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キラッとプリチャンVSアイドルタイムプリパラ~友情!ダイヤモンドタッグマッチ!!7話「いずれ神を継ぐ少女」

・そして最終決戦の夜が明けた。

「あんな~?あんたまた何やってんのよ」

「見てわかりませんこと?決勝戦にふさわしい特製リングが完成したのですわ!!」

朝6時。包帯姿のあんなとえもがリングの前に立っている。

「まあ天空リング完全に破壊されたから仕方ない部分はあると思うけどでもまた変な仕掛け作ってないでしょうね?」

「No!めるめるが作った発明品に変なものないよ?」

リングの上からめる、さら、すず、にのが顔を見せる。めるとさらは元気そうだがすずとにのは死にそうな顔をしていた。

「……準決勝きつかったのにまさか夜通しで工事やらされるなんて……」

「こ、これくらいにのなら問題ないっす!先輩達に近づくためにも……」

「にの?すずはこっち」

鉄柱に向かって見開いた眼で何か喋るにのの顔を自分に向けるすず。

「とにかく決勝リングはついに完成ですわ!!」

一方。選手控室。

「ふう、」

決勝に参加する4人……みらい、虹ノ咲、ゆい、しゅうかをりんか、みちる、ファララ、ガァララが夜通しでマッサージしていた。特上のプリズムマッサージが完全に4人の体調を元通りに戻していた。当然、肉体へのダメージもリセットされている。

「みらいちゃん。決勝戦頑張ってね!」

「虹ノ咲さん、頑張ってください」

「うん。キラッと頑張ってくるからね」

「みちるさん、ありがとう……!」

「ゆい、あまり相手を怖がらせちゃだめだよ?」

「しゅうか、後でサプライズ期待しててね」

「ユメ大丈夫!!」

「サプライズ?」

それぞれエールを受け、リングへと向かう。控室では多少の会話もあったがリングへ向かう道程では4人に会話はない。それぞれ最高のコンディションで決勝のリングへ向かうだけだ。で、そのリングだが。

「……うわあ……」

「ユメでっかい……」

街の半分を占める程の莫大な面積を持ったリングとなっていた。しかも足場はマットやコンクリート、砂場に草原などが混ざり合った、もはやリングではなくステージないしはシティだった。

「あんなちゃん、これが……?」

「ですわ!これが決勝戦にふさわしい戦場(バトルフィールド)!!縦2500メートル、横3400メートル、高さは18000メートル。この範囲内にあるものは地面はもちろん建物だろうと何でも利用可能!もちろん超人レスリングなので武器や凶器の仕様は出来ませんが、範囲内の建物はすべて無人となっているので中に逃げ込んで体力回復をするのも建物ごと吹っ飛ばそうと自由自在ですわ。ただし建物の中でも10秒以上背中を地面やフローリング、ベッドなどに着けてはKOとみなされますけれども」

あんなが説明するとめが姉ぇのアナウンスが入る。

「えぇ~、今手に入れたルールブックによりますとこの特製リングと言いますか特製バトルフィールドでは本来の身体能力の5倍が常時発揮されるそうです。なので平気と道路や建物の破壊が行なわれると思いますがこの決勝戦のためだけに用意した施設なので一切心配はないそうです。また、子の戦いではタッグマッチではあれどそれぞれ4人が一堂に会して戦ってもらう事になるのでタッチなどは存在せず、ダウンしない限り常に2VS2が行なわれる形式となっています。また、先ほどあんなちゃんから説明されたように背中をつけない限り室内での休憩は可能ですが同じ建物に3分以上居座った場合その建物が爆発する仕掛けになっているようです。その代わり建物内での休憩による体力回復速度は通常の数倍となっていておよそ170秒ほどで骨折や内臓の陥没ですら完治出来るようになってます」

