X-GEAR6章「Sforza学園」

【第6章】
6章「Sforza学園」

【サブタイトル】
91話「十路川のトリプルクロス」

【本文】
GEAR91:十路川(じゅうろがわ)のトリプルクロス


・窓の外を見ればそこは滝壺だ。窓を閉め切っていても四六時中、水が落ち続ける音が家内に響き渡り、慣れないと落ち着かないし眠ることも難しいだろう。しかしここで生活して早10年。もはや音で眠れぬ夜はない。
「……ん、朝か」
雀の鳴き声や鶏の号令などはないが彼は目を覚ました。年の頃は十代後半程度。世間にしては整った身だしなみをしている。上下黒のジャージ、その上に同じく黒色で遠目には分からない装甲がいくつか着込まれる。左の腰には黒い包帯でグルグル巻きにされた長い何かがベルトにひっかけられている。
この家の主である黒主(くろす)果名(はてな)は、ベッドから上がるとカーテン代わりに窓際に掛けてあった黒いマントを手に取って背中にかけ、その部屋を出た。出る前一瞬だけ見えた時刻は午前6時20分。いつもより10分早いが妙な夢でも見たのだろうか。
「ん、借名(かな)か」
リビングにやってくるとそこには執事服を着た青い髪の少女がいた。年齢は十代前半か半ば程度。
「あ、果名様。おはようございます」
振り向いた少女。名前は黒主借名。普通に女の子だが何故か執事服を着ている。男物の服装でその顔にはそぐわない若干大きめのバストがシャツの胸から形状をあらわにしている。
「いつもより少々早いですね」
「ああ、妙な夢でも見たのかもな」
「ご朝食は7時でよろしいですか?」
「ああ。それまではちょっと稽古でもしてくる。……あいつは?」
「まだお部屋にいらっしゃいます。昨日も遅かったのでまだお眠りになられているかと」
「なんだ、だらしない。借名はもう起きてるっていうのに」
「私は……もう慣れていますから」
「経験値はあいつと同じはずなんだがな。……まあいいや、ちょっと行ってくる」
「はい」
借名を背にして果名はリビングを出て玄関へ。靴を履き、扉を開けると玄関よりも暗い道が現れた。扉を閉めるともう明かりは何もない、暗闇の道となるが果名は構わず前に進む。5分ほど歩くと外に出た。滝壺の正面で、背後には湖がある。この滝は世界を4分にしている十路川に続いている。正確にはその南側だ。そして地下水脈を通ってあの中心湖に集約される。その中心湖を北に遡れば北東のデスバニア高原と北西のセントラル軍領地に繋がる。どちらも何か特別で重要な用向きがなければ決して訪れることはない場所だが、しかし今のご時世それはどこの地域でも通じる。十路川の滝の岩礁の中に作られた家に住む果名達は生活面においてかなり有利に立っている。こんなところにまでやってくるものはほとんどいないから襲われる心配もほとんどない。もしかしたら他に似たような住居を構えているものもいるかもしれないがかなり確率は低いだろう。
「せっ!」
果名は腰に差した黒い包帯を一瞬で解き放つ。中に入っていたのは一筋の剣。鍔から刀身まですべてが黒一色で揃えられたその鞘のない剣をベルトから引き抜くと、それだけで黒い衝撃波のようなものが放たれて100メートル以上先に生えていた大木を両断する。根元の方から切断された大木はゆっくりとこちらへと倒れてくる。対して果名は剣を構え、倒れ来る大木に向かって走った。
「はあっ!!」
袈裟の一振りはまるで黒い稲妻だ。大木の脳天。その小さく無数に存在する枝や葉達を一瞬で消し飛ばし、そのまま本体の上半分がバラバラになった。しかしそのバラバラになった部分でも1つ1つがやや大きな岩石程度はある。そしてそれはまだ果名の方へ迫ってきている。
「ふん!!」
それらを左拳やら両足やら柄尻やらで次々と粉砕していく。時には空中で踏み砕きながら足場にして跳躍しては再び大木の本体に向かっていき、剣の一閃で太さ4メートルはあろう大木を薪を割ったように8分割にする。
「……ん、本当は16分割にするつもりだったが、10分のズレかな?」
着地し、周囲に散らばった8本の巨大な薪を見て嘆息。
「まあいい、次だ」
果名は前方の大木を見た。


・7時までの短い稽古を終えて40本ものバカでかい薪を抱えながら果名は家まで戻ってくる。
「戻ったぞ」
「お疲れ様です。今日も大量ですね」
「まあな」
ベランダにそれを置くと借名が40本すべてに指を触れた。するとまるで煮込まれた肉のように薪は形を変え、煙を発していく。やがて本当に煮込まれた肉のような姿となり、借名が手慣れた様子でそれを皿に積み始める。
「便利だよな、その力。質量さえあればどんなものでも食べ物に変えられるんだったか?」
「借り物の力ですけどね」
果名が靴を脱いで椅子に座る頃には既に煮込み肉定食が完成していた。
「……さて、そろそろあいつを起こしに行かないとな」
席を立ち、果名は別の部屋へと向かう。ノックもなしに扉を開けて中に入ると無数の本棚があった。その書斎と言うかもはや図書館とも言えるような部屋の中心にはベッドがあり、そこに一人の少女が眠っていた。金と言うよりはクリーム色に近い腰までの長さを持つ髪。弾力のありそうなバストを最低限隠してるだけのシャツに、黒いパンツの寝姿。年の頃は借名よりやや上で果名とはほぼ同い年。普通ならこんな姿を見せられては興奮して仕方ないだろうがあいにくと果名は見飽きてるくらい見ているため感想はない。
「切名、もう朝だぞ。飯も出来てる。起きないと21ラウンド目追加するぞー?」
「……ん、」
果名の声に反応したのか、少女は目を覚ました。
「……果名」
「よう、おはよう。起きたら着替えて来るといいぜ」
「……それ以前に女の子の部屋に勝手に入らないでよ」
果名の顔面にキレのある回し蹴りが撃ち込まれた。
それから数分して黒いドレスのような、しかしスポーティな服装に身を包んだ切名がリビングにやってきた。
「ウッドソテーとウッドシチューとウッドざるそば……。借名も最近はレシピが増えてきたわね」
「ありがとうございます切名様。まあ、材料自体は変わらないんですけどね」
「けど、薪自体はまだ100本以上あるぜ。これなら一年くらいは食料に心配はなさそうだ」
「でも借名に料理役だけやらせて大丈夫?」
「私は問題ありませんが……」
「……食事の後にこの話はしたかったんだがな」
大きく口を開けてソテーを丸呑みしながら果名は小さくつぶやく。薪皿をテーブルに戻すとティッシュで口元をぬぐい、二人を見る。
「依頼が入ったのね」
「ああ。今回の依頼人は甲斐心って名前の人だ。今朝手紙が届いた」
「その人の名前なんて読むの?」
「さあ?かいしんかかいこころじゃないのか?どっちにしても珍しい名前だが。学園都市に来てくれとさ」
「何それ。学園都市って確か亜GEAR(アギア)での殺し合いが勃発している危険地帯じゃなかった?」
「ああ、そうだ」
「でも少々危険なのでは?前回は北方領土(デスバニア)高原での謎の宇宙船の捜索で、運よく天死とも出くわさなかったからまだ安全でしたが」
「そうね。どういうわけか学園都市では1000人を超える学生たちが亜GEARを使って日々殺し合っているのだから。本来いるべきキョーシて大人もいないみたいだし」
「かもな。だが、どこで知ったのか俺が望む報酬はこれでもかってくらい用意されているようだ。少し罠かって警戒する程度に。だが、学園都市なんてそう滅多に行ける場所でもない。俺のコレクションを集めるには最適な場所かもしれない。俺は準備ができ次第学園都市に向かおうと思う」
「……変態なんだから。でも、また一週間以上は掛かる任務みたいだし。こんなところで放置されても暇だから私も行くわ」
「お二人が行くのでしたら私もご一緒したいと思います」
「決まりだな。借名、薪をウッドへんでろぱにして鍋に詰めてくれ。ざっと一週間分備蓄する」
「はい、わかりました」
「朝食をとり、少し休んでから出発するぞ」
言いながら果名は切名の分のシチューにまで手をかけると当然回し蹴りを食らった。


・大陸の中心地、十路川。川沿いに南西に行けば100万人は生活できる巨大な近代都市、通称グレートシティが存在し、川を渡って南東に行けば40万人以上の学生や30万人以上の都市関係者が日常を過ごす学園都市がある。しかし、いつからかどちらもその本来の役割を全うできなくなっていた。グレートシティを天死と呼ばれる猛禽類宇宙人が襲来しては次々と市民を虐殺していき、彼らに殺された人間は頭や手足を失った状態でも蠢き、また別の人間を襲う怪物となり果てる。あっという間にグレートシティは怪物の都となり、人の住めない土地となった。一方で帰るべき場所を失った学園関係者たちもまたさらなる危機に陥らされていた。40万人以上いた学生たちは謎の存在により、その周囲の安全やある程度の願望と引き換えに亜GEARと呼ばれる超能力を与えられ日々能力者同士で殺し合いをさせられていた。当初はまだ戦えば願いがかなえられると言うメリットがあったが徐々に学生たちは己の身を守るために自ら亜GEARを手にしては戦いに身を投じるようになっていた。長い間続くこの殺し合いの内に誰もがこの戦いの始まりの姿を知らないまま今日を生きるためだけに見知った顔を血に染めていく。
「ここか」
川を渡り、バイクで移動する3人。走ること3時間程度で学園都市の領地内に到着した。そこはかつては駅だったのだろう。地には無数の石と線路の跡が敷かれていた。しかし、当然ながらもう電車は走っていないし駅員もいない。駅のホームには無数の焼け跡と既に朽ちて幾年かが過ぎたと思われる腐った死体のような物体が散乱している。ミイラよりかもなお皮と骨だけの動く物体となった人型が這いつくばりながらそのもはや無機物となった死体らしき物体に手を伸ばしては口の中に放り込んでは数秒後に動かなくなる。ホーム下ではよりもっと腐った臭いで充満している。
「……想像以上にひどいわね」
「だが、それがここにいる奴らの日常だ」
果名が駅の公衆トイレの個室のドアをけ破る。そこには上半身同士がくっついたシャムが5,6人くらいいた。見える顔全てが似た顔だったことから血縁関係にあるのだろう。種族は日本人に見えるが言葉を理解できそうな知能は見受けられない。果名は黒龍牙を抜いた。それだけでそこにいたシャムはすべてみじん切りになって跡形も残らなかった。
「……集合場所は?」
「さらに南東だな。かなり端っこの方。それまでに見えた果たせそうにない奴はすべて片付ける。……あまりに醜すぎる」
「……戦ってるのがいたら?」
「果たす」
バイクをさらに走らせる。その爆音に反応してかボロボロの制服姿の少年が3人前に姿を現した。
「食い物!食い物を出せ!!」
「断る」
そのままバイクで轢き飛ばす。内二人がバラバラ死体となって散りゆくが、一人は突撃を回避しては拳を握る。
「ぜやああっ!!」
握った拳を向ければビームのようなものが発射されて果名達を狙う。
「これが亜GEARか」
右頬の数センチ横を過ぎていったビームを見た果名は相手を見やった。そして右手の指をパチンと鳴らす。その音が響くと同時、
「ぎ、ぎびらばがばがばぎゃべぇぇぇぇ!!!」
奇声を上げながら少年は全身の穴と言う穴から光を放ちながら別の光に消えていった。
「……亜GEAR相手でも通用するもんなんだな」
「……って事は一応世界にとっては必要な力みたいね」
「あるいはそれが与えた力か」
「……!果名様、切名様!!」
借名が声を上げた。振り向かず二人が借名と同じ方向を向いた。それは半分ほどの位置から真っ二つに折れた電柱の影。中学生程度の少女が二人いた。殺意の類はなく、しかしかと言って恐怖のような感情は見えない。
「君たち、どうかしたのか?」
一瞬性犯罪者の顔になりながら、しかし元の表情に戻した果名がバイクから降りて二人に駆け寄る。
「あ、あの、お兄さんたちはどこから来た人ですか?」
「学生には見えないくらいご立派なお洋服ですから……」
「十路川の向こうさ。でも君達だってとても学園都市の人間には見えないな。さっき俺達を襲ってきた奴らだって最初から恐怖の表情をしていたのに君達にはそれがない」
「……それは……」
少女たちが口ごもる。その時だ。
「ほう、わざわざ町の外から人間がやってきたのか」
少女たちの後方30メートルほど。そこに異形が立っていた。
「何だ……!?」
それは特撮番組とかに出てくればヤギ怪人とでも形容されるような姿をした怪物だった。
「……私達が人間同士の殺し合いに動じないのはもっと恐ろしい存在を知っているからです」
「この学園都市を陰で支配している謎の存在……スライト・デス」
「スライト・デス!?」
「如何にも。我が名はスライト・デス白虎隊の一員。ゴートロンである!」
「……お前達がこの学園都市をこんな状態にしているのか!?一体何のためにだ!?」
「娯楽以外の何かがあるとでも!?」
ゴートロンは手に持った鎌を握りしめて向かってきた。果名は咄嗟に黒龍牙を引き抜き、放たれた一撃を防ぐ。
「ぐっ、この力、人間じゃない!」
「か弱き種族とわれらスライト・デスを一緒にするでない!!」
しかしゴートロンは押し切ることが出来なかった。果名の体格から導き出される腕力では考えられないことだ。しかし町の外から来たのであれば亜GEARは所有していない。ならばこの力は何なのだ?
「ちっ!」
ゴートロンはそのまま背後に跳躍。
「鬼火鎌!!」
鎌をバトンのように振り回すと鬼火が6発出現して一斉に果名に襲い掛かる。
「ならば!」
果名は右手の指をパチンと鳴らす。だが、状況に変わりはない。
「GEARでない!?」
緊急回避。しかしかすった鬼火が果名の右足を小さく焼く。僅かに発生する嫌な臭いと煙と炎。それらをコンクリートで擦り消しながら果名は黒龍牙を振るう。発生した黒い衝撃波が小さな竜巻となっては宙を飛び交う鬼火の群れを引き寄せては粉々に打ち消す。
「なるほど。強さはその黒き剣か。如何様なものかは知らないがそれで勝敗は決さぬ!」
ゴートロンが地を蹴って距離を詰める。最小限の動きで再び鎌を振り下ろす。果名はそれを刃で受け止めるが右足の激痛が防御を不十分にする。
「果名!!」
「駄目だ切名!こいつらに俺達の力は通じない!」
駆け寄りかけた切名を制す。だが、その一瞬に油断を誘われた果名は膝を折り、鎌の刃が小さく背中の皮膚を裂く。
「くっ!」
「貴様たちか弱き種族とは根本的に能力が違うのだ!朽ちれ!!」
ゴートロンがより力を込めて果名の腕をへし折ろうとした時だ。
「お待ちなさい!」
少女の声が響いた。同時にゴートロンよりもなお巨大な姿の少女が走り込み、横腹からゴートロンにタックルを打ち込む。
「ぬ、」
バランスを崩したゴートロン。その隙にその巨大な少女が果名を片手で抱えては走って距離を稼ぐ。ゴートロンは一瞬ほど果名達の背後を見たがすぐに声のした先……駅のホームの屋根を見た。そこには小さな少女が立っていた。
「何奴だ!?」
「紅葉君!変身の時間だ!!」
「はい、ダディ!」
轟音捲し立てるヘリから初老の男がその少女……赤原(あかはら)紅葉(もみじ)に対して脱臭炭を放り投げた。
「あれは、スーパープラズマー発生回路!?と言う事はまさか奴が!!」
驚くゴートロンの前で脱臭炭をキャッチした紅葉はそれを髪に巻いた。
「あかはら・めもはら・らりろれはりぴょ~ん(棒)」
髪に巻いたスーパープラズマー発生回路付き脱臭炭が激しく閃光を放ち、紅葉の姿を全く別の存在へと変えていく。
「経営幼女戦士アカハライダー、絶望の世界においても希望の姿を見せるため只今見参!!」
次の瞬間には彼女はヒロイックな衣装に身を包んでいた。
「……聞いているぞ、数多の朋友が貴様に敗れ、命を失っていると!!」
「逆恨みにもなりませんね!悪しき太陽スライト・デスの悪霊怪人!天も伏したこの世界、しかしこの新たなる太陽、アカハライダーが希望を背にあなた方の野望を絶対にこの手で打ち砕いて見せます!」
アカハライダーが拳を握り、屋根から飛び降りる。その速度よりも早くゴートロンが駆け出してその鎌に炎を纏ってはアカハライダーに振るう。
「はっ!」
アカハライダーは回し蹴りで流しながら相手の側面に回り込み、そのわき腹に膝蹴りを打ち込む。打撃の瞬間にベルトに仕込まれたスーパープラズマー回路からプラズマエネルギーが流し込まれその威力を倍増させる。
「ぬううううう!!」
まるで漫画のようにゴートロンの巨体が吹き飛び、直立していた果名達の頭上を越えて後方の地面に叩きつけられる。
「がはっ!!!ぐっ……ぬううううう……うがああああああああああああ!!!」
苦しみ、何度も血を吐きながらうめくゴートロン。対してアカハライダーは髪に巻いていた脱臭炭を外して左足に装着する。それにより上半身を走っていたプラズマエネルギーが下半身だけに集中、特に左足には他の部位の数倍以上のプラズマが集約される。
「お、お、己小娘がぁぁぁぁぁぁっ!!!」
何とか立ち上がり、鎌も持たずにゴートロンが血相を変えてアカハライダーに向かって突進する。
「……オーロラプラズマ返しいぃぃっ!!!」
対してアカハライダーは激しくプラズマが発生している左足を使ってゴートロンの腰のあたりに向かって中段回し蹴りを打ち込む。まず足そのものよりも先に形を成したプラズマの刃がゴートロンの腰部の装甲や皮肉を粉砕。そしてより出力の高い左足本体がいとも容易くゴートロンの肉体を腰から上下に両断。後から引いて迫り来たプラズマの波が残った上半身と下半身を焼き尽くす。
「ぐがあああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
アカハライダーが背を向け、左足を地に置くと同時ゴートロンは激しいプラズマと炎の中で叫びを上げながら大爆発を遂げた。
「Follow the SUN!! Catch the SUN!!」
大爆発を背にアカハライダーはポーズを決めた。炎が収まり、しばらくしてからアカハライダーは左足から脱臭炭を取り外す。と、彼女の姿が元の紅葉のものに戻る。
「……一体何だってんだ……?」
果名はただ驚愕の表情と声を作ることしか出来なかった。

