07,720
それとも……
533
00:31:07,720 --> 00:31:09,440
すでに人の世に存在しないのか?
534
00:31:09,440 --> 00:31:13,360
龍雀:わしら皆でその半巻の古書を読んだ
535
00:31:13,360 --> 00:31:18,640
中の内容は実に高玄深邃(しんすい)に過ぎ
536
00:31:18,640 --> 00:31:21,520
誰一人 完全なる理解に至らなかった
537
00:31:35,080 --> 00:31:38,080
青年龍雀:容兄 この本に
書いてあるのを見てくれ……
538
00:31:38,080 --> 00:31:40,360
青年高崇:沈世弟 やはり見つからなかったのか?
539
00:31:40,360 --> 00:31:42,040
青年沈慎:もう一度探してくる……
540
00:31:42,040 --> 00:31:45,480
容炫:探せばきっと 見つけ出せるだろう!
541
00:31:45,480 --> 00:31:50,600
龍雀:あの日々の中で 各々が皆寝食を忘れ
542
00:31:50,600 --> 00:31:55,920
茫々たる大海の如き典籍の中を
貪るようにひっくり返し
(*浩如烟海=文献や資料が山程ある)
543
00:31:55,920 --> 00:32:00,120
少しでも蜘蛛の糸や馬蹄の跡を見つけ出し
(*蛛丝马迹=わずかな手がかり)
544
00:32:00,120 --> 00:32:03,320
その心法に注釈を付けたいと望んでいた──
545
00:32:03,560 --> 00:32:06,680
それの吸引力は実に大きかった
546
00:32:06,680 --> 00:32:10,280
容炫の言う その本を会得するということは
547
00:32:10,280 --> 00:32:16,640
八荒六合を理会することであり
真の天人合一であった
548
00:32:17,320 --> 00:32:21,160
龍雀:容炫はわしらの中で
一番遠くを行き 執着も一番強かった
549
00:32:21,160 --> 00:32:22,480
容炫:必ず
龍雀:容炫はわしらの中で
一番遠くを行き 執着も一番強かった
550
00:32:22,480 --> 00:32:24,280
龍雀:容炫はわしらの中で
一番遠くを行き 執着も一番強かった
551
00:32:24,280 --> 00:32:25,360
容炫:私は絶対……
龍雀:容炫はわしらの中で
一番遠くを行き 執着も一番強かった
552
00:32:25,360 --> 00:32:28,320
容炫:私は絶対会得できる! ハッ!
553
00:32:28,320 --> 00:32:31,720
龍雀:彼はほとんどその心法に
心を奪われておったのじゃろう
554
00:32:31,720 --> 00:32:34,720
だがわしらは誰も気付かなかった
555
00:32:34,720 --> 00:32:38,160
なぜならわしらも当時は皆 心を奪われていた──
556
00:32:38,160 --> 00:32:43,640
ある日が来て 彼はついに会得したと言った
557
00:32:43,880 --> 00:32:45,560
容炫:解ったぞ!
558
00:32:46,320 --> 00:32:49,280
ついに解ったぞ!解ったんだ!
559
00:32:49,280 --> 00:32:51,640
六合心法の真意とは──
560
00:32:51,640 --> 00:32:52,140
六合心法の真意とは──
龍雀:すなわち
561
00:32:52,140 --> 00:32:52,560
龍雀:すなわち
562
00:32:52,560 --> 00:32:53,000
龍雀:破りて後に立つ 破らずば立たず
563
00:32:53,000 --> 00:32:56,640
容炫:すなわち破りて後に立つ 破らずば立たず
龍雀:破りて後に立つ 破らずば立たず
564
00:32:56,640 --> 00:32:58,040
龍雀:破りて後に立つ 破らずば立たず
565
00:33:01,440 --> 00:33:03,400
葉白衣:何だと……
566
00:33:05,200 --> 00:33:09,640
龍雀:容炫が言うには 六合心法に書いてあるのは
567
00:33:09,640 --> 00:33:14,680
“絶する処に行き至れば まさに天門を窺う”
568
00:33:14,960 --> 00:33:18,480
何を為せば絶する処に行き至るのか?
569
00:33:18,480 --> 00:33:23,960
自ら武功を廃するのがいいのか
自ら経脈を断つのがいいのか
570
00:33:23,960 --> 00:33:30,040
さらには自ら生命を絶てばいいのか……
571
00:33:30,960 --> 00:33:35,560
葉白衣:お前たちは そう考えたのか?
