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第十六集

1
00:00:03,760 --> 00:00:10,840
──彼の能力では聞こえない、隣の部屋に彼の
師父が帰る音を待つうちに眠りについた張成嶺は
翌朝、他の宿泊客が起き出す物音で目が醒めた

2
00:00:17,600 --> 00:00:21,400
張成嶺:師父 温前輩……

3
00:00:23,880 --> 00:00:26,800
まだ戻って来てないのか……

4
00:00:34,080 --> 00:00:37,320
酒楼の客:店主よ あんたのとこの酒は
どうしてまた値上げしたんだ……
 
 

5
00:00:37,320 --> 00:00:38,720
酒楼の客:店主よ あんたのとこの酒は
どうしてまた値上げしたんだ……
 
張成嶺:兄さん

6
00:00:38,720 --> 00:00:40,560
酒楼の客:店主よ あんたのとこの酒は
どうしてまた値上げしたんだ……
酒楼の客:商売は難しいよな
 

7
00:00:40,560 --> 00:00:41,280
酒楼の客:店主よ あんたのとこの酒は
どうしてまた値上げしたんだ……
給仕:はいお客さん 何がご注文で?
 

8
00:00:41,280 --> 00:00:42,320
給仕:はいお客さん 何がご注文で?
 

9
00:00:42,320 --> 00:00:42,880
給仕:へい ご注文のお酒です
給仕:はいお客さん 何がご注文で?
 

10
00:00:42,880 --> 00:00:43,000
給仕:へい ご注文のお酒です
 
 

11
00:00:43,000 --> 00:00:44,200
給仕:へい ご注文のお酒です
張成嶺:私と共に来た二人の侠士は 
戻って来てますか?

12
00:00:44,200 --> 00:00:46,120
張成嶺:私と共に来た二人の侠士は 
戻って来てますか?

13
00:00:46,280 --> 00:00:49,080
給仕:見てません お戻りでないはずですよ……

14
00:00:49,080 --> 00:00:50,640
張成嶺:あぁ……

15
00:00:51,560 --> 00:00:53,400
陽春麺を一杯くださいな

16
00:00:53,400 --> 00:00:54,720
給仕:はいな

17
00:00:56,000 --> 00:00:57,880
どうぞお掛けに

18
00:01:00,040 --> 00:01:01,720
(張成嶺):ふぅ

19
00:01:04,280 --> 00:01:05,720
はぁ

20
00:01:06,160 --> 00:01:09,360
師父たちはいつ頃戻るのかな?

21
00:01:09,680 --> 00:01:14,080
全て私が愚鈍なせいで 武功は
いつまで経ってもまるで足踏みだし

22
00:01:14,080 --> 00:01:17,160
師父だって私を連れて行きたいと思わない

23
00:01:18,880 --> 00:01:21,400
李おじさんが私の命を救ってくださってから

24
00:01:21,400 --> 00:01:24,000
師父に出会って太湖まで送られ

25
00:01:24,000 --> 00:01:26,400
また趙おじ上に付いて洞庭に行って

26
00:01:26,400 --> 00:01:29,080
それからもう一度 師父を見つけて……

27
00:01:29,080 --> 00:01:32,800
私はまるで何も知ろうとせず
ずっと付いて行くだけだった……

28
00:01:33,080 --> 00:01:36,200
師父と温前輩がいない今

29
00:01:36,520 --> 00:01:39,840
私は練功以外に何をすべきかも分からない……

30
00:01:47,120 --> 00:01:48,640
酒楼の客:わぁ こんなに沢山の
黒衣の女人 どこから来た?

31
00:01:48,640 --> 00:01:49,760
彼女たちの着けてる面具はとても怖いわ
酒楼の客:わぁ こんなに沢山の
黒衣の女人 どこから来た?

32
00:01:49,760 --> 00:01:50,520
彼女たちの着けてる面具はとても怖いわ
 
 

33
00:01:50,520 --> 00:01:52,040
彼女たちの着けてる面具はとても怖いわ
 
そうだな 薄気味悪いな!

34
00:01:52,040 --> 00:01:52,880
見ろ あの面具は口の辺りにまだ血が付いてるぞ!
そうだな 薄気味悪いな!

35
00:01:52,880 --> 00:01:54,480
見ろ あの面具は口の辺りにまだ血が付いてるぞ!
 

36
00:01:54,480 --> 00:01:55,040
ど どうして小鬼と同じなのか……
見ろ あの面具は口の辺りにまだ血が付いてるぞ!
 

37
00:01:55,040 --> 00:01:56,080
ど どうして小鬼みたいなの……
 
 

38
00:01:56,080 --> 00:01:56,800
ど どうして小鬼みたいなの……
給仕:お お客さま方
 

39
00:01:56,800 --> 00:01:58,000
給仕:お お客さま方
 

40
00:01:58,000 --> 00:01:59,720
な 何かお召し上がりに……
 

41
00:01:59,720 --> 00:02:00,440
な 何かお召し上がりに……
黒衣の老女:人数分 一人一碗の素麺を

42
00:02:00,440 --> 00:02:02,800
黒衣の老女:人数分 一人一碗の素麺を

43
00:02:03,120 --> 00:02:06,640
これ以上見るなら お前の目をくり抜く!

44
00:02:06,640 --> 00:02:08,720
給仕:は はい!

45
00:02:10,400 --> 00:02:12,720
黒衣の老女:そのメスガキをよく見てろ

46
00:02:12,720 --> 00:02:14,600
食べ終わったらすぐ出立だ

47
00:02:14,600 --> 00:02:16,800
黒衣の女たち:はっ! 来い!

48
00:02:17,920 --> 00:02:19,160
(張成嶺):あぁ?

49
00:02:19,880 --> 00:02:22,800
あれは高大侠のご令嬢 高さんじゃないか?

50
00:02:23,240 --> 00:02:25,600
彼女がどうしてこの暗闇みたいな
女人どもに捕まっているんだ?

51
00:02:25,600 --> 00:02:26,800
黒衣の女:メスガキ 余計な真似をするんじゃない
彼女がどうしてこの暗闇みたいな
女人どもに捕まっているんだ?

52
00:02:26,800 --> 00:02:28,760
黒衣の女:メスガキ 余計な真似をするんじゃない
 
 

53
00:02:28,760 --> 00:02:34,840
さもなくばお前を一針で立つにも立てぬ
廃人に変えてやってもいいんだぞ?

54
00:02:34,840 --> 00:02:40,240
それともお前のそのすべすべの
小さな顔に幾筋か傷を付けてもいいぞ?

55
00:02:40,240 --> 00:02:42,400
──腰に刺したばかりの長い針を引き抜き
膝裏を踏みつけると、高小怜は倒れそうになった

56
00:02:42,400 --> 00:02:44,560
(張成嶺):人を馬鹿にして酷い

57
00:02:44,560 --> 00:02:48,160
この黒い衣の女人どもはきっと碌なものじゃない

58
00:02:49,080 --> 00:02:51,720
師父たちはどうしてまだ戻って来ないんだ?

59
00:02:51,720 --> 00:02:53,840
私はどうすれば……

60
00:02:55,320 --> 00:02:58,560
給仕:お客さま 陽春麺でございます

61
00:02:59,120 --> 00:03:00,760
張成嶺:お兄さん

62
00:03:00,760 --> 00:03:03,320
ちょっとお願いがあります──

63
00:03:03,400 --> 00:03:10,320
晋江文学城 Priest原作 猫耳FM
音熊聯萌連合出品

64
00:03:10,520 --> 00:03:17,640
古風武侠ラジオドラマ《天涯客》
第十六集「抑制と均衡」

65
00:03:42,200 --> 00:03:46,680
(周子舒):さっき蝎が 洞穴の布置は
長舌鬼だと言っていたが

66
00:03:46,680 --> 00:03:50,880
彼は明らかに温客行だと判っても まだ殺そうとした

67
00:03:50,880 --> 00:03:54,880
どうやら老温が鬼谷谷主を担うのは
あまり安泰ではないようだ

68
00:03:54,880 --> 00:03:58,320
幸いあの長舌鬼は大した腕ではなかった

69
00:03:59,440 --> 00:04:02,160
だが彼の背後にいるのは一体誰だ?

70
00:04:02,160 --> 00:04:05,400
喜喪鬼 孫鼎が故意に疑陣を布いたのか
(*故布疑阵=偽情報を利用し人から利益を得る手法)

71
00:04:05,400 --> 00:04:08,800
それとも六本指の吊死鬼 薛方の亡霊がやったのか

72
00:04:12,720 --> 00:04:17,440
──近付いてくる足音に、周子舒は
無意識で横の通路に飛び込んだ

73
00:04:17,560 --> 00:04:19,400
(周子舒):あれは……

74
00:04:20,640 --> 00:04:24,520
──発作を起こさないよう七竅三秋釘を
強引に抑えつけ、仔細を聞いていた

75
00:04:24,520 --> 00:04:28,820
誰かが後ろに近づくと、彼は背筋を強張らせすぐに
振り返って指を曲げその人の喉を掴みかけた

76
00:04:28,820 --> 00:04:31,480
温客行:夫殺しするの?

77
00:04:31,480 --> 00:04:33,600
──温客行は悔しそうに胸を叩いた

78
00:04:33,600 --> 00:04:37,760
周子舒は途中で阻まれた手を
ようやく引き戻して音のする方に目を向けた

79
00:04:38,560 --> 00:04:39,840
周子舒:柳千巧だ……

80
00:04:39,840 --> 00:04:41,200
温客行:しーっ

81
00:04:41,200 --> 00:04:44,600
ひとまず気にしないで 自分のことを考えて

82
00:04:45,680 --> 00:04:47,080
押さえつけないで

83
00:04:47,080 --> 00:04:49,640
明日の発作がもっと痛くならないように

84
00:04:50,120 --> 00:04:53,280
ここでしばらく待ってるのがいい

85
00:04:53,280 --> 00:04:55,600
──温客行はそっと彼を抱いた

86
00:04:58,280 --> 00:05:03,240
ごく細い内力が彼の掌を伝って
押し寄せてきて、彼の経脈を整えた

87
00:05:03,240 --> 00:05:07,840
だが釘を震わせてしまうことを恐れ
少しも力を入れることはできなかった

88
00:05:13,240 --> 00:05:17,800
周子舒はじっとして拒まず
目を瞑ってこの夜を乗り切ることにした

89
00:05:24,280 --> 00:05:26,240
温客行:ましになった?

90
00:05:29,820 --> 00:05:31,920
周子舒:あぁ

91
00:05:33,080 --> 00:05:35,480
調息に助けは要らん

92
00:05:44,920 --> 00:05:49,400
温客行:まだ子の時三刻だし もっと休息しない?
(*子时三刻=23時45分)

93
00:05:50,240 --> 00:05:52,200
周子舒:要らん

94
00:05:53,120 --> 00:05:57,360
(周子舒):この体勢は あまりにもおかしい……

95
00:05:57,360 --> 00:06:00,120
──温客行は余裕ありげに
あやふやに笑って彼を眺めた

96
00:06:00,120 --> 00:06:04,920
周子舒:今の柳千巧は誰かに
追われているようで ひどく狼狽していた

97
00:06:04,920 --> 00:06:07,720
顔の易容さえ取れていた……

98
00:06:08,480 --> 00:06:11,360
彼女の残した血の跡を辿って見に行ってみるぞ

99
00:06:11,360 --> 00:06:12,640
温客行:うん

100
00:06:15,160 --> 00:06:16,880
温客行:そうだ阿絮

101
00:06:17,200 --> 00:06:21,200
先ほどのあなたの春宮図は
生き生きと真に迫るようで
(*栩栩如生=生き生きと描かれている)

102
00:06:21,200 --> 00:06:23,800
一気呵成で描いていたようだけど
(*一挥而就=素早く書き上げる)

103
00:06:23,800 --> 00:06:26,800
その実 蓄積した経験をつぎ込んだのでは?
(*厚积薄发=蓄積したものを一気に放出する)

104
00:06:27,360 --> 00:06:28,600
周子舒:それほどでもない

105
00:06:28,600 --> 00:06:31,240
適当に落書きしただけだ

106
00:06:31,240 --> 00:06:32,920
温客行:ほぅ?