------------------------- 第102部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
92話「Sforza学園」

【本文】
GEAR92:Sforza学園

・果名達は戦闘を終えると謎の空間へとやってきた。
「普段は完全迷彩で肉眼では見えないようにしている。私達の住居にして秘密基地みたいなものさ」
初老は言う。紅葉や二人の少女も一緒にいる。中は至って普通の住居……と言うよりは高級マンションみたいだった。
「改めて自己紹介をしよう。私は宝子山と言う。元々は阿須東(あずひがし)高校の校長だ」
「私は赤原紅葉と言います。こんな姿ですけど高校の教師で専攻は経営戦術です」
「私は河原(かわはら)桜子(さくらこ)です。高校1年生です」
「私(わたくし)は三重(みえ)燦飛(さんひ)。桜子さんと同じく高校1年生ですわ」
「俺は黒主果名。こっちは切名と借名。十路川から来た」
「……ふむ。黒主か。もしや君達はどこの組織にも所属していない3人だけのバウンティハンター・トリプルクロスかな?」
「ご存知でしたか。まあ、バウンティハンターなんて大それた者じゃあないすけどね。自分達だけで食って暮らすだけの設備は幸いにもあるけどそれだけじゃつまらないし、何よりいつ天死に襲われるか分からない世の中じゃあ気が気じゃない。だからちょっと市井にお邪魔させてもらっているだけっすよ。けど学園都市に来るのは初めてだ。色々状況を教えてくれませんかね?」
「……ああ、いいだろう。とは言え君たちの事だから亜GEARやこの学園の状況自体は知っているだろう?」
「ええ。謎の存在が学園都市に住む学生たちに亜GEARと呼ばれる特殊能力を与えて殺し合わせているという」
「そう。私達にもそれに何の意味があるかは分からない。だが、この状況を作っているものは知っている」
「……スライト・デス?」
「そうだ。私が知る限り40年以上も前からこの学園では奴らによってまだ子供と言っていい年齢の生徒達が亜GEARで殺し合っている。ひどいところに行けばまだ生まれて間もない子共さえ脳改造で無理矢理亜GEARを使えるようにしては固定砲台として扱っていることさえあり得る。当時はまだ……まだよかったのだ。亜GEARを使えたのは特定の場所だけだった。それでも公開処刑のように毎回無作為に生徒が選ばれては見世物にして殺し合わせられる。生徒同士で戦わせる場合もあれば、スライト・デスの怪人と戦わせられて虐殺される事もある。だから私は40年をかけてこの戦いを少しでも和らげさせるためにこのスーパープラズマー回路を発明したのだ」
「これを私が装備すればスライト・デスとも互角に戦えるアカハライダーに変身が可能なんです。ただ、この姿を保てるのは一度に3分間が限界で、再び変身するためには最低でも3時間ほどの充電時間を必要とするんです」
「……それで赤原さんがスライト・デスと戦っているというわけですか」
「はい。でも、スライト・デスの怪人はそうそう姿を見せたりしません。それでいてどれだけの数がいるのかも……。本当ならこの力を使って生徒たちの戦いも止めたいんですが……」
「……そうして変身して戦いを止められてもその時にスライト・デスが動けばまとめて殺されてしまう、か」
「……はい。だからひどく心苦しいんですが私はこの問題に関われないんです」
「……奴らはGEARでも亜GEARでもない力を持っている。いや、奴の言う通りに種族としての性能がまるで違うんだろう。赤原さんのその力をスライト・デス専用にするのは間違ってないと思う」
「……果名君や、もしよければ私が君達を雇おう。君達の住居ほどではないかもしれないがそれでも衣食住は保証する。だから少しでもこの戦いを止めてはくれないだろうか?河原君の説明によれば君達は亜GEAR能力者の破落戸(ごろつき)3人を容易く倒したのだろう?」
「……確かに俺の力を使えばこの学園都市での殺し合いもだいぶ終わらせる事が出来るでしょう。ですが、俺の力はどうしたって相手を殺す力。加減の利かない技だ。俺がこの戦いを止めようとすればそれはこの学園の生徒同士での殺し合いが止まると言うだけで生徒達の死は免れない。それを抑止力にして戦闘行動自体を抑えると言う事も多少なら出来るかもしれない。だが、俺はこの町に来てまだそんなに時間は経ってないがそれでも分かることがある。……この町は完全に終わっている。まともな文明を築けていない。言葉すら通じない、生物として最低限の活動しか出来ていないような物体で溢れている。……あなた方を見るまではそれこそ猿か何かのようにただ殺し合うだけの動物がうじゃうじゃいるだけかと思っていたから少しはましになったかもしれないがそれだけだ。きっともう20年でもすればちゃんとこの戦いは終わる。……全生徒の動物化と言う最悪の形で」
「……」
「そ、そんなひどい事……!!」
「それに俺が何とかしてこの戦いを今すぐ終わらせようとしたらスライト・デスは黙っちゃいない。あなたでもどうしようもない数の怪人が送り込まれるだろう。悪いがあと20年のタイムリミットを待ってもらうしかないな」
「……で、でも……でも……」
「……さっき助けてくれたお礼はします。けど俺達は協力できない。これから目的地に向かいます。それまでに出くわした生徒がいたらなるべく殺さないようにして止めて見せます。……それでは」
果名が席を立つ。続いて切名と借名も。やがて3人が背を向けて外に出た。
「……よかったの?」
「……仕方ないだろ。もうこの世界では人間は絶滅しているも同じだ」
「……でも果名様?これだけ大事になっているのなら間違いなくセントラル軍の耳にも入っているはずですよね?軍隊でならスライト・デスはともかく亜GEAR能力者の生徒たち同士の殺し合いは何とかなるのでは?」
「……軍なんてとっくの昔にスライト・デスに抑え込まれているだろうさ。そうでなかったらより簡単なグレートシティの奪還だってとっくの昔に終わってるはずだ」
3人がバイクを探す。しかし、何故かどこにもない。耳をすませば遠くの方で聞き覚えのある騒音が聞こえた。3人が走って向かうとやはり学生がバイクを奪って走り回っては戦闘行為を開始していた。
「ぐっ!!」
相手は一人だけだった。果名よりやや年下くらいの男子生徒だ。意外と服装が整っている。そして何よりも。
「炎!!」
「氷!!」
「岩!!」
バイクで走り回りながら3人がそれぞれ亜GEARを放つ。が、襲われている少年の前で全てがまるで踏みつぶされたように地面に吸い込まれては爆発に消える。
「はあっ!!」
少年が手をつきだすと手前を走っていた3人はまるで見えないトラックにでも轢かれたように吹き飛ばされる。
「げぶっ!!」
「のとっ!!」
「ぶべらひらひらひらひゃああああ!!!」
バイクの爆発を受けながら3人は地面に叩きつけられ悶絶する。
「はあ……はあ……、これに懲りたらもうこんな戦いはやめるんだ」
「ば、馬鹿言えよ……?戦いやめたら俺達はどうやって生きていくんだよ!」
「じゃあお前達はその年までどうやって生きてきたんだ!?戦えない赤ん坊の時代どうやって生きてきた!?誰かに守られて生きてきたんじゃないのか!?だったら戦わずして生き延びる手段だってあるはずだろう!?」
「……で、でもよ……」
「でももすももももももない!!集団を作って共に支え合いながら生きていけば無理に殺し合う必要もないはずだ!」
「う、うぐうう……」
3人はうなだれた。少年が3人に歩み寄るとその手を掴まずに引力のようなもので3人を立たせた。
「ほら、けがはそんなにひどくない筈だ。それでも痛くて仕方ないって言うならその間は俺が守ってやるからさ。だから戦わないでくれよ」
「……お、おお……」
4人が握手をした。少年はもとより相手の3人からも敵意や殺意は消えていた。
「……あの男、やるな」
「……そうね」
「あの方法なら生徒たちが殺し合う必要もないかもしれませんね」
「……だがそれでもスライト・デスがいる。楽観は出来ないだろうな。……けど一応義理は果たすか」
「へ?」
果名は4人の方へと歩み寄った。
「あんたは?戦う気はなさそうだけど……」
「俺は黒主果名。よそ者だ。亜GEARも持っていない。だが、この先でお前達の力を必要としているかもしれない人たちが待っている。俺達じゃ助けにならないがお前達なら助けになれるかもしれない。だから出来れば行ってやってほしい。そこにいる人たちもお前と同じで戦いを望んでいない」
「……本当か?」
「ああ。その人たちはお前の穴を埋めてくれるし、その人たちの穴もお前が埋めてくれそうだ」
「……分かった。俺の名前は舛崎(ますざき)世一(よいち)。その人たちに協力したい。けど俺もまだここを離れるわけにはいかないんだ」
「どうしてだ?」
「俺も仲間がいる。でもその内二人が怪我してて、その怪我が治るまではこのエリアからは動けない」
「……もしもだ」
「え?」
「俺達はこれから用があってある場所に行かないといけない。けど、それが終わってここを通る時にもしもまだお前達が無事でその信念を曲げずにいたなら俺があの人達を呼んできてやる」
「……信じていいんだな?」
「好きにしろ。……ところでお前の仲間に女の子はいるか?できれば可愛くて若くて壊れてない奴」
「え?あ、ああ。何人かいるぞ。壊れてる奴もいるけど」
「壊れてる奴はいらない。……少しだけお前の望みに添える確率を上げておいてやる。だから生きてろよ」
「……よく分からないが、頼まれなくたって生きてやるさ」
果名と舛崎は拳を重ねた。
「さて、と」
果名は爆発炎上している3台のバイクを振り向くと左手の指を鳴らす。と、3台のバイクは一度ドロドロの金属になった。そしてスライムのように流動しながら少しずつ形を戻していく。そして20秒程度で3台のバイクは元の姿になった。
「……あんた、能力は持っていないんじゃなかったのか?」
「亜GEARはな。だが俺にはGEARがある」
「GEAR……?」
「お前達の亜GEARが殺し合いのために与えられたものなら俺達のは100%天然素材さ。まあ、その分戦いで役に立たないものもあるがな。じゃ、俺達は行くぜ」
「あ、ああ。無事を祈ってるぞ」
舛崎に見送られながら果名達はバイクに乗ってその場を去った。
「……果名、どうするつもりなの?」
「何がだ?」
「さっきの質問。あれって彼に依頼をさせるつもりでしょ?でも私はともかく果名の力じゃ相手を殺さずに征するなんて難しい。まさか私の力を頼りに依頼を受けるつもり?」
「もちろん力を貸してくれるならそれでいいさ。ただ、前回は報酬をもらい損ねたからな。いい加減お前達だけ相手ってのもどうかと思うからな」
「……」
「拗ねてくれるなよ。そんなに長居するつもりはないからさ。それにスライト・デスにもこれ以上関わるつもりはない。下手に目をつけられて十路川まで来られても困るしな。……あいつらには俺の力が通じないってのもあるし」
「……そうね」
「果名様、切名様。この調子でいけばおよそ3時間くらいで目的地に到着します」
「そうか。相変わらず左手の方角じゃ戦いの様子がうるさいが少しは静かな場所に行けたらいいがな」
果名達は戦場をしり目にバイクを走らせた。

------------------------- 第103部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
93話「心、愛を稲妻に解き放て……」

【本文】
GEAR93:心、愛を稲妻に解き放て……

・ある日のことだ。甲斐(かい)心(シン)はどうにかして生徒同士の殺し合いから逃げ延びて恋人の姫宮(ひめみや)愛名(あいな)と共に戦いの及ばない地の果てまでの亡命を決意して実行した。以前戦いの中で一度だけ聞いたことがある。大陸の南東にあるこの学園都市地帯。さらにそこから南東のはずれには小さな島があり、そこでは亜GEAR能力での殺し合いも起きなければ天死が攻めてくることも滅多にないという今の自分達からしたら到底信じられない楽園のような場所があるらしい。二人の目的地はそこだ。実際に存在するかは分からない。戦中に蔓延った戯言の可能性も捨てきれない。しかし、決して捨てておけるほど自分達の心はまだ絶望を認めたわけではない。
「けど大丈夫なのか?愛名。俺重いだろ?」
「大丈夫だよ、シン。休み休み行けば平気だから」
二人の会話は空の上。愛名に与えられた亜GEARである飛翔の能力を使って二人は空からその島を目指して飛んでいた。しかし学園都市地域だけでも都道府県二つ分ほどの面積がある。たとえ夜通しで移動したところで三日三晩でも横断できる距離ではない。今、二人はおよそ時速4キロ程度の速さで一日12キロくらいのペースで移動していた。だが、食料がなければどんどん移動速度は落ちていく。このままいけばたとえ島の伝説が本当だったとしてもたどり着く前に餓死してしまうだろう。実際にこの日はもう朝からずっと空を飛んでおらず、とぼとぼと二人で歩くだけだった。3時間歩いて移動したのは2キロに満たない。どこへ逃げようとも戦わなければ食料は手に入らない。これが学園都市でどうしても殺し合いが終わらない理由の一つでもある。やや非衛生と言う理由であまり好まれないだけで食人もこの地域ではほとんど気にはされていない。実際に二人も運よく肉体がほとんど損傷していないまま死んだ人間の肉を食べたことはある。倫理がどうとか気にしていられないし、そもそも倫理と言う概念も教われる時代ではなかった。食料だけでない。服装なども死んだ人間の制服をはぎ取って拝借しているのがほとんどだ。かつて食料と同じ対価を支払って好き勝手に洋服を購入できた時代があった事など果たしてどれだけの人間が知っていることだろうか。
ともあれ言葉少なく、二人が小さく足運びをしながら僅かずつ距離を稼いでいる時だ。
「ん、また人間か」
3台のバイクが近くまでやってきた。