572
00:33:35,560 --> 00:33:38,040
ははははは──
573
00:33:40,400 --> 00:33:45,080
自ら武功を廃し 自ら経脈を断つ……
574
00:33:46,400 --> 00:33:48,800
よく考え出せたものだ
575
00:33:49,200 --> 00:33:52,800
龍雀:その時はわしらももう正気ではなかった
576
00:33:52,800 --> 00:33:56,400
当時 羽追はすでに身籠っておった
(*身怀六甲=妊娠する《隋書》)
577
00:33:56,400 --> 00:33:59,440
わしはその妖書の影響を受けたが
578
00:33:59,440 --> 00:34:02,720
妻子を打ち捨てるほどでもなかった
579
00:34:02,720 --> 00:34:05,960
そこで最初に身を引いたが
580
00:34:05,960 --> 00:34:10,880
この事は極めて危険であり 彼らはわしに護法させた
581
00:34:15,300 --> 00:34:19,640
彼らは刻を選び出し 円座になると
582
00:34:19,640 --> 00:34:23,200
功成せずば 仁と成すとした
(*成仁=身を犠牲にする)
583
00:34:24,520 --> 00:34:28,080
ただ思いもしなかったのはその時に至り
584
00:34:28,320 --> 00:34:36,560
容炫以外のその他の者は皆 計らずも同時に
崖の上で手綱を引いたことじゃ
(*不约而动=偶然の一致 *悬崖勒马=危険に瀕し引き返すこと)
585
00:34:47,320 --> 00:34:52,280
葉白衣:他の者が練武するのは 身分や地位
野心や事業のために過ぎぬ
586
00:34:52,280 --> 00:34:54,160
皆 武功そのもののためではなく
587
00:34:54,160 --> 00:34:56,440
そんな大きな危険を冒す価値もない
588
00:34:56,760 --> 00:35:00,200
しかしただ容炫の奴だけが
本物の武道馬鹿であればこそ
589
00:35:00,200 --> 00:35:02,760
何を予想できぬことがあろうか
590
00:35:02,760 --> 00:35:05,000
龍雀:彼は自ら心脈を断ち
591
00:35:05,000 --> 00:35:10,200
顔にはまだ笑みを浮かべながらも
すでに息絶えておった
592
00:35:10,800 --> 00:35:13,920
わしらは長い間待ってようやく分かった
593
00:35:13,920 --> 00:35:16,200
最初から彼は間違っていたのだと……
594
00:35:16,200 --> 00:35:18,640
大夢から醒め
595
00:35:18,640 --> 00:35:21,000
わしら全員
596
00:35:21,000 --> 00:35:26,840
或いは座り或いは立ち 茫然とした
597
00:35:26,840 --> 00:35:29,040
岳鳳兒:阿炫!
598
00:35:30,720 --> 00:35:33,320
目を醒まして阿炫
599
00:35:33,320 --> 00:35:35,200
阿炫!
600
00:35:40,280 --> 00:35:42,520
青年龍雀:奥方
601
00:35:42,520 --> 00:35:44,320
お悔やみを……
602
00:35:46,640 --> 00:35:48,640
岳鳳兒:……ダメ
603
00:35:48,640 --> 00:35:50,640
私は必ず彼を助けられる
604
00:35:50,640 --> 00:35:52,960
私は必ず……
605
00:35:54,140 --> 00:35:57,600
龍雀:容夫人は神医谷の出身で
606
00:35:57,600 --> 00:36:01,800
当然 夫のこんな死は受け入れられなかった
607
00:36:01,800 --> 00:36:09,600
彼女は心を落ち着け 十八本の銀針を
取り出すと 容炫の胸に刺し
608
00:36:09,600 --> 00:36:13,680
どうにか彼の胸元のわずかな熱気を取り留め
609
00:36:13,680 --> 00:36:17,480
ほんの微弱な呼吸が回復した
610
00:36:17,480 --> 00:36:19,840
わしらは皆 彼が生きていると思った
611
00:36:19,840 --> 00:36:23,240
だが彼は目覚めはせず
612
00:36:23,240 --> 00:36:27,680
明らかにただの生きた死人だった
613
00:36:30,800 --> 00:36:34,120
青年龍雀:奥方 もう三日経った
614
00:36:34,120 --> 00:36:36,440
容兄は恐らく……
615
00:36:36,440 --> 00:36:38,640
目覚めはしない
616
00:36:38,640 --> 00:36:39,840
やはりお悔やみを……
617
00:36:39,840 --> 00:36:40,680
岳鳳兒:いえ
618
00:36:40,680 --> 00:36:42,920
彼は死んでないわ
619
00:36:46,400 --> 00:36:48,080
龍大侠
620
00:36:48,080 --> 00:36:50,880
どうか うちの夫を助けるのを手伝ってください
621
00:36:50,880 --> 00:36:52,840
一度 神医谷に戻ります
622
00:36:52,840 --> 00:36:56,160
青年龍雀:神医谷に戻る? あなたが?
