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ヒルマアフクリントという作家

ヒルマアフクリントという作家を知っていますか。ヒルマアフクリントは長い間人知れず、抽象画を描いた女性作家だ。彼女のドローイングを含めた大量の作品は、彼女の生前の意向で死後20年公開されることなく、当然評価されることもなかった。それが最近になって、スポットライトが当てられ、彼女の存在が美術史界を覆したとも言われている。抽象画の先駆者とされているカンディンスキーやマレーヴィチ、モンドリアンらよりも先に抽象画として確立された作品を作っていたという事実が、美術史に衝撃を与えた。

私が彼女を知ったのは、美術予備校でわけもわからず尖りまくって抽象画を描いていたころで、講師にこんな作家がいるよと紹介してもらった時だ。その図形のような有機的なフォルムや色彩に魅せられた私はすぐにメルカリで画集を買った。それからしばらく心の隅に彼女の作品の存在があった。ヒルマアフクリントの名前を再びを聞いたのは大学に入ったころだった。ヒルマアフクリントのドキュメンタリー映画が上映されるというので、観に行った。

アフクリントの作品から、私は生命の神秘のようなものを感じる。彼女がモチーフとするのは自然物が多く、初期のドローイングからは対象物を丁寧に観察していたことが分かる。そして有機的な図形は象徴的に描かれている。それはアフクリントが神智学に深く関心を持ち、目に見えない領域を探求し、独自の表現方法として確立させたのだろう。

美術史上で女性作家であれば、私は無条件で興味をもつことが多い。なぜなら、言うまでもなく、美術史のなかで名を残してきたのは圧倒的に男性が多く、異なる時代の同性というだけで、私は共感を持ってその作品を目を凝らして見たいと思うからだ。女性というだけで作品が素晴らしいということはないが、アフクリントのような存在が今後も美術界に現れたら面白いと思う。

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