107
00:06:33,760 --> 00:06:36,640
適当な落書きでもそんなに真に迫ってる?

108
00:06:36,640 --> 00:06:38,200
阿絮や

109
00:06:38,200 --> 00:06:40,840
私にそんなに遠慮する必要が?

110
00:06:40,840 --> 00:06:42,040
その発想があるなら

111
00:06:42,040 --> 00:06:45,000
みんな誠意を見せて本音で話してみたらいい

112
00:06:45,000 --> 00:06:47,040
位置問題も相談できるしね

113
00:06:47,040 --> 00:06:49,120
周子舒:その事で相談する必要はない

114
00:06:49,120 --> 00:06:51,240
温客行:なら更に良い

115
00:06:51,320 --> 00:06:53,160
周子舒:夢を見るのをやめろ

116
00:06:53,160 --> 00:06:54,800
温客行:阿絮……

117
00:06:55,440 --> 00:06:57,280
周子舒:長舌鬼がお前を殺そうとして

118
00:06:57,280 --> 00:06:59,320
彼の背後の者もお前を殺そうとした……

119
00:06:59,320 --> 00:07:01,320
なぜだ?

120
00:07:11,720 --> 00:07:13,600
温客行:……あなたは

121
00:07:13,600 --> 00:07:16,600
なぜ私が鬼谷谷主だと思う?

122
00:07:16,800 --> 00:07:19,360
周子舒:お前の腕が神がかってるからだ

123
00:07:20,120 --> 00:07:22,760
──少し無理のある笑顔には
微かな狂気が含まれていた

124
00:07:22,760 --> 00:07:27,240
温客行:私が谷主なのは 彼らが
誰も私に手を出す術がないからだ

125
00:07:27,440 --> 00:07:32,520
鬼谷に入れば 外での罪責は帳消しになる

126
00:07:33,040 --> 00:07:37,200
それがもし世俗を離れた
桃源郷ならば 人が犇めくのでは?

127
00:07:37,200 --> 00:07:39,280
──明白な道理でも周子舒は黙っていた

128
00:07:39,280 --> 00:07:41,240
(周子舒):言ってみろ……

129
00:07:41,240 --> 00:07:44,400
言ってみれば いいさ……

130
00:07:44,400 --> 00:07:47,080
温客行:風崖山の下に 道義はない

131
00:07:47,080 --> 00:07:50,920
私を食わぬなら 食われるだけ

132
00:07:50,920 --> 00:07:53,680
誰も私をどうにもできない

133
00:07:57,640 --> 00:08:01,280
温客行:誰かを死なせたいと思えば
私は死なせることができる

134
00:08:01,280 --> 00:08:03,520
だから私は鬼谷谷主で

135
00:08:03,520 --> 00:08:07,720
彼らが早々に私を死なせられないうちは
私の言うことを聞くしかない

136
00:08:09,160 --> 00:08:12,160
しかしこれは私を死なせたくない
ということを意味しない

137
00:08:12,320 --> 00:08:16,800
機会があれば やはりもがいてみるんだ……

138
00:08:17,600 --> 00:08:19,520
例えば ある者どもは

139
00:08:19,520 --> 00:08:22,000
当時の容炫の秘籍を手にすれば

140
00:08:22,000 --> 00:08:25,200
大魔頭たるこの私を
手打ちにできると思ってる

141
00:08:27,000 --> 00:08:28,800
周子舒:お前を取り除くために

142
00:08:28,800 --> 00:08:31,960
悪鬼は太陽に“晒されて溶ける”
危険を冒すことを厭わず

143
00:08:31,960 --> 00:08:34,480
掟に反して谷を出て波風を立てたのか?

144
00:08:38,560 --> 00:08:41,560
温客行:悪鬼たちは大した忍耐力を持っておらず

145
00:08:41,760 --> 00:08:47,160
歴任の谷主は その地位に就いて
三年以上生き延びたことがなかったが

146
00:08:47,440 --> 00:08:50,000
これに私は既に八年だ

147
00:08:50,120 --> 00:08:53,600
まだ察し悪く くたばりもせずそこに居座ってるのに

148
00:08:53,840 --> 00:08:56,480
彼らが焦っていないと思う?

149
00:09:10,240 --> 00:09:12,840
周子舒:もし俺がもう少し長生きできれば

150
00:09:13,280 --> 00:09:19,120
お前を戻さなくていい方法を考えて
ヒモとして養っても良かった

151
00:09:22,160 --> 00:09:23,840
温客行:あなたは……

152
00:09:23,840 --> 00:09:26,560
私を養うと言うの?

153
00:09:26,840 --> 00:09:29,120
周子舒:どんな席だろうと関係ない

154
00:09:29,560 --> 00:09:33,120
もし一つの席に縛り付けられれば 気分は悪い

155
00:09:33,720 --> 00:09:36,080
この感覚は……

156
00:09:37,920 --> 00:09:40,800
(周子舒):俺はこの上なく理解している……

157
00:10:00,240 --> 00:10:05,680
──彼は大胆な決断で勝手に出てきたが
一度大胆になると次も大胆になり
夜のうちに高さんを救い出そうと計画していた

158
00:10:05,920 --> 00:10:08,040
黒衣の女:早くしろ!さっさと付いて来い!

159
00:10:08,040 --> 00:10:09,320
高小怜:あぁ──

160
00:10:10,560 --> 00:10:12,680
黒衣の女:大人しくしろ!

161
00:10:13,080 --> 00:10:14,840
早く!

162
00:10:14,840 --> 00:10:19,840
──女どもに引きずられ、あと数日歩けば
彼女の残り半分の命も取られそうだった

163
00:10:19,840 --> 00:10:22,760
(張成嶺):この黒衣の女どもは
どうしてまだ休憩しないんだ

164
00:10:22,760 --> 00:10:24,800
もう一晩中移動してるぞ

165
00:10:25,040 --> 00:10:27,000
師父たちが戻って来たかも

166
00:10:27,000 --> 00:10:30,000
私の残した言付けが届いたか
どうかも分からない……

167
00:10:30,960 --> 00:10:34,400
彼女たちは一体 高さんを
どこへ連れて行くつもりなんだ?

168
00:10:36,600 --> 00:10:38,280
黒衣の老女:止まれ

169
00:10:41,400 --> 00:10:42,760
給仕:お客さんたちは

170
00:10:42,760 --> 00:10:44,760
休憩ですかそれともお泊りで?

171
00:10:44,760 --> 00:10:45,840
黒衣の老女:宿泊だ

172
00:10:45,840 --> 00:10:47,800
(張成嶺):彼女たちがようやく休憩するぞ

173
00:10:47,800 --> 00:10:48,000
給仕:へいへい 皆様 奥へどうぞ
(張成嶺):彼女たちがようやく休憩するぞ

174
00:10:48,000 --> 00:10:48,960
給仕:へいへい 皆様 奥へどうぞ
 

175
00:10:48,960 --> 00:10:52,440
給仕:階段にご注意を 二階へどうぞ……

176
00:10:56,960 --> 00:10:59,480
給仕:どこから来た浮浪児だ
飯をせびりにうちの店に来たのか!

177
00:10:59,480 --> 00:11:00,360
張成嶺:私は──

178
00:11:00,360 --> 00:11:01,040
給仕:お前が何だってんだ

179
00:11:01,040 --> 00:11:01,400
黒衣の老女:どうしたのだ?
給仕:お前は何だ

180
00:11:01,400 --> 00:11:02,120
黒衣の老女:どうしたのだ?
 

181
00:11:02,120 --> 00:11:02,640
行ってみるぞ
 

182
00:11:02,640 --> 00:11:03,360
行ってみるぞ
(張成嶺):しまった

183
00:11:03,360 --> 00:11:03,880
黒衣の女:はっ
(張成嶺):しまった

184
00:11:03,880 --> 00:11:04,280
黒衣の女:はっ
(張成嶺):今まで人に知られるのを恐れて

185
00:11:04,280 --> 00:11:05,480
(張成嶺):今まで人に知られるのを恐れて

186
00:11:05,480 --> 00:11:07,520
物乞いの格好をしていたのを忘れてた……

187
00:11:07,520 --> 00:11:10,320
給仕:あっちへ行ってろ! うちの入り口を汚すな!

188
00:11:10,520 --> 00:11:13,320
張成嶺:お兄さん 大目に見てください

189
00:11:13,320 --> 00:11:15,560
何日もご飯を食べていません

190
00:11:16,000 --> 00:11:17,000
お兄さん……

191
00:11:17,000 --> 00:11:17,680
給仕:だめだ! お前みたいな浮浪児は
出て行ってくれ!立入禁止だ!押し入る気か!
お兄さん……

192
00:11:17,680 --> 00:11:18,960
給仕:だめだ! お前みたいな浮浪児は
出て行ってくれ!立入禁止だ!押し入る気か!
 

193
00:11:18,960 --> 00:11:21,120
給仕:だめだ! お前みたいな浮浪児は
出て行ってくれ!立入禁止だ!押し入る気か!
黒衣の女:お婆さま ただの飢えた浮浪児です

194
00:11:21,120 --> 00:11:21,520
黒衣の女:お婆さま ただの飢えた浮浪児です

195
00:11:21,920 --> 00:11:23,760
黒衣の老女:喧しいね

196
00:11:23,760 --> 00:11:26,760
給仕:申し訳ございません
これからお部屋へご案内します

197
00:11:26,760 --> 00:11:28,240
黒衣の老女:ふん

198
00:11:31,240 --> 00:11:33,840
張成嶺:お願いしますよ……

199
00:11:36,800 --> 00:11:37,240
給仕:分かった分かった

200
00:11:37,720 --> 00:11:38,680
ここで待ってろ

201
00:11:38,680 --> 00:11:41,040
厨に行って残り飯を持ってきてやる

202
00:11:41,040 --> 00:11:42,320
張成嶺:やったやった

203
00:11:42,320 --> 00:11:44,440
ありがとうお兄さん……

204
00:11:44,440 --> 00:11:45,800
給仕:こんな真夜中に全くツイてない!
 

205
00:11:45,800 --> 00:11:47,360
給仕:こんな真夜中に全くツイてない!
(張成嶺):彼女たちは二階に上がった

206
00:11:47,360 --> 00:11:48,080
(張成嶺):彼女たちは二階に上がった

207
00:11:49,880 --> 00:11:51,400
一、二

208
00:11:51,400 --> 00:11:55,000
高さんを連れて入ったのは左手の三番目の部屋か

209
00:11:56,240 --> 00:11:57,960
やっと誰もいなくなった……

210
00:11:57,960 --> 00:12:01,240
高さんを救い出す方法を考えなきゃ

211
00:12:05,600 --> 00:12:11,780
──唱えれば少しでもすごくなれるかのように
流雲九宮歩の口訣を黙って唱えると
音もなく部屋の前を通り過ぎた

212
00:12:11,780 --> 00:12:14,000
張成嶺:三部屋目は……

213
00:12:14,960 --> 00:12:17,640
黒衣の女? まずい!

214
00:12:17,640 --> 00:12:21,400
──張成嶺は二大達人からの半年間の指導と
持ち前の勤勉さで、昔とはもう違った

215
00:12:21,400 --> 00:12:23,440
黒衣の女:え? お前は──

216
00:12:23,700 --> 00:12:27,420
──遊魚のようにぬるりと躱して、相手とは
激しくぶつからず、その後一手一手打ち合った

217
00:12:27,420 --> 00:12:30,480
黒衣の女が目の前から消えて背後から飛び出すと
彼は首元の点穴が痺れた気がした

218
00:12:30,480 --> 00:12:33,480
(張成嶺):動けなくなった 終わった!

219
00:12:33,480 --> 00:12:37,600
──すぐさま片手で口を塞がれ、女に連れ去られた

220
00:12:55,800 --> 00:12:57,840
周子舒:血の跡はここで途絶えてる……

221
00:13:00,200 --> 00:13:01,480
温客行:うん……

222
00:13:01,640 --> 00:13:02,520
柳千巧:やぁぁ──!!!

223
00:13:02,520 --> 00:13:04,000
周子舒:あっちだ!

224
00:13:15,520 --> 00:13:18,920
──肩に矢を受けたまま柳千巧が懸命に戦っていた

225
00:13:19,560 --> 00:13:23,920
温客行:柳千巧と打ち合ってるのって
于丘烽の従者じゃないか?