623
00:36:56,560 --> 00:36:59,120
岳鳳兒:陰陽冊を盗む
624
00:37:01,340 --> 00:37:05,280
龍雀:彼女は武功はできぬゆえ
この行いは極めて危険で
625
00:37:05,280 --> 00:37:09,720
それでわしは彼女に付き添い共に向かった
626
00:37:10,960 --> 00:37:18,760
考えると やはりわしが自らの手で
そいつをこの世に持ち込んだのだ
627
00:37:20,240 --> 00:37:22,720
──温客行は急に周子舒の方を向いて
初めて龍雀の話を遮った
628
00:37:22,720 --> 00:37:24,040
温客行:ならば陰陽冊は
629
00:37:24,040 --> 00:37:27,080
まことに心脈が断絶した人を
救うことができるのか?
630
00:37:27,080 --> 00:37:28,680
──周子舒が顔を上げると彼と目が合った
631
00:37:28,680 --> 00:37:30,280
周子舒:老温……
632
00:37:31,380 --> 00:37:36,000
龍雀:一冊の医書が まことの聖物であるならば
633
00:37:36,000 --> 00:37:40,480
済世の吊るし壺の札を掛けた神医谷が
634
00:37:40,480 --> 00:37:44,120
ひた隠しにできると思うか?
635
00:37:45,800 --> 00:37:47,320
温客行:まがい物の
636
00:37:47,320 --> 00:37:49,360
インチキなのか……
637
00:37:51,820 --> 00:37:55,920
(周子舒):大巫でも俺のこの傷は
もう行き詰まりだと言っていた
638
00:37:56,320 --> 00:37:58,720
彼はまだいつでも忘れず覚えている……
639
00:38:02,560 --> 00:38:04,320
必要あるのか?
640
00:38:05,120 --> 00:38:10,200
世人は萍水相逢 他郷の客同士に過ぎない
(*《滕王閣序》王勃)
641
00:38:11,440 --> 00:38:13,480
ひょっとして……
642
00:38:14,240 --> 00:38:16,320
彼は本当に本心なのか?
643
00:38:17,060 --> 00:38:21,320
──彼に向けた温客行の視線に、重さと温度が
あるように感じて、思わずまた目を逸らした
644
00:38:27,200 --> 00:38:29,880
龍雀:陰陽冊というのは
645
00:38:29,880 --> 00:38:33,000
転移の術なのじゃ
646
00:38:33,000 --> 00:38:35,560
人一人の心脈を繕うならば
647
00:38:35,560 --> 00:38:42,680
生きておる人を用い 人の身体から
摘出したばかりの心と入れ替える必要がある……
648
00:38:43,080 --> 00:38:46,920
それがどの門の聖物と言える?
649
00:38:48,920 --> 00:38:50,680
周子舒:容夫人はまことに……
650
00:38:50,680 --> 00:38:54,160
龍雀:親疎遠近は 浮世の習い
651
00:38:54,160 --> 00:38:56,000
彼女は聖人ではないが
652
00:38:56,000 --> 00:39:01,720
これの是非は わしらのような
部外者が言えることではない
653
00:39:02,280 --> 00:39:04,080
葉白衣:容炫は生きていた
654
00:39:04,840 --> 00:39:06,640
龍雀:生きておった
655
00:39:06,840 --> 00:39:12,280
偶然の廻り合せか それともその心法が間違いなく
このような妖異であるのかは分からぬ
656
00:39:12,280 --> 00:39:16,760
彼は目覚めて以降 体内の真気が暴騰した
657
00:39:18,120 --> 00:39:23,600
生死を一巡りし なんと半本を会得したのだ
658
00:39:24,400 --> 00:39:31,400
その後 彼は容夫人に彼の肩先に寄せて
泣かせてやる機会さえ与えず
659
00:39:33,360 --> 00:39:40,960
そのまま閉関し その半本の前半を
補い完成させるのだと言った
660
00:39:40,960 --> 00:39:42,520
葉白衣:小畜生め
661
00:39:42,520 --> 00:39:44,920
龍雀:その後 何が起こったか
662
00:39:44,920 --> 00:39:48,000
わしも決して詳しく知り得ておらん
663
00:39:48,000 --> 00:39:51,680
家内が臨月に入り わしはただ
彼女に付きっきりじゃった
664
00:39:51,680 --> 00:39:54,520
彼女は出産時 極めて危険で
665
00:39:54,520 --> 00:39:59,080
医者はどうにか彼女ら母子を鬼門関から連れ戻した
666
00:39:59,080 --> 00:40:03,600
しかしその後 彼女は抜け殻になってしまった
667
00:40:03,600 --> 00:40:06,560
わしは彼女にまる半年付き添った
668
00:40:06,560 --> 00:40:10,280
最期はやはり回復には及ばず
669
00:40:11,040 --> 00:40:13,680
とうとう……
670
00:40:15,000 --> 00:40:20,200
意気消沈したわしに 一人の友が
付き添って彼らのところに戻ると
671
00:40:20,200 --> 00:40:29,600
出くわした容夫人はまさに瀕死の重症で
胸にはまだ容炫の剣が刺さっておった──
672
00:40:30,000 --> 00:40:31,680
青年龍雀:奥方!