「……でたらめだよね、赤城財閥」

「おーほっほっほ!!!」

えもが遠い目をする。

「制限時間はありません!!場合によっては日を跨ぐこともあります。それでも住居内での休憩以外での回復は出来ません。ゆいちゃんは米俵を回収します」

「ユメそんな……!?」

「またこのエリア内では非常に天気が変わりやすくなっていて雷雨、豪雪、猛暑、台風など様々な天変地異が予想されます。お気を付けください」

「今までに類を見ない飛んでもマッチですが、頑張ってください」

「爆発に巻き込まれないようにね~!!」

めが姉ぇ、あいら、なるがそれぞれアナウンスする中みらい達4人がエリアの中に入る。同時にエリアを囲むように高い壁が出現し、退路を塞ぎつつ壁全てがモニターとなって選手と客席とを繋ぐ。

「ゆい!!しゅうか!!ガッツっす!!」

「みらい先輩、虹ノ咲先輩ファイト!!」

「全力で!!」

「お二人とも可愛く!!」

「ゆい、怖いのはやめてね?」

「しゅうか~!!!ガンバだよ~!!」

「素敵ガールズ達に祝福を」

「みらみらにじにじがんばだよ~!!!」

「みらい!!だいあ!!がんばればんがれ!!!」

「全力で楽しんできなさい!!」

「みらいちゃ~ん!!虹ノ咲さん!!がんばってー!!」

「皆の衆、全力を尽くすがよいのじゃ」

にの、すず、さら、まりあ、ファララ、ガァララ、アンジュ、める、えも、あんな、りんか、さらのエール。めが姉ぇ、あいら、なるの姿。それらを背に4人は臨戦態勢を取った。

「それでは決勝戦!!!見合って見合って……試合開始っ!!!」

めが姉ぇの合図によってゴングが鳴る。同時に4人が走り出し、空からは多数の隕石が降ってくる。

「いきなり!?」

言いつつ、みらいは降ってきた隕石をパンチ一発で粉砕し、その欠片をゆいに向かってまとめて蹴り飛ばす。

「さすがだねみらいちゃん」

ゆいはそれらをすべて見切って回避しながら接近し、みらいの足を掴む。

「!」

「初めて会った時からかなり強くなってる。でも、勝つのはユメあたし達だよ!!」

膝関節を完全に決めた状態でゆいのフィッシャーマンズスープレックス。

「くっ!」

みらいは落ちてくる隕石に叩きつけられ、隕石が破壊される。しかしその衝撃でわずかにゆいの手から力が抜けるとすぐさまその手を払いのけ、逆にみらいのクロスチョップがゆいの胸に叩きつけられる。

「ヴぇ!!」

「ごめんねゆいちゃん。この中で一番胸が小さいゆいちゃんには胸への打撃が一番!!」

正面からゆいの両手をチキンウィングで掴み上げてみらいは両足をゆいの胸に置いた状態で空から地面に叩きつける。地面に亀裂が走り、吐血するゆい。みらいはそのままゆいの両足首を掴んで勢いよく内側に折り曲げる。その一撃でゆいの両足首と両膝の関節が外れ、みらいが離れるとゆいのダウンカウントが始まる。