・果名はとても仕方がないという表情をしていた。バイクを止め、借名に渡しておいたウッドへんでろぱをシンと愛名に渡すと二人は目にもとまらぬ速さでそれを食し始めた。二人前三人前を軽く胃の中に放り込むと数秒で消化できなかった分を吐き出す。しかし、それでも止まらずに新たに渡された分を食べ始める。
「……で、そろそろいいか?」
倒れて痙攣までしながら、それでもなお食事に手を伸ばそうとする二人を止めて果名は言葉を出す。
「お前達が戦いを望んでいないのは分かったがどうしてこんなはずれの方まで来たんだ?こんな方じゃ誰もいないし食料だってそうそう手に入らないだろ。自殺にしては食欲に勝てなさすぎだし」
「あ、ああ。俺達は南東にある島を目指しているんだ」
「島?そんなもの聞いたことないぞ?」
「戦いの中で聞いたことがあるんだ。そこでは天死もいないし戦いを強制する存在もいない。食料に困ることもない楽園のような島があるって」
「……極限状態での妄想じゃないのか?」
「……そうかもしれない。でも、違うって確定してるわけじゃない。だったら本当にあるのかどうかをこの目で確かめたいんだ。戦いの中だろうが自らだろうが、死ぬよりかは先に済ませておいた方がいいと思うから……」
「……あまり前向きじゃないがまあいいや、途中までは道は一緒みたいだからついて行ってやるさ。俺もそんなところがあるなら目にしておきたいしな」
「……ありがとう、命の恩人。俺の名前は甲斐心」
「ん、甲斐心だって?じゃあお前か?俺の依頼人って言うのは」
「は?依頼人?」
「そうだ。今朝俺にこの手紙をよこしたのはお前じゃないのか?このご時世、ちゃんと自分の名字を知っててフルネームを名乗れるなんて珍しい。それで同姓同名だなんて考えにくいが」
「……悪いけどありえないな。三日前から俺達はずっと島を目指して歩いていたから」
「……まあ、それもそうだな。あんなところまで来れるならわざわざ学園都市まで帰ってくる必要もないしこうしてのたれ死にそうにもなってないな」
とりあえず二人をサイド部分に乗せて南東を目指す。道中で自己紹介を済ませる。
「そうか。戦いを終わらせるのか」
「そうだ。お前達ももし島が見つからなかったらそれに参加してみたらどうだ?自殺するよりかはまだましかもしれないぞ」
「……そんな気分になれたらな。正直言ってこの旅を最後にしたいと思ってるよ」
「……まあ、そういうんだったら好きにしろよ」
それからは無言の旅だ。ただ一度だけ思い出したように二人は改めて名乗りを上げた。
「……甲斐心。18歳」
「姫宮愛名です。同じく18歳です」
「黒主切名よ」
「黒主借名と申します」
「3人は家族なのか?」
「まあな。血の繋がりはないが一緒に生活している」
「学園都市の人間じゃなさそうだがセントラル軍か?」
「違うな。それに軍はもう何年も動いちゃいないし動く可能性もないだろう。動いてたらもうとっくの昔に学園都市は元通りとまではいかないかもしれないがそれでもこんな惨状のままじゃないだろう」
「……学園都市の外はどうなっているんだ?俺達は基本的に外には出ないからな」
「どうして?」
「俺達は必要最低限の食糧だけを殺し合って奪うんだ。歩いて何日もかかるような場所まで行けないさ。だから外の様子を聞きたい」
「……あまり希望を見いだせる状態じゃないがな。まずお隣のグレートシティは何十年も前に天死によって住人が皆殺しにされて今はグールどもが溢れてる。天死に殺されるとまるで中世映画のゾンビみたいに徘徊し、自分たち以外の動いたものに集団で襲い掛かり、仲間を増やす怪物になる。ただ、泳ぐだけの力がないのか水に弱いのか十路川を超えて他の地域に行くことは出来ないようだ。昔はあったらしい橋もとっくの昔に朽ちているしな」
「……俺達の先祖がいた場所はもうここ以上の死地になってるって事か」
「かもな。で、もう1つのお隣さんであるデスバニア高原。そこは天死の住処だ。元から極寒の豪雪地帯ってこともあってあまり人の近寄るところじゃなかったが今じゃそれ以上だな。きっと亜GEAR能力者でも天死相手じゃ分が悪いだろうから足を踏み入れたら最後だろうな。で、最後。こことは正反対の北西の地。そこにはセントラル軍の本部があるんだがここ数十年は全く動きがないらしい。そこだけは俺も行ったことがないからわからない」
「……どうして動かないんだ?」
「いくつか説はある。一番有力なのはまあ、天死によって既に皆殺しにされてるって奴だな。デスバニア高原が奴らの住処だってのは分かってる事だからそこから天死どもがセントラル軍本部、グレートシティと行動範囲を広げて次々と人間たちを殺していったとかな」
「……じゃあどうしてここには来ないんだ?一周回ってもうデスバニア高原の隣じゃないか」
「……さあな」
言いながら果名は考える。確かにシンの言う通りだ。相手が人類を殺すことしか考えていない猛禽類宇宙人なら先が読めないのは仕方がないとしても人類を餌と考えているのなら大陸中を襲って人類を殺しつくすはずだがこの地にだけは天死が襲来したという情報はない。それにスライト・デスの存在もある。連中も外見や能力からほぼ間違いなく宇宙人の部類だろう。だとしたら天死はもしやスライト・デスの尖兵と言う可能性もあり得る。だが、だとしてもこの学園都市を襲わない理由が分からない。連中が人類同士が醜く殺し合うのを楽しんでいる上、この状況を作り出しているのは確実だがそれにしては気が長すぎる。どんなに面白いゲームだとしても数十年も長く続けるだろうか?それとももう残っている人類がここにしかいないから絶滅まで待っているのだろうか。
「どうかしたか?」
「いや、何でもない。俺も少し事実が気になってきたな。切名、借名、少しスピードを上げるぞ」
「いいけど、燃料は持つの?」
「場合によってはその辺の死体でも使うさ」
「そう」
3人はアクセルを強く入れてバイクを加速させた。


・それから2時間が過ぎた。だいぶ大陸の端の方までやってきて地平線(グレートフォール)が見えてきた。地平線の先には大海が広がり、しかしそのどこにも島はなく人間も生活していないと言う。だが、その知識に誤りがあるのを視認した。
「……確かに島が見えるな」
地平線ギリギリにバイクを止めて遠くを見る。500メートル以上先に小島があった。
「あそこが楽園の島なんだろうか」
「だとしても橋がないし況してや泳いでいける距離でもないだろう。言っとくがこいつは海は走れないぞ」
「いや、愛名は亜GEARで空を飛べるんだ。少しきついかもしれないがこの距離ならいけなくはない。だよな?」
「ええ。頑張ってみる」
「……そうか。けど流石に俺達はついていけないな。彼女じゃ運べるのは一人までだけだろうし。往復で1キロ近い。俺達はここで分かれるとしよう」
「そうか。世話になったな」
シンがバイクから降りる。同時に愛名も降りる。その時だ。
「ほう、ここにたどり着けたか」
海に大きな水柱が出現した。超局地的な雨を降らせたその中心の水面に異形が立っていた。形容するなら河童魔人。
「スライト・デス……!?」
「我らが名を知っているとは、よもやゴートロンを倒したと言うスーパープラズマーの小娘の仲間か?」
「……まだあれから3時間程度だぞ……?スライト・デスの情報網はどれだけなんだ……!?」
「我が名はカッパードン。スライト・デスの海洋魔人。ここから先を通ろうとする者はもちろん、我が姿を見たものも皆殺しの憂き目にあってもらおう!」
カッパードンが海面を歩き、徐々に加速して走り出す。右手には錫杖……しかしその下端は銃口にも見える。
「逃げるぞ!!」
果名は素早くシンと愛名をサイドへと引きずり倒し、旋回して走り出す。後ろは見ない。アクセルは全快。しかし、
「ち、近付いてきてるぞ!!」
「何!?」
シンの声に従って振り向くとカッパードンは確かに少しずつこちらとの距離を縮めていた。明らかに向こうの方が速い。
「おいお前!お前も学園都市の人間なら何か亜GEARあるだろ!それ使って妨害しろ!」
「悪いが俺の亜GEARは近くに亜GEAR能力者がいるかどうかを察知するだけなんだ!」
「くっ!」
限界までスピードを上げてもやはり向こうの方が速く、100メートル近くあった距離ももう10メートルはない。
「……もういい。お前達だけで逃げてくれ」
「!?」
突如シンがサイド部分から飛び降りた。
「!」
着地できず転げまわり、それが偶然走っていたカッパードンの足を掬い、転倒させた。
「おい!!」
「言っただろ?俺はこれを最後の旅にするって!最後くらい役に立たせろよ!」
「シン!!」
「愛名!お前まで付き合う必要はない!そいつらと一緒に逃げるんだ!」
「でも……!!」
「……よくもやってくれたな」
そこでカッパードンが起き上がり片手で頭を掴んでシンを持ち上げる。
「ぐっ!!」
「このまま握りつぶしてくれる!」
「シン!!」
愛名まで走るバイクから飛び降りようとしたその時だ。
「しんなるひかり……よびさまして……」
声が聞こえれば次の瞬間には激しい光の球が空から舞い降りてはカッパードンを弾き飛ばし、シンを包み込む。
「こ、これは……!?」
「……あなたは心……その心の力を忘れないで……。それは誰にも負けない光になれるから」
優しい少女の声。認識したのはそれだけではなかった。体に新たに芽生える大きな力。はじめて亜GEARを手にしたあの時と同じ、しかし比べ物にならないほどの安らぎと暖かさ。それが今、シンの全身を走った。
「ブレイズアァァァップ!!!」
叫ぶ。光が炎に変わってその体を真紅のヒーローへと変えた。
「何だあれは!?まさかソウルプラズマーだとでも言うのか!?」
驚くカッパードンの前、シンは真紅の姿・スカーレッドとして降臨していた。
「あれが……シン……!?」
「……アカハライダーに少し似ている……同じ原理か?」
スカーレッドは拳を構える。カッパードンは錫杖を構える。
「うあああああああああああああああああ!!!」
多少上ずった高い叫び声。それを伴った拳はカッパードンの反射より早く胸にぶち込まれる。
「ぬうううう……!!」
メキメキと音が聞こえ、カッパードンが2歩3歩と後ずさる。それが完了するより先にスカーレッドは踏み込み、再び拳を叩き込む。顔面へと放たれた一撃は、しかし今度はカッパードンの錫杖に受け流される。
「くっ!」
「拙いな!」
そのままで振るわれた杖がスカーレッドの足を払い、転倒させる。
「河童マシンガン!!」
錫杖の下端をスカーレッドの腹に押し付け、その状態から銃口からエネルギー弾を連射する。
「うあああああああああああ!!!」
「シン!!」
愛名が飛び出す。亜GEARで空を飛び、スカーレッドが変身の際に放った光の粒子をその身に帯びる。と、背中から生えた翼が虹色に染まり鋼鉄のメイド服とでも呼べるような姿へとその身を変える。おまけに右手には細身の剣・レイピアが握られる。
「愛の天使・エンジェル!!」
「エンジェル!?」
驚く空を飛び、エンジェルは超スピードでカッパードンの頭上を通り過ぎる。しかし、ただ通り過ぎたのでなくそのレイピアでカッパードンの背中を大きく切り裂いていた。
「おおおおおお!?」
緑色の血液を飛ばしながら怯むカッパードン。スカーレッドはその隙に足払いでカッパードンを転ばせると距離をとってから立ち上がる。
「うあああああああああああああああ!!!」
そして再び叫びを上げながら握った拳を、ちょうど立ち上がったばかりのカッパードンの顔面に叩きこんだ。
「の、お、お、おおおおおおおおお!!!」
拳がカッパードンの顔面を貫き、貫いた場所から炎が巻きあがり、ものの数秒でカッパードンの体は大爆発した。
「うわああ!!」
スカーレッドは爆発により後ろに吹き飛び、倒れると同時にシンの姿に戻って気絶した。
「シン!!」
エンジェルがその傍に着地して愛名の姿に戻って介抱する。
「……スライト・デスを倒せる力が目覚めつつあるのか……?」
Uターンしてきたバイクの上で果名はつぶやいた。

------------------------- 第104部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
94話「黒い雷鳴」

【本文】
GEAR94:黒い雷鳴

・結局、海は超えなかった。
シンが眠っている以上愛名一人で行かせてもあまり意味がない。そしてスライト・デスの怪人を倒した影響で一か所にとどまったままと言う訳にもいかないため果名達は来た道を戻ることにした。
「きっともう一度ここに来れるのはしばらく後になるだろうな。」
「……」
「果名。依頼の方はいいの?」
「3時間待っても来なかったんだ。探してもいない。きっとあのスライト・デスの怪人に殺されたか避難したかだろう。依頼内容も恐らくはあの怪人の撃破。だとすれば依頼はクリアしたも同然だ。報酬を受け取れなかったのは残念だがそれも当てがあるからな」
果名は説明。あれから数時間眠り続けるシンをサイド部分に寝かせながらバイクで走り続けている。目指す場所は紅葉達がいた場所だ。それにその前に舛崎と合流してその仲間達も連れていく必要がある。
「夜か」
日が暮れて夜になった。尤も海での戦いの時点で夕暮れが近かったが。
「確か亜GEARは夜間には使えないんだったっけか?」
「まったく使えない訳じゃないですが力が激減します。私の場合は体を少しだけ宙に浮かせるのがやっとになります」
「じゃあ夜の間は学生同士の殺し合いも起こりづらいか。だったらこのあたりで今日は休もう。野宿にする」
「……あまり気が進まないんだけどね」
3人はバイクを止めて愛名がシンの隣に移動する。夜は寒いがバイクの傍は暖かく、疲労がたまっていたこともあって愛名はそのまま眠ってしまった。
「……それでどうするの?本当に紅葉さん達に協力するの?」
「……まだ決めかねている。人口の大半がいる学園都市がこんな状況じゃ報酬のためだけに活動じゃその内当てがなくなる。報酬だってもらえなくなるかもしれない。だが、スライト・デスがいる以上あまり勝手な行動もしたくないんだよな。シンや愛名、紅葉さんみたいに奴らに対抗できるだけの力が集まりつつあるとはいえ怪人1体相手ですらあそこまで強いんだ。どれだけの数がいるかは知らないがもし本腰を入れられて全軍進撃なんかされてみたらひとたまりもない。どんな理由があるかは知らないがこの地獄のような惨状も奴らが望んで作り出したものだ。それに甘んじるのもどうかとは思うがしかし、この状況で許されていると考えれば無理に行動する必要もないと思う」
「……で?」
「……わかんね」
それだけ言って果名も剣を抱えた状態で座り込み、眠りに就いた。


・果名達が目を覚ましたのは1時間が過ぎたあたりだった。
「……ん、」
遠くの方で騒音がしたからだ。戦いの音にも聞こえる。少なくとも自然の音ではない。
切名、借名はすぐに目を覚ましたがシンと愛名はまだ眠っていた。呼びかけながら肩を叩くと、どちらも目を覚ます。
事情を呑み込めていなさそうなシンに現状を説明しながら果名達はとるべき行動を探る。
「大体2キロほど先だな。いくつか戦いらしき音が聞こえる。数は少数ではない」
「どこかのグループが別のグループ相手に夜戦を仕掛けているとかか?」
「このあたりにアジトらしきものがあるのか?」
見れば周囲は全くの荒野。多少の岩肌、岩石は見えど多数の人間が潜み暮らすには適さないだろう。
かと言ってこんな真夜中に大人数が、それも2通りのグループが移動しているとはもっと考えにくい。
「どうするの?少し離れているとはいえバイクで移動したら向こうにも聞こえてしまうかもしれないけど」
「……かと言ってこのまま待機にしても場合によっちゃ戦場の移動で巻き込まれるかもしれないな」
「全力で逆方向に逃げるって言うのはどうなんだ?」
「……」
考える。もし相手が亜GEARの学生だったならそれだけで数や質に関係なく問題がないだろう。もしかしたらシンと愛名は助からないかもしれないが。しかし、このいくつもある不自然な状況から学生同士の戦いと言う可能性はかなり低い。だからもしかしたらスライト・デスが関わっているかもしれない。或いは他の何かか。
可能な限りスライト・デスやいるかもしれないそれに比類する何かとはかかわり合いたくはない。しかし情報は間違いなくあった方がいい。
「……シン、愛名。またさっきの力は使えるか?」
「え?」
「……変身できるか?もしかしたらあそこにいるのはスライト・デスかもしれない」
「……分かった」
シンは一度変身してみる。最初は出来なかった。しかしさっきの変身を思い浮かべたのか、考え込んでからの2度目は無事に成功した。その状態で愛名に目配せすると愛名は問題なくすぐにエンジェルへの変身を成功させた。
「……問題ないようだな。だが変身は解いておけ。目立つ」
「それで、あっちの方の奴に行くのか?」
「ああ。まだ学生たちが相手ならましなんだがな。情報は必要だ。行ってみよう」
バイクに乗る。多少音は出るがしかしなるだけ出さないようにと、スピードを落としていく。
走って接近すればするほど様子が分かるようになってきた。まず、先程から続いているのは雷の音だった。どういうわけかこの大陸から雨が奪われて長年経過し、雷も滅多に発しない。十路川のあたりではごくまれに雷雨もあるのだが。しかしこのあたりで、意図的に発生され続けているのは事実。
「亜GEARにしては規模が大きいな。スライト・デスにしては性質に違和感がある。何だ?」
疑問を載せて加速。サイドのシンと愛名は覚悟を決めて変身できる準備をとる。
かくして15分後。その様子は明らかとなった。
「はああっ!!!」
夜空の下、黒い戦士がいた。まるでカブトムシを人型にしたような姿。それが同じく蟹を人型にしたような姿と、もう1体。馬を人型にしたような姿と戦っていた。
「スライト・デスだな」
「仲間割れか?」
「いや違う!あっちの黒い奴は人間だ!!」
言うや否やシンは飛び出した。
「ブレイズアァァァップ!!」
そしてスカーレッドに変身すると、黒い奴を後ろから襲おうとしていた馬のような奴をタックルで弾き飛ばす。
「!お前は!?」
「スカーレッド!」
「……俺は、シュバルツだ!」
「シュバルツ、相手は!?」
「あの蟹のような奴がクラブスターで、馬のような奴がジンホースだ!」
「スライト・デスだな!?」
「ああ!」
言葉を交わし、着地した二人は相手に向かって構える。
「ぬ、まさかカッパードンを倒した奴か!」
「ちょうどいい!まとめて手土産にしてくれる!」
着地した2体が咆哮を上げて迫りくる。対して二人も走り出し、スライディングで足を払い、倒れた相手に後ろからまたがってはコブラツイスト。首と腰から異音が聞こえてくると立ち上がり相手を持ち上げて投げ飛ばす。
「ブレイズパアアンチ!!」
「ライトニング・貫!!」
そしてそれぞれ、炎と雷を纏った拳が空中で炸裂した2体は大爆発を遂げた。
「やるな」
「お前こそ!」
着地と同時に両者は変身を解いて人間の姿になった。
「改めて、俺は黒山ライ。18歳だ」
「俺は甲斐心。同い年だからシンって呼んでくれ」
握手を果たすと果名達も到着する。
「ライはどうしてこのあたりに?」
「ああ。この先には怪我したり病気したりで戦えなくなった仲間達がいるんだ。俺はそれを守るために戦っている。このあたりには最近よくスライト・デスの奴らが現れるんでな」
「俺は今日この力を使えるようになったばかりなんだがこの力は何なんだ?」
「分からない。だけどお前も聞いただろ?少女の声を」
「……ああ」
「俺は数日前にあの声に導かれてシュバルツに変身できるようになった」
「……ライ、ちょっといいか?」
果名が話に入る。
「何だ?えっと、」
「果名だ。他にもそれと同じ力を持っている奴はいるか?」
「いや、俺は見たことがないな。シンが初めてだ」
「そうか……。もしよければ俺達についてこないか?その動けない仲間達も一緒で構わない。スライト・デスに対抗するための力が集まっている場所があるんだ」
「スライト・デスに対抗?それはこのシンだけでなくか?」
「ああ。今の戦いを見て確信した。お前達はスライト・デスの怪人より2回り以上は強い。2対1でも場合によっては行けるはずだ。他のメンツがサポートに回るとして10体くらいなら同時に相手できる。この学園都市を争いだけの町から解放するにはこの街を支配しているスライト・デスを倒す必要があるはずだ」
「……本当に仲間を助けてくれるか?4人いるんだが」
「それくらいなら全く問題ないはずだ。……どれ」
果名は指をパチンと鳴らす。と、倒された2体の怪人の残骸が集まって新しいサイドカーが3台作られた。
「亜GEARか!?」
「いや、GEARだ。けが人はサイド部分に乗せてシンや愛名、ライが運転すれば問題なく移動できるだろう」
「……分かった。2台貸してくれ。シン、手伝ってくれるか?仲間を運びたい」
「ああ、わかった」
「私も手伝うわ」
そうして3人がバイクに乗ってどこかへ行き、30分くらいしてけが人を連れて戻ってきた。
「すまない、案内してくれ」
「了解」
そうして夜の中、倍に数を増やしたバイクが走り抜けた。