673
00:40:31,960 --> 00:40:33,480
奥方!
674
00:40:35,040 --> 00:40:35,200
容炫:わ 私は……彼女……
675
00:40:35,200 --> 00:40:36,960
容炫:わ 私は……彼女……
温如玉:見せてみろ
676
00:40:36,960 --> 00:40:38,920
容炫:わ 私は……彼女……
677
00:40:38,920 --> 00:40:39,240
容炫:わ 私は……彼女……
青年龍雀:容兄さん!
678
00:40:39,240 --> 00:40:40,720
青年龍雀:容兄さん!
679
00:40:40,720 --> 00:40:42,960
あなたは本当にこんな状態にまで
狂気に陥ってしまった
680
00:40:42,960 --> 00:40:46,440
奥方はあなたのために万難を経たというのに
よくも彼女に手を出したな!
681
00:40:46,440 --> 00:40:48,160
畜生が!!!
682
00:40:57,560 --> 00:40:59,760
すみません 奥方
683
00:41:00,240 --> 00:41:02,480
私は彼を止められない……
684
00:41:04,000 --> 00:41:05,640
温兄 どうなった?
685
00:41:05,640 --> 00:41:07,680
まだ治せるだろ……
686
00:41:08,720 --> 00:41:11,720
奥方……何を言いたい?
687
00:41:15,680 --> 00:41:18,440
岳鳳兒:か……彼……
688
00:41:20,200 --> 00:41:21,920
温如玉:容夫人
689
00:41:25,200 --> 00:41:27,480
岳鳳兒:温大侠……
690
00:41:28,160 --> 00:41:32,000
岳鳳兒には一つお願いがあります
691
00:41:32,760 --> 00:41:39,120
この件は 私たち皆 その渦中の者
692
00:41:39,760 --> 00:41:41,760
これを……
693
00:41:42,800 --> 00:41:48,200
守ってくださいませんか……守って……
694
00:41:49,240 --> 00:41:50,800
温如玉:分かった!
695
00:41:54,760 --> 00:41:56,160
岳鳳兒:龍兄弟……
696
00:41:56,160 --> 00:41:58,080
青年龍雀:奥方ご安心を
697
00:41:58,080 --> 00:42:02,320
この龍雀 寸分たりとも漏らさぬと誓う
698
00:42:02,320 --> 00:42:06,520
この誓いを違えば 私は畜生道に落とされ
699
00:42:06,520 --> 00:42:09,280
永世生まれ変わりはできぬ
700
00:42:09,280 --> 00:42:10,280
岳鳳兒:うっ……
701
00:42:10,680 --> 00:42:12,160
青年龍雀:奥方!
702
00:42:12,160 --> 00:42:14,600
温如玉:容夫人!容夫人……
703
00:42:19,660 --> 00:42:22,200
龍雀:……わしは容夫人と約束した
704
00:42:22,200 --> 00:42:26,520
絶対に鍵を保管する者を明かしはせぬと
705
00:42:27,960 --> 00:42:32,320
周子舒:その後にあったのは 容炫は狂気を発症し
706
00:42:32,760 --> 00:42:34,800
人に追われて鬼谷に逃げ入り
707
00:42:35,360 --> 00:42:38,120
その後 四方から責め立てられ
死んだという事ですか?