「ゆい!!」

「あなたの相手はこっち……」

隕石の上で手四つで組み合うしゅうかと虹ノ咲。

「いいんだもんだいあ。しゅうかちゃんとパワーは互角!」

「け、けど、少しずつ力が……!!」

「負けない!!」

「!」

一瞬でしゅうかは虹ノ咲を巴投げで隣に堕ちる隕石に叩きつける。

「ぐふっ!!」

2つの隕石が同時に砕け、無数のイシツブテを食らいながら虹ノ咲が頭から地面に落下。それを見ずにしゅうかは着地後その勢いを殺さないまま距離を詰める。

「っ!」

「このままストレートだぎゃ!!」

一瞬で振り向き、構えたみらいに向かってショルダータックル。バランスを崩したみらいの両手を掴んでスライディングでみらいの股下を抜けて背後に回り込む。

「スパンコールアウシュビッツだぎゃ!!」

「決まりましたぁぁぁっ!!しゅうかちゃんの必殺技(フィニッシュホールド)!!みらいちゃんは手足を掴まれたまま強制的に腰を曲げられているぅぅぅぅ!!!!」

「この4人の中でもしゅうかちゃんはかなり技量が上の方ですね」

「けどまだまだ勝負は分かりませんよ」

「ええ。……にしてもあの子どこ行ったのかな?」

あいらとなるが会場全体を見渡した。

「はあああああぁぁぁぁっ!!」

「くううううううっ!!」

しゅうかに締められるみらい。何とか抵抗しているが手足と腰へのダメージは避けられない。しかも、

「ゆ、ユメ……」

その間に関節を元に戻したゆいが立ち上がる。

「さあゆい!!」

「ユメ!!」

ゆいが跳躍し、みらいのひん曲がった腰の上に着地する。

「!?」

「ユメイジングホロコースト!!」

「こ、これはえぐい!!あれほどひん曲がったみらいちゃんの腰の上にゆいちゃんが全体重を乗せてしかも両足で腰を締めつつ両手ではキャメルクラッチだ!!こ、これ下手するとみらいちゃんの首もげるんじゃないの……!?」

「み、みらいちゃん……!!」

立ち上がった虹ノ咲が全速力で向かっていき、ゆいの首元にラリアット。一瞬みらいの首がものすごい方向に折れ曲がるが、ゆいが吹っ飛んでいったためすぐに解放された。

「だ、大丈夫!?」

「へ、平気だよ……」

虹ノ咲はすぐにしゅうかの脳天にかかと落とし。

「ぐっ!」

「みらいちゃんを離して!!」

しゅうかの背後に回り込んでしゅうかの両手を力ずくでみらいの手足から引き剥がし、パロ・スペシャルの要領で両肩と腰を決める。

「くっ!」

やっと拷問技から解放されたみらい。しかしダメージが大きいのかその場で荒い呼吸をしながらほとんど動けずにいる。

「このっ!!」

その間にしゅうかは虹ノ咲を振り払い、顔面にエルボーと下腹部に飛び蹴りを叩き込む。

「うっ、」

「デザイナーズ10、恐れるに足りず!!」

「デザイナーズ10……そうだった……!」

痛みを振り払い、虹ノ咲はしゅうかのショルダータックルを正面から受け止めブレーンバスターで脳天から背後の地面に叩きつける。が、

「感覚が甘い……!?」

「助かったみゃ……」

「ギリギリだけどね……!」

しゅうかの頭と地面の間にゆいが挟まっていた。しかもスライムのように液状化している。そこから一瞬で元の姿に戻り自身の両足を虹ノ咲の右腕にからめる。

「これは……!!」

「ユメBBB(ビーキュービック)!!行くよ!!」

肘を中心に両脚で左右から関節を固める獣(ビースト)、そこから万力のように肘関節を歪めて骨を砕く骨(ボーン)。

「あううううううう……!!!」

「虹ノ咲さん!!」

ゆいの骨(ボーン)が虹ノ咲の右腕を酷く歪な形にまで折り曲げていく。一瞬で肘関節を破壊せずその左右の筋肉と骨をじわじわと破壊していくスタイルだ。みらいがすぐに救助のタックルを放つもしゅうかによって止められる。