------------------------- 第105部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
95話「キャンセラーの男」

【本文】
GEAR95:キャンセラーの男


・朝が来た。時折休憩を挟みながら果名達は24時間前と同じ、舛崎と出会った場所に到着した。
「……流石に同じ場所にはいないか。まあ、一日で帰ってくるとも思わないだろうな」
「さっき聞いた舛崎って奴か?」
「ああ。亜GEAR能力者でありながら学生同士の戦いを終わらせようとしている。そいつ一人だけみたいにいくら力があっても一人だけだったら不可能だろう。だが、支配者であるスライト・デスにも対抗できるだけの力が最低でも4人いて、他にも亜GEAR能力者が何人かいるならば決して不可能ではない筈だ。……学生全員を死なずに止めるなんてことは絶対に不可能だ。だが止められる場合は可能な限り止めて生き残らせる」
「だが、スライト・デスはどうするんだ?俺達が目的を果たせば果たすほど目立つようになり、奴らは俺達を積極的に狙ってくる。昨日お前は10体程度なら何とかなるって言ったがもしそれ以上の数が来たら?それに、学園都市の外には天死って奴らもいるんだろ?敵は少なくないぞ?」
「短期間でやろうって話じゃない。昨日の2戦を見て思ったのは奴らは変身していなければお前達の見分けはつかない。ただただスライト・デスの怪人相手でも倒せるだけの人間が近くにいると言うことしか分からない筈だ。だからゲリラ的にやらせてもらう。学生同士の戦いを止めながら、しかしスライト・デスは積極的に倒す。もちろん遭遇したら必ずその場で殺す。情報共有でもされてお前達の顔とか個人を特定できるものを知られたらアウトだ。その時は俺達はお前達を見捨てて家に帰らせてもらう。あの場所なら尾行されない限りはそうそう発見されないからな」
「……随分と殺生だな」
「それでもこんな地獄みたいな状況に自ら率先して付き合うんだぞ。度を超えたお節介だと思うぜ?」
「だろうよ」
足を止めて薪ジュースを飲む。舛崎を探すか、それとも本来の予定通りに紅葉達のいる場所を目指すか。どっちにしようか迷っていた時だ。
「……聞こえたな」
「ああ」
その耳に聞こえたのは戦いの音だった。発信は近くの廃墟のどれかだろう。きっと舛崎は仲間と共にこのあたりのどれかを根城にしているに違いない。だとすれば舛崎のグループが敵対するグループにでも見つかったのだろう。もしそうだとすれば大規模な戦闘になっている可能性が高い。
「借名、シン、愛名はここに残れ。12時間以内に戻らなかったら十路川まで全力で逃げろ。切名、ライは俺と一緒にあの中に飛び込む」
「分かったわ」
「おう」
「どうして全員でいかないんだ?」
「けが人がいるだろ。だいぶ安定しているから戦力のために残してもいいが……」
果名はライを見やる。ライは苦しそうな表情をしていた。
「ライさん、俺達なら構わないっすよ……?」
「しかし、」
「そうだ。お前達には元気になってから活躍してもらわないと困るんだ。今は生きてくれ。シンと愛名はもしスライト・デスが来た時のためのボディガード。借名は舛崎とかが来たら説明。他の破落戸どもだったらGEARを使ってもいいから追い払え」
「はい、わかりました」
「……よし、行くぞ」
果名、切名、ライがバイクを降りて廃墟へと向かった。


・廃墟。きっとそこはかつては学校だったのだろう。しかし校舎を囲う策やフェンスは全く見当たらず、それどころか校舎の壁もところどころ破壊されている。破壊されていない壁も激しく老朽化が進んでいてきっと10年もしない内に建物を支え切れなくなって崩壊するだろう。この中で戦っているのならおそらくもっと寿命は短いだろう。ただ、戦いの音は遠い。どうやらこの校舎が舞台ではないようだ。
周囲を見れば体育館のような施設がある。やはりところどころ壁が破壊されている。
「あっちに行くぞ」
3人が校舎を出て体育館に向かおうとした時だ。
「っ!!」
殺気を感じた果名は咄嗟に目の前に楯を出現させた。その直後に無数の衝撃が楯を襲った。
「何だ!?」
衝撃が終わってから3人は攻撃が飛んできた方向を見た。
「何だ、防御系か」
柱の陰から少年が姿を見せた。
「お前は舛崎の仲間か!?」
「舛崎ぃ?馬鹿ちげぇよ。俺は大川。戦いの邪魔になる奴を皆殺しにするためにここに来たんだよ。馬鹿が3人連れて歩いてるからまとめて殺せるいい機会だと思ったのによ」
「……なら馬鹿はお前じゃないのか?お前の攻撃を防げる防御が可能な奴含めて3人。奇襲に失敗してどう正面から戦うつもりだ?」
「あ?馬鹿に変わりはねえだろ。俺はキルスコア1000を超える……ハイパー実力者なんだからよ!!」
下卑た咆哮。同時に大川は両手に拳銃を握り、走り出した。左手の拳銃で3人の足元を狙い、右手で狙う。
「ちっ!見えない程速い上に小さい何かか!?」
果名は楯で銃撃を防ぎながら少しずつ巨大化していき3人の体を完全に隠す。
「果名、私がやろうか?」
「可能なら頼もうか!」
「だったら俺が囮になってあいつの注意を引いてやる」
「頼んだ!」
楯が消えると同時、切名とライが左右に走る。
「は!俺が両手に武器持ってるって知ってるのに左右に逃げるのか普通!」
大川はその場に止まり、左右の拳銃で走る二人を狙う。
「くっ!」
切名の左肩を掠り、一瞬だけ動きを止める。と、大川の視線が左右そちらに向き、左右の銃口が切名を狙う。
「俺はこっちだぜ!!」
「!」
その瞬間、ライは大川の眼前にいた。拳銃を握る両腕の間に割り込むようにその体があり、右のアッパーを大川の顎に叩きこむ。
「ごふっ!!瞬間移動!?」
「みたいなもんだ!!」
よろめいた大川。その背後をとろうとライが走る。大川は一瞬そちらを視線で追うが、すぐに視線を正面に戻した。
「その名を切る!!」
何故なら切名が猛スピードでこちらに走ってきていたからだ。
「ちっ!」
大川は背後にライの気配を感じながらも背後に跳躍。まるで背中でタックルするようにライに接触する。
「ぐっ、だが捕まえたぞ!」
「馬鹿が!」
ライが大川を背後から羽交い絞めにした瞬間。尋常ではない衝撃がその腹を貫いた。その衝撃のままにライが後ずさる。
「お前、まさか……!!」
「まず一人ってな」
睨んだ先の大川は腰のあたりから血を流していた。大川は自分の腹越しに発砲して自分の体を貫通させてライを射撃したのだ。振り向いてそれを確認した大川は半身を切って左手で膝をつくライを、右手で迫りくる切名を狙って発砲する。
「くっ!」
切名は弾丸は見えなかったがスライディングする形でギリギリ回避。
「があああっ!!!」
ライは銃弾を右肩に受けて叫ぶ。
左尻目にライの様子を確認した大川は切名の方に左右両方を集中する。
伸ばした切名の手が大川の体に触れそうになった瞬間にバックステップして回避。同時に左右の引き金を引く。
「あああっ!!」
2発の弾丸がそれぞれ切名の右足と左腹部に命中して貫通する。
「よく分からないが触れられたらやばそうだ」
右斜め後ろに正面を向きながら走る大川。正面では銃撃された激痛で膝を折る切名とライ。
「……ん!」
そう、その二人だけだった。
「あの楯のや……」
気付いた時には遅かった。
「死ね!!」
背後にいた果名が黒龍牙を振り下ろし、大川の背中を大きく切り裂いていた。
「ぐうううううううううおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ただの斬撃の後に発生した衝撃波が大川の小柄な体を簡単に吹き飛ばし、空中でその両腕が胴体からちぎれ飛ぶ。黒いつむじ風は次第に収まり、大川は校舎のどこかの窓を突き破って廊下に落ちていった。
「大丈夫か!」
黒龍牙を鞘に納めた果名は二人に走る。
「何とかな……」
「うううう、」
どちらも顔色が悪い。出血も馬鹿に出来ない。すぐに最低でも応急処置はしないとどちらも助かりそうにはない。
「仕方ない……!!」
数秒の逡巡。終えた果名は二人に手を伸ばす。が、
「先に手を伸ばすのはこっちだよ」
「!」
背後。振り向けば手があった。いや、それも普通ではない。青いような黒いようなよく分からない、そして大きな手だった。それが背後に立っていた少女から生えていた。
「大川を倒したみたいだけどこれでチェックメイト。でもあたし達の仲間になるならその二人と一緒に助けてやってもいいよ」
「……お前は舛崎の仲間か?」
「いいや?あたしは平井。一応大川の仲間だったけどあいつウザくてね。それでいて馬鹿に強いから厄介だったんだけどあんたが倒してくれて助かったよ。そのお礼に本当だったらこうして止めずにそのまま殺してた。さあ、どうする?」
「……くっ、」
今この状態、自分はともかく二人は助からないだろう。考えれば考えるほどその無駄な時間で二人を殺してしまう。だったらここは演技でもいい。仲間になって二人を助けてもらおう。正面切ってからならこんな見え見えの亜GEAR能力程度いつでも殺せる。
そう確信して果名が口を開いた時だ。
「そこまでだ!!」
「!」
平井のその蒼黒い手を別の手が掴んだ。それは飛び込んできた一人の少年の手だった。
その手に捕まれた瞬間、まるで地面に叩きつけた氷のように粉々になって蒼黒い手は消えた。
「キャンセラー……!!」
「俺は小林だ!小林(こばやし)大(まさる)!!」
大は勢いを踏みとどめるや、握った拳を平井の顔面に叩きこんだ。
「おお、男女平等パンチ」
「ぐっ!」
背中から後ろに倒れた平井は数秒後に立ち上がり、何を言うでもなく走り去っていった。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。助かった……って言っていいのか」
果名は血を流したまま倒れている二人を見る。
「……大川にやられたんだな。アジトに案内する。そこでなら治療が出来るから」
大はライを担ぎ上げるとすたすたと歩きだした。
慌てて果名も切名を背負って後を追いかけた。

------------------------- 第106部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
96話「抗争」

【本文】
GEAR96:抗争

・なるだけ壁沿いに、しかし壁からはやや離れた場所を果名と大は小走りに歩く。徐々に背負った体温が冷たくなっていくのを感じながらも5分程度で目的地にたどり着いた。
「ここは……」
「元3年3組と4組だな。多分昔の戦いで校舎からこの2教室だけ外に崩れ落ちたんだろう」
二人が中に入る。
「大!どうしたの!?」
「須田、けが人だ。この二人を頼みたい」
「わ、わかったわ!」
床に切名とライを寝かせると少女が走ってきて二人の患部に手を伸ばす。と、その手が光出して傷がふさがっていく。
「治療の亜GEARか……!?」
「そうよ。私は須田。須田郁美。あなたは?見ない顔だけど」
「俺は黒主果名。十路川から来た。舛崎世一ってのに会いたいんだが知ってるか?」
「世一なら仲間よ」
「舛崎の奴は今どこにいるんだ?」
「1時間くらい前に美香子ちゃんと一緒に散歩(リハビリ)。でも戦いの音が聞こえたからちょっと心配かも。一也は今動けないし」
「そうか。じゃ俺が行ってくる」
「待った。この二人を治してくれているお礼だ。数が欲しいなら俺も行く」
「でも……」
「安心しろ。俺は強い。さっきは不意打ち食らったからあんな状態になったがな」
「……分かった。果名さんだっけ?俺と一緒に来てほしい」
「分かった!」
果名と大は教室を出て走り出す。
「いつからああいう生活を?」
「ん?ああ、10年くらい前かな。まだやっと歩けるようになったばかりの俺達はまるで託児所か保育園みたいに気付いたらあそこに集められていたんだ。当時俺達の世話をしてくれた人はもう何年も前に死んじゃったけどそれ以来俺達が自衛と戦いを終わらせるために戦っているんだ。けど、あんたも会った平井やその仲間の大川って奴は俺達と同じあの教室で育ったのに戦いを激化させているんだ。こんな時代に諦めているのか、それとも強力な亜GEARに溺れているのか」
「……大川のは武器らしきものの召喚ってのは分かるんだが平井のあれはなんだ?」
「ダークハンドだ。触れられると分子運動って言うのが止められて有機物無機物関わらず脆くなるらしい。で、あのハンド自体が数百キロ以上も握力があるから大抵は触れられたら即アウトだな」
「……お前はそれを掴んで止めていなかったか?」
「ああ。俺はキャンセラーなんだ。亜GEARともまた違った特殊能力みたいで、どんな亜GEARでも止められる。無力化できるんだ。舛崎のニュートンコントローラと同じで戦いを止めるには好都合だろ?」
「……試してもいいか?」
「え?」
急に果名が足を止めた。同時にその足元に散らばっていた金属片などがドロドロに融解してスライム状になり、大に向かってとびかかる。
「!」
咄嗟に右手を伸ばす。と、右手に触れる前に果名によって操られていた金属スライムはただの金属スライムに戻り、動かなくなった。
「……亜GEARだけでなくGEARも止められる……しかも実際に触れる必要はないのか」
「お、おい!いきなり何をするんだ!」
「悪い。そのキャンセラーって言うのがどこまでのものか見ておきたかったんだ。後で何か借りを返すから許してくれ」
「……ま、まあいいけども。とにかく急ごう。もしかしたら舛崎がピンチかもしれない」
「ああ」
それからまた走り出す。走ること15分程度。少しずつ戦いの音が大きく聞こえ始めてきた。
「……いた!舛崎だ!」
走りながら果名が単眼鏡で遠くを見る。およそ400メートル先に舛崎ともう一人隣に立つ少女が見えた。その正面には一人の青年の姿も見える。何か話し合いをしているようにも見えるが平和的な感じではない。
「相手がどんな力を使っているか分かるか?」
「今は戦っていないみたいだな。けど舛崎は怪我をしているみたいだ。……ん、もう一人増えたぞ!」