226
00:13:23,920 --> 00:13:25,640
黄道人だっけ?

227
00:13:26,080 --> 00:13:28,200
周子舒:俺たちが傀儡荘にいた半年ほどで

228
00:13:28,200 --> 00:13:30,880
江湖では何かあったに違いない……

229
00:13:32,560 --> 00:13:34,560
(周子舒):もともと洞庭にいた頃には

230
00:13:34,560 --> 00:13:38,240
もう既に微かにある種の
山雨来たらんと欲し風楼に満つ意図があった

231
00:13:38,560 --> 00:13:40,880
温客行は鬼谷谷主として

232
00:13:40,880 --> 00:13:43,280
当時の状況を見抜けないはずがないのに

233
00:13:43,280 --> 00:13:45,280
むしろこのように手下の者の暴れるに任せ

234
00:13:45,280 --> 00:13:47,720
自分は葉白衣に付いて行った

235
00:13:47,720 --> 00:13:50,360
本当に誰かが琉璃甲と鍵を手に入れ

236
00:13:50,360 --> 00:13:53,320
容炫の武功を得てしまえば 彼にとって
不利になるが 平気なのか?

237
00:13:53,320 --> 00:13:54,840
温客行:ふむ……

238
00:13:55,160 --> 00:13:58,280
当の于丘烽は柳千巧と姦通しているのに

239
00:13:58,280 --> 00:14:01,240
このように彼が柳千巧を
殺そうとするのを放任している

240
00:14:02,080 --> 00:14:05,920
もしや柳千巧が死ねば彼にとって
何が利点があるのか……

241
00:14:05,920 --> 00:14:09,480
或いは 于丘烽と黄道人たちの内紛かな?

242
00:14:10,600 --> 00:14:12,400
周子舒:内紛?

243
00:14:14,120 --> 00:14:16,080
(周子舒):沈慎が死んだ後

244
00:14:16,080 --> 00:14:19,040
高家荘の二つの琉璃甲は盗まれた──

245
00:14:19,040 --> 00:14:21,200
その時の高家荘は警備が厳重で

246
00:14:21,200 --> 00:14:23,600
鬼谷の者は容易に紛れ込めなかった

247
00:14:23,600 --> 00:14:29,520
可能性が高いのは 鬼谷の名を借りて琉璃甲を
盗み出した内通者がいたということだ

248
00:14:29,520 --> 00:14:32,120
まさかそれが于丘烽……

249
00:14:32,400 --> 00:14:36,480
ひょっとして泥棒を働くのも
父子で引き継いだのか?

250
00:14:39,320 --> 00:14:40,760
黄道人:逃げるな! あぁぃ!

251
00:14:40,760 --> 00:14:41,800
柳千巧:はぁっ!

252
00:14:41,800 --> 00:14:47,320
──彼女を追い詰めるその顔は凶悪で、周子舒に
蹴られた時の英姿はなく、やはり強きに遭えば
弱く弱きに遭えば強い時勢を知る者だった

253
00:14:47,320 --> 00:14:50,480
温客行:あの娘の緊急事態なのに
助けに行かないの?

254
00:14:50,720 --> 00:14:52,960
周子舒:夫のためにお前が酢を飲むのが怖い

255
00:14:54,240 --> 00:14:55,560
温客行:阿絮

256
00:14:55,840 --> 00:14:57,400
ちょっと真剣に

257
00:14:57,400 --> 00:14:59,400
いつも私にありつこうとしないで

258
00:14:59,760 --> 00:15:01,520
周子舒:お前が“真剣”の二文字を知ってるのか

259
00:15:01,520 --> 00:15:04,000
温客行:私は恨みを容易く覚えておく人間なので

260
00:15:04,000 --> 00:15:07,400
あなたがいつも私をからかうのも
将来全部覚えておくから

261
00:15:07,400 --> 00:15:13,320
周公之礼を行う時 万一堪えきれなければ
苦しみを味わうのはあなただ
(*周公之礼=夫婦となって性交渉すること)

262
00:15:13,760 --> 00:15:15,200
周子舒:気の遣い過ぎだ

263
00:15:15,200 --> 00:15:16,360
黄道人:妖婦め!

264
00:15:16,360 --> 00:15:16,520
黄道人:はぃっ!

265
00:15:16,520 --> 00:15:17,680
柳千巧:あぁぁ──!!!
黄道人:はぃっ!

266
00:15:17,680 --> 00:15:18,080
柳千巧:あぁぁ──!!!
 

267
00:15:19,560 --> 00:15:22,560
黄道人:ふん さっさと物を引き渡せ!
 
 

268
00:15:22,560 --> 00:15:25,320
さもなくばお前のもう一方の手も保証できんぞ!
 
 

269
00:15:25,320 --> 00:15:26,880
さもなくばお前のもう一方の手も保証できんぞ!
(周子舒):まさかこの黄道人は于丘烽に琉璃甲を
盗まれた後 柳千巧に渡したと思っているのか?

270
00:15:26,880 --> 00:15:31,120
(周子舒):まさかこの黄道人は于丘烽に琉璃甲を
盗まれた後 柳千巧に渡したと思っているのか?

271
00:15:33,240 --> 00:15:35,320
こいつの頭はじゃがいもに見えるが

272
00:15:35,320 --> 00:15:38,200
さては性能もじゃがいもと大差ないな──

273
00:15:38,200 --> 00:15:40,520
もしこれまでの推論が全て成り立つならば

274
00:15:40,520 --> 00:15:42,960
明らかに于丘烽がまずい事になったと見て

275
00:15:42,960 --> 00:15:45,440
この馬鹿娘を身代わりで矢面に立てたが

276
00:15:45,440 --> 00:15:47,960
あくまでもこの柳千巧は思いを寄せており

277
00:15:47,960 --> 00:15:49,040
噛み付いたところで鳴きはしない

278
00:15:49,040 --> 00:15:50,080
温客行:阿絮
噛み付いたところで鳴きはしない

279
00:15:50,080 --> 00:15:50,280
温客行:阿絮
 

280
00:15:50,480 --> 00:15:52,520
何が起こってるかそんなに知りたいなら

281
00:15:52,520 --> 00:15:54,000
彼女を救い出して

282
00:15:54,000 --> 00:15:55,640
じっくり聞き出してみては?

283
00:15:55,640 --> 00:15:57,560
考えすぎると疲れるよ

284
00:15:57,560 --> 00:15:58,720
周子舒:お前はどうして助けない?

285
00:15:58,720 --> 00:15:59,800
温客行:私は助けられない

286
00:15:59,800 --> 00:16:00,480
黄道人:言わんというなら……
 
 
温客行:私は助けられない

287
00:16:00,480 --> 00:16:00,600
黄道人:言わんというなら……
 
 
 

288
00:16:00,600 --> 00:16:01,440
黄道人:言わんというなら……
温客行:私はこのように玉樹臨風の
瀟洒で風流な者なので
(*玉树临风=清く気高い男っ振り)

289
00:16:01,440 --> 00:16:03,480
温客行:私はこのように玉樹臨風の
瀟洒で風流な者なので
(*玉树临风=清く気高い男っ振り)

290
00:16:03,480 --> 00:16:06,080
女人を助け出すことは絶対できない

291
00:16:06,080 --> 00:16:09,280
でないと 将来彼女が私に惚れても
私は女人を好きではないから

292
00:16:09,280 --> 00:16:11,200
彼女を裏切ってしまうんじゃない?

293
00:16:11,200 --> 00:16:13,240
この類の事は陰徳を損なうもので

294
00:16:13,240 --> 00:16:15,440
絶対にしてはなら……

295
00:16:15,480 --> 00:16:16,720
阿絮……

296
00:16:16,720 --> 00:16:18,760
あなたも外で私の衣を引っ張るほど
酢を飲まなくていい……

297
00:16:18,760 --> 00:16:20,400
周子舒:誰か来た

298
00:16:23,760 --> 00:16:25,200
温客行:言っておくけど

299
00:16:25,480 --> 00:16:27,640
その釦子は自分で取っておいて

300
00:16:27,640 --> 00:16:29,440
その女を助けるのに使うのは許さない

301
00:16:29,440 --> 00:16:30,800
彼女を救うなら勝手に小石を拾っ……

302
00:16:30,800 --> 00:16:32,240
周子舒:黙れ

303
00:16:35,640 --> 00:16:36,440
桃紅婆:黄のや 独り占めするつもりなのかい?
 

304
00:16:36,440 --> 00:16:38,120
桃紅婆:黄のや 独り占めするつもりなのかい?
(周子舒):桃紅柳緑?

305
00:16:38,120 --> 00:16:39,760
桃紅婆:黄のや 独り占めするつもりなのかい?
 

306
00:16:40,920 --> 00:16:46,640
温客行:かくのごとく月黒く風高き
独特な味わいの 衆人数多の風流韻事
(*月黑风高=不穏な空気 *风流韵事=文化的活動)

307
00:16:46,760 --> 00:16:49,040
まこと己の見識の浅薄さを恥じ入る……

308
00:16:49,040 --> 00:16:50,160
あっ!

309
00:16:50,160 --> 00:16:51,440
──周子舒は彼の手首を抓った

310
00:16:51,440 --> 00:16:53,200
黙ってる黙ってる……

311
00:16:53,620 --> 00:16:55,280
黄道人:お二方を煩わすなど

312
00:16:55,280 --> 00:16:59,880
こんな女盗人 わし一人でも捕まえられた

313
00:17:00,060 --> 00:17:02,080
柳緑翁:小賢しい真似をするな

314
00:17:02,080 --> 00:17:02,920
黄道人:ふん

315
00:17:02,920 --> 00:17:04,760
桃紅婆:小娘よ

316
00:17:04,760 --> 00:17:08,040
婆さんが聞いたら 何でも話すのが一番良い

317
00:17:08,040 --> 00:17:14,440
婆さんの手間を省いて
お前の肉体が苦しむことも省ける

318
00:17:15,760 --> 00:17:17,360
柳千巧:殺すなら殺せ

319
00:17:17,360 --> 00:17:19,200
何を余計なことを?!

320
00:17:19,720 --> 00:17:23,080
桃紅婆:敬酒を飲まず罰酒を飲むのかい!
(*敬酒不吃吃罚酒=優しい態度のうちに言うことを聞かない)

321
00:17:23,080 --> 00:17:24,000
えぃ!

322
00:17:24,240 --> 00:17:25,880
柳千巧:あああ──!!!

323
00:17:25,880 --> 00:17:28,520
黄道人:あぁ桃紅姐さん 彼女はわしの一掌を受け

324
00:17:28,520 --> 00:17:30,640
今また両の腕を失い

325
00:17:30,640 --> 00:17:34,240
もしこのまま死ねばまずい事になるぞ

326
00:17:34,240 --> 00:17:38,160
斬るにも 僅かに手を残しておけ……

327
00:17:38,400 --> 00:17:39,440
更に言えば

328
00:17:39,440 --> 00:17:42,280
一人の女に口を割らせるのに

329
00:17:42,640 --> 00:17:45,680
方法はいくらでもあるんじゃないのか?

330
00:17:45,680 --> 00:17:49,920
柳千巧:殺す なら……殺せ……

331
00:17:50,640 --> 00:17:53,680
温客行:まこと長江の後浪 前浪を押すだね

332
00:17:53,880 --> 00:17:57,000
私より彼の方がよっぽど大魔頭だと思うね

333
00:17:57,680 --> 00:18:00,280
(周子舒):柳千巧は碌なものじゃないだろう

334
00:18:00,560 --> 00:18:04,520
だがこのように みっともなく一生死ぬまで
一人の下衆野郎を待ってる女は

335
00:18:04,520 --> 00:18:07,160
死だけは綺麗に死んで

336
00:18:07,160 --> 00:18:10,680
絶対に黄道人のような代物の
辱めを受けるべきではない

337
00:18:10,680 --> 00:18:13,200
──容赦なく打ち出した釦子は
黄道人の手首を穿いた

338
00:18:13,200 --> 00:18:15,600
黄道人:うぁぁ! わしの手が!

339
00:18:15,600 --> 00:18:17,520
誰だ!