「どいて!!」

「聞くわけないがね!!」

「どいてって!!」

タックルを停められたみらい。しかししゅうかの肩を掴んですぐに巴投げに入る。しかししゅうかはみらいの手を掴み阻止。どころか中指を掴んで一気にへし折る。

「うううううっ!!!」

さらにみらいの下腹部にニードロップ。そこまで勢いはなかったがしかしダメージは大きい。さらにみらいの両足を掴んで電柱に向かってジャイアントスイングで投げ飛ばす。

「くっ!」

みらいは電柱の上で地面とは垂直に着地。

「え!?」

「ときめきハートジュエル!!」

その場でドリルのように高速回転して電柱をへし折り、折られた電柱をしゅうかは回避するのだが、

「しまった!!」

その背後にいたゆいの頭に電柱が炸裂。

「ユメ!?」

「まだ!!」

みらいは一瞬で距離を詰めて電線を切断。ロープのようにゆいの上半身をグルグル巻きにしてゆいごと電柱を振り回し、ハンマー投げのように空高くゆいと電柱を投げ飛ばす。

「虹ノ咲さん!!」

「させんだがや!!」

落下中の虹ノ咲。キャッチしようと跳躍のみらい。その間にしゅうかが割り込み、竜巻旋風脚で二人をまとめて逆方向に蹴り飛ばす。

「……しゅうかちゃん、すごい執念で二人の合流を防いでいます!!」

「実はこの大会で一番不利なのはしゅうかちゃんだったりします」

あいらの発言になるが首を傾げた。

「どうしてですか?」

「時の精霊は言わずもがな、マイドリームの3人はその時の精霊の力を受け継いだコーデの力があるでしょ?それにみらいちゃん達キラ宿のアイドル超人達はジュエルの力が宿ってる。でもしゅうかちゃんだけはそのいずれも持っていないわ」

「そ、そう言えば!!」

「強いて言うならば神アイドルの姉と昔からよく稽古をしていたくらいしかあの子の有利性はない。けれどそれでも死に物狂いで修行してきたんだろうね、時の精霊を打ち倒しジュエルパワー宿すライバルも精霊の力宿すライバルをも打ち倒し決勝戦まで進んだ。その在り方はジュエルの力を持ちながら友情パワーも使えさらには完璧超人にまで転生を果たしたアンジュやめるちゃんとは正逆の存在。将来間違いなく神アイドル超人の座を手にする素質を持った女の子なのよね」

「……でもそれは他の3人も一緒ですよ。あいらさんが見込んだみらいちゃん、私が見込んだ虹ノ咲さん、らぁらちゃんが見込んだゆいちゃん。この決勝戦は参加者4人が全員神アイドル超人の関係者なんですから」

「……じゃあある意味これは神アイドル超人の代理戦争って事になるのかもね」

ふたりの視線が戦場に戻る。

「くっ!」

着地したみらいにしゅうかがまっすぐ向かっていく。二人は手四つで組み合い、その直後虹ノ咲が背後からしゅうかに迫る。

「はあっ!!」

しゅうかは気配でそれに気付くとみらいの腹に膝蹴りを打ち込み、怯んだみらいの手を払いのけてすぐさま振り返り、タックルを仕掛けて来ている虹ノ咲に頭突き。さらに片手でみらいを持ち上げて虹ノ咲に投げつける。

「はあ……はあ……」

肩で呼吸を始めたしゅうか。気付けば戦場では雨が降り始めていた。

「……みらいちゃん、一旦退こう」

「……でも虹ノ咲さん……」

「ここでの勝負は純粋な超人レスリングじゃない。元々パワーの代わりにテクニックを磨いてきた華園さんにここまでパワーを与えられるような理不尽なステージ。けどその代わりに防御の手段も与えられてる。私達は骨折してるんだよ?今みたいに二人まとめてかかっても勝てない状況なんだ。いつゆいちゃんが戻ってくるかも分からない。華園さん一人相手でもなんとか持ちこたえられる状況なんだからそこでゆいちゃんまで来たら瞬殺されちゃう」

「……分かった」

「相談は終わりまして?」

しゅうかが素早く迫る。両手は顔の傍まで上げて接近しているためどんな技が来るか分からない。だから二人は予想も防御も捨てて同時に走り出す。そしてしゅうかに接敵しそうになった瞬間にスライディング。

「っ!!」

ふたりのスライディングがしゅうかの両足の脛を穿ち、激しく転倒させる。雨のおかげで通常以上にスライディングの威力が高まっていたのも幸いだった。音でしゅうかが転倒したことを察すると二人は振り返らずに近くの建物の中に入る。看板を見ずに入ったからどこか分からなかったがどうやらコンビニらしい。食べ物が一切置いていない以外は通常のコンビニと変わらない。みらいは入店と同時に商品棚1つを持ち上げて出入り口をふさぐ。

「……これで一度回復が出来るね」

「う、うん」

ふたりはなるべく出入り口から離れた、なにも置かれていない食品売り場の傍まで来て座り込んで体力の回復を待つことにした。

「強いね……」

「うん。ゆいちゃんの人体の原則をはるかに凌駕した謎パワーもそうだけどしゅうかちゃんのテクニックはとんでもないよ」

「……何とかして先に華園さんを倒す?」

「……厳しいかな。私達がこうやって籠城して体力を回復しているように向こうも合流して回復をしていると思う。そうなったらまた勝負は振出しに戻る。でもこのステージでは私達は二人掛かりでもしゅうかちゃんに勝てないってもう伝わってる。少なくとも真っ向勝負じゃ勝ち目はないよ」