・広場。1時間と少し前、舛崎は今朝まで病気で寝込んでいた後輩の少女・落合美香子のリハビリがてら散歩に付き合っていた。
「すみません、先輩。付き合わせてしまって……」
「いいさ、美香子ちゃん一人で遠くまで歩かせてもし敵と遭遇したらやばいしな」
当然だがこの学園都市にはもう薬はない。怪我に効く薬なら少数あるそうだが病気はどうしようもない。衛生的にはどこも最悪。いつ誰がよく分からない病気にかかってもおかしくない環境だ。今回美香子がかかったのがただの風邪だったからまだよかったがもし重い病気だったなら助からなかったかもしれない。
仲間の須田郁美は死んでいない限りどんな怪我でも治せるみたいだが病気は別らしい。
やや美香子を気に掛けながら校舎の周りを散歩する舛崎。しかし、正面に人影が見えては雰囲気を変える。
「あんたは……伊藤秀吉!」
「舛崎世一か」
正面から姿を見せたのは伊藤秀吉。3つか4つ年上で学園都市でも屈指の実力者であり、実際いくつもの大きなグループを部下に持っている。このあたりでは帝王と言っていいカリスマと実力を持つ大川でさえ伊藤から見れば多少腕があって調子に乗ってるだけのガキに過ぎない。
「ど、どうして……!?」
「お前の名前を知っている理由か?意外と有名だぞ。人数を集めて、しかし積極的に行うのは戦いではなくそれを止める事。学園都市(このまち)では平均2,3人程度のグループが主だがお前達は20人を超えている。あの大川でさえ30人程度。それだけの力を持ちながらよく分からない行動をしている。その筆頭の内一人がお前だ。有象無象の個人集団ならともかく俺がお前を知らない道理はない」
「……」
「そしてどうしてここに一人でいるかと言われれば最近このあたりに亜GEARではない別の能力者が姿を見せていると言う噂があったからだ。大川の一派を買収して調査をさせているがその大川とも連絡が取れないんでな。俺自らが足を運んだと言う訳だ」
「……それで、俺に何をするつもりだ……!?」
「何もしない。と言いたいところだがいくつか質問をさせろ。舛崎世一、お前含めお前の仲間達は戦いを好まないらしいな。それ自体はこの時代だ。厭戦的な奴がいても不思議ではないし集まってもおかしくはない。だが、どうして戦いを終わらせるためとはいえ積極的に戦いに参加するのか。食料のためか?生活エリア防衛のためか?だったら女を使えばいいだろう」
伊藤の視線がわずかに美香子を映した。
「そんな手段俺は認めない。それに俺達は自衛だけが目的じゃない。本当に、この世界から戦いを、殺し合いをなくしたいと思っているんだ。知っているのか?ここだけなんだ、ここだけがこんな10代20代の若者が殺し合っている混沌の世界になっているって」
「絵空事だな。よもやそんな奴らが集まって集団を成しているとはな」
「……伊藤さん、この学園都市でトップクラスのあんたならこの世界を変えられるんじゃないのか?他のトップの連中に呼びかけて戦いを終わらせる事が出来るんじゃないのか?こんな不毛な戦いを終わらせて絵空事を現実に出来るんじゃないのか!?」
「絵空事は所詮叶わぬものだ。10人規模ならともかく100人規模の集団で意思の疎通を可能とするには最低限意志の共有が必要となる」
「それで世界中の人間が殺し合いなんかしなくても生きる事が出来るって知れば……」
「無理だな。数が多すぎる。いいか、舛崎。人間同士はどこまで馬が合おうとも分かり合うことは出来ない生き物だ。お前の言う通り争いを望まないものもいるだろう。平和と秩序を信じていきたいと思う者もいるだろう。しかしその中でも100%道が同じだとは限らない。平和と秩序を他人に任せてもいいと言う者もいれば自らの手で手綱を引かなければ気が済まないものもいる。前者だけでも集団は成り立たないし後者に限っては複数いればその時点で争いは避けられない。力なくして平和は勝ち取れないのだ。だから俺達は自分に逆らうものを全て殺しつくし、残った勝利者だけで平和を掴む。秩序を作る。……それでよければお前達の集団も俺の傘下に加えてやる。どうだ?」
「……」
「これを良しとしなければ……ん、」
伊藤が話を止めた。同時。何かが伊藤の脇をかすめた。
「ぐっ!!」
「先輩!!」
そして衝撃が舛崎の脇腹をもかすめる。
「随分面白い話をしているじゃないか、秀吉」
「……一縷……!」
伊藤の正面……舛崎たちの背後。柱の陰から一人の青年が姿を見せた。
伊藤秀吉に並ぶトップクラスの能力者(リーダー)である海藤一縷であった。

------------------------- 第107部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
97話「対峙」

【本文】
GEAR97:対峙

・舛崎と美香子を挟むようにしてにらみ合う海藤と伊藤。
「何の用だ?一縷」
「そう睨むなよ秀吉。何も今すぐ戦おうって算段じゃあない。1つ、提案があってな」
「提案?」
「そうだ」
海藤は左手を側面に伸ばした。するとその手の先から黒く輝くエネルギーの塊が出現し、外回りで伊藤に向かっていく。
「……」
対して伊藤は同じように右手から同じだけの質量のまったく同じ見た目のエネルギーの塊を放出して真向からぶつけ合う。
「くっ!!」
発生した夥しい光量と爆発が舛崎と美香子を吹き飛ばす。
「舛崎!!」
そこへ走ってきた果名と大が空中で二人をキャッチする。
「あんたは……黒主果名!?来てくれたのか!」
「ああ。それよりも……!!」
着地した4人は今もまだにらみ合う二人を視界の中心に入れて身構える。
「……何の真似だ?」
「秀吉、今お前は何%程度の出力だった?」
「何?」
「精々俺と同じで5%程度だろう。しかしそれだけでもこの破壊力だ。まあ、互いに本来干渉してはいけない相転移の力を使っているのだから当たり前だろうが」
「……何が言いたい?」
「……フォルテと言うプログラムを知っているか?」
「フォルテ?」
「そう。今から100年以上も前にこの学園都市に作られたプログラムらしい。そして、亜GEARと言う者を与える存在であるとされている」
「亜GEARを……?」
「秀吉、お前も亜GEARを与えられたあの日の事をよく覚えていないんじゃないのか?俺はここ半年を使ってどうやって人間に亜GEARが与えられるのかを調べてきた。そしてつい先日見つけたんだ。学園都市の人間に亜GEARを与える錠前のような存在を」
「……それがフォルテだと言うのか?」
「そうだ。学園都市のはずれにある木漏れ日ヶ丘学園にこんな言い伝えがあった。今から100年以上前に天死からこの学園都市を守るために特殊なプログラムを開発していた男子生徒と女子生徒がいた」
「……それが本当だとして俺にそんな話をして何をさせたい?」
「何、簡単なことだ。これ以上亜GEAR能力者が増えないように俺達の力でその木漏れ日ヶ丘学園を跡形もなく消し飛ばす」
「……そんなことをすればあそこのエリアを根城にしている奴らを敵に回すことになるぞ」
「それでも俺達ならばやれるはずだ。考えてもみろ、秀吉。俺達が殺し合ってどちらかがトップに立ったところでまた新しい世代が生まれる。戦いは終わらないんだ。だから……」
その時だ。
「しかし終わらせてもらっては困る」
「!」
声。そして目に見えない音速の何かが両者を弾き飛ばした。
「あれは!!」
果名が捕捉する。二人を吹き飛ばした上空に隼のような姿をした怪人が飛翔していた。
「スライト・デス!!」
「そうだ!俺の名はハヤブサーベル!!小賢しいガキどもめ、貴様たちの存在意義はただ戦って殺し合って俺達スライト・デスを楽しませる事だけだ!」
「何だあいつは……!?」
驚きながらも伊藤はエネルギー弾を発射する。しかし、ハヤブサーベルは簡単な飛行でそれを回避して再び音速に入り、手に持ったサーベルで伊藤の右足を切断する。
「ぐうう!!!」
「勝手に出歩いてもらっては困るのだよトップのガキがさ!!」
「こいつ!!」
海藤がエネルギー弾を放つ。しかし結果は変わらず海藤は脇腹を深く切り裂かれる。
「があああああっ!!」
「……まずい、あいつらは戦いを終わらせる懸け橋になる……!スライト・デスに殺されるわけにはいかない……!!」
「だったら俺が……!!」
舛崎が手を伸ばすがそれを美香子が止めた。
「美香子ちゃん……!?」
「駄目ですよ……あの二人でもまるで歯が立たない相手なんですよ?先輩が下手に挑発なんてしたら……」
「けど……!!」
「うるさいもっと小さいガキどもめ!貴様たちに用はない、死ね!!」
ハヤブサーベルが音速でこちらに迫る。しかしそれは途中に終わった。
「む、スーパープラズマー回路!」
「え!?」
「そこまでです!!」
ハヤブサーベルが動きを止めた正面。果名が背後を振り返ると、そこには脱臭炭を髪に絡めた紅葉が立っていた。
「あかはら・めもはら・らりろれはりぴょ~ん(棒)」
髪に巻いたスーパープラズマー回路がそのエンジンを開放し、エネルギーを噴き上げる。
「ぬ!」
「経営幼女戦士アカハライダー、相手が飛べようと平和の空を渡さないため只今見参!!」
「紅葉さん!!」
アカハライダーが跳躍し、その反応を上回る速度でハヤブサーベルに飛び蹴りを打ち込む。
「くっ!」
「大丈夫ですか!?」
後ずさるハヤブサーベルを尻目に果名に手を伸ばす。
「すみません……」
「他の方々を連れて逃げてください!」
「させるかぁ!!」
飛翔したハヤブサーベルがサーベルを向けてアカハライダーに迫る。
「紅葉君!さらなる変身だ!!」
突如マンホールから校長が出現してはシュールストレミングスの缶を投げる。
「ぬお!」
斬らないように思わずハヤブサーベルが刃先を反らすとアカハライダーがキャッチして髪に絡める。
「機神殻醒(きしんかくせい)!!バルトフォーム!!」
すると、アカハライダーのカラーリングが真紅から深い緑へと変わり、貝殻を模した装甲が両肩、両肘、両膝を覆い、背丈ほどもあるハンマーが具現化されてはその手に握る。
「姿が変わった!?」
「それだけだ!!」
ハヤブサーベルが刃を振るう。アカハライダーは回避も防御もしない。しかし、刃はナメクジのように動いた装甲によって受け止められ、防がれた。
「何!?」
「はあっ!!」
そして拳の一撃で刃がへし折られ、ハヤブサーベルは2歩を後ずさる。
そして、
「響輝奏光(ひびきそうこう)!!バルトロメガインパクト!!」
後ずさったハヤブサーベルに大振りに振り回したハンマーを叩きつけた。
「お、おおおおおおお……!!?」
打撃が命中し、衝撃が走る。しかし、破壊は生まれなかった。代わりに亀裂のようにハヤブサーベルの体を光が走り、そのまま氷砂糖のようにハヤブサーベルは消えていった。
「Follow the SUN!! Catch the SUN!!」
敵の消滅を見届けてからアカハライダーは脱臭炭もシュールストレミングスも髪から外して紅葉の姿に戻った。

------------------------- 第108部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
98話「集いし力」

【本文】
GEAR98:集いし力

・ハヤブサーベルを撃破して2時間。
舛崎、美香子、大、須田、果名、切名、借名、シン、愛名、ライ、伊藤、海藤は宝子山のアジトに集合していた。
この12人以外にも須田に支えられながら一人の少年が姿を見せていた。
「後藤一也だ。よろしく」
「これで全員かな」
椅子に座りながら宝子山校長が全員の顔を見た。
「まずはトリプルクロスの諸君。ここまでの顔ぶれを集めてきてくれて非常に感謝している。恥ずかしながら言葉もない」
「まさか果名君がツンデレだとは思いませんでしたよね、ダディ」
「そう言うわけではないですよ。実際先日ここを訪れた時には本当に助けになるつもりはありませんでしたから。でも、この数日でスライト・デスに対抗できる力と戦いを終わらせるための人員がここまで揃ったのだから動いてみてもいいと思いましてね」
「うむ。しかし、まさか伊藤君と海藤君まで一緒だとは……」
「俺はまだあなた方の力になるとは決めていませんよ、校長先生」
「傷が治っていないからな。ただ、治るまでは話を聞いてやってもいい。……そう思っただけっすよ」
伊藤と海藤はそれぞれ失った部分を応急処置されながら、しかし体力までは戻ってないからか床に座り込みながら話を聞いている。
「それよりもさっきのあれは何なんだ?」
「アレはスライト・デスと言う。宇宙からやってきた怪物だ」
「宇宙?確か空よりも上にある黒い海だったか?」
「実在したのか?」
「まさか。今時10歳にもなれば馬鹿な法螺だって分かるぞ」
「いや、事実だ」
校長は断言する。
「今から100年以上前には宇宙と言うのは常識だった。未だ人間が自らの足で踏みいれるには少し遠い場所だったが見る事だけならば誰にでも出来た。私も直接は見たことないが写真で何度か見覚えがある。……奴らは少なくとも40年以上前にはこの地球と言う星にやってきていた。そうして君達学生に亜GEARと言う特殊能力を与えては殺し合うことを条件にその命を保証したのだ」
「それが、スライト・デス?」
「そうだ。奴らは天死に紛れてこの地球上を支配している。もしかしたら天死と言うのもまたスライト・デスの一部なのかもしれない」
「……その天死に関しても詳しくは知らないのだけれど」
「天死と言うのは北西にあるデスバニア高原を主な生息地としている人型猛禽類の俗称だ。古くは地球の様々な文明に伝わっていた天使と言う存在に似た姿をしていることからこの名前が付けられた。奴らは亜GEARもなしに空を飛び、視界に入ったあらゆる動くものを一瞬で抹殺する。……君達が知らないのも無理はないが40年以上前は、学生同士が殺し合う時代よりも前は奴らがこの星の人間を見つけ次第次々と殺していったんだ。亜GEARなる物が流布されてからは少しは天死に対して抵抗も出来るようになった。だが、力も数も圧倒的に足りない。国家と言うものを破壊され、文明を壊され、人類にとって安寧となる科学技術の多くでさえも失われてしまった現代ではどうしたって奴らには適わないのだ。そして今では君達が知るように若者同士が生きるためとはいえ殺し合いを強いられている、自滅を強要されている時代だ。このままいけば人類は100年と持たずに絶滅し、この星は終焉を迎えてしまうだろう」
「……スライト・デスは?天死とかと違って表立って活動をしていないのにどうしてあなたがそれを知っている?」
「今から50年前に奴らが宣戦布告をしたのだよ。まだ紅葉君も生まれていないであろう時期だ」
その言葉に一斉に視線が紅葉に集まるが、脱臭炭を懐から出したので一斉に反らした。
「で、スライト・デスはなんと?」
「”貴様達人類は我々スライト・デスにとって家畜にも満たない低俗生命に過ぎない。依って今から我々が管理をする”と。後にも先にもスライト・デスが直接表舞台に出て何かをしたのはその時だけだった。その時既に天死が人類を襲っていたから多くの人々はスライト・デスと天死が相打ちになってくれればいいと思っていたが、全くその気がないところを見るに停戦協定を結んでいるか、最初からグルだったとみるのがいいだろう。それから私は40年以上も研究に研究を重ねて紅葉君をアカハライダーとしてスライト・デスと戦えるようにした。基本形態のプラズマーフォーム、接近戦特化のバルトフォーム、室内戦限定だが多数を一気に殲滅するためのヴラドフォーム。3つの形態を使い分けられるように改良も施した。だが、それから1年間。この1年で倒したスライト・デスは20体程度。未だ全く奴らの毒牙が絶える兆しは見当たらない。私ももう先は長くない。紅葉君や最近連絡の取れない後輩に技術だけを託して未練に散ろうと思っていた。その矢先だ。君達が集まってくれた。それに、海藤君はとても興味深い事を言っていたそうじゃないか」
「……木漏れ日ヶ丘学園のフォルテプログラムの事か」
「そう。亜GEARを学生達に与え、殺し合いの歴史を歩ませている謎のプログラム。それがある木漏れ日ヶ丘学園を何とかして制圧できれば人類の文明はとりあえず破滅からとどまることが出来るかもしれない。もちろんそれを行おうとすればスライト・デスの応戦が考えられるだろう。しかし、」
「1体2体じゃまず止められない。だから一気に数を出してくるか」
「そう。そこを一気に叩けば奴らの戦力を減らすことが出来るかもしれない。伊藤君と海藤君の亜GEARである相転移。これはうまく活用すれば人間相手どころかスライト・デスの怪人相手でも通用するだろう。スーパープラズマー回路で出せる出力を大幅に上回っている」
校長は地図を出した。そして現在地と思われる場所と木漏れ日ヶ丘学園のある場所に目印を置く。
「この移動用アジトは透明だ。多少の音は出るが目には見えない。これを使って多少時間はかかるが木漏れ日ヶ丘学園に向かう。到着後、スライト・デスの怪人が近くに目に見える形で存在するならば紅葉君、シン君、愛名君、ライ君で攻撃を開始。すぐには倒さず可能な限り時間を稼いでくれ。そうすれば5人を同時に1体2体で相手は出来ないだろうから増援を呼ぶだろう。そして増援がある程度来たならば合図を送ってもらい、伊藤君と海藤君が相転移を利用して木漏れ日ヶ丘学園を敵ごと消し飛ばす。上手くいけばスライト・デスに痛手をくらわせながらフォルテと言うプログラムの破壊も可能となる」
「……理想論過ぎるのでは?」
「ならば果名君。君は何を予想するかね?」
「まず第一に移動中に見つかる可能性。今までスライト・デスの怪人の多くは自ら行動するよりかは予め仕掛けられた場所で待機して足を踏み入れた存在に攻撃を仕掛けてきた。そしてそれは木漏れ日ヶ丘学園のある北東エリアに行けば行くほど多くなると考えられる。まったく目的地から離れた場所での接敵ならともかく学園の傍で発見された場合相手にこちらの目論見が気付かれてしまうかもしれない。そうなれば今はまだ木漏れ日ヶ丘学園にあると言う不確定ながらも確立としては0ではないフォルテの情報も移動されて無駄に終わってしまうかもしれない」
「……して?」
「このまま直接向かうのではなく二手に分かれようと思う。伊藤と海藤が木漏れ日ヶ丘学園を挟み撃ちに出来るようにそれぞれにスライト・デスへ対抗できる4人を二人ずつ割いていく。そのまま近くに行けば元々伊藤と海藤は敵対しているグループ同士なんだ。偶然フォルテの近くで行動しているだけと思われるんじゃないだろうか」
「しかしそれでは戦力が分散し、仮に複数体のスライト・デスを同時に相手にしなければならない場合厳しいのでは?」
「そこは少数精鋭の逆、数を利用させてもらおうと思う」
「つまりだ」
果名の提案。伊藤が口を挟む。
「俺のグループと一縷のグループが木漏れ日ヶ丘学園を戦場にドンパチするって言うシチュエーションにして俺達だけでなく大勢の部下も巻き込もうって寸法だな?如何にスライト・デスの怪人が強大でも数百人規模を同時に相手すればある程度の時間は稼げる。そうして俺と一縷、そしてスライト・デスに対抗できる主力メンバーが学園に突撃し、邪魔しに来た連中ごと相転移で学園を消し飛ばす、と」
「ああ、そうだ」
「賛成できないな。その作戦では確かに成功率は高くなったかもしれないが犠牲者が多く出るだろう。怪人が1体ずつしか出なかったとしても数十人の犠牲者は低く見積もって出る。それが何体も同時に来るのであれば下手をすれば全滅だ」
「……これが最後の戦いになるのかもしれなくてもか?」
「仮に作戦が成功し、フォルテの破壊とスライト・デスの主力の殲滅の2つを同時に成し遂げたとしよう。だが、疲弊した俺達の部隊で他のグループを相手するのは難しいだろう。戦いをやめるための戦いをするために必要な戦いにおける圧倒的優等性が失われるわけだからな」
「他のグループに見つかるまでどこかに隠れると言うのは?」
「人数が少なければ不可能ではないだろうがそれでは結局持ち直すことが不可能になる。多ければ隠れる事も出来ずに敵の襲撃に遭って犠牲が増える。それに、フォルテの破壊を提案し、賛同しているのは一縷の派閥であって俺達は賛成したつもりはない」
「戦いが終わらなくてもいいのか?」
「天下を取ればいい。……もし、この作戦に参加するのが俺達だけでなく他のトップクラスグループも一緒だと言うのであれば出し抜き、一強となるために参加したかもしれない。……今のままでは参加するメリットがない」
伊藤が杖をついて立ち上がった時だ。ドアにノック音が響いた。
「誰だ?」
一番近くにいた舛崎がドアを開ける。直後。
「ぐっ!!」
大きな手が舛崎の顔面をわしづかみにした。
「!」
身構える一同の前で姿を見せたのは異形の姿。吸血鬼(ヴァンパイア)や魔人(ドラキュラ)と言ったような風貌。青白い肌。
「随分面白い話をしているようですな」
「何者だ!?」
「その答えはもうあなた方は知っている」
「何!?」
「私の名はフォルテ。面倒を起こされては困りますので直接私が決戦に参りましたよ」
魔人フォルテが舛崎を締め上げたまま人外の笑みをうかべる。