340
00:18:21,240 --> 00:18:23,120
柳緑翁:お前は何者だ?

341
00:18:23,800 --> 00:18:27,000
──周子舒は疾風急雨の軽功で
柳千巧の短剣を拾い黄道人の前に閃いた

342
00:18:27,000 --> 00:18:29,040
黄道人:うっうぅぅ……

343
00:18:30,320 --> 00:18:33,160
──黄道人の喉は十字に裂かれ、死道人となった

344
00:18:33,160 --> 00:18:33,480
桃紅婆:あぁ!

345
00:18:33,480 --> 00:18:34,360
柳緑翁:黄道人!
桃紅婆:あぁ!

346
00:18:34,360 --> 00:18:35,000
柳緑翁:黄道人!
 

347
00:18:36,160 --> 00:18:38,360
桃紅婆:お前は一体何者だ──

348
00:18:38,560 --> 00:18:43,320
──短剣からは血が滴り、布帯で
一つに結ばれただけの長髪から幾筋か頬に落ちる
青白く凛々しい顔が、朝の光の中で二人を見た

349
00:18:43,320 --> 00:18:45,160
桃紅婆の背後が冷たくなり、大きな力が襲って来た

350
00:18:45,160 --> 00:18:46,960
桃紅婆:うぁぁ──

351
00:18:47,480 --> 00:18:49,160
柳緑翁:ばあさん──

352
00:18:50,880 --> 00:18:54,920
我々に◎△$♪×¥●おま&%#のか?!

353
00:18:54,920 --> 00:18:55,800
周子舒:ふん

354
00:18:56,040 --> 00:18:58,560
柳緑翁:貴 貴様──

355
00:19:01,160 --> 00:19:03,720
桃紅婆:じいさん!じいさん──

356
00:19:03,720 --> 00:19:07,440
どうして私を 私を放っておくんだい!

357
00:19:07,440 --> 00:19:09,600
じいさん!

358
00:19:15,720 --> 00:19:21,200
──血の止まらない傷口附近の
点穴を封じようと手を伸ばした

359
00:19:21,200 --> 00:19:23,000
周子舒:柳姑娘……

360
00:19:26,880 --> 00:19:30,840
柳千巧:無 無駄よ……

361
00:19:32,480 --> 00:19:36,280
周子舒:琉璃甲は実際は于丘烽のところにあり

362
00:19:36,280 --> 00:19:39,000
彼は逃げ あんたに奴らを引き離させた

363
00:19:39,000 --> 00:19:40,600
そうだろ?

364
00:19:43,400 --> 00:19:45,760
俺は琉璃甲に興味などない

365
00:19:45,760 --> 00:19:47,280
あんたはもう死ぬだろうが

366
00:19:47,280 --> 00:19:49,800
頷くだけのことの何が難しいんだ

367
00:19:52,280 --> 00:19:53,960
温客行:柳姑娘

368
00:19:54,160 --> 00:19:58,840
私は早くに于丘烽は碌なものじゃないって伝えてた

369
00:20:02,640 --> 00:20:06,520
柳千巧:平……平江に……

370
00:20:06,520 --> 00:20:08,520
柳の色青し

371
00:20:08,520 --> 00:20:10,320
周子舒:何を言ってる?

372
00:20:10,320 --> 00:20:15,880
柳千巧:花月遥か相い……守り

373
00:20:17,400 --> 00:20:22,040
歳々復た年々

374
00:20:23,731 --> 00:20:29,720
逢いし 逢いし此の……

375
00:20:29,720 --> 00:20:33,840
──彼女の目の光は揺らめいて消え、頭が傾いだ

376
00:20:33,840 --> 00:20:38,920
口角に浮かべた笑みは彼女の
半分の凶悪な顔つきを柔らかく見せた

377
00:20:38,920 --> 00:20:42,640
その面容を隠した一生はむしろ
赤裸々に去る運命にあった

378
00:20:43,100 --> 00:20:48,240
桃紅婆:夫婦は……もとは同じ林の鳥でも

379
00:20:48,240 --> 00:20:52,120
大難に臨めば各自で飛ぶ……

380
00:20:53,160 --> 00:20:54,800
まして彼女は

381
00:20:54,800 --> 00:20:56,480
彼女とあの于の奴は

382
00:20:56,480 --> 00:20:59,680
名分さえないのだ

383
00:21:06,800 --> 00:21:11,760
古より女子は恋情 男子は薄情

384
00:21:11,760 --> 00:21:16,040
彼女は……これすら理解する気がないのだから

385
00:21:16,040 --> 00:21:19,800
死ぬのも無理からぬことさ

386
00:21:19,800 --> 00:21:22,520
無理もない……

387
00:21:31,740 --> 00:21:33,240
温客行:阿絮

388
00:21:33,520 --> 00:21:34,920
あなたの今の功夫

389
00:21:34,920 --> 00:21:37,480
私が初めてあなたに会った時より
随分と高いみたいだけど……

390
00:21:37,480 --> 00:21:39,560
どういう事?

391
00:21:41,560 --> 00:21:43,840
周子舒:俺が初めてお前に会った時

392
00:21:43,840 --> 00:21:46,880
七竅三秋釘が俺の内力の半分を封じていた

393
00:21:47,080 --> 00:21:49,320
温客行:……今は?

394
00:21:51,280 --> 00:21:55,520
周子舒:今は全盛時の八割まで回復している

395
00:21:56,240 --> 00:21:58,720
──温客行はただ黙って彼を見詰めた

396
00:21:58,720 --> 00:22:00,840
俺が死ぬ時までには

397
00:22:00,840 --> 00:22:04,880
全盛時の功力が 全て戻ってくるさ

398
00:22:43,080 --> 00:22:46,280
(張成嶺):もう終わりだ この女人は
私を連れてどこにいくんだ?

399
00:22:46,280 --> 00:22:49,680
ダメだ 冷静になれ冷静になれ

400
00:22:49,680 --> 00:22:52,720
考えろ どうしてこの女人どもは
あんなに高さんを憎んでるんだ

401
00:22:52,720 --> 00:22:57,120
その上彼女を連行し 行程を邪魔されるのを厭わず
また彼女の飲み食いに気を掛けるのは?

402
00:22:57,120 --> 00:22:58,840
高さんが彼らにとって役に立つからに決まってる

403
00:22:58,840 --> 00:23:00,720
でないと彼女はとっくに死んでる

404
00:23:00,720 --> 00:23:04,200
ならば今回彼女たちが私を捕えても 高さんと
同じように命を留めておくはずだ

405
00:23:04,200 --> 00:23:06,520
やっぱり直接手を出すのは……

406
00:23:06,520 --> 00:23:07,560
そうじゃない

407
00:23:07,560 --> 00:23:09,440
万が一高さんが私に気付いたら?

408
00:23:09,440 --> 00:23:12,320
私の身の上は更に複雑なんだぞ……

409
00:23:12,840 --> 00:23:18,160
──これまであの二人の思考に
ついていけるはずもなく、一日中空っぽで
何も考えていなかった頭が驚くほど回転していた

410
00:23:20,720 --> 00:23:22,760
張成嶺:ど どうするつもりだ──

411
00:23:22,760 --> 00:23:24,280
顧湘:お前は張成嶺の能無しか?

412
00:23:24,280 --> 00:23:25,720
張成嶺:貴様……

413
00:23:26,640 --> 00:23:28,680
顧湘姐さん!

414
00:23:28,680 --> 00:23:30,000
どうしてあなたが!

415
00:23:30,000 --> 00:23:30,440
お久しぶ──

416
00:23:30,440 --> 00:23:31,800
顧湘:あ! あああ

417
00:23:31,800 --> 00:23:33,360
男女の“軽重”親しまず
(*男女授受不亲=男女は礼節を弁えて接するべし)

418
00:23:33,360 --> 00:23:34,960
あたしは家庭のある身なんだぞ

419
00:23:34,960 --> 00:23:36,560
ちょっかい出すんじゃないよ

420
00:23:36,560 --> 00:23:38,560
張成嶺:家庭のある……

421
00:23:38,560 --> 00:23:39,360
えぇ?

422
00:23:39,360 --> 00:23:41,560
曹兄さんに嫁いだんですか?

423
00:23:41,560 --> 00:23:43,880
あぁ分かりました

424
00:23:43,880 --> 00:23:47,200
あなたは彼と……掛け布団を一枚にしましたか?

425
00:23:47,200 --> 00:23:48,000
顧湘:なっ

426
00:23:48,000 --> 00:23:49,480
何のでたらめ?

427
00:23:49,480 --> 00:23:52,760
どこの下衆にそんな
めちゃくちゃなこと教わったんだ?

428
00:23:53,440 --> 00:23:54,960
張成嶺:でも私の師父たちは……

429
00:23:54,960 --> 00:23:55,760
顧湘:まだ言うか!

430
00:23:55,760 --> 00:23:56,760
張成嶺:あぁ!

431
00:23:57,320 --> 00:24:00,760
顧湘姐さん 私が間違ってました もう言いません!

432
00:24:03,260 --> 00:24:04,320
顧湘:えっ?

433
00:24:04,320 --> 00:24:06,920
今のあんたのその手に見覚えがあると思ったけど

434
00:24:06,920 --> 00:24:09,640
少し見ないうちに ちょっとは成長したんだな

435
00:24:09,640 --> 00:24:11,800
うちの主人とあんたの師父は?

436
00:24:11,800 --> 00:24:13,400
張成嶺:師父たちは用があって出て行きました

437
00:24:13,400 --> 00:24:15,360
私一人 客桟で彼らを待ってて

438
00:24:15,360 --> 00:24:18,400
ちょうどたまたまあの黒ずくめの女人どもが
高さんを連れてるのを見て

439
00:24:18,400 --> 00:24:21,160
私は 彼女たちが高さんを不当に扱うのが気掛かりで

440
00:24:21,160 --> 00:24:23,920
給仕に言付けを残して 付いて来たんです……

441
00:24:23,920 --> 00:24:24,400
あぁっ

442
00:24:24,400 --> 00:24:25,560
顧湘:翼が硬くなったのか?
(*翅膀硬了=独り立ち、目上の言うことを聞かない)

443
00:24:25,560 --> 00:24:27,040
あの者たちが誰か知ってるのか?

444
00:24:27,040 --> 00:24:28,400
あたしと曹……

445
00:24:28,400 --> 00:24:30,760
曹兄さんでさえ軽挙妄動を控えて

446
00:24:30,760 --> 00:24:34,520
その上彼らの格好の扮装をして紛れ込んで
機会を伺って今まで待ってるのに──

447
00:24:34,520 --> 00:24:37,440
お前みたいな小童が英雄好漢のふりか?

448
00:24:40,040 --> 00:24:41,920
曹蔚寧:阿湘 どうしてこんなに長かったの

449
00:24:41,920 --> 00:24:43,600
僕はまた……

450
00:24:43,600 --> 00:24:44,440
張成嶺:曹兄さん?!

451
00:24:44,440 --> 00:24:45,360
曹蔚寧:あ……

452
00:24:46,040 --> 00:24:48,480
君は 張成嶺のおチビさんか

453
00:24:48,480 --> 00:24:50,520
どうして小花瞼みたいな顔にしてるんだい?
(*小花脸=京劇の道化役、三枚目)

454
00:24:50,520 --> 00:24:51,440
君の師父たちは?

455
00:24:51,440 --> 00:24:52,000
張成嶺:あぁ

456
00:24:52,000 --> 00:24:54,360
私の師父と温前輩は用があって出て行きました

457
00:24:54,360 --> 00:24:55,880
私一人 客桟で彼らを待っていたら

458
00:24:55,880 --> 00:24:56,920
ちょうどたまたまあの黒ずくめの女人どもが高……

459
00:24:56,920 --> 00:24:57,920
顧湘:分かった分かった──

460
00:24:57,920 --> 00:24:59,320
とりあえずくだらない昔話はやめて

461
00:24:59,320 --> 00:25:01,920
とっとと高さんとこの姑娘を
手に入れてからまた話せ

462
00:25:03,600 --> 00:25:06,240
この客桟にどれだけ部屋があるか描き出した

463
00:25:06,240 --> 00:25:07,920
これの丸で囲んだところが

464
00:25:07,920 --> 00:25:10,600
高小怜が閉じ込められてる場所だ──

465
00:25:10,720 --> 00:25:12,360
張成嶺:この絵は……

466
00:25:12,360 --> 00:25:14,640
曹蔚寧:阿湘 この図は……

467
00:25:14,640 --> 00:25:15,200
顧湘:どうした?!

