フォローしませんか?
シェア
十年ぶりで、親友が訪ねてきた。 月の明るい晩だった。 僕がひとり、月を肴に晩酌を楽しんでいると、突如、けたたましいノックの音がして、行ってみると、親友が立っていた。 お互いに十年分の年をとっているはずだが、向きあってみると、昨日別れたばかりのような気がした。 「実は今日は、お前に頼みごとがあって来た」 親友は、久しぶりだなとも、こんばんはとも言わず、いきなりそう切り出した。 戸口で話すのも奇妙だ。 僕は彼を部屋に招き入れ、晩酌のグラスを、もう一人分追加した。