------------------------- 第109部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
99話「魔人フォルテ」

【本文】
GEAR99:魔人フォルテ

・荒廃した旧都市部。乾いた風が吹き荒れるのが常の荒れ地。
「ぐっ!!」
舛崎がごみのように投げ捨てられ、横転を繰り返しながら10メートル以上先まで転がっていく。
「さあ、あなた方のお望みである私がこうして立っているのですよ?」
フォルテは演技じみた動きで両手を左右に広げながら外に出る。それにやや遅れる形で果名、切名、借名、シン、愛名、ライ、大、美香子が外に出た。
「俺も行く……」
「一也はまだ駄目!伊藤と海藤が行きなさい!」
「いや、治療薬がけが人に出撃命令出すなよ」
しかし須田に睨みつけられ、杖を突きながら二人も外に出る。
「どういうつもりだ?」
その果名の言葉で既に対話が始まっていた。
「何がです?」
「まず貴様は何者だ?どうして俺達の会話が分かった?どういうつもりで戦いを望む?」
「質問が多い男ですね。では丁寧に答えていきましょうか」
フォルテは背中を向けたままどこから出したのかティーカップに淹れた紅茶を飲み始めた。
「まず私は自己紹介をするまでもなくあなた方が話題にしていた亜GEAR提供プログラムのフォルテ。その行動体にございます」
「行動体?本体ではないって事か?」
「ええ。本体はあなた方の御推察通り木漏れ日ヶ丘学園にあります。そこから動かすことは不可能。ですので行動体となっているこの体で直接ここへ参ったと言う訳です」
「……どうして俺達の会話が分かった?近くにいたのか?」
「いえ。私はこの学園都市を完全なる支配下に置いています。なのでこの学園都市で起きたあらゆる出来事を全て認知しています。だので私が直接参ったと言う訳です。3番目の答えにもなりますがあの学園を消し飛ばしだなんてされれば困るどころの騒ぎではなくなるので」
「……」
果名は何度か指パッチンをしているが一切の効果はない。つまりこの敵もスライト・デス同様自分の能力は通じないと言う訳だ。
「どうして亜GEARをばらまいて学生同士の殺し合いをさせているんだ!?」
「スライト・デスがそれを望んでいるからですよ」
「何!?スライト・デスを知っているのか……!」
「ええ。私は元々彼らを迎撃するために作られた。しかし、私では彼らには勝てないと知ると素早くこの身を彼らの傘下に置いたのです」
「……スライト・デスの怪人でもあるのか……」
「さあ、質問は以上ですかな?滅びるまで永遠に殺し合う文明を続けるために、邪魔になりつつあるあなた方は始末しなくてはならない」
フォルテが振り向く。同時、2本のビームがその顔面に炸裂した。
「……」
伊藤と海藤が杖をついていない方の手で攻撃を行なっていた。直接激突させたわけではないため大きな爆発は起こらなかったが人間であれば間違いなく消し飛んでいた攻撃が顔面に命中した。しかし、
「相転移の亜GEAR。ほとんど文明のないこの時代での子供達には決して扱えないと思っていたのですがね」
フォルテはほとんどダメージを負っていなかった。
「通用していない……!?」
「言ったはずです。私はこの学園都市を支配していると。それは亜GEARも同じ。一度与えた亜GEARを奪うことは出来ませんがしかし、私にはどんな亜GEARも通用しませんよ」
「だったら!!」
今度は後藤が手を伸ばした。
「アウトホール!!」
伸ばした手の先、フォルテの眼前。その空間がねじ曲がっては歪み始めて周囲の全てを吸い込み始めた。
「……アウトホール。事前にチャージ期間を要する代わりに任意の場所に任意の広さと数のマイクロブラックホールを生み出す、A級亜GEAR。しかし、結果に変わりはない」
「……くっ、」
20秒間で発生した歪みは消えるがフォルテには一切の変化はなかった。否。
「では、本家本元の亜GEARをお見せいたしましょう!」
フォルテはまるで重力に縛られていないように真上に跳躍すると右手から火炎弾を、左手から電撃を同時に繰り出す。
「ちっ!!」
大が手を伸ばすと触れる前にそれらが同時に消滅する。
「む、」
初めて表情を変えたフォルテ。さらに、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
変身したスカーレッド、シュバルツが跳躍してフォルテに拳を叩き込む。
「ぐっ、」
「いてっ!!」
「どんだけ堅いんだ!!」
殴った手を庇いながら着地する二人の前でゆっくり地面に降りながらフォルテが打点を押さえていた。
「亜GEARではない力?手前二人はソウルプラズマーだろうが……」
フォルテの視線は手前の二人ではなく大に向けられていた。それを覆い隠すようにスカーレッドとシュバルツが次々と攻撃を加えていく。
「オラオラオラオラオラオラアアアアッ!!!」
炎と電気が纏われたパンチやキックが次々と打ち込まれてわずかずつだがフォルテが後ずさっていく。しかし、数秒後に放たれたエネルギーが両者を吹き飛ばす。
「ぐうう!!」
「……この二人はまだ全然脅威ではない。むしろ、」
フォルテは先程の10倍以上の質量の火炎弾を7つ繰り出しては大に放つ。
「何度やったって!!」
大が手を伸ばすと7つの火炎弾がすべて一瞬でかき消される。
「……GEARでもない……のか……?」
フォルテは地を蹴って大に急接近した。そして彼の反応以上の速度で顔面をわしづかみにする。
「くっ!!」
「消し飛べ」
その状態で相転移エネルギーを集約。大の体を液体へと変えていく……が、変化は一切訪れなかった。ばかりか、
「らあああああああああああああああああ!!」
その状態で放たれた大の右パンチがフォルテの顔面に命中し、数秒程フォルテは全機能が停止して後ろに倒れる。
「……大の攻撃の方が効いているのか……!?」
驚く果名。その視線の先でフォルテは立ち上がる。
「……一体何だ奴は……!?亜GEARを無力化するだけでなく私の機能まで……!?」
「……何だか分からないが通用するんだったら!」
大が拳を固めて走り出す。しかし、加速に入る前に果名がその肩を止めた。大が振り返るより前にその眼前を10メートル以上の岩石が落下した。
「……これは厳しいんじゃないのか?」
「……」
大は答えない。すると、
「ならば!!」
フォルテがその岩石に拳を打ち込むと岩石が無数の小石に砕けてショットガンのように二人に向かって飛んで行く。
「危ない!!」
舛崎が手を伸ばすと、まるで上から蓋をするように小石がすべて勢いを殺されて地面に落ちる。
「ぐっ!!」
「もう一丁!!」
身構えるフォルテ。しかし、僅かに早く大の拳がその胸に叩きこまれる。
「があああああ……!?」
脳を走るノイズ、意味不明解読不能……!再び無抵抗のままにその巨体が後ろに倒れる。
「今のうちに!!」
スカーレッドとシュバルツが炎と雷を放射し続ける。10秒ほどしてフォルテが炎と雷をバリアのようなもので押し戻すと、
「おらああああああああああああああ!!」
そのバリアを防いでいる炎と雷ごと打ち消して大の拳がフォルテの顔面に直撃。三度その巨体が地面に倒れ伏す。
「…………」
今度は何秒経ってもフォルテは起き上がることなく、そして60秒経過すると体に走ったノイズと共に消滅した。
「……倒したのか……?」
「本体とは別って言ってたから死んではいないだろう。だが、退けたことに違いはない」
果名の言葉でスカーレッドとシュバルツは変身を解いて脱力嘆息。
「あいつ、かなり強いな」
「ああ。俺達の攻撃がまるで通用しなかった」
「それだけじゃない。奴が一度使用したのは相転移の亜GEARだった」
「他にもいくつか亜GEARのようなものを使っていた。もしかしたらあいつは他人に亜GEARを配るだけでなく自らもいくつもの亜GEARを使用可能なのかもしれないな」
「だったらどうして大の攻撃だけ通用したんだ?無力化の亜GEARとかじゃないのか?」
「……俺はあいつから亜GEARを受け取ったりなんてしていない。気付いたら亜GEARとか全部打ち消せるようになっていたんだ」
「……じゃああいつ自身も何かしらの亜GEARって訳か?」
「いや、違うだろう」
果名が一歩前に。
「こいつが無力化できるのは亜GEARだけでなくGEARもそうだ」
「GEAR?」
「そうだ。世界って言う大きな舞台装置を動かすための歯車。その歯車として本来全ての人間が背負っているはずの運命の力の事だ。名前からするに亜GEARって言うのはGEARの偽者。まあ、あのフォルテって奴が作って与えているんだから当たり前だがな」
「……それで?」
「あいつ自身は亜GEARではない。だがGEARに関係しているのは間違いない。……まあ、こいつがいれば何とかなりそうってのに変わりはないけどな」
そのまま歩きながら膝を折ったままの舛崎に肩を貸す。どうやら足を挫いているようだった。
「けど、亜GEARが通用しないんだったら木漏れ日ヶ丘学園を相転移で消し飛ばしたとしてもあいつだけは残ったりするんじゃないのか?」
「いや、もしそうだとしたらあいつがわざわざ邪魔をしに来るとは思えない。だからどのような作戦かの違いはあれど木漏れ日ヶ丘学園に向かうこと自体は確実だな。そしてそれは急いだ方がいいかもしれない。頻度は不明だがあいつはまた必ず甦る。そうすれば大に関する情報がスライト・デスにも伝わって確実に対処をとってくる。さっきのでGEARも亜GEARも関係しない直接的な物理攻撃は無効に出来ないって知られている可能性もある。あいつだけでなくスライト・デスの怪力ならばそれだけで容易に殺せるだろうからな」
全員一度室内に戻る。
「それでどうするのかな?」
「全速力で木漏れ日ヶ丘学園に。最悪途中のスライト・デス怪人は無視してでもいい」
果名の言葉を合図にアジトは急発進を遂げた。

------------------------- 第110部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
100話「秒晶、二人のアカハライダー!!」

【本文】
GEAR100:秒晶、二人のアカハライダー!!

・完全に機械と言う概念が失われた世界においてそれは奇妙と言う他なかった。
「ぎゃああああああ!!!」
「ぬぐああああああああああ!!」
「どぅれじれぐれがれっがぁぁぁぁぁっ!!!」
たくさんの悲鳴が脇に連なる。そのまま突き進み続けて24時間。
「まさか自動車があったとはな」
果名が窓から外の様子を見る。
「ほう、果名君はこいつが何か知っているのかね?」
「自動車(キャンピングカー)だろ?長期の旅に相応しい多重人乗りの大型自動車両。しかもどういうわけかステルス機能付き」
「ご名答。既にこのような技術は40年前にはもうほとんど残っていない筈だがもしや十路川の方には?」
「それもそうだがこないだデスバニア高原で見た。って言うか俺自身が移動手段にバイクを使っているからな」
「……ひょっとして学園都市以外ではまだそれほど文明は無事だったりするのかね?」
「……いや、文明がないわけではない。だが、学園都市とは似たようなものさ。グレートシティじゃ天死に殺されて奴らの傀儡となった首無し人間が海のようにたくさん蠢いているし、デスバニア高原じゃX是無ハルトの家くらいしか無事なのはない」
「…………では、セントラル軍は?」
「軍領地には入ったことないが恐らくだんまりでしょうね。ここまで世界情勢が変わってるのに一切動いていないんだ。既に皆殺しにされているか或いはフォルテのように何かしらの条件を付けて従っているかのどちらか。もしかしたら俺達がこのままフォルテの撃破に成功して学園都市の開放に成功したとしても味方として動いてくれるどころか次に俺達の敵として動くのは奴ら、セントラル軍かもしれない」
「…………思った以上に深刻な状態だな。一体我々地球人が何をしてしまったと言うのだろうか」
「……110年前の第三次世界大戦」
「!!!」
一瞬だけハンドルが切られ、車体が傾く。
「……君は、知っているのか!?あの戦争を!!」
「流石に直接見たわけじゃないですけどね。十路川には結構そういう歴史的文献が流されていたりするんです。それで見たんだ。30年以上も長く続いた戦争があったと。それが第三次世界大戦。20の国家が滅んだ歴代最悪級の戦争。地上のほとんどが海に沈み、残った僅かな陸地がこの大陸となった。……宝子山先生はどうして?」
「……父親が参戦していたと聞く。会ったことはないがそのさらに父親、私にとっては祖父と一緒に。……私が子供だった頃にはもう戦争は終わっていた。だが、未だ全く復興の兆しが見られない状態だった。全世界にばらまかれた放射能の除去がやっと終わっていざ復興出来るかどうかと言う時期に奴らが姿を見せたから……」
「……そうですか」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅんがらがらがらぎゃああああああああ!!!」
何度目かの悲鳴が湧き上がり、窓の淵に血痕がこびりついてはワイパーで片付けられる。