468
00:25:15,200 --> 00:25:16,120
張成嶺:あぁっ

469
00:25:16,120 --> 00:25:18,680
曹蔚寧:なんでもない 話を続けて
張成嶺:なんでもない 話を続けて

470
00:25:19,160 --> 00:25:22,160
顧湘:本来 あたしは彼女たちが
順番で彼女を監視してると思ってたけど

471
00:25:22,160 --> 00:25:24,960
この女人どもの警戒心がとても強くて

472
00:25:24,960 --> 00:25:26,960
自分とこの者さえも信用してないなんてね

473
00:25:26,960 --> 00:25:30,400
たった数人の腹心の女だけが
高小怜に接触できるんだ

474
00:25:33,240 --> 00:25:35,040
曹蔚寧:ならば我々はどうすれば?

475
00:25:35,040 --> 00:25:37,160
張成嶺:私達で少し騒ぎを起こしましょう

476
00:25:37,160 --> 00:25:38,960
私が彼女たちを引き離すので
あなたたちは助けに行ってください

477
00:25:38,960 --> 00:25:40,440
その後 合流しましょう

478
00:25:40,440 --> 00:25:41,080
曹蔚寧:いい考えだ!

479
00:25:41,080 --> 00:25:42,920
顧湘:何がいい考えだ

480
00:25:43,280 --> 00:25:47,200
あたしら三人のうち一人にお前の師父か
或いはうちの主人みたいな能力があれば

481
00:25:47,200 --> 00:25:51,560
何の策も考える必要もなく 直接打ち合いに
突入して人を捕まえればいいけど──

482
00:25:52,000 --> 00:25:54,720
坊や たかだか数日学んだ軽功で

483
00:25:54,720 --> 00:25:56,760
誰かを“引っ張り出せる”と思うのか?

484
00:25:56,760 --> 00:25:59,520
曹蔚寧:そうだ 阿湘の話はもっともだ

485
00:26:01,540 --> 00:26:03,480
顧湘:あの女どもは普通の者じゃない

486
00:26:03,480 --> 00:26:05,960
率いてるのは 人呼んで“黒蠱婆婆”

487
00:26:05,960 --> 00:26:09,480
南疆より来て 巫蠱(ふこ)を操り
瘴癘(しょうれい)を起こす輩だ……

488
00:26:10,040 --> 00:26:11,360
張成嶺:南疆?

489
00:26:11,360 --> 00:26:12,400
でも大巫は良い人で……

490
00:26:12,400 --> 00:26:13,920
顧湘:それが一体どうした

491
00:26:13,920 --> 00:26:15,760
彼が管理する南疆十万の大山は

492
00:26:15,760 --> 00:26:19,000
まさか中に住んでる虫や草さえも
面倒をみる必要があるのか?

493
00:26:19,000 --> 00:26:20,000
曹蔚寧:そうだそうだ

494
00:26:20,000 --> 00:26:22,560
我ら中原の者は南側の事に対して
ずっと実像を隠すべきだとしていても
(*讳莫如深=重大な秘密をひた隠しにすること)

495
00:26:22,560 --> 00:26:24,800
その実 あまりはっきり分かってない

496
00:26:25,240 --> 00:26:27,720
顧湘:その女がどれだけすごいのか
あたしも上手く言えない……

497
00:26:27,720 --> 00:26:29,600
どうせあたしは敵わない

498
00:26:29,600 --> 00:26:31,160
曹兄さんがさ

499
00:26:31,160 --> 00:26:34,280
もし普通にやり合ったら いくらか
勝算があるかもしれないけど

500
00:26:34,280 --> 00:26:35,840
でもこのまま行っても

501
00:26:35,840 --> 00:26:39,200
この黒蠱婆婆はきっと別の手段を持ってると思うし

502
00:26:39,200 --> 00:26:41,120
それこそ手こずるよ

503
00:26:41,120 --> 00:26:43,040
更に言うと彼女たちは人が多い

504
00:26:43,040 --> 00:26:46,080
曹蔚寧:そういうことなら……
迷香を吹き付けようか?

505
00:26:48,980 --> 00:26:51,040
顧湘:黒蠱婆婆があんたのに
引っ掛かると思う?

506
00:26:51,040 --> 00:26:52,440
それともあたしのに引っ掛かると思う?

507
00:26:52,440 --> 00:26:55,320
この手のものは中原人は本来
南疆人に比べて得意じゃない

508
00:26:55,320 --> 00:26:58,360
あんたはもしかして……ンン

509
00:26:59,160 --> 00:27:01,040
あんたの策は実用的じゃないけど

510
00:27:01,040 --> 00:27:03,120
その精神は素晴らしい

511
00:27:03,120 --> 00:27:04,160
曹蔚寧:もっともだ

512
00:27:04,160 --> 00:27:05,840
僕は本当に馬鹿だな

513
00:27:05,840 --> 00:27:06,640
阿湘

514
00:27:06,640 --> 00:27:08,200
やっぱり君の言うことを聞くよ

515
00:27:08,200 --> 00:27:09,240
顧湘:それは当然

516
00:27:09,920 --> 00:27:10,840
聞いてろ

517
00:27:10,840 --> 00:27:14,080
しばらくしたらあたしたちは……

518
00:27:14,080 --> 00:27:20,360
──三人寄れば文殊の知恵ということで
顧湘の尻馬に乗ることが決まり
彼女は然るべく指揮を執った

519
00:27:25,520 --> 00:27:26,760
顧湘:あたしがさっき言ったの

520
00:27:26,760 --> 00:27:27,840
全部覚えてるか?

521
00:27:27,840 --> 00:27:29,280
張成嶺:安心してください顧湘姐さん

522
00:27:29,280 --> 00:27:31,440
流雲九宮歩は間違いなく踏めます

523
00:27:31,440 --> 00:27:34,240
でないと師父に私のチンケな
脚を折られてしまいます

524
00:27:34,240 --> 00:27:37,360
顧湘:踏み間違えたら お前は
張臭虫(チョウチョン)になるからな
(*臭虫=トコジラミ)

525
00:27:37,360 --> 00:27:39,080
よし 別れて行動だ!

526
00:27:39,080 --> 00:27:40,840
張成嶺:はい!
曹蔚寧:あぁ!

527
00:27:42,200 --> 00:27:45,560
──三人の姿は夜の闇の中で別れた

528
00:27:47,680 --> 00:27:52,080
蝙蝠のように屋根に張り付いた顧湘の瞳は
暗闇の中で獣のように光っていた

529
00:27:54,360 --> 00:27:58,200
曹蔚寧:大変だ 部屋が潰れるぞ!

530
00:28:00,200 --> 00:28:02,760
(顧湘):何が部屋が潰れるだ?!

531
00:28:03,040 --> 00:28:04,040
曹蔚寧:そ そそ そうだ

532
00:28:04,040 --> 00:28:07,960
つまり 火事だ! 火事だ火事だ 早く逃げて!

533
00:28:07,960 --> 00:28:09,480
部屋が丸焼けだぞ!

534
00:28:10,520 --> 00:28:12,720
早く逃げろ! 火事だぞ!

535
00:28:12,720 --> 00:28:13,560
宿泊客:火事だって?何が起こった?
 

536
00:28:13,560 --> 00:28:14,760
宿泊客:火事だって?何が起こった?
曹蔚寧:裏庭の方で火が出たみたいだぞ!

537
00:28:14,760 --> 00:28:14,920
曹蔚寧:裏庭の方で火が出たみたいだぞ!

538
00:28:14,920 --> 00:28:16,880
曹蔚寧:火事だ!火事だ!

539
00:28:19,520 --> 00:28:23,240
──顧湘は面具を着けると
何でもないようにその中に紛れ込んだ

540
00:28:23,240 --> 00:28:25,560
(顧湘):ようやく潜り込めた

541
00:28:25,720 --> 00:28:28,720
──そして袖からいくつか信号弾を出して投げた

542
00:28:29,760 --> 00:28:32,560
宿泊客:部屋に火がついたわ!!早く逃げて!

543
00:28:32,560 --> 00:28:34,920
早く逃げろ!逃げるんだ!火事だぞ!

544
00:28:34,920 --> 00:28:35,440
急いでよ

545
00:28:35,440 --> 00:28:36,160
丸焼けだってさ!
 
急いでよ

546
00:28:36,160 --> 00:28:37,020
丸焼けだってさ!
 
 

547
00:28:37,020 --> 00:28:37,640
丸焼けだってさ!
(顧湘):でもこの客桟の宿泊客が
至るところを逃げ惑って

548
00:28:37,640 --> 00:28:38,480
宿泊客:どいてよ!
(顧湘):でもこの客桟の宿泊客が
至るところを逃げ惑って

549
00:28:38,480 --> 00:28:39,760
宿泊客:どいて!道を開けて!
(顧湘):でもこの客桟の宿泊客が
至るところを逃げ惑って

550
00:28:39,760 --> 00:28:40,640
宿泊客:どいて!道を開けて!
(顧湘):却って黒衣の女どもを
追い散らしてしまった……

551
00:28:40,640 --> 00:28:42,360
宿泊客:ねぇ!見に行ってみてよ……
(顧湘):却って黒衣の女どもを
追い散らしてしまった……

552
00:28:42,360 --> 00:28:42,880
宿泊客:ねぇ!見に行ってみてよ……
(顧湘):この混乱はあたしの予想を
ちょっと超えてるぞ

553
00:28:42,880 --> 00:28:45,600
(顧湘):この混乱はあたしの予想を
ちょっと超えてるぞ

554
00:28:45,600 --> 00:28:50,040
この後 あたしはどうやって高小怜に
接近すればいいんだよ──

555
00:28:50,160 --> 00:28:51,160
黒衣の女:ぼけっとするな

556
00:28:51,160 --> 00:28:52,720
高のとこの娘を見に行くぞ

557
00:28:52,720 --> 00:28:54,280
恐らく誰かがわざとやったんだ!

558
00:28:54,280 --> 00:28:55,360
(顧湘):ちょうどいい

559
00:28:55,360 --> 00:28:56,880
顧湘:あぁ はい!

560
00:28:58,200 --> 00:29:02,240
──顧湘は笑いそうになるのを堪えて彼女に
引っ張って行かれると、ますます胸が高鳴った

561
00:29:02,240 --> 00:29:03,800
女人1:ちょっと待て

562
00:29:03,800 --> 00:29:05,840
何を震えてる?

563
00:29:07,640 --> 00:29:11,920
顧湘:わ……私……怖くて……

564
00:29:11,920 --> 00:29:14,200
女人1:ふん お前のふがいなさを見ろ

565
00:29:14,200 --> 00:29:18,840
戸口を守っていろ もし人を放したら……うっ!

566
00:29:19,360 --> 00:29:21,200
顧湘:敷居に気をつけろ

567
00:29:22,520 --> 00:29:24,000
女人2:彼女はどうしたんだ?

568
00:29:24,000 --> 00:29:26,000
顧湘:あたし……分からない

569
00:29:26,000 --> 00:29:27,960
彼女が突然こう倒れたんだけど

570
00:29:27,960 --> 00:29:29,600
てんかんか何かか?

571
00:29:29,600 --> 00:29:30,960
女人2:てんかん?

572
00:29:31,320 --> 00:29:32,360
違う 貴様──

573
00:29:32,360 --> 00:29:36,440
──顧湘が袖を上げると白い粉が舞い、黒衣の女が
息を止め慌てた隙に、一刀で彼女の首を切り裂いた

574
00:29:36,440 --> 00:29:39,640
顧湘:馬鹿な女 小麦粉も怖いのか

575
00:29:41,360 --> 00:29:43,200
高小怜:ン ンンン!

576
00:29:43,680 --> 00:29:44,720
顧湘:早く行くぞ!

577
00:29:44,720 --> 00:29:46,840
高小怜:感謝します姑娘──

578
00:29:46,840 --> 00:29:50,280
曹蔚寧:阿湘 早く!

