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大手MLMに誘われた私の率直なレポ

皆さんはMLMという言葉をご存知だろうか。
マルチ・レベル・マーケティングの略称で”マルチ商法”とか”ネットワークビジネス”とも呼ばれることもある言葉だ。
私が初めてこの言葉と出会ったのは大学の入学式だったと思う、大きな講堂で皆が見つめるスクリーンの中に「ネズミ講」や「宗教勧誘」と共に映し出されていた。遠くに立つ教員が熱心にその危険性や矛盾、学則の中に禁止事項があることを説明していた。
当時の私はそんなこともあるのかと熱心に聞いていたもののどこか興味本位で他人事だったように思う。幸い私たちの世代はコロナウィルスの煽りを受け入学後まもなくオンライン授業が中心となり学校に足を運ぶことは少なかった為、その後生徒間でその話を耳にすることはなかった。

MLMとの出会い

私には大学入学当初から始めたアルバイトがあった。思いつきで始めたアルバイトだったが人間関係に恵まれ居心地が良く皆仲の良い職場だ。
中でもAさんは仕事ぶりも快活な性格も憧れの人で共に仕事をすることが多かった為、良い師弟関係を築けていた。共に働いた日は「飯行くぞ!」と誘われ、食後に店先の喫煙所でタバコを片手に仲間内で何時間も仕事やプライベートの話をするのが私の楽しみであった。
そんなAさんも結婚し子供が生まれ、「この職場で働き続けて良いのか」と転職を考えるようになる。寂しくはあるが肉体労働であった為、本人を思えばこそ強くとめることは出来ず、独り言のような将来の展望を聞くことが増えていたある日のことだった。
「仕事終わった後時間ある?」と誘われ車の中で話をすることになる。結婚後、出産後、どんどん真っ直ぐ帰ることが増えたAさんの誘いは久しぶりだったものの「今までのように夕飯の誘いではなく職場でも話せないことって何だろう」と不安を感じつつ落ち合った。
実は2人きりで会うことは珍しくどこかぎこちなく「おう!」と挨拶をしたAさんの隣に座ると白いノートを出して来た。なんだか嫌な予感である。その後は狭い車内で懸命にペンを走らせながら説明をするAさんをどう断ろうか、どう止めようかと思案しているうちに説明は終わった。ノートをちぎり「とりあえず考えてみてよ」と渡されその場は終了した。

MLMとはなにか。

私が誘われたのは美容系のMLMでかなり大手のものだった。慎重派で保守的な私は手をつける気はもとより無かったが、お世話になった人を相手に無碍にも出来ず、まずは何故ダメだと思うのかを徹底的に調べることにした。
ネズミ講と並べて紹介されることが多く「悪いもの」という感覚のあるマルチ商法、名前こそ知っていたもののそれぞれ何を意味するのかは全く理解していなかった。

MLMの仕組みから説明しよう。日本語名では連鎖販売取引と呼ばれ、広告や代理店舗などを置かず販売登録をした個人により売買が行われる。その為店舗の家賃や広告代などが浮きその分の利益を販売登録者に割り振られるイメージだ。「連鎖」と名前がつくのは販売登録者も消費者もその個人の紹介によって広がっていくという点によるからである。細かなルールや配当金などはもちろんその企業によって変わるが大まかな仕組みはこのようなものだ。
次にネズミ講である。ネズミ講には基本的に商品は介在せず勧誘が収入源となる。つまり次の加入者の入会金であったり、支払う金額であったりのバックが入ると言う仕組みだ。モノが介在しない事が多い為内容は多岐に及ぶようで「次の会員を呼べればお金をあげる」といった極々怪しいものからまるで投資の一種のように見せかけたものまで、私は勧誘された事が無いので実際どのような形で蔓延しているのかはニュースにあがる文字でしか掴めないがこんなところだろう。その違法性は何より必ず破綻するという点にある、「ネズミ算」という言葉を聞いた事があるだろうか、1匹のネズミから2匹ずつ産まれたとして、それを27回繰り返すと日本の人口を超えてしまうのだ。これでは限界が近いどころの話では無く得をするのはごく一部の上澄みにいる人間だけである。