「……でもまだジュエルの力を出してないよ?」

「それは最後にとっておいた方がいいと思う。それに油断しちゃいけないのがゆいちゃんだよ。にのちゃんを倒した時みたいにあの子は正面からの戦いでも十分な力を持ってる。多分最高火力みたいなのはしゅうかちゃんよりもゆいちゃんの方が上。だからジュエルの力はその時のために取っておきたいよ。それにゆいちゃんのあの体質。あれのせいであまり不意打ちとかも意味なさそうだし。まりあちゃんとは別ベクトルで、でも同じくらいまともな勝負させてもらえないからね……」

「うん……」

「……あ、ごめんね。私ばかり喋っちゃって。虹ノ咲さんは何かある?」

「……ううん。でもなんか意外かも。みらいちゃん、こんなにいっぱい喋ってしかもかなり真面目だから」

「……虹ノ咲さんの知ってる私は違うの?」

「……ううん、分からない。私はデザイナーズ10であることはもちろんアイドルとかだいあの事とかそう言うこともあっちのみらいちゃんには話せてなかったんだ。臆病だもん……」

「……でも虹ノ咲さんはここに残ってくれた。準決勝が始まる前に元の世界に帰ることだって出来たはずなのに私を選んでくれたよ!」

「……みらいちゃん……」

見つめ合う二人。既に骨折などは治っていた。それに気付いた瞬間だ。

「時間なんだもん!!爆発するんだもん!!!」

だいあの声。同時にコンビニ含むその建物が大爆発した。

「ふう、」

爆風を抜けて二人は無傷の状態で隣の建物の屋根に着地した。

「!そこっ!?」

みらいが上を見て身構える。直後、

「よく気付いたみゃ!!」

上空。凧のように空を飛ぶゆいからしゅうかが飛び降りて来てみらいにボディプレス。

「くっ!!」

身構えていたおかげで程よく威力を殺し、みらいは後ずさる。と、

「隙ありだよ!!」

「!?」

みらいの足元。水たまりの中からゆいが出現して後ろからみらいを羽交い絞めにする。そしてしゅうかのドロップキックが無防備なみらいの胸に叩き込まれる。

「VIP!!!!」

威力が完全に決まって運動エネルギーが終結したと思った瞬間、どこからかさらなるエネルギーが生まれ、みらいは爆発したかのように後方に吹っ飛ばされる。

「うううっ!!!」

向かいにあった八百屋に突っ込んでいき、最奥の壁をぶち破って1つ向こうの大通りに転がっていくみらい。

「桃山みらいさん、確かにあなたは強い。けれど相手が悪かったようですわね」

「わ、わたしだって……!!」

虹ノ咲がタックル。しかしそれを片手で受け止めたしゅうか。

「へ……」

「VIP!!!」

片手で虹ノ咲を持ち上げてそのまま跳躍する。

「ゆい!!」

「任せて!!」

空中で逆さまになった虹ノ咲の頭の下に来たゆいはキン肉バスターの姿勢を取る。伸びたツインテールが虹ノ咲の両足をグルグル巻きにして逃げ場を完全に封じる。

「らぁら式キン肉バスター!!」

屋根をぶち破り2階の床をぶち破り、1階の床に着弾。凄まじい衝撃が虹ノ咲の全身を下から上に突っ走る。

「……っ!!」

「建物の中だと回復しちゃうんだよね。でも気絶してたらユメどうなるのかな?」

ゆいが技を解除すると虹ノ咲は無抵抗に崩れ落ちる。しかしゆいが言うように気絶していた。

「虹ノ咲さん……」

立ち上がるみらい。の眼前にしゅうかが着地。目にも止まらぬ速さの往復便たがみらいの脳を激しく揺さぶる。しかも時折思い出したように逆側の手が拳を作ってみらいの鳩尾にぶち込まれる。

