白井恭弘著「英語教師のための第二言語習得論入門」を読んだ ~アウトプットが重要だというのは本当?~


なぜこの本を読んだのか
コロナウイルスの影響で、外出ができない状況で今できることはなにか?
ということを考えた結果、多くの日本人にとって永遠の課題である、英語学習に取り組むことを考えたのが、今回この本を読んだきっかけである。
学生時代から英語の勉強には取り組んできたつもりではあるが、正直なところビジネスに活かしたりできるレベルではない。(TOEIC800点をとった程度で会話力は乏しい)今後のキャリアアップや、日本経済の停滞を考える中では必然的に英語の習得からは逃げ切れないような気がしているものの、なかなか本腰を入れて学習に取り組めていないというのが現状としてあったため、外出できない期間に勉強をしようと考えたのだ。

英語の勉強を始めるにあたって、英語をマスターするために、本質的に重要なものは何かということをまず把握したいと考えた。
世の中にはやった気になるためだけの書籍や、マンツーマンでのレッスンがはびこっていて、本質的にどのようにすれば、上達するのかということに焦点を絞ったコンテンツやサービスはなかなか無かったりする。

余談だが英語学習とダイエットについては、共通点があると思っている。
書店に行けば「〇〇するだけ」といったようなタイトルが散見され、時代に合わせて手を変え品を変え、商品やサービスを売りつけてくる。(人間は易きに流れるので、本質的なことを継続することから逃げ、耳障りの良いものに行き着くので、ビジネスとしては、簡単に実施できるモノの方がカネになるというのは理解できる)人間の体は対して変わらないのに、次々と最新のダイエット法が生み出されることに違和感を感じ、ダイエットや、ボディメイクについてはそれなりに勉強してきた結果、本質的に重要なことは大体わかってきたので、今度は英語学習についても同様に本質的なものは何かということを学ぶために行き着いたのが、第二言語習得論だったのだ。


第二言語習得論とはなにか
Wikipediaから引用
「第二言語習得の理論は、第二言語習得(Second Language Acquisition(SLA))、つまり、人間がどのように第二言語を学習するかの研究分野での 理論 や 仮説である。 第二言語習得の研究は 言語学, 社会言語学, 心理学, 神経科学や 教育などの研究分野と密に関係しており、結果として第二言語習得の理論の多くは、そのどれかに起源を持つ。 それぞれの理論は言語習得の過程に一定の光を当てるものとみなされているが、そのどれかが包括的な第二言語習得の理論として全ての研究者から支持されているわけではない。」

自分としては、完全なる正解はないものの、学術的な研究がされているためある程度の再現性がある(エビデンスレベルが高い)と考えている。
つまり、商用的なマーケティングとは距離をおいて、本質的に重要なものを考える上でのインプットとして、第二言語習得論を学ぶことは適切なアプローチであると考えている。


外国語学習に成功する学習者の特徴はあるのか
本書の中では、言語の習得に成功する学習者の特徴を5つ提示している。

1.若い
当たり前だという声が聞こえてきそうだが、やはり事実なようだ。
子供の頃の環境や、勉強してこなかった自分を恨んでも仕方ないので今日から勉強を始めよう。
残りの人生で一番若いのは今日である。Let's start today.

2.母国語が学習対象言語に似ている
これは考えても仕方ないことなので無視することとする

3.外国語学習適性が高い
下記の3つが優れていれば外国語学習に成功する確率が高いと言われている。
1.言語分析能力
2.音声認識能力
3.記憶力

このような能力は一般的な知能/知性と似通っており、完全に一致するわけではないが、共通する点が多い。つまり一般的に頭が良いと言われる人のほうが、英語学習に関しても高いパフォーマンスを発揮するという、身も蓋もないもない話である。

4.動機付けが強い  
1-3に関しては、学習者自身はどうしようもないことであるが、動機づけに関しては自分の力でどうにかできる要素である。
ここで重要なのは、動機づけが実際の行動につながる必要があるという点である。
ただ単に英語を話せるようになりたいと考えるだけではなく、実際に英語話者と話をする機会を作ったり、
英語圏に留学したりするという具体的な行動が起こせているかという点が、上達に大きく関わっている。
英語学習者は高いモチベーションを保ちながら、そのモチベーションをいかに実際の行動につなげるかを
戦略的に考え行動しなければならない。

5.学習法が効果的である
物事の上達には、適切な勉強法/練習法で、十分な量の努力を継続することが必要であるが、
それは英語学習でも変わらない。
聞き流すだけで上達するわけでもないし、三ヶ月でネイティブのように話せるようになるわけでもないのである。


第二言語習得論的に効果的な勉強法とは(インプット+アウトプットの必要性が重要)
結論から言うと、大量のインプットと少量のアウトプットが重要となる。
言語習得はかなりの部分がインプットを理解することによって起こることがわかっており、
ただひたすらアウトプットをしても語学力は向上しない。

とりあえず英語を話す環境に行けば良いとか、英語で話す機会を増やせばいいといいう人がいるが、
それはあまり適切なアプローチではない。
やってみればわかると思うが英語を全然勉強していない人が英会話スクールに通っても
相槌を打つだけで何もしゃべれないだろう。
当たり前だが、知らない単語は聞き取れないし、話すこともできない。
一定量のインプットを確保しつつ、アウトプットの機会を設けることが必須であるというのが
学習計画をたてるにあたって重要となるのは間違いない。

ただし、アウトプットの必要性を高めるということも重要であり、
英語を話す環境に行ったり、英語が必要な仕事につくといったことは英語力を高めるにはプラスに働くだろう。
(人間は必要性がないと、学習が加速しない)

インプットの重要性を書いてきたが、アウトプットを行うことでどのようなインプットが自分に足りないかということに気づくことができるという点は忘れてはならない。
例えば自己紹介をする際など、自分の仕事を他人に説明する上でわからない単語や、
適切な表現が出てこない場合、自分に足りていないインプットが明確になるだろうし、
エッセイや職務経歴書を書いたりしていると、自分がわからないことが何なのかが浮き彫りになる。


どのように勉強するか
どのような勉強をするかは、自分の目的次第にはなるが、
目的を達成している自分と今の自分を比較し、その差分がを分析し、差分を埋める作業が必要になってくるだろう。
これに関しては語学学習に限ったことではなく、すべての学習に共通した作業である。

その差分を明確にするためにまずはアウトプットをしてみるというのは、良い方法かもしれない。
英語でプレゼンをするのが目的ならそれをやってみる。
外資系の企業に入社したいのなら、英語でインタビューを受けてみたり、
エージェントの人にアポを取って英語で話してみるなど、
目的に即した具体的なアウトプットを行うことで、自分に足りないインプットが明確になるかと思う。

そして、最も重要なことは努力を継続すること。
目的を達成するには決して面白いことばかりではないこと、愚直に続けることが最も重要であることを理解すること。
易きに流れず本質的な学習を行うこと。


自分への戒めを込めて、、、


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