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プリキャプチャンス・プリパラ3話

・午後4時。今日もここからあたしの時間が始まる。
「……あの子、本当に来るのかな?」
ゲートを潜って外の世界に出てすでに15分経過。でもあの子が来る気配はない。
同性とは言え初対面を相手に全裸になるほどの熱意があったから決してあたしを騙そうとかそう言うわけではなさそうだけど。
「……こんなことしてる間に情報を集めた方がいいんじゃないのかな……」
ふと呟いてしまう。周りには誰もいなかった。……いや、
「……あ、あの、」
正面。らいむと同じ年齢くらいの、少女がいた。
「……あたし?」
「あの、そみあさんですよね?」
「そうだけど……」
ん、この子、どこかで見覚えがある。どこかで聞いたようなことがある声だ。えっと、どこだっけ?
「……わたし、月川ちりって言います」
「……月川ちり……え、月川ちり!?あのノンシュガーの!?」
情報にあるあの緑髪のセレブアイドルとは酷似した顔を除けば全く面影がない。そもそも年齢が2,3歳は違う。……そう言えば聞いたことがある。あの南みれぃと同じでプリパラの中に入ると性格が著しく変化する女の子が何人かいていずれもプリパラ内で高い評価を得ていると。
「……はい。らいむちゃんに言われてここに来たんです」
「らいむに?」
「わたし、らいむちゃんとクラスが同じで……。今日は午前授業だったので先にプリパラに来ていたんです。それでこの時間になったらそみあさんを連れて来いって……」
「……」
あのセレブリティ露出狂娘め。けど、あたしもプリパラから来たのにあいつに気が付かなかったって事は結構焦ってたって事だよね。少し反省。
「……ありがとう。じゃあ一緒にプリパラに戻ろうか」
「は、はい。……あの、プリパラに入るとわたし、結構キャラが変わるので驚くかもしれませんけど……」
「知ってる。ノンシュガーのライブは何回か見たことあるし。むしろ今のあなたの方があたしにとっては見慣れないかも」
「あうう……」
小動物みたいで可愛いなこの子。まあ、ゲートを潜れば愛おしくて思わずぶん殴りたくなるような性格になってるんだけどね。


第3話:超常ダークネス!邪神アイドルにくうらはなる!!