579
00:29:51,480 --> 00:29:53,640
顧湘:高姑娘 早く窓のとこまで行って!

580
00:29:53,640 --> 00:29:54,520
高小怜:えぇ!

581
00:29:57,300 --> 00:29:59,280
張成嶺:高さん 私が背負って行きます!

582
00:29:59,280 --> 00:30:01,080
高小怜:張小公子!

583
00:30:04,960 --> 00:30:08,840
張成嶺:流雲飛絮 九宮を踏む

584
00:30:11,000 --> 00:30:13,320
顧湘:曹兄さん 早く 黒裙子に着替えて──

585
00:30:13,320 --> 00:30:15,800
あたしらで“芝居”するぞ!

586
00:30:20,360 --> 00:30:27,040
──高小怜をおぶって逃げる張成嶺の後ろを
顧湘は足を、曹蔚寧は胸を
負傷しているふりをして追いかけた

587
00:30:27,040 --> 00:30:29,680
顧湘:盗人め どこに逃げた!

588
00:30:29,680 --> 00:30:32,400
曹蔚寧:止まれ! 逃げるな!

589
00:30:34,040 --> 00:30:35,120
曹蔚寧:阿湘

590
00:30:35,120 --> 00:30:36,360
彼らは本当に信じるだろうか?

591
00:30:36,360 --> 00:30:37,840
顧湘:追ってくるぞ!

592
00:30:38,320 --> 00:30:42,560
黒蠱婆婆:お前たち二人のような
無用のものは どいておれ!

593
00:30:45,320 --> 00:30:47,260
曹蔚寧:彼女が追いかけて行ったよ 阿湘!

594
00:30:47,260 --> 00:30:47,980
顧湘:行くぞ!

595
00:30:47,980 --> 00:30:48,920
曹蔚寧:うん

596
00:30:54,480 --> 00:30:57,080
──高小怜はさっきの一瞬で曹蔚寧と
張成嶺を認識し内心感動していた

597
00:30:57,080 --> 00:31:02,120
彼がなぜ自分を背負うのかは分からないが
口の中でずっとぶつぶつと呟いていたので
高小怜は彼を巻き添えにしたように感じていた

598
00:31:02,120 --> 00:31:03,480
高小怜:張小公子

599
00:31:03,480 --> 00:31:04,960
私を下ろしてください

600
00:31:04,960 --> 00:31:06,200
まだ功力はあります

601
00:31:06,200 --> 00:31:07,840
君と一緒に逃げれば大丈夫

602
00:31:07,840 --> 00:31:08,680
張成嶺:ダメだ

603
00:31:08,680 --> 00:31:10,760
もっと先まで行かないと

604
00:31:13,380 --> 00:31:17,560
流雲飛絮 九宮を踏む……

605
00:31:17,560 --> 00:31:23,120
──高小怜は彼らに何か策があるのだろうと口を
つぐんでいたが、一年も経っていないのにこの少年
はどうしてここまで恐ろしくなったのかと驚いた

606
00:31:23,120 --> 00:31:25,320
黒蠱婆婆:コソ泥どこに逃げる!

607
00:31:26,040 --> 00:31:27,240
(張成嶺):ここのはずだ!

608
00:31:27,240 --> 00:31:29,200
黒蠱婆婆がもうすぐ追いついて来るぞ

609
00:31:29,200 --> 00:31:31,280
高さんは私の助けを頼りにしてるんだ

610
00:31:31,280 --> 00:31:34,520
まだ前方にはあのンンン……の陣が……

611
00:31:34,520 --> 00:31:37,360
この歩法は 私は一歩も間違えることはできない!

612
00:31:37,360 --> 00:31:39,920
高小怜:こ この匂いは──

613
00:31:40,360 --> 00:31:43,400
──彼の口訣の暗誦はますます速くなり
全体が残像のようになった

614
00:31:43,400 --> 00:31:48,200
この夜、張成嶺は知らないうちに
唯々諾々とした自分に打ち勝っていた

615
00:31:48,200 --> 00:31:49,880
(張成嶺):できた!

616
00:31:52,200 --> 00:31:54,040
黒蠱婆婆:コソ泥め逃げるな!

617
00:31:54,640 --> 00:31:58,360
──突然、空中の糸が彼女の袖を引っ張り
彼女は考える前に身を躱した

618
00:31:58,360 --> 00:32:00,600
黒蠱婆婆:しまった 仕掛けか!

619
00:32:00,600 --> 00:32:01,960
これは!

620
00:32:02,480 --> 00:32:03,040
黒衣の女たち:汚水?!
 

621
00:32:03,040 --> 00:32:03,240
黒衣の女たち:汚水?!
黒蠱婆婆:汚水?

622
00:32:03,240 --> 00:32:04,200
黒衣の女たち:汚水だ! 汚水だぞ!
黒蠱婆婆:汚水?

623
00:32:04,200 --> 00:32:04,400
黒衣の女たち:汚水だ! 汚水だぞ!
黒蠱婆婆:コソ泥 おのれ──

624
00:32:04,400 --> 00:32:06,200
黒蠱婆婆:コソ泥 おのれ──

625
00:32:07,360 --> 00:32:08,920
ウッ!

626
00:32:08,920 --> 00:32:10,640
──隠された肥桶が注がれ中の物が飛び散った

627
00:32:10,640 --> 00:32:11,720
黒衣の女たち:うぇぇ

628
00:32:11,720 --> 00:32:16,720
黒蠱婆婆:コソ泥 必ずお前を
八つ裂きにしてやる──

629
00:32:33,240 --> 00:32:36,320
張成嶺:彼女たちはもう追ってきてないよね?

630
00:32:36,960 --> 00:32:38,000
顧湘:無理だね

631
00:32:38,000 --> 00:32:39,440
おおよそ彼女が女である限り

632
00:32:39,440 --> 00:32:42,640
頭から糞尿汁を浴びて
夜逃げしろとは言わないね!

633
00:32:42,880 --> 00:32:46,640
曹蔚寧:阿湘 君のこの肥桶の陣はすごすぎるよ!

634
00:32:46,640 --> 00:32:47,800
顧湘:受け売りだ

635
00:32:47,800 --> 00:32:49,360
これはあの七爺があたしに教えたんだ……

636
00:32:49,360 --> 00:32:50,240
そうだった

637
00:32:50,240 --> 00:32:51,440
七爺は更に

638
00:32:51,440 --> 00:32:54,080
もし周絮たちに会ったら 文を寄越せと言ってたな!

639
00:32:54,080 --> 00:32:57,120
坊や 主人たちが宿泊してる
場所へはどれぐらいで着くんだ?

640
00:32:57,120 --> 00:32:59,760
張成嶺:あの客桟がそうです! 二階です!

641
00:33:02,280 --> 00:33:07,720
──黙ったままの高小怜に疑問があっても
張成嶺は聞けず、曹蔚寧は空気を読み
顧湘は全く関心がなかった

642
00:33:10,160 --> 00:33:11,840
給仕:皆さんご休憩それとも宿泊で?

643
00:33:11,840 --> 00:33:13,480
顧湘:人を探してる!

644
00:33:16,600 --> 00:33:19,160
張成嶺:左手の一番奥の部屋です!

645
00:33:19,780 --> 00:33:22,480
顧湘:主人 あたしのこと──

646
00:33:22,760 --> 00:33:24,240
何を騒いでる

647
00:33:24,240 --> 00:33:26,200
阿絮が寝たとこだ

648
00:33:26,440 --> 00:33:29,080
顧湘:主人 あ あな あなた……

649
00:33:29,080 --> 00:33:31,120
温客行:あなが何だ しーっ

650
00:33:31,360 --> 00:33:33,480
阿絮の休息を邪魔するな……

651
00:33:33,480 --> 00:33:35,560
お前たちのそれは何の扮装だ

652
00:33:35,560 --> 00:33:37,080
物乞いをして来たのか……

653
00:33:37,080 --> 00:33:38,400
周子舒:顧湘か?

654
00:33:40,000 --> 00:33:42,560
温客行:阿絮 どうして起きてきたの?

655
00:33:42,560 --> 00:33:43,880
衣もちゃんと着てない

656
00:33:43,880 --> 00:33:46,360
周子舒:張成嶺お前は──

657
00:33:46,360 --> 00:33:49,560
高さん どうしてここに?

658
00:33:50,240 --> 00:33:53,320
高小怜:あなたは……周……

659
00:33:53,320 --> 00:33:55,640
周子舒:そう いかにも私だ

660
00:33:55,640 --> 00:33:58,360
高さん 早く部屋に入って一息ついてくれ

661
00:34:01,440 --> 00:34:03,040
お前たちはどうしたんだ?

662
00:34:03,040 --> 00:34:06,080
張成嶺:師父 高さんは黒衣の
女どもに拐かされたんです

663
00:34:06,080 --> 00:34:07,520
阿湘姐さんが言うには南疆の黒蠱婆婆で……
 

664
00:34:07,520 --> 00:34:09,400
阿湘姐さんが言うには南疆の黒蠱婆婆で……
顧湘:主人 あなたとうとう彼を……

665
00:34:09,400 --> 00:34:10,120
顧湘:主人 あなたとうとう彼を……

666
00:34:10,880 --> 00:34:12,200
ケダモノにくれてやったのか?

667
00:34:12,200 --> 00:34:13,320
温客行:チッ

668
00:34:13,360 --> 00:34:16,240
お前は嫁ぎ先があるからって
好き勝手できると思うな

669
00:34:16,240 --> 00:34:18,080
さっさと店の給仕を呼んで

670
00:34:18,080 --> 00:34:20,000
高さんの食べ物を準備させに行かないか

671
00:34:20,000 --> 00:34:21,160
顧湘:分かった

672
00:34:21,160 --> 00:34:23,120
曹蔚寧:阿湘 僕が一緒に……

673
00:34:39,520 --> 00:34:41,480
給仕:料理はお揃いですね ごゆっくりどうぞ

674
00:34:41,480 --> 00:34:44,040
ご希望の三部屋の客房も既に空けております

675
00:34:44,040 --> 00:34:47,160
御用がなければ 私めは
ひとまず下がらせていただきます

676
00:34:47,160 --> 00:34:48,640
周子舒:ありがとう

677
00:34:54,600 --> 00:34:57,120
高さん 何か食べてくれ

678
00:34:57,120 --> 00:34:59,800
高小怜:あぁ……ありがとうございます

679
00:34:59,800 --> 00:35:01,320
周子舒:いいんだ

680
00:35:02,440 --> 00:35:08,160
高さん どうして単身で
黒蠱婆婆に捕われていたんだ?

681
00:35:08,400 --> 00:35:09,960
高大侠は?

682
00:35:12,560 --> 00:35:15,640
高小怜:わ 私の父……

683
00:35:16,800 --> 00:35:18,720
私の父は

684
00:35:18,720 --> 00:35:21,080
死にました!

685
00:35:28,920 --> 00:35:33,320
張成嶺:が……高さん 悲しまないで

686
00:35:33,320 --> 00:35:36,120
私の父も死にました……

687
00:35:36,120 --> 00:35:39,080
わ 私が言いたいのは……

688
00:35:41,680 --> 00:35:44,160
高小怜:分かってます……

689
00:35:45,080 --> 00:35:48,120
感……感謝します

690
00:35:51,320 --> 00:35:53,400
曹蔚寧:聞いた話では 少し前に

691
00:35:53,400 --> 00:35:56,360
高大侠は自ら沈大侠の骸(むくろ)を蜀中に護送した

692
00:35:56,360 --> 00:35:59,200
その後……何かが起こったということですか?

693
00:36:00,500 --> 00:36:02,200
高小怜:あの時

694
00:36:02,200 --> 00:36:06,720
沈おじ上を送る道のりは
英雄諸氏と共にと父上は言いましたが

695
00:36:06,720 --> 00:36:10,840
本来は私と鄧師兄を伴って行くと言っていたんです

696
00:36:10,840 --> 00:36:12,680
ですが出立の前日になって

697
00:36:12,680 --> 00:36:16,800
彼は突然考えを改め 私を残すことにしました

698
00:36:16,800 --> 00:36:21,840
私……私はあの時これのために彼と喧嘩をして

699
00:36:21,840 --> 00:36:25,160
でも父上は頑なな決意で
私を連れて行きませんでした

700
00:36:25,160 --> 00:36:26,080
その上……

701
00:36:26,080 --> 00:36:26,360
高崇:目下情勢は緊張しており
その上……

702
00:36:26,360 --> 00:36:27,320
高崇:目下情勢は緊張しており
 

703
00:36:27,320 --> 00:36:29,880
道中あらゆる状況が考え得る

704
00:36:29,880 --> 00:36:32,160
鬼谷の者はまだ表をぶらついておる

705
00:36:32,160 --> 00:36:34,500
お前が行けば 我らの行程の邪魔になるのだ!