MLMは儲かるか。

さて、否定しようとしている間に明確に止められるほどの決定打もなくただ時間が過ぎてしまった。ワクワクした顔で話をするAさんに水を差すようであまり本音も言えず、最低限の抵抗として苦い顔をして話を聞いていると「自分に〇〇を教えてくれた人に会ってほしい」と言われる。
先に言っておくが私は面白半分で覗き見をしたわけでも本当に興味があったわけでもなくただ元からNOと言えない人間であり、ましてや相手がお世話になった尊敬する先輩だった為に余計に煮え切らない態度をとってしまったのである。
Aさんに指定された場所へ向かう日は小雨が降っていた。私の基本の移動手段は原動付自転車で、雨により髪は広がり全身しっとりとした状態で凍えながら駅中のカフェに入った。連絡を取り合い店内を見渡すとスーツを着た若い男性が立って手を振って来た。上着を脱いで荷物をまとめていると「寒いでしょう」とホットコーヒーを持って私に手渡し簡単に自己紹介をされた。そこでまたどんなに素晴らしいビジネスかという説明を受ける。内容は次に何を言われるか予測できるほどに理解できた、私が数日前に車のなかで見聞きし数日睨めっこした図と同じものを使って説明してきたからだ。結局私はその話よりもブランドものの手帳カバーや鞄、高そうな腕時計に対して不釣り合いな汚れた革靴を眺めていた。警戒心の強さと自分と相手の身なりの差による劣等感からか些細なところからも私に与える影響を考えているように思えて仕方なかったのだ。

片足突っ込んでみた

彼らの説明によると、その企業の体系は他と比べると大きく3つの点で我々に優しいそうだ。
1つ目は初期費用が安いこと、実際登録料は5000円に満たない金額で始められ月会費などもかからない為リスクが小さい。
2つ目は在庫を抱える心配がないという点だ、消費者に自分経由でサイトに登録して貰えばその後のやり取りは不要で勝手に会社からマージンが振り込まれる。
3つ目はそのマージンの割合が他社より格段に高いそうで簡単に儲けやすいと言っていた。
私は結局、明確な理由を持って否定することもできず5000円くらいなら今までお世話になった分と考えて支払って「上手くいきません」とグダグダしていれば諦めてもらえるだろうと片足突っ込んでみることにした。
入ってまず言われたのは自分の下に4人販売者を作ってくれと言われた。なんでも収入が入るようにするには一定の売り上げを安定してあげる必要があり、それは消費者のみでは少々無理があるらしい。紹介で販売者登録をした人の売り上げは一部自分のものとみなされる為、何人か仲間を作ってこそまともな収入が入ると説明された。またまた嫌な予感である。
紹介者の販売者登録料はこちらには入らない為ネズミ講とは確かに違う。だが1人につき4人もぶら下げていたら全員が成功すると考えるとネズミ算どころかもっと凄まじい勢いで増えてしまうのではないか。
嫌な予感はさらに超えてくる。「商品を売るからにはきちんとした知識が必要だ、サイトに載っている情報だけでは内容が薄すぎるから私たちのグループにいる〇〇大学の教授やこんなすごい人が製品の補足をしてくれるコラムや動画を視聴できるサイトに月額1万円で入会しよう」と言ってくる、正直内容の正確性が保証されていて真面目にやろうと思うのであれば高いものだとは思わないが私は初期費用以外財布を緩める気はない。
また「商品を消費者に販売するからには一定額購入して使用しなければ」と説明してくる。確かに真っ当な意見ではある、使ってもいない商品を良いと説明して売りつけるのは胡散臭い話だ。だが綺麗事ではないか、あくまでビジネスであり友達にオススメするのとは訳が違う。商品の内容をしっかりと把握しておくことは大切だが使う必要まであるだろうか。
要は販売者登録をした者が月に一定金額使い続ければそれも上の売り上げになってゆくのだ。そして恐ろしくて聞くことはしなかったが、月額1万の公認ではないオンラインサロンのようなものも入会者を出せばある程度紹介者にバックが入ったのではないか。
これだけでなく他にも月に1度の集会や合宿など公認ではなく派生して出来た団体による有料のイベントが多くあるようだった。

結果

結局私は5000円と言われ足を踏み入れてから一気にお金の話が増え、お金の話をされる度に「今回は…」と断り続けほとんど諦めてもらうに至った。
覗き見をしてみて得た知見は企業としては真っ当であっても、簡単に販売者としてぶら下がれる分その甘い蜜に群がり新たな稼ぎ方をしている人間がいるということだ。だが、Aさんは現在かなり軌道に乗り満足ゆくまでは稼げ始めた様だし、カフェで説明をしてくれた方も十分に稼いでいるそうだ。向いている方であれば稼ぐことはまだ可能だろう。
日本ではMLMはまだまだ未知のもので煙たがられることも多く取引について規制も多々存在する為様々なリスクはある。だが上澄みになりたいのであれば始める時期も大切である。もし今声をかけられ、かつての私のようにどうしようと頭を抱えている人が居たならばこの記事が少しでも参考になったら嬉しく思う。

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