「……あれ?」
ゲートを潜り、隣を見る。
「……」
確かに先ほどまでの小動物みたいな少女からあたしが見慣れている雅な女の子に変わっているのだが何やらテンションがおかしい。
「……こっちですわ」
「……あ、うん。でもその前に」
「何ですの?」
「トモチケ、いいかな?」
「……普通、ライブの後にしません?いいですけど」
うわ、生ちりのトモチケだよ。家宝にしなきゃ。
「あら、あなたまだデビュークラスですのね。あのらいむが気にかけていたからもう少し上だと思っていましたわ」
「……ライブ自体あまりしてないからね。チームも組んでないし」
「……それはらいむも同じですわ。それにあの子も」
「あの子?」
「……そろそろ着きますわ」
そう言って案内されたのはライブ広場。ステージとは違いちゃんとした設備がない代わりに誰でも自由に使えることで有名だ。けど、どうしてこんなところに?
「あ、そみあちゃんだ」
気持ちのいい風が吹く広場。そこに何故かボロボロのらいむがいた。
「……思ったけどらいむって肌を見られたい欲望でもあるの?小学生でそれは少しまずいんじゃないかな?」
「私を露出狂にしないでくれるかな!?悪いのはこの子なんだから!」
そう言ってらいむが指さしたところにいたのは
「がぁぁぁぁぁっはっはっはっはっはっは!!!!俺様ナンバーわぁぁぁぁぁん!!!!」
らいむ達よりかはあたしに近いくらいの年の銀髪の子がいた。一見すごく大人しそうに見えるのに狂暴と言うか凶悪そうなオーラと喋り方してる。
「どうしたぁ?らいむ。これで72戦33勝39敗だぞぉ?」
「……私が39勝してるんだけどね」
「72戦?もしかしてお昼からずっとこの子とライブ勝負してるの?ステージじゃなくここで?」
「そう。あの子は神崎くうらちゃん。中学2年生。あの子も昔スーパーサイリウムコーデを手に入れてる。だかららぁらちゃん達について知ってるかもって思ったんだけど」
「俺様に質問したいってんなら俺様に勝ってからにしないとなぁ?がはははははははは!!!!」
「……私の方が6回多く勝ってるんだけど……」
「漢なら!最後に立ってた奴だけが勝利者なんだよ!!」
「私もくうらちゃんも女の子だよ!?」
「……何でここでやってるの?」
「だって私達のバトルで何時間もステージ独占するのってないでしょ?」
「……あんた、いい子だったんだ」
「そみあちゃんの中で私はどんな子に育ってるのかな!?」
「で、そこの青いの。らいむに代わってお前が俺様の相手になるのか?」
「……あたしが勝って真中らぁらについて話してくれるのなら」
「……いいぜ?乗った乗った。その代わりに俺様が勝ったら、」
「……勝ったら?」
「お前の唇、俺様が頂く」
「……そ、それって……!?」
「未来永劫ずっと俺様の事をくうら様って呼んでもらうからな!がはははははは!!!」
「……少しでも期待したあたしが馬鹿だった」
「……そみあちゃん、期待してたの?」
「この方さっきからわたくしが渡したトモチケ見てにやにやしてましたけど、そういう趣味でしたの」
「そこの小学生達こそ心の中であたしをどう育ててるのかな!?」
「……と言いますか、あなた。くうらに勝てると思ってますの?その子、らいむと同じでトップクラスですのよ?」
「……ら、ランクなんてアイドルにはあまり関係ないもん」
「大ありですわ。……仕方ありません。ここはわたくしがやらせていただきますわ」
「え、ちりちゃんがくうらちゃんと!?」
「へ、いいぜお嬢様。俺様が勝ったらお前の夜を戴く」
「そ、それって……」
「お前抱き心地良さそうだからな!いい抱き枕になる!」
「……それはそれで問題発言だと思うけど」
「そみあちゃん顔真っ赤」
「あなたの条件、構いませんわ。その代わりわたくしが勝ったらわたくしが知りたい情報を話してもらいます」
「おう、いいぜ?」
「……何かこの二人だけ戦わせても面倒そうな雰囲気にしかならない。……うう、仕方ない。私もまだまだやるよ!」
「へっ!負け犬が!」
「何度も言うけど私の方が勝率高いからね!?」
「ステージでライブ勝負ですわ!」

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ステージ。あたしは3人のライブ勝負を見ていた。
3人で歌う歌はシュガーレスフレンド。あたしの大好きな歌の1つだ。
……歌ってる3人にはシュガーレスどころかスパイスのドッジボールだけど。
「…………ん、何か違和感。何か見過ごしてる気がする。何だっけ?」
「スーパーサイリウムチェンジ!!」
ステージでは3人がスーパーサイリウムコーデを身に纏い、一気にライブの終盤に突入する。生ちりのライブ、久々に見るけどやっぱりすごくいい。……生ちり、久しぶり?
「……そうだよ。確か一昨日めが姉ぇは真中って名前のアイドルはいないって言ってた。確かに真中らぁらはいない。でも、その妹の真中のんは……!?あの子もいないとしたらちりがノンシュガーの歌を歌うはずがない……!ノンシュガー自体結成されない筈……。でも、ちりはノンシュガーを知ってる。……この齟齬は一体……」
ライブが終わり、いいねの集計が始まる。30秒間の集計結果はちりの名前が一番上に表示された。
「やりましたわ」
「ちぇっ、負けちゃった」
「あ~あ、一回きりの勝負って俺様苦手なんだよな。まあいいや、で、何聞きたいんだ?」
「……真中らぁらについてももちろん知りたいですわ。でもそれ以上にわたくしが聴きたいのは、どうしてその妹でありわたくしのチームメイトである真中のんの事も誰も覚えてないんですの!?」
「……」
やっぱり、ちりはノンシュガーを、のんの事を覚えているんだ……。