708
00:42:38,820 --> 00:42:42,560
龍雀:その頃わしはすでに傀儡荘に戻り
709
00:42:42,560 --> 00:42:44,680
世事に関わっておらぬ
710
00:42:44,680 --> 00:42:47,840
おおよそ そんなことじゃろうな
711
00:42:50,000 --> 00:42:52,680
葉白衣:よく死んだ
712
00:42:54,360 --> 00:42:56,400
よくぞ……
713
00:42:56,400 --> 00:42:58,560
死んだ
714
00:42:58,560 --> 00:43:02,540
──彼は背を向けて立ち去ると
幾度か揺らめいて姿を消した
715
00:43:09,000 --> 00:43:10,160
張成嶺:おじいさん
716
00:43:10,160 --> 00:43:12,080
あなたはどうするつもりですか?
717
00:43:13,020 --> 00:43:14,660
──龍雀は周子舒の衣の裾を手で探し当て──
718
00:43:14,660 --> 00:43:18,880
龍雀:若者よ 良き事をなせ
719
00:43:18,880 --> 00:43:23,520
その剣を手に取り わしをすっきりさせてくれ
720
00:43:23,680 --> 00:43:27,280
龍孝の罰当たりはわしを死なせなんだ
721
00:43:27,280 --> 00:43:30,240
今や彼も閻王に会いに行った
722
00:43:30,240 --> 00:43:32,760
わしも行って
723
00:43:33,320 --> 00:43:37,180
奴としっかり決着を付けてやるのだ!
724
00:43:37,180 --> 00:43:38,920
周子舒:あなたは──
725
00:43:40,440 --> 00:43:42,496
温客行:龍前輩
726
00:43:42,960 --> 00:43:45,560
私は瞬時にあなたの経脈を打ち砕くことができます
727
00:43:45,560 --> 00:43:47,440
とてもすっきりします
728
00:43:47,920 --> 00:43:49,520
前輩
729
00:43:50,080 --> 00:43:51,800
よろしいんですね
730
00:43:53,740 --> 00:43:56,640
龍雀:よいぞ よいぞ
731
00:43:56,640 --> 00:44:00,560
おぬしのそれは積徳善行 やれ……
732
00:44:01,480 --> 00:44:06,700
──温客行の柔らかかった指が突然力を発すると
龍雀は笑ったまましばらく全身を震わせた
733
00:44:06,700 --> 00:44:09,500
その笑顔は永遠に彼の顔に残された
734
00:44:09,500 --> 00:44:13,300
温客行はそっと龍雀の目を閉じると体を横たえ──
735
00:44:13,300 --> 00:44:15,040
張成嶺:おじいさん……
736
00:44:15,040 --> 00:44:16,400
──張成嶺の頭を撫でた
737
00:44:16,400 --> 00:44:18,560
温客行:彼は英雄だ
738
00:44:19,320 --> 00:44:22,320
死も英雄のようであるべきだ
739
00:44:30,880 --> 00:44:32,680
阿絮
740
00:44:32,800 --> 00:44:37,280
私はしばし留まって 彼を見送ってあげたい
741
00:44:40,560 --> 00:44:42,320
周子舒:……あぁ
742
00:44:42,960 --> 00:44:44,480
温客行:阿絮
743
00:44:44,520 --> 00:44:46,760
あなたも私と一緒に残ることにして
744
00:44:46,760 --> 00:44:48,720
傷の養生をしよう
745
00:44:48,720 --> 00:44:51,080
周子舒:これを養生して あれを養生してか?
746
00:44:51,400 --> 00:44:53,080
養生ができない以上は
747
00:44:53,720 --> 00:44:57,040
俺はやはり時間を無駄にせず
飲み食い遊んだ方が割に合う……
748
00:45:00,740 --> 00:45:05,360
温客行:私に付き添ってここで数日待つのは?
749
00:45:12,080 --> 00:45:14,120
周子舒:……あぁ
750
00:45:50,640 --> 00:45:52,240
周子舒:何を泣く?
751
00:45:52,240 --> 00:45:53,800
人は誰もが死にゆくんだ
752
00:45:53,800 --> 00:45:54,760
温客行:阿絮
753
00:45:54,760 --> 00:45:58,120
周子舒:老温の奴め まだ眠らせないのか
754
00:45:58,120 --> 00:45:58,760
温客行:阿絮
周子舒:老温の奴め まだ眠らせないのか
755
00:45:58,760 --> 00:45:59,640
温客行:阿絮
756
00:46:00,000 --> 00:46:01,640
私たちここにいよう
757
00:46:01,640 --> 00:46:03,040
もう幾日か泊まっていよう
758
00:46:03,040 --> 00:46:04,840
周子舒:見る間に年の瀬だ
759
00:46:04,840 --> 00:46:07,520
年越しはどうする お前が準備するのか?