意識がもうろうとするみらい。しゅうかは跳躍してみらいに背負われる形で着地。その際に両手をチキンウィングに決めて両足でみらいの両膝を抑え込む。

「パロ・スペシャル・ジ・インフェルノ!!」

「こ、これは!!本大会何度目かになるパロ・スペシャルの派生形です!!これはあんなちゃんとえもちゃんによるレボリューションコンビネゾンを一人で行なったかのような相手の両手足と腰を自重を以て痛めつけしかし膝を完全に抑え込んでいる関係で倒れることも封じる凶悪なサブミッションです!!」

「打撃など花拳繍腿!!関節技(サブミッション)こそがセレブの奥義ですわ!!!」

しゅうかの技が秒ごとに極まっていき、みらいの関節が悲鳴を上げる。みらいはなんとか脱出を考えているがふと昨日戦ったあんなの関節技を思い出す。

「そうだよね……慎重になりすぎてた。あれだけ完璧を求めてたあんなちゃんだってえもちゃんと一緒に楽しく戦うことを学んだんだ。それなのにあの二人と戦った私が戦いを楽しむことを忘れてたら……失礼になるっ!!」

「おおっと!!みらいちゃん全身から炎の友情パワーが燃え上がりました!!現在超人強度は3400万パワー!!ものすごい力でしゅうかちゃんの技を振り払って……一本背負い!!」

「ぐふっ!!」

「ごめんねしゅうかちゃん。今から私、全力を出すから」

「あああっと!!さらにみらいちゃんの体を黄金の力が包み込みます!!これは相手の慈悲を想う奇跡の友情パワーです!!現在超人強度は8000万パワーを超えています!!」

「それでこそですわ……!!」

立ち上がったしゅうかと再びみらいが手四つで組み合う。しかし1秒と持たずにしゅうかの手が払われ、モンゴリアンチョップがしゅうかの頸動脈をぶっ潰す。

「っ!!」

「これで!!」

「みらいちゃんお得意のサマーソルトキックが炸裂!!しゅうかちゃんの顎を砕いて100メートル以上真上へと蹴り飛ばします!!!」

「しゅうか!?」

「……う、」

ゆいが見上げると、虹ノ咲が意識を取り戻して起き上がる。ゆいが振り向くと既に虹ノ咲も炎の友情パワーを発動させていた。

「行くよ、ゆいちゃん!!」

虹ノ咲のワンレッグショルダータックルが炸裂し、ゆいをぶっ飛ばしては壁を突き破る。そのゆいを踏み台にしてみらいが真上へと跳躍する。

「昔あいらさんが使っていたこの技で!!」

「あああああっと!!!みらいちゃんがピンクジュエルの力を発動!!超人強度は8800万パワー!!そして上空でしゅうかちゃんをブリッジの腹筋でさらに真上へと吹っ飛ばします!!この技はもしかして……!!!」

「……まさか……!!」

あいらが目を見張る中、みらいは上空1000メートル地点でしゅうかの背後に回り込み、右足をしゅうかの喉に挟み込んで圧迫しつつ左足で左足を、右手で右手を、左手で左手を掴みしゅうかの体を大文字に引き延ばす。

「こ、これは……!!」

腹筋、首、右手、左手、左足を襲う衝撃が血液のように全身を駆け巡りついにしゅうかの全神経を捕らえる。それを肌で感じ取ったみらいは構えを解きつつしゅうかと背中合わせになり、しゅうかの上半身を前方に折り曲げ、両足を自身の両足で完全にホールド。

「アイドル超人絶対奥義マッスルスパーク!!!」

その状態のまま亜音速で急降下。しゅうかの後頭部と両膝から全速力で地面にたたきつける。

「こ、こ、これは!!!かつて春音あいらが高峰みおんを破って初代神アイドル超人となった時の最強奥義……その名もマッスルスパークです!!!かつてその技を破ったものはただ一人だけと言う最強の技が今、みらいちゃんの手によってしゅうかちゃんに炸裂しましたぁぁぁぁぁっ!!!」