706
00:36:34,500 --> 00:36:36,240
高小怜:ですが 父上!

707
00:36:36,240 --> 00:36:37,040
高崇:申すな!

708
00:36:37,040 --> 00:36:39,880
お前は家に残るのだ 行くことは許さぬ!

709
00:36:44,280 --> 00:36:46,680
周子舒:思うにご尊父は
何かが起こると考えていたが

710
00:36:46,680 --> 00:36:48,520
話すのは都合が悪かった

711
00:36:48,520 --> 00:36:52,240
それこそ君の安全を気に掛け 君を残したのだ

712
00:36:53,160 --> 00:36:54,280
高小怜:でも

713
00:36:54,640 --> 00:36:57,320
でも私が最後に彼とした会話が

714
00:36:57,320 --> 00:37:01,720
口から出任せの罵りだったなんて……
(*出尔反尔=矛盾した言動をすること)

715
00:37:02,700 --> 00:37:07,880
周子舒:君が平穏無事なら
父君の苦心も無にはならない

716
00:37:08,800 --> 00:37:16,280
──以前会った時は世間知らずの令嬢だったが
たった数ヶ月であまりにも多くを経験し
まるで別人のように、もう感情は抑えられていた

717
00:37:16,280 --> 00:37:20,800
高小怜:その後 父上の門派の者が私を拘禁して

718
00:37:20,800 --> 00:37:22,960
師兄を連れて行きました

719
00:37:22,960 --> 00:37:24,880
半月あまりの後

720
00:37:24,880 --> 00:37:29,040
見張っていた私の師兄弟たちはやっと私を解放して

721
00:37:29,040 --> 00:37:31,560
父上の手配だと言って

722
00:37:31,560 --> 00:37:35,560
私を送り届けた場所で彼らと合流しました

723
00:37:35,560 --> 00:37:37,200
その時……

724
00:37:37,200 --> 00:37:39,800
私は少しおかしいと思ったんです……

725
00:37:39,800 --> 00:37:41,200
師兄弟たち:小怜 怒るなよ

726
00:37:41,200 --> 00:37:43,560
我々は君を師父と会わせるために送って来た

727
00:37:43,560 --> 00:37:44,880
そうです 小怜師姐

728
00:37:44,880 --> 00:37:47,920
怒らないでください 師父が全て手配したんですよ

729
00:37:48,080 --> 00:37:52,880
高小怜:それで 私は彼らが
気付かぬうちに こっそり逃げ出して

730
00:37:52,880 --> 00:37:55,640
蜀中に父上を探しに行くつもりでした

731
00:37:55,920 --> 00:37:57,640
誰が分かりますか……

732
00:37:57,640 --> 00:38:00,320
途中で偶然に会った鄧師兄が

733
00:38:00,320 --> 00:38:04,440
重傷を負い その上まだ彼を
殺そうとする者がいたなんて……

734
00:38:07,560 --> 00:38:09,160
鄧寛:小怜……

735
00:38:09,440 --> 00:38:10,800
早く行け

736
00:38:10,800 --> 00:38:13,080
小怜……早く行け!

737
00:38:13,080 --> 00:38:13,780
曹蔚寧:鬼谷の者ですか……

738
00:38:13,780 --> 00:38:14,440
周子舒:殺そうとした者を 君は知っていたのか?
曹蔚寧:鬼谷の者ですか……

739
00:38:14,440 --> 00:38:16,880
周子舒:殺そうとした者を 君は知っていたのか?
 

740
00:38:17,080 --> 00:38:18,400
曹蔚寧:あぁ?

741
00:38:18,520 --> 00:38:20,560
周子舒:洞庭の英雄会にいた者か?

742
00:38:20,560 --> 00:38:24,400
曹蔚寧:周兄 その話は無闇に言わぬ方がいいかと

743
00:38:26,440 --> 00:38:28,120
周子舒:高さんの話によると

744
00:38:28,120 --> 00:38:30,800
高大侠は各大門派の者を率いていた

745
00:38:30,800 --> 00:38:32,440
もしまことに鬼谷の者なら

746
00:38:32,440 --> 00:38:36,320
どうして彼らは人多く気勢の上がった時に
鄧寛を追い落とせたんだ?

747
00:38:36,320 --> 00:38:38,640
それは誰の命に縛られてたんだ?

748
00:38:41,560 --> 00:38:42,760
高小怜:そうです……

749
00:38:42,760 --> 00:38:44,160
あなたのおっしゃる通り

750
00:38:44,160 --> 00:38:46,720
正派の者でした

751
00:38:47,520 --> 00:38:51,800
彼らは当時の容炫たちがしでかした事

752
00:38:51,800 --> 00:38:54,520
各門派から武功の秘籍を盗んだ事に

753
00:38:54,520 --> 00:38:56,760
私の父が参与していたと言及し

754
00:38:56,760 --> 00:38:58,400
彼は自身の名声のために

755
00:38:58,400 --> 00:39:00,480
これらの隠匿はおろか

756
00:39:00,480 --> 00:39:02,760
殺して口を封じたのだと……

757
00:39:02,760 --> 00:39:07,280
彼らは更に 私の父が沈おじ上を
殺した下手人だと言い

758
00:39:07,280 --> 00:39:11,080
彼は張家と泰山の掌門を害した諸悪の根元だと言い

759
00:39:11,080 --> 00:39:13,760
彼が悪鬼と結託して

760
00:39:13,760 --> 00:39:16,520
琉璃甲を手に入れたのだろうと言いました──

761
00:39:16,520 --> 00:39:18,600
張成嶺:なんだって? 彼が!

762
00:39:18,600 --> 00:39:21,400
周子舒:小僧 座ってくれ!

763
00:39:21,560 --> 00:39:24,520
張成嶺:師父 彼女は高崇が諸悪の根……

764
00:39:24,520 --> 00:39:25,120
高小怜:違う!

765
00:39:25,120 --> 00:39:27,200
本当に違います 彼らのでたらめです

766
00:39:27,200 --> 00:39:29,040
彼らは私の父に濡れ衣を着せたんです

767
00:39:29,040 --> 00:39:31,600
私の父はそんな人じゃありません!

768
00:39:32,600 --> 00:39:33,920
周子舒:そうだ

769
00:39:33,920 --> 00:39:36,520
高大侠は確実にその類の人間じゃない

770
00:39:36,920 --> 00:39:38,200
高さん

771
00:39:38,200 --> 00:39:39,680
話を続けて

772
00:39:44,400 --> 00:39:46,480
高小怜:鄧師兄は私をすぐに逃しましたが……

773
00:39:46,480 --> 00:39:49,520
私は動揺して ただ慌てふためくことしかできず

774
00:39:49,520 --> 00:39:51,720
また他の人が私を追いかけてくるのを恐れて

775
00:39:51,720 --> 00:39:54,160
ずっと人気を避けていました

776
00:39:54,160 --> 00:39:56,880
師兄はその時 重傷を負っていて

777
00:39:56,880 --> 00:40:01,280
分かりませんが……もしかして彼は……

778
00:40:01,280 --> 00:40:05,320
──周子舒と温客行は目を合わせると、その鄧寛も
恐らく状況は思わしくないだろうと思った

779
00:40:06,440 --> 00:40:07,520
曹蔚寧:高さん

780
00:40:07,520 --> 00:40:10,280
だからその後 あなたは不注意で
黒蠱婆婆たちに遭遇して

781
00:40:10,280 --> 00:40:15,200
うっかり正体をバラしてしまい 彼女たちは
邪心を掻き立てられ 捕われたということですか?

782
00:40:16,720 --> 00:40:18,720
高小怜:私が不注意でバラしたのではなく

783
00:40:18,720 --> 00:40:20,800
誰かが私を追いかけていて

784
00:40:20,800 --> 00:40:23,200
その間に 黒蠱婆婆たちが横から割り込んで来て

785
00:40:23,200 --> 00:40:25,000
私を連れ去ったのです……

786
00:40:25,000 --> 00:40:28,480
彼女たちは私の父の手に
琉璃甲があると一心に思っていて

787
00:40:28,480 --> 00:40:33,600
それで今や 私の父は生け捕りにされた後に
琉璃甲の痕跡を明かさぬよう自殺したため

788
00:40:33,600 --> 00:40:37,600
それらが私の手元にあるはずだと……

789
00:40:40,320 --> 00:40:43,000
(周子舒):まるでもう一人の張成嶺だな

790
00:40:50,480 --> 00:40:51,600
温客行:阿絮

791
00:40:51,600 --> 00:40:53,840
この小籠包食べて

792
00:40:54,880 --> 00:40:56,200
顧湘:おぉ……

793
00:40:57,320 --> 00:41:00,200
曹兄さん 野 野菜食べて!

794
00:41:01,040 --> 00:41:03,800
曹蔚寧:あぁ うんうん

795
00:41:04,240 --> 00:41:05,160
温客行:阿湘

796
00:41:05,160 --> 00:41:05,880
顧湘:ん?

797
00:41:05,880 --> 00:41:08,080
温客行:お前は一体どうやって
高さんと鉢合わせたんだ?

798
00:41:08,080 --> 00:41:09,120
顧湘:あぁ

799
00:41:09,120 --> 00:41:10,320
そのぅ

800
00:41:10,320 --> 00:41:12,840
前回あたしたちが洞庭で別れてから

801
00:41:12,840 --> 00:41:15,000
あたしと曹兄さんは七爺たちと出くわして

802
00:41:15,000 --> 00:41:17,320
七爺がどうにかして周絮を救うって言うから

803
00:41:17,320 --> 00:41:19,520
一緒にあなたたちをしばらく探してたんだけど

804
00:41:19,520 --> 00:41:23,720
あなたたちがどこか鳥も糞をしないような
場所に行って結婚してたとは知らなかったよ……

805
00:41:23,720 --> 00:41:24,960
曹蔚寧:ンン 阿湘……

806
00:41:24,960 --> 00:41:26,520
温客行:七爺は方法があると言った?

807
00:41:26,520 --> 00:41:28,720
顧湘:うん 大巫が思いついたことがあるって言って

808
00:41:28,720 --> 00:41:31,160
周絮を見つけたら連絡しろって彼らが──

809
00:41:31,160 --> 00:41:35,000
それと あの黒衣の女どもは
当時の南疆の黒巫女の残党で

810
00:41:35,000 --> 00:41:37,640
とうの昔に彼にほとんど殺されたのに

811
00:41:37,640 --> 00:41:41,560
その後 またどこからバカな女子連中を騙して
連れて来て信徒に仕立て上げたのか知らないが

812
00:41:41,560 --> 00:41:43,040
今回は引っ掻き回しに来たから

813
00:41:43,040 --> 00:41:45,800
ちょうど彼女らを一網打尽にした──

814
00:41:45,800 --> 00:41:47,760
あたしと曹兄さんはどうせ用事がなかったし

815
00:41:47,760 --> 00:41:48,720
尾行してたんだ

816
00:41:48,720 --> 00:41:50,160
全部善行の積徳だったのに

817
00:41:50,160 --> 00:41:52,200
高姑娘に出くわすなんてね

818
00:41:52,200 --> 00:41:54,480
今回の積徳は大当たりだな!

819
00:41:55,360 --> 00:41:56,640
温客行:阿絮

820
00:41:56,640 --> 00:41:57,840
どう思う?

821
00:41:58,280 --> 00:42:00,840
周子舒:事情を知る者はほどんど死んで

822
00:42:00,840 --> 00:42:02,440
残っているのは一人

823
00:42:02,440 --> 00:42:04,320
勝敗は見えた

824
00:42:04,880 --> 00:42:06,720
この類の疑問を

825
00:42:06,800 --> 00:42:08,560
お前はまたなんで俺に聞くんだ?