760
00:46:07,520 --> 00:46:09,460
温客行:この年は
761
00:46:09,460 --> 00:46:12,880
まことにこの一生で最も楽しいものだった
762
00:46:14,900 --> 00:46:17,100
“这人间困境几何”
(この世に苦境 幾ばくか)
763
00:46:17,100 --> 00:46:20,780
“得超脱又几个”
(逃れ得るのは幾人か)
764
00:46:20,780 --> 00:46:23,940
“如敢以生死来涉”
(敢えて生死を賭ければ)
765
00:46:23,940 --> 00:46:27,020
“孑然是天涯客”
(それは独りの天涯客)
766
00:46:27,020 --> 00:46:30,500
“谁辞别庙堂 醉山河”
(廟堂を離れ 山河に酔う人が)
767
00:46:30,500 --> 00:46:33,420
“沐得天光赏春色”
(天光浴びて 春色を味わえば)
768
00:46:33,420 --> 00:46:40,300
“欲做闲云鹤 偏又生纠葛”
(たゆたう雲間の鶴ならんとも しがらみまた生じる)
769
00:46:40,380 --> 00:46:43,420
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)
770
00:46:43,420 --> 00:46:46,860
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)
771
00:46:46,860 --> 00:46:49,900
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)
772
00:46:49,900 --> 00:46:53,300
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)
773
00:46:53,300 --> 00:46:59,420
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)
774
00:46:59,420 --> 00:47:06,640
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)
775
00:47:32,620 --> 00:47:34,980
“正邪道人心叵测”
(正邪で人心は測れず)
776
00:47:34,980 --> 00:47:38,380
“甘苦自取自舍”
(甘苦を自ら選び取り)
777
00:47:38,380 --> 00:47:41,820
“遇知己明眸澈澈”
(巡り合った知己の瞳は明澄にして)
778
00:47:41,820 --> 00:47:44,860
“如举灯过渊泽”
(灯を掲げ沢の淵を渡るなら)
779
00:47:44,860 --> 00:47:48,260
“谁以鬼行世 恨善恶”
(世を行く鬼として 善悪を恨む誰かの)
780
00:47:48,260 --> 00:47:51,140
“红袍褪身识得”
(紅い袍を落とせば見える)
781
00:47:51,140 --> 00:47:57,940
“一眼竟万年 情痴终不赦”
(一眼万年の恋情 ついぞ赦されることなし)
782
00:47:58,020 --> 00:48:01,020
“飞絮身 偏走黄泉路”
(身を飛絮として 黄泉路を進めば)
783
00:48:01,020 --> 00:48:04,460
“看尽英雄嗔癫群鬼舞”
(英雄は尽き憤懣の群鬼が舞うを見る)
784
00:48:04,460 --> 00:48:07,580
“黑白错 风崖起疑雾”
(黒白違えて 風崖に疑いの霧は立ち)
785
00:48:07,580 --> 00:48:11,180
“妙手设局待谁入”
(妙手の罠に誰かが嵌まれば)
786
00:48:11,180 --> 00:48:17,100
“六合渺渺 纵是无觅处”
(六合は遙か たとえ行くあてなくとも)
787
00:48:17,100 --> 00:48:23,460
“携酒来 拔剑去 自有归宿”
(酒を携え来て 剣を抜いて行く 帰る宿がある)
788
00:48:23,900 --> 00:48:27,100
“天欲晚 风雪袭巴蜀”
(天は暗きを欲し 風雪が巴蜀を襲う)
789
00:48:27,100 --> 00:48:30,540
“何幸借这温存 不孤独”
(幸いにもこの温もりがあれば孤独でなく)
790
00:48:30,540 --> 00:48:33,500
“问余生 怎舍好眉目”
(余生に問う 眉目の好しを)
791
00:48:33,500 --> 00:48:37,060
“三秋如梦也愿赴”
(三秋の夢の願いを手放せるかを)
792
00:48:37,060 --> 00:48:43,260
“六合渺渺 自有自在处”
(六合遙かに 己の居場所があれば)
793
00:48:43,260 --> 00:48:50,160
“竹林响 忘沉浮 寻光欲渡”
(竹林は響き 浮沈を忘れ 光を求め渡らん)
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