・木漏れ日ヶ丘学園。
「ぐがっっっっ!!!」
頭から血を噴き出して半裸の男は倒れた。
「……大丈夫?」
「……うん、大丈夫」
拳銃(デザートイーグル)を下ろす少女と倒れた男の前に全裸で立つ少女がいた。
「ごめん紀香。こんな役ばかりやらせて」
「いいよ、詩吹。初めてはちゃんと取っておいてね」
全裸の少女・紀香が詩吹から受け取った服を着なおす。
ここに身を寄せてから半年。何故かここにはほとんど敵がやってこない。だからか非好戦的な自分達が身を隠すには最適な場所だった。しかしそれでもたまに今のような敵はやってくる。そう言う場合には紀香が自分の体を使い、油断したところで詩吹が拳銃で射殺する。この戦法を使いこの半年で7人の敵を倒してきた。デザートイーグルの残弾は3発。それが尽きてしまえばどうなるかは分からない。詩吹は最悪の可能性として右手首のブレスレットを見やる。
「駄目だよ詩吹。それはちゃんとふさわしい相手に取っておかなきゃ」
「でも……」
「大丈夫だよ。最悪の場合セックスしてる間に私が相手の首を絞めて殺すからさ」
紀香は詩吹の首の手を伸ばす。しかし実際には締めずに肩を掴んで抱き寄せた。
「嗚呼、いい匂い。女の子はやっぱりこうじゃないと。男は本当臭くて仕方ないよね」
「……まあ、外だとあまりお風呂にも入れないみたいだからね」
ちょっと照れくさくて詩吹はそっぽを向く。そしてその方向。窓の外では異形が歩いていた。
「ちっ、このあたりにいるはずなんだがな」
両手がドリルで出来た像のような姿をした怪人・ドリルファンだ。
ドリルファンが歩いていると偶然曲がり角から少年少女が出てきてバッタリ。2秒と掛からずに二人はドリルで胴体をずタズタズタにされて死亡した。
「……女が二人組。こいつらじゃあないな。何よりあっさりしすぎだ」
「何をお探しかしら?」
「んあ?」
ドリルファンが声の方に視線を向ける。と、スカートをなびかせ、窓淵に詩吹が立っていた。その右手首にブレスレットを輝かせながら。
「ジャックオン!!!」
そして掛け声を飛ばすとブレスレットが赤く輝き、その姿が変わる。
「アカハライダー!!」
変身を終えた詩吹は4階から飛び降りて、空中でブレスレットを刃に変えて投げる。
「貴様か!」
ドリルファンはドリルでそれを弾き飛ばす。しかし、数秒後に弾いた右腕のドリルが4つに切断された。
「何!?」
「ランスアタック!!」
そして帰ってきた刃を大きな槍に変えて詩吹は落下の勢いのまま槍をドリルファンに叩きこむ。
「ぬうううううう!!!」
左腕のドリルで防いだが一瞬と持たずに破壊され、そのまま槍はドリルファンを貫通。
「成敗!!」
石突を自らの左腰に当てて自分の体を支柱にした梃子の原理で槍を振り回し、ドリルファンを左の空に吹き飛ばし、ドリルファンは空中で大爆発した。
「……やっぱり詩吹の力はスライト・デスに取っておかなきゃね」
爆発を見届けた紀香。しかしその目は他の何かをとらえた。
「詩吹!危ない!!」
「!!」
振り向く詩吹。そこへ何かが突進してきた。
「ブルタウロス!!」
「くっ!!」
ウシ型の怪人だった。ブルタウロスの突進を受けた詩吹は地上5メートル以上を20メートル以上も吹き飛ばされる。肉体的なダメージはそこまででもないがそれでも体格の違い、パワーの違いから生じた激痛に詩吹の意識が遠のき始めたその時だ。
「あかはら・めもはら・らりろれはりぴょ~ん(棒)」
気の抜けるような幼くて可愛らしい声。しかし次の瞬間には勇敢な声に変わっていた。
「経営幼女戦士アカハライダー、ドッペルゲンガーに若干びくりながらも只今見参!!」
「え、」
詩吹が目にしたのは自分とほとんど同じ姿をした少女だった。吹き飛ばされる自分を空中で受け止めてから華麗に着地。
「大丈夫?」
「あ、はい」
「私はアカハライダー。あなたは?」
「……アカハライダー」
「そう。私もあなたもアカハライダーなのね。だったらダブルアカハライダーでスライト・デスに挑みましょう!」
「……は、はい!」
二人のアカハライダーが立ちあがり、ブルタウロスを前に構える。
「女が二人……なるほどこいつがスライト・デスに逆らう愚か者だな!!」
認めるや否や突進するブルタウロス。
「たぁっ!!」
跳躍したアカハライダー。加速する前のブルタウロスの目前に着地して足払い。
「ぬ!」
バランスを崩したブルタウロス。そこへ詩吹が投げた刃が突き刺さり、脳天から血の噴水を放つ。
「がああああああああっ!!!」
「今だ!」
再び跳躍のアカハライダー。右足に脱臭炭を装着し、スーパープラズマー回路のエネルギーは右足を包み込む。
「稲妻重力落としいいいぃぃぃぃぃぃ!!!」
形容するならば赤い稲妻の刃。それが脳天から放たれてブルタウロスを両断する。
「ぐああああああああああああああああ!!!」
アカハライダーの右足が地についたと同時、彼女の頭上でブルタウロスが大爆発する。
「Follow the SUN!! Catch the SUN!!」
ポーズを決め、変身を解除すると同時に同じく変身を解除した詩吹が飛び込んできた。
「へ?へ?」
「や、や、やっと会えたよ~!!!」
涙ぐみながら押しつぶさん勢いで紅葉に抱き着く詩吹。
「……どういう状況?」
窓から見下ろす紀香。すると、いつの間にか隣に一人の巨大な少女がいた。
「ひっ!?」
「あ、別に怪しいものじゃないんで。彼女の仲間です。須藤(すどう)発(あきら)って言います」
言うや否や発は紀香を抱えると窓から飛び降りた。
「きゃああああああああ!!!」
4階から飛び降り、悲鳴を上げる紀香だが悲鳴が終わる前に発は無事着地。
「あ、発さん」
「紅葉先生、生き残りを回収しました。ほめてほめてー」
「あ、はい。いい子です。……それで、この子は……」
「紅葉君、アジトへ連れてきてくれ」
「あ、はい。ダディ」
無線を受けて4人が車内へと戻る。


・アジト車内。
詩吹と紀香は紅葉と校長に事情説明をしていた。
「なるほど。彼が君にそのスーパープラズマー回路付きブレスレットを託したのか」
「はい。私も昔父から聞かされていた高名な教授の方に会えるとは思っていませんでした。改めまして、赤原詩吹と申します」
「落合紀香です」
「赤原紅葉です。詩吹ちゃんも紀香ちゃんもずっと二人きりで大変だったでしょう。私達はちゃんと味方ですので安心してくださいね」
「は、はい」
「それでいきなりで悪いんですけど質問いいですか?」
「はい、なんですか?」
「学園の中の様子についてです。私達はフォルテって言う亜GEARを人間に与える存在を探していてそれがこの学園内のどこかにあるはずなの。聞いたことないかしら?」
「フォルテ、ですか?聞いたことないです」
「すみません。私も」
「そうですか。ダディ、どうしましょう?」
「あれから26時間使ってしまった。フォルテが復元されていてもおかしくはない。仕方ない。伊藤君と海藤君に出張ってもらうしかないな。彼らにここを爆撃してもらおう」
「え、あの、爆撃ってそれは困ります!」
「どうしてかね?」
「この学園内にはまだ人が残っているんです!」
「人?でもあなた達二人だけじゃなかったの?」
「私達も会った事はないんですがここの施設の管理人がいるらしいんです。その人達に知らせないと……」
「……ダディ、」
「ああ。みんなを集めてくれ。3時間のブリーフィング後に学園内に突入してその管理者のところへ向かおう。きっとそこにフォルテがいる」
校長の視線は学園に向けられていた。

------------------------- 第111部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
101話「突撃作戦開始」

【本文】
GEAR101:突撃作戦開始

・透明な車内。
校長を中心に、紅葉、詩吹、舛崎、後藤、大、伊藤、海藤、シン、果名が作戦会議に参加する。会議そのものの前に詩吹に対して経緯や事情が説明された。
「……この戦いを終わらせられるんですね」
「ああ。幸か不幸か当初通りの一丸戦法で目立った損傷もなく我々はここまでやってこれた。……今日、ここで終わらせる。少なくとも学園都市でのスライト・デスの支配は終わらせなければならない」
校長は木漏れ日ヶ丘学園の見取り図を出して睨みつけた。
「そろそろフォルテを通して我々の目的や現在地が知られていてもおかしくはない。先程は3時間後にと言ったがそれでは遅すぎる。紅葉君たちスーパープラズマー回路は3時間のインターバルが必要だがシン君たち3人はインターバルが必要ではない。校内の狭い空間なら怪人たちも数は出てこないだろう。3人で十分突破できるはずだ。場合によってはこの3人に足止めを頼み、その間にそれ以外のメンバーはこの管理人室を目指す。フォルテが相手ならば大君がいれば問題ないはずだ」
「まあ、俺だけでどうにかやるわけじゃないだろうしな」
「物理攻撃とかに関しては俺達がサポートする」
「ただ校長先生。1つ、気になることがあります」
「何かね?」
「今回の作戦、ほぼすべての戦力を投じるわけですがそれだと校長先生が無防備になってしまうのでは?」
「……なに、私なら問題ないさ。一応先程古い友人に声をかけておいたからな。もしかしたら間に合うかもしれない」
「……校長……」
「さあ、そろそろ作戦を開始したい。みんなを集めて外に」


・車内の別室・女子部屋。桜子、燦飛が食器を洗っている。その後ろ。
「……」
「……」
紀香と美香子が重たく暗い表情をしながらちゃぶ台を挟んでいた。
「……生きてたんだ、美香子」
「……うん。もう私しか残ってないけど。お姉ちゃんは?」
「私はあれから6年間色んなことがあったよ。3年前には妊娠して子供産んで、死にそうになって、詩吹と出会って、それからずっと二人で生き延びてきた。私の亜GEARは一人じゃ役に立たないから、こんなに長く生き延びるとは思ってなかった。……まだ12歳の妹に言う言葉じゃないかもしれないけれど、美香子」
「?」
「相手が人間の男で、いざとなったら服を脱ぎなさい。一か八かだけど命だけは助かると思うから」
「……」
美香子は黙ってお茶を飲む。紀香もまた黙ってお茶を飲んだ。すると、そこに須田がやってきた。
「そろそろ作戦が始まるみたいだけれどもみんなはどうする?私は一応行くつもりだけれど」
「……私は道案内も必要だと思うから行こうかな。……でも美香子は残りなさい」
「どうして!?」
「これから行くところはかなり厳しくなるわ。あそこは昼夜関わらずスライト・デスって言う怪物がうろついているのよ。あなたはまだ未来がある。お姉ちゃんとは違ってまだ女の子として幸せを掴めるかもしれない」
「でも、お姉ちゃん達が行くのに美香子だけ残るなんて出来ないよ!」
「ただ残るだけじゃないの。あの校長って人を守る役目もあるわ。それでもいざとなったらあの人を連れて逃げなさい」
「……でも、」
「あなた達、この子を、妹をお願いしてもいいかしら?」
紀香の手は美香子の肩に、紀香の目は桜子と燦飛に。
「……分かりました」
「ですが必ず戻ってくださいませ」
「……ええ。約束するわ」
「……お姉ちゃん……」
美香子が伸ばした手を紀香は掴まなかった。


・車外。学園の門前。怪人マグロードがあくびをしながら不良のように座っている。
「侵入者が来るかもしれないって心配性だなぁ」
「いや、懸命だったと思うぜ?」
「あ?」
声。マグロードが振り向いたと同時、
「はあああああああああああ!!!」
「やああああああああああ!!」
「せえええやああああああああああ!!」
スカーレッドの拳、エンジェルの刃、シュバルツのキックが同時に炸裂し、マグロードの体が宙を舞う。
「があああああああああああ!!!」
そして大爆発……した直後に後藤が空間に穴をあけて爆発ごと異空間に吸い込んで消滅させた。
「予想通りあまり音は出なかったな」
後に続く果名、切名、借名、舛崎、後藤、須田、大、紅葉、詩吹、発、紀香。既に伊藤と海藤は所定の位置に潜んでいる。
14人がなるだけ音を消して校舎の中に入る。既に何度も地図に目を通していて道順はばっちり頭の中に入っている。
「ん!?」
「はああっ!!」
曲がり角で偶然遭遇した怪人も何かする前に先頭の3人が攻撃し、爆発すると音や炎が広がる前に後藤が吸い込む。階段に差し掛かったところで上下から2体同時に来た時は片方を3人が瞬殺し、もう片方は果名が黒龍牙をその喉元に突き刺して、もう片方の爆発とともに後藤に吸い込ませた。
「シン、今更だがその姿に制限時間とかはないのか?」
「分からない。けどまだまだやれるぞ!」
一戦終える度に紅葉が校長宛に合図のメールを送る。無事の合図と受信地点から現在地点を把握するのにちょうどいいからだ。
同時に次に変身できる時間がいつかも確認する。
「……まだ135分ある……」
道順通りなら管理人室にはあと15分もあれば到着する。途中で怪人との戦いがあってもこの調子で進めば30分はかからないだろう。室内だからヴラドフォームを使えば遭遇していない敵すら一気に殲滅できて楽なのだがあのフォルテ相手には通じるかどうかわからない。
「……ん!」
そして走ること15分。管理人室の前に到着した。しかし、扉の前には全身甲冑を着込んだ2体の怪人、ウデーモンとサデーモンが待ち構えていた。
「ここから先を通すわけにはいかない」
「次第に増援も来る。諦めるがいい」
「そう言って怯んでいられるか!」
「行きましょう!」
「おう!!」
3人が走り出す。
「うおおおおああああああ!!!」
絶叫のような雄たけびを上げて床を蹴って跳躍したスカーレッドがウデーモンにパンチ。しかし、ウデーモンはそれを容易く受け流し、着地寸前の腹に膝蹴りを打ち込み、スカーレッドの重心を押し戻す。
「ぐぶっ!!」
「我々を他の下級怪人と一緒にするな!」
宙に浮いたスカーレッドの肩を掴んでそのまま壁に向かって投げ飛ばす。
「シン!!」
壁にぶつかる直前にエンジェルがスカーレッドを受け止める。
「きゃ!」
「悪い、愛名、大丈夫か!」
「うん!」
「戦場でいちゃつくな!!」
ウデーモンがどこからか槍を出して二人に襲い掛かる。
「シン!!」
それをエンジェルが刃で受け止め、
「ああ!!」
スカーレッドがすかさず飛び蹴りを放つ。それに合わせてシュバルツがサデーモンを投げ飛ばし、空中で2体の怪人が激突する。
「はあああっ!!!」
「うおおおおおお!!!」
そして倒れた2体に向かって二人が炎と雷を飛ばす。
「動けない今ならば!」
後藤が攻撃を受けて怯んでいる2体に向かってアウトホールを発動。その異形を亜空間へと吸い込んでいく。
「ぐっ、亜GEARごときで……!!」
床に槍を突き刺して耐える2体。その間も地獄の吸引力と炎と雷とが襲っている。
「後押しだ!!」
果名が黒龍牙を引き抜いては衝撃波を飛ばし、舛崎が重力の塊を放射。そのすべてを受けた2体はついに穴の中に吸い込まれて爆発すら起きずに消滅した。
「……次か!」
果名が気配を感じて後ろを向く。
一本道の廊下。横3列縦20人以上と言う多くの影があった。先程門番の二人が言っていた増援だろう。
「アレを相手にするのか……」
「狭いから一気に相手にするわけじゃないと言うのがまだましだがな」
「……じゃあ当初の予定通りにシン、愛名、ライ。任せていいか……!?」
「ああ!!」
返事。それを聞いて果名達はついにフリーになった管理人室の中に入る。扉を開けると正面にはまた扉の細い道。扉を閉めてから前に進み、2つ目の扉を開ける。そこはこの大人数がギリギリ入れる程度の狭い空間だった。いや、部屋の面積自体はもっと広いのだがその大部分を見たこともないような機械の数々が占めている。そしてその部屋の中央。2メートルほどのサイズの試験管のような2つのカプセルにそれぞれ裸の少年と少女が入って浮かんでいた。
「……これは……」
カプセルの前にあるパソコン。そのキーボードに果名が触れる。初めて見るはずなのに触った事もないはずなのにその指はキーボードを正確に叩き始めた。画面にはパスワード入力画面が映し出されていて果名が打ったのはそのままpasswordだった。入力を終えるとcompreatの画面になり、カプセルから起動音が流れては中の二人が一瞬輝くと裸体から古い制服姿になり、次の瞬間にはカプセルの前、パソコンの左右に彼らが移動して立っていた。
「あんた達は……」
「俺の名は桝藤(ますふじ)灯(あかり)」
「私の名前は辻原(つじはら)泪(なみだ)って言います」
二人は目を開けて自己紹介をした。

------------------------- 第112部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
102話「終焉にして原初」

【本文】
GEAR102:終焉にして原初

・カプセルから出た二人。小柄ではあるが同年代に見える舛崎たちと比べてかなり健康的に見えた。
「さて、久々に目を覚ました気がするな。今は平成何年だ?」
「平成?」
「あん?」
桝藤の質問。舛崎は首をかしげる。
「平成ってなんだ?」
「いや、元号だけど。じゃあ西暦何年だ?」
「……???」
「おいおい、未来のはずなのに原始時代にでも戻っちまったのか?」
「待って灯。……ねえ、第三次世界大戦はまだ続いていますか?それとももう終わってますか?」
「第三次世界大戦なら100年前に終わってるぞ」
「……100年以上も未来の世界なんだ……」
「……君達はあの戦争よりも前の時代から眠り続けていたのか?」
「ああ、そうだ。ある日突然空からカードが降ってきたり天死とか言う化け物が飛んで来たり時間を止めて人間を食うダハーカって
怪物が現れたりで飛んでもなかったんだ」
「……カード?ダハーカ?」
「知らないって事は天死はともかくその2つはもうクリアした問題なのか。まあともあれだ。俺達には発明のGEARがあったからな。それでそいつらのような宇宙からの脅威から地球を守るためのプログラムを作ったんだ」
「……って事は君達がフォルテの開発者か!?」
「お、フォルテを知っているのか。アイツどうしてる?ひょっとしてダハーカを倒したのはフォルテか?」
「……人類を破滅に脅かす存在スライト・デスの幹部として絶賛死闘中だよ」
「……は?」
「フォルテが人類の敵になったんですか!?」
驚きの二人に、果名は手短にこれまでの経緯と事情を話す。
「……あいつ、何馬鹿な事をしているんだ」
「それより君達さっき発明のGEARって言ってたがGEARを知っているのか?」
「ん?ああ。戦争が始まった頃からセントラル軍が一般人に対しても健康診断とかの要領でそいつが持っているGEARが何かって調べて教えてくれるんだ。戦いに有用なGEARだったら兵士として徴兵令させられるし俺達みたいな技術の発展に必要な奴だったらこういう研究機関に回される」
「ですが私達は突然空が降ってきたカード……ナイトメアカードやダハーカ、天死が宇宙から来たんじゃないかって仮説を立てて宇宙観測マシンを作ったんです。そしたら70年後に宇宙からの脅威が地球を支配するかもしれないことが分かったので地球防衛マシンとしてフォルテを作ったんですが……」
「何か理由があるかもしれないが敵に回ってる。ばかりか40年以上も学生たちに亜GEARって言う能力を与えては殺し合わせている」
「……そうなんですよね」
「だが、あいつが俺達をここに来させたくなかった理由の1つが分かった。……一応の開発者(おや)である君達を守るためだな。君達はどうしてここで100年以上も眠っていたんだ?」
「そりゃ戦争も宇宙からの脅威もごめんだったからだ。ここならフォルテが絶対に安全だって教えてくれたから、じゃあ戦争も終わって地球が平和になってから起こしてくれって頼んで俺達はコールドスリープに入ったんだ」
「……そうだったのか。……で、俺達はフォルテの破壊に来たんだ」
「待て。一度俺達にフォルテと話し合わせてくれないか?何があったのか聞きたいんだ」
「もしバグか何かが発生しているのだったら私達で直します。だから……」
「……分かった。だけどあまり時間はない。なるべく早く済ませてくれ」
言葉を受けてから二人は後ろの機械を動かし始めた。
「来い、フォルテ!!」
桝藤の言葉。それに反応してか一瞬部屋が眩く輝いた。そして次の瞬間には桝藤達の前にフォルテが立っていた。
「フォルテ……!」
果名達はわずかに身構える。