826
00:42:10,080 --> 00:42:11,560
高さん

827
00:42:12,200 --> 00:42:13,680
君は我々に同行して

828
00:42:13,680 --> 00:42:15,800
一先ずこの客桟に留まってくれ

829
00:42:15,800 --> 00:42:18,040
ちょうど姑娘に少し教えて頂きたかった

830
00:42:18,040 --> 00:42:21,840
近頃の武林で 一体何が起こっているのか……

831
00:42:41,040 --> 00:42:45,160
── 一方の七爺と大巫も、とある客桟にいて
七爺は頭の部分が丸くなった箸を立てようと
長い間努力していた

832
00:42:45,160 --> 00:42:46,360
七爺:アイヤ……

833
00:42:46,360 --> 00:42:48,080
チッ──

834
00:42:51,520 --> 00:42:54,080
大巫:北淵 遊ぶな

835
00:42:54,080 --> 00:42:55,920
ちゃんと食べろ

836
00:42:55,920 --> 00:42:56,960
七爺:うん……

837
00:42:57,900 --> 00:42:59,840
──大巫は一口一口彼に食べさせるしかなかった

838
00:42:59,840 --> 00:43:03,040
この南疆の大巫は冷たく見えて
七爺には多大な忍耐力を持っていた

839
00:43:03,040 --> 00:43:05,440
大巫:この箸をどうしようと悩んでいるのだ?

840
00:43:05,440 --> 00:43:07,160
七爺:これを立ようとしてる

841
00:43:07,160 --> 00:43:08,840
大巫:立てようと?

842
00:43:08,840 --> 00:43:12,280
──大巫は眉をひそめ、その箸を彼の手から
抜き取ると、豆腐に刺すように卓に突き立てた

843
00:43:12,280 --> 00:43:13,720
こうか?

844
00:43:14,320 --> 00:43:17,640
七爺:君のは腕力で直接卓に突き刺し立てただけだ

845
00:43:17,640 --> 00:43:19,120
こうではいけない

846
00:43:21,840 --> 00:43:23,600
大巫:分かった

847
00:43:23,840 --> 00:43:26,040
ほら 続きを食べろ

848
00:43:26,280 --> 00:43:28,480
口を開けろ

849
00:43:31,000 --> 00:43:32,840
七爺:一本では立たない

850
00:43:32,840 --> 00:43:35,320
もう一本あればこそだ

851
00:43:45,000 --> 00:43:46,920
七爺:立っている……

852
00:43:46,920 --> 00:43:48,320
──七爺は両手を慎重に抜いた

853
00:43:48,640 --> 00:43:50,120
七爺:均衡というのは──

854
00:43:50,120 --> 00:43:52,120
全く容易じゃないね

855
00:43:53,440 --> 00:43:54,960
大巫:何のことだ?

856
00:43:55,760 --> 00:43:57,120
七爺:一つの局面に

857
00:43:57,120 --> 00:43:59,800
長期の安定的結果を望むならば

858
00:43:59,800 --> 00:44:02,400
必然的に均衡が必要になる

859
00:44:02,600 --> 00:44:04,600
和合とは一つの均衡で

860
00:44:04,600 --> 00:44:06,800
対立もまた一つの均衡だ

861
00:44:07,200 --> 00:44:09,000
均衡の道とは すなわち……

862
00:44:09,000 --> 00:44:12,400
大巫:北淵 無駄話をやめよ

863
00:44:13,600 --> 00:44:18,200
七爺:均衡を保つつもりなら
条件は厳しく 到達は極めて難しい

864
00:44:18,200 --> 00:44:21,640
まず 双方の勢力が互角でなければならず

865
00:44:21,640 --> 00:44:23,560
強弱の差があってはならない

866
00:44:23,560 --> 00:44:27,800
さもなくば 強き一方が弱き一方を呑み込んでしまう

867
00:44:27,880 --> 00:44:30,320
勢力が互角なだけでもダメだ

868
00:44:30,320 --> 00:44:34,360
互角でも生きるか死ぬかの勝負に出る可能性がある

869
00:44:34,360 --> 00:44:38,280
いくつか自然発生的 或いは人為的な障壁があれば

870
00:44:38,280 --> 00:44:39,560
乗り越えられず

871
00:44:39,560 --> 00:44:41,440
双方とも鼠に投ずるに器を忌み
(*投鼠忌器=周りへの影響を考えて行動しない)

872
00:44:41,440 --> 00:44:43,400
双方とも顧慮し

873
00:44:43,400 --> 00:44:45,720
その口火を切ることはない……

874
00:44:47,040 --> 00:44:48,320
一般に言われる

875
00:44:48,320 --> 00:44:51,280
こんな完璧で また美しい均衡の取れた結果の出現は

876
00:44:51,280 --> 00:44:53,920
様々な縁や偶然が重なって出来上がる

877
00:44:53,920 --> 00:44:57,680
老天の采配でもある

878
00:44:57,680 --> 00:44:59,200
もし人が為すものならば

879
00:44:59,200 --> 00:45:02,240
その場合は地歩を固め 布石に注意が必要だ

880
00:45:02,240 --> 00:45:06,120
一歩間違えば 全面的な敗北となる

881
00:45:06,400 --> 00:45:11,120
しかしながらこの局面を
打ち壊すのは むしろ特別容易なのだ

882
00:45:11,880 --> 00:45:13,760
このようにして

883
00:45:14,680 --> 00:45:16,800
その中の板を一枚抜き取ればいいだけ

884
00:45:16,800 --> 00:45:20,400
均衡の取れた局面が立ちどころに壊れるのだ

885
00:45:20,480 --> 00:45:22,280
ただし……

886
00:45:22,360 --> 00:45:25,520
なぜこの板を抜き取る必要が?

887
00:45:27,880 --> 00:45:29,960
大巫:また何か見抜いたのか?

888
00:45:36,720 --> 00:45:38,760
七爺:言えないなぁ

889
00:45:39,200 --> 00:45:41,720
言えない

890
00:45:46,640 --> 00:45:52,080
顧湘:主人 あたし……あたしは良い姑娘かな?

891
00:45:52,080 --> 00:45:52,720
曹蔚寧:温兄 ご安心を
顧湘:主人 あたし……あたしは良い姑娘かな?

892
00:45:53,040 --> 00:45:55,240
曹蔚寧:私はこの一生 今から死に至るまで

893
00:45:55,240 --> 00:45:58,480
片時も絶対に阿湘を裏切ることはありません

894
00:45:58,480 --> 00:45:59,320
大巫:我らには功力の深厚たる者
片時も絶対に阿湘を裏切ることはありません

895
00:45:59,320 --> 00:46:00,480
大巫:我らには功力の深厚たる者
 

896
00:46:00,480 --> 00:46:02,520
あなたの身の経脈を一瞬で
砕き断つことができる者が必要だ

897
00:46:02,520 --> 00:46:03,480
七爺:ほかに……
あなたの身の経脈を一瞬で
砕き断つことができる者が必要だ

898
00:46:03,480 --> 00:46:04,000
七爺:ほかに……
 
 

899
00:46:04,240 --> 00:46:07,920
君が誰かに対してこのように
思い遣るのを見たことがなかった

900
00:46:08,200 --> 00:46:09,540
なかなか良いな

901
00:46:09,780 --> 00:46:15,300
“客行天涯谁敌谁友”
(天涯の客行 誰が敵で友なのか)

902
00:46:16,180 --> 00:46:21,900
“十载烟云一杯酒”
(雲烟る十年に一杯の酒)

903
00:46:22,660 --> 00:46:27,920
“身似飞絮过江南锦绣”
(飛絮のごとき身で江南錦繍を過れば)

904
00:46:27,920 --> 00:46:34,780
“冰销后 花月遥对平江柳”
(氷の融けたる後 花月遥か対う柳の平江)

905
00:46:35,180 --> 00:46:38,340
“江湖一醉大梦三秋”
(江湖に酔えば 三秋の大夢)

906
00:46:38,340 --> 00:46:42,120
“人心善恶只为情仇”
(人心の善悪ただ恩仇のため)

907
00:46:42,120 --> 00:46:48,900
“却不枉萍水知交许白首”
(それでも萍水の知己 白首なろうとも悔いはなし)

908
00:46:49,300 --> 00:46:51,460
“不过 蓬蒿旧梦”
(ただ 草葉の旧き夢に過ぎぬ)

909
00:46:51,460 --> 00:46:55,420
“自在余生 懒知欢与恨”
(自在なる余生に 愛憎を知ることなく)

910
00:46:55,420 --> 00:46:57,900
“偏要 刀剑交锋”
(ひとえに 刀剣を交え)

911
00:46:57,900 --> 00:47:02,180
“把盏笑问 慰这孤独人”
(盃を掲げ笑って問えば 孤独なる人の慰めになろう)

912
00:47:02,180 --> 00:47:05,420
“渺渺黄泉 只葬狂嗔”
(渺渺たる黄泉に ただ葬られし狂気)

913
00:47:05,420 --> 00:47:09,740
“茫茫鬼蜮 谁为谁掌灯”
(茫々たる悪意の中で 誰がために火を灯すのか)

914
00:47:09,740 --> 00:47:15,620
“此处长明 有红尘”
(ここは長明 紅塵に有り)

915
00:47:42,100 --> 00:47:48,540
“万鬼成窟寸光微漏”
(万鬼の巣窟 かすかな光を漏らす)

916
00:47:48,540 --> 00:47:55,180
“以免惊鸿白衣瘦”
(細き白衣の美しき君を離さぬよう)

917
00:47:55,180 --> 00:48:00,060
“倾心日久薄衾胜貉裘”
(日々心寄せれば毛皮に勝る薄衾)

918
00:48:00,060 --> 00:48:07,380
“如厮守 巴山夜雪也暖昼”
(寄り添い合えば 巴山の夜雪も昼は暖かく)

919
00:48:07,380 --> 00:48:10,620
“玉壶冰心碾转谁手”
(一片の氷心 誰の手に渡ろうとも)

920
00:48:10,620 --> 00:48:14,500
“情丝剥尽才知剔透”
(情の糸を解けば透徹たるを知る)

921
00:48:14,500 --> 00:48:21,060
“最不忍一眼春风难如旧”
(吹きゆく春風 耐え難くともいつかは変わる)

922
00:48:21,740 --> 00:48:23,860
“不过 蓬蒿旧梦”
(ただ 草葉の旧き夢に過ぎぬ)

923
00:48:23,860 --> 00:48:28,020
“自在余生 懒知欢与恨”
(自在なる余生に 愛憎を知ることなく)

924
00:48:28,020 --> 00:48:30,300
“偏要 刀剑交锋”
(ひとえに 刀剣を交え)

925
00:48:30,300 --> 00:48:34,700
“把盏笑问 慰这孤独人”
(盃を掲げ笑って問えば 孤独なる人の慰めになろう)

926
00:48:34,700 --> 00:48:37,820
“渺渺黄泉 只葬狂嗔”
(渺渺たる黄泉に ただ葬られし狂気)

927
00:48:37,820 --> 00:48:42,140
“茫茫鬼蜮 谁为谁掌灯”
(茫々たる悪意の中で 誰がために火を灯すのか)

928
00:48:42,140 --> 00:48:47,180
“此处长明 有红尘”
(ここは長明 紅塵に有り)

929
00:48:47,180 --> 00:48:49,820
“不过 天光一缕”
(ただ 一縷の天光に過ぎぬ)

930
00:48:49,820 --> 00:48:53,980
“生死几轮 何幸付热忱”
(重ねた生死に 情熱注ぐことの幸運を)

931
00:48:53,980 --> 00:48:56,260
“哪管 前尘旧闻”
(どんな過去の風聞でも)

932
00:48:56,260 --> 00:49:00,540
“是假是真 心动有余温”
(嘘か真か 心動かす余熱があり)

933
00:49:00,540 --> 00:49:03,660
“迢迢风崖 无可容身”
(迢迢たる風崖 身の置き場なく)

934
00:49:03,660 --> 00:49:07,900
“痴痴人间 从不止方寸”
(痴れたる人の世 思いのままに)

935
00:49:07,900 --> 00:49:13,980
“天涯解剑 好寻春”
(天涯に剣を放ち 春を尋ねる)






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