めが姉ぇが叫び、曇天が晴れて一筋の光が差し込み、完全に技を決めたみらいとしゅうかを照らす。やがて技の手ごたえを感じたみらいが技を解除してしゅうかから飛び降りて様子をうかがう。

「…………」

しゅうかは意識があるのかどうか朦朧な状態で破壊されたコンクリートの地面に五体を倒した。

「だ、ダウンです!!し、しかしこれは立ち上がってこれるのでしょうか……!?」

めが姉ぇがあいらを振り返る。あいらは沈黙の後、ゆっくりと首を横に振る。その時だ。

「え?」

あいらの肩に手が置かれ、

「いっちばああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

「……!」

声が響いた。全身の神経や感覚を失ったしゅうかがその声を聴いた瞬間に意識を取り戻す。

「……この声、まさか……」

完全に硬直した筋肉。しかし何とか視線を画面へと向ける。そこにいたのは、紛れもなく

「……お姉さま……」

「な、な、なんとぉぉぉおっ!!!先ほど説明したあいらさんのマッスルスパークを破った事のある唯一の神アイドル超人・みあさんです!!!あいらさん、なるさんのチームメイト・みあさんが今やってきました!!」

「みあちゃん……やっと来たんだ」

「えへへへ、昨日はごめんね。いきなり来て。本当はもっと早くしゅうかの試合見たかったんだけど、何とか最後には間に合ったって感じ?」

みあがあいらにてへぺろしてからしゅうかを見る。

「しゅうか!!マッスルスパークが何だっての!あたしの妹だったらあんたも立ち上がって見せなさい!!」

「……お姉さま……ぐっ……うううう……うううううう!!!!」

完全に力を失ったはずの全身が、血流が神経が再び力を取り戻していきしゅうかが立ち上がる。

「ま、まさか!!!みらいちゃんのマッスルスパークを完璧な形で受けたしゅうかちゃんが立ち上がりました!!!」

めが姉ぇが叫ぶ。あいら、なるが信じられないと言った表情で沈黙。

「やっちゃえ!!しゅうか!!!」

「はあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

吠えたしゅうかが全身から黄金の輝きを放つ。それは奇跡の友情パワーとは似て非なる力。誰も口に出さなかったがその超人強度は9000万パワーを超えていた。

地を蹴った。みらいが咄嗟に身構えた瞬間にしゅうかは接近を果たす。一瞬でその両手を掴み、頭上を飛び越えてみらいの背後に回り込み、みらいの膝裏に着地してみらいの両手、腰、両足を同時に極める。

「OLAP!!!」

「またもはや発動されました!!パロ・スペシャルの派生形!!これまた完璧な形でみらいちゃんに極まっています!!先ほどのインフェルノと違って今度は全体重がみらいちゃんの足腰に集中して……しかもそれに引きずられる形でどんどん両腕のサブミッションが苛烈さを増していく、まさにサブミッションホールドの必殺技!!関節必殺技(サブミッションフィニッシュホールド)が炸裂しています!!!」

「ぐううううううううううううう……!!!」

1秒ごとに全く別の場所から響く骨と筋肉と神経の悲鳴がみらいの耳をつんざく。そして何より激痛を超えた激痛がみらいの手足と腰の骨を猛烈な勢いで破壊していく。

「みらいちゃん!!」

虹ノ咲が走る。しかしそれをゆいが受け止めた。

「いいな、しゅうか」

「ゆいちゃん……?」

「みあさんが来てくれて……最高に格好いいところを一番尊敬している人に見てもらえている。こんなにうれしいことはないよ。あたしの……その人はここにはいない。でもいつかどこかで見てくれる。そう信じてあたしは今、全力で夢を現実にする!!!」

「ああっと!ゆいちゃんが昼の力を開放しました!!さらにユメ目が最終段階に……い、いえ!!さらに黄金の輝き、奇跡の友情パワーが全身を包み込んでいます!!超人強度は測定不能……つまり1億パワー!!!」

「虹ノ咲さん、あなたの夢も現実にしてあげる……」

「わ、私の夢は……」

「だいあ!!」

「っ!!」

気付いた時には虹ノ咲は宙を舞っていた。一瞬でツインテールによって手足がグルグル巻きにされて完全に動きが封じられた状態でキン肉バスターの姿勢が取られる。逆さまになった姿勢で虹ノ咲はしゅうかに苦しめられているみらいの姿を見た。

「……みらいちゃん……!!」

「ああっと!!ゆいちゃんの技の最中に虹ノ咲さんがレインボージュエルの力を発動!!!し、しかし……!!!ゆいちゃんの技、全く外れません!!!」

「うううう……!!!」

力を込める。全力を超えた全力で。しかし、それでも……。

「ユメ行くよ!!ユメイジングアルティメットバスタァァァァァァァッ!!!」

手足、胴体をツインテールで完全にホールドされた状態の虹ノ咲を肩に乗せたゆいが光の速さで高度20000メートルから地面に激突。深さ100メートル以上のクレーターが生じ、やがてゆいだけがマッハ10の速度で舞い戻ってきた。

「……」

10秒経過してからゆいが念力でクレーターから虹ノ咲を拾い上げる。

「………………」

手足と背骨が完全にへし折れて意識を失っている状態だった。

「に、虹ノ咲さ……」

「あなたもこれでおしまいですわ」

「くっ、うううううう……!!」

みらいもまた力を振り絞るがしかし既に全身の筋肉や神経、骨は破壊しつくされていた。

「OLAP・THE・ENDですわ!!!」

しゅうかが勢いよく仰け反り、手足を大きく開く。直後、

「ひぎっっっっっっっ!!!」

みらいの手足と腰、背骨は関節を完全に破壊され、可動域を5センチも超える長さに引き延ばされた。

「……あ……あ……ああ……」

本来肘のある場所が5センチほど手首側に伸びていた。本来膝がある場所は5センチほど下に伸びていた。本来へそがある場所が5センチほど胸側に近づいていた。

「……フィニッシュだがね」

しゅうかが飛び降りると、通常より10センチ身長が伸びた状態でみらいが崩れ落ちた。

「こ、こ、これはみらいちゃん虹ノ咲さん両者ともにダウン!!!と言うか、これはもはや物理的に立ち上がれる状態ではありません!!!」

めが姉ぇが振り向くとあいらもみあもなるも同じ表情をしていた。

「よってこの試合、ゆいちゃんしゅうかちゃんチームの勝利!!!よってダイヤモンドタッグマッチ優勝者はドリームマネーです!!!」

めが姉ぇのアナウンスが響き渡り、客席中に歓声が巻き起こる。

「……ふう、」

同時にしゅうかが倒れた。完全に脱力して全身の筋肉や神経がマヒしていた。

「しゅうか、お疲れ様」

「……ゆい……ありがとう」

「……うん!」

やがて、赤城財閥の救助ヘリが駆けつけて4人は専用の治療施設に運ばれていった。それぞれの手術後である三日後に表彰式が開催された。

一番高い段に上りみあからトロフィーをもらい、涙を流すしゅうか。らぁらからの祝電ビデオレターを受けて号泣するゆい。それを見上げるのは2位の二人。車いす姿のみらいと松葉杖をつく虹ノ咲。

「……負けちゃったね」

「……みらいちゃん……」

涙を流すみらい。虹ノ咲はそれを見て大号泣するのだった。それはあいらとなるも一緒だった。

「……神アイドル超人の代理戦争だなんて言わない方がよかったね。こんな気持ちになるなんて……」

「……ごめんなさい……。わたし、自分に自信が持てなくなりそうです……。みあちゃんもらぁらちゃんもしゅうかちゃんやゆいちゃんとは深く関わってその成長の確かな礎になった。でも私はどうなんだろうって。虹ノ咲さんとほとんど絡みがなかったなんて言い訳にならない……。あの子は確かに私の夢を継いでくれた子だったのに……一番つらい思いをさせて……」

「……なるちゃん……」

あいらは物陰で声を殺して泣いたなるを抱きしめた。それをアンジュは陰で見守り、一縷の涙を流してから立ち去った。

「以上!!!ダイヤモンドタッグマッチ!!全7試合、終了しました!!!皆さん、盛大な拍手をお願いいたします!!!」