・校舎の外。
待機組が息苦しく重たく報告がまだかと待ち続けている。窓の外には見える限りでも3体のスライト・デス怪人が近くを歩いているのが見える。ステルスを使っているために何もしなければ見つかる可能性は低いがそれでも時間の問題だろう。
「……」
何度目か、校長が重苦しい息を吐く。
「……」
そんな中、桜子が下半身をもじもじさせていることに気付いた。十中八九尿意を催しているのだろう。この時代、トイレがまともに機能している場所は少ない。この自動車(アジト)でも一応トイレの配備はされているがまったく無制限に無限に自由に使えるわけではない。いつもの何倍もの人数且つこの30時間近くにも及ぶ強行作戦で排泄物をためておく下水管が既にパンク寸前の状態になっていた。だから現在トイレは封印状態にあり、催した場合は外でしてもらうしかない。しかし現在はこの状況だ。普通に外に出て歩けば速攻で見つかるだろうし見つかれば殺されるだろう。かと言って透明になっている車体ごと動かせばやはり音を立てる以上見つかってしまう可能性は格段に上がってしまう。それに、いつ本陣(もみじたち)がどんな事情で戻ってくるとも知れない。それなのに車を動かすのは正直厳しいだろう。
「……仕方ない。一人分だけなら問題ないだろう」
「え?」
「……行ってきなさい。それくらいは問題ないだろうから」
「あ、はい。ありがとうございます!」
「静かにね。音までは消せないから」
校長の言葉を背に桜子が退室してトイレに走る。そして用を足していると、
「ん!アンモニアの臭いだ!」
怪人・ピラニアックスが嗅覚を発動させた。そして臭いのままに車に近付いていく。
「気付かれた!?」
「っ!」
身構える校長。美香子は歩み寄るピラニアックスの足元に水たまりを発見するとそれを操作してピラニアックスの足を掴んで止める。
「ぬ、掴まれている?人間の亜GEARか!近くにいるようだな」
しかしこともなげに水の拘束を打ち破りピラニアックスは口笛を吹く。と、奥の方を巡回していた2体の怪人、コウモリザードとカバーニングがこちらに向かって歩いてくる。
「どうかしたのか?」
「近くに人間がいる。大して強くない拘束系の亜GEARを使うようだ」
「ふん、だったら自分ひとりで何とかしたらどうだ?」
「……いや、一人ではないようだ」
コウモリザードが耳を澄ませる。蝙蝠のものと同じ超音波で周囲の物体位置を正確に探り、ついにはステルス状態の車と中にいる校長達4人の姿を確認した。
「4人いるな。しかも中々の技術力だ。広いスペースと移動力を持つ。……まさか中で暴れている奴の仲間か」
コウモリザードはまっすぐ窓を挟んで校長を睨みつけた。
「まずい!」
校長はエンジンを入れる。その音で他2体も車の位置を見つけた。
「逃がしはしない!!」
「人質になってもらうぞ!」
ピラニアックスがタイヤを掴んで回転を止め、カバーニングが炎を吐いて車体を燃やす。美香子が周囲の水を集めて火の気をどうにかしようとしているが焼け石に水だ。
「脱出だ!!」
校長の指示で車の後ろの方のドアから4人が脱出する。ピラニアックスとカバーニングはまだ気付いていない。しかし、
「俺から逃げられると思うな!」
飛来してきたコウモリザードの前には無力だった。
「君達は早く逃げるんだ!!」
叫んだ校長は着地したばかりのコウモリザードにタックル。そのままもつれこんでは何度も地面を転がる。
「ふん!!」
膝の上に相手の右腕を置き、相手の右手首に両手を置き全体重を込めて関節を決める。
「小賢しい!!」
コウモリザードは左手の爪で校長の背中を切り裂く。
「ぐううううううううううう!!!」
血を噴き上げながらも校長はその痛みを利用した力でついにはコウモリザードの右腕を折ることに成功する。さらに相手の左手を掴んで背負い投げる。
「いたぞ!!」
そこでもう2体が走ってくる。
「動くな!!」
距離5メートルのところでコウモリザードをコブラツイストにして叫ぶ。
「動けばこいつの首をねじ切ってやるぞ。学園の中に戻れ!」
「そんな姑息が我々スライト・デスに通用するとでも?」
しかし仲間を故意に死なせる行為は厳重に禁じられている。ピラニアックスもカバーニングも足踏みしか出来ない。効果はある。しかし、出血によりどんどん力が入らなくなってきている。持って後数分だろうか。
「……」
一瞬だけ後ろを向く。20メートル程度離れた岩陰に3人の姿が見える。もっと離れて逃げてくれればいいものを。だがこのままではこのコウモリザードによって容易く居場所が分かってしまうだろう。だからここは時間稼ぎよりかもこの怪人の抹殺を優先する。
「ふんっ!!」
「ぎ、ぎぎぎぎ……!!」
腕に力を込めてコウモリザードの首をどんどん無理な角度へと曲げていく。一気にねじ切って殺すつもりだったがどうやら予想以上にもう力が出せないようだった。足元には血の水たまり。
「……ここまでか」
せめて死ぬ際にはその体重でこの首がねじ切れる事を祈ろう。そう思って体重を込めた時だ。
「どうやら間に合ったようですわね」
「!」
声。少女の声。戦場の左手に見える巨大な岩塊の上。そこに小柄な少女が立っていた。
「あれは……」
「ひょっとして石原狂子さん!?」
「はい。お久しぶりですね桜子さん燦飛さん」
少女は飛び降りた。ピラニアックスのすぐそばで着地すると同時、その小さな拳をピラニアックスの腹に打ち込んだ。
「!?」
信じられない威力に襲われてピラニアックスは3歩を後ずさる。
「……もしや君は……!!」
驚く校長。その後方に巨大な岩が降ってきて桜子達からの視線を躱すと同時に砂嵐を発生させる。
「さあ、fevertimeと参りましょうか」
その言葉が終わると同時、身長140センチ程度のその小柄な彼女の姿が身長246センチのボディビルダーへと変貌を遂げる。
「何!?」
驚く怪人達。ボディビルダーは片手でコウモリザードを掴みあげては岩塊に向けて投げ飛ばし、粉砕する。
「やはり石原君か!」
「いつでもマッスルハッスルsuperbeautiful!イシハライダー!!」
変身を遂げた変人ライダーはそのままアイアンクローで怪人2体の顔面をわしづかみにして持ち上げる。
「があああああああああ!!」
「な、なんだこの馬鹿力は!」
「貴様たちが貧弱すぎるだけだぁぁぁぁっ!!!」
そのまま両足同時にキックを繰り出して両怪人を吹き飛ばす。
「こ、このっ!!」
ピラニアックスがその巨大な斧を持ち上げてライダーに振るう。が、
「どうしてそんなものが私に通用すると思った!?」
それを指一本で受け止めるや否や舌で砕き、足払いの一撃で相手の右足を膝からちぎり飛ばし、吹っ飛んで行った右足がカバーニングの腹を貫通する。
「ぐがががああああ!!!」
「……やはり彼はすごい……。昔彼の活躍を見て少しでも彼に近付くためにスーパープラズマー回路を作り上げたがまだまだ全然彼には届いていないようだな」
血を吐きながら校長は戦いを見る。
「イイイィィィィィィリイイイイイィィィィィィイイイァァァッヤァァァッホゥゥゥゥゥゥゥゥゥイ!!!」
ピラニアックスの握った拳を上から包み込むように握りつぶし、そのままフォークダンスの要領で突如演舞を開始した。白鳥の湖だ。心なしかどこからか演奏も聞こえてきた。そしてその演奏が終わると同時に両手を大きく左右に広げて掴んだままだった相手の両腕を引きちぎる。
「ごああああああああああああああああああ!!!」
「ふんっ!あべし!!そげぶぅ!!!」
さらに引きちぎった両腕をこん棒のように振り回して左足一本だけで立っているピラニアックスをしこたま殴り続け、秒速1万発。3秒後には跡形もなく敵の姿は消えていた。
「ば、化け物め……!!」
腹に刺さった僚友の足を引き抜き、口から炎を吐き散らすカバーニング。しかし、ライダーはその炎の中に自ら突っ込み、大きく開いた敵の口の中に身を丸めて突入する。
「!?」
「セイヤッハァァァッ!!!」
そして口が閉じると同時に敵の大きな顔からライダーの手足と首が皮膚と骨をぶち破って露出。まるで敵の顔の着ぐるみを着ているような姿になる。さらにそのまま敵の首を胴体からねじ切ってその場でトリプルハンドレッドアクセルをかますことで胴体も首もすべて粉々のミンチに変える。
「ふん、こんな連中暇つぶしにもならないな!何せ技を使うまでもなかった!」
「石原君、助けてくれてありがとう」
「やあ、宝子山君ではないか。随分老けたな」
「まああれから45年も経っているのだからね。45年ぶりに会うのによく私の呼びかけに答えて助けてくれた。感謝の言葉もないよ」
「この程度何でもない。私も仲間を探しているのでな」
握手。同時に校長の傷が治っていく。
「君はどうして先程の少女のような姿に?」
「ここでは学生の姿をしていた方が動きやすいのでな。そうして行動している内に彼女達とも知り合った。しかし私の正体は知られてはならない。これから私はあの少女の姿・石原狂子として行動する。内密に頼もうか」
「……分かった」
言うと既にイシハライダーは狂子の姿になっていて指パッチン1つで道をふさいでいた岩塊を粉砕する。
「桜子さん、燦飛さん。大丈夫ですか?」
「狂子さん……!スライト・デスは!?」
「もういなくなりましたよ。何とか退治したので」
「そう、よかった……」
合流を果たす少女達。いつの間にか周囲は静寂と化していて、どうやらもう怪人達はこのあたりにはいないようだった。
「……後は紅葉君達の無事な帰還を待つだけか」
校長が静かに校舎を見上げた。

------------------------- 第113部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
103話「フォルテの真実」

【本文】
GEAR103:フォルテの真実

・管理人室。姿を見せたフォルテは仰々しく桝藤達に頭を下げる。
「ご無沙汰しております我が主人たちよ」
「フォルテ、聞きたいことがある。俺達はお前に人類を宇宙の脅威から守るよう命令したはずだ。が、そいつらの話によればまるっきり逆の事をしているみたいじゃねえか。どういうことだ?」
「いいえ。灯様。私はあなた方の命令を違反しておりませんとも」
「何?」
「……なるほど。彼らもついにここまで来てしまいましたか」
尻目で後ろの果名達を見やる。当然自分を警戒して身構えている。
「どういうことだ?答えろフォルテ!」
「はい。まずは順を追って説明いたしましょう。灯様泪様がお眠りになられてから既に103年。あれから3年後の西暦2203年。第三次世界大戦は終結いたしました。私が開発した亜GEARと言うものの1つ、電磁パルスの亜GEARを用いまして全文明を一度使い物にならなくしておきました。それから50年ほど私は文明を立て直そうとする人類を陰から支えてきました。子供達には生活を楽にするため亜GEARの一部を与えました。しかし50年ほど前、西暦2253年。ついに宇宙からの脅威スライト・デスが現れてしまったのです。当然私は当初彼らを迎撃いたしました。3年かけて彼らの主戦力たる怪人を30億体ほど倒しました。ですが奴らはとても強い。この地球の数十倍もの大きさの宇宙船を艦隊規模で有していて私が迎撃したのはその内のたった一隻に過ぎなかったのです。そして奴らの幹部である四天王。奴らはとても人類が勝てるレベルではなく、あまりに強すぎる。さらに2年をかけて私は何とかその内一人を破りましたが残りはあと3人。しかもさらにその上にいる首領のキルは四天王全員分よりも強いと言う噂。向かってきた四天王を倒してしまったことで完全に奴らは地球を討伐対象に認めてしまったのです。このままでは私一人では人類を守り切るどころか自分すら守ることが出来ずに1年で滅亡すると計算いたしました」
「……それで?」
「ですので私は彼らの一味になったのです。腕のある自分を買わないか?地球侵略を私に任せてみないか?と。当然最初は信用されず送られてきた10万体の怪人の運用だけを任されました。それを2万5000ずつ分けて学園都市、グレートシティ、デスバニア高原、セントラル軍を制圧いたしました。しかし、人類を一気に滅ぼすようなことにはならないように。そうすること40年。私はスライト・デスの新しい四天王として迎え入れられました。奴らの本隊も今は太陽系を離れています。もう一度攻めてくるまでは最低でも5年はかかるでしょう」
「……お前のやっていたことは分かった。けど、だったらどうしてまだ敵対しているんだ?ある程度信用されているのならこの星にいるスライト・デスの怪人を根こそぎ倒して文明を取り戻させる事も可能じゃないのか?」
「不可能です。何故ならばセントラル軍には私の監視としてもう一人四天王が来ているのです」
「セントラル軍に!?」
「はい。彼もまた私と同じでこの星で産まれながら実力を買われてスライト・デスの新たな四天王となった人物ですが彼の場合私とは違って本気でスライト・デスの一員となっています。私が反旗を翻して地球の再生を始めてしまった場合彼はすぐさまスライト・デスの本隊へと連絡し、私と戦うでしょう。私と彼の実力はほぼ同じ。よしんば勝てたとしても機能の大半を失うことになり、そうなれば5年後に襲来するスライト・デスの本隊には為す術なく地球ごと駆逐されてしまう。だから私は反旗を翻さずにこうして地球の支配の片翼を担っているのです」
「……なんてこった」
沈黙。その場の誰もが雰囲気を重くする。本来ならばこの星を守るためのセントラル軍が全く動かないのはそこに人類を裏切った幹部がいて彼に支配されているからだと言う決してうれしくない情報まで手に入った。しかもそいつはフォルテと同じくらいに強い。スライト・デスが本気になれば地球の制圧、人類の絶滅は容易いだろう。しかしフォルテが敢えて敵に下ることで支配による緩やかな滅亡へとシナリオを変えている。
「……監視役と言ったがそいつはお前がこうして俺達に事情を話していることは知らないのか?」
「彼は実力がある以外は通常の人間。私が以前あなた方の行動を把握して瞬間移動で来れたのは私がこの学園都市を物理的に、空間的に支配しているためでございます。今のところ彼本人はもちろんその息がかかったものは学園都市の領域内には入っていないようです」
「……そいつの名前は?」
「キング。セントラル軍総司令官のキングスト・グランガルトガイツです」
「……だが人間だと言うのならそいつの寿命が尽きるまで待ったらどうだ?」
「無意味です。スライト・デスは地球人がどういうものなのかサンプルを回収して学習しました。なので寿命と言う概念も分かっているはず。キングは現在41歳。遅くとも20年以内には後釜となる新たなる四天王が任命され彼の代わりに配置されるでしょう。もしもその後釜が私よりも強ければ地球は終わりです」
「……20年以内に何とかしないと地球や人類は滅亡必至って訳か」
雰囲気がより重くなる。
「……そうだ。フォルテ。ちょっとだけなら裏切り行為も問題ないだろう?外で仲間と戦っているスライト・デスの連中をどうにかしてほしいんだが」
「確かに可能です。しかし私は反対します」
「何故だ?」
「彼らは未知の力を宿しています。私の憶測ではスライト・デス四天王の一人にして最強の男・ゴースト将軍と同質の力、ソウルプラズマーと呼ばれるものを宿しています。まだまだ未熟で私にも勝てない程度ですが生き就く先は同じ、いつかはゴースト将軍にも匹敵するかもしれない。だとすればあの程度の雑魚相手に手助けなど不要なはずです。むしろそれで何らかの不利益や損傷があったのなら可能性なんてありませんでしょう」
「……あの3人の力はそこまで特別なのか」
「……では、もう1つの可能性を見させていただきましょうか」
フォルテが振り向くと指をパチンと鳴らす。
「え?」
紅葉と詩吹が反応を示した。まだ2時間以上あるはずの変身不可能時間が一気に0となった。
「ソウルプラズマーの戦士ではない、しかし原点は似たようなものであるスーパープラズマー回路の戦士の力。先日は私とは戦えなかったのでその力がどれほどのものか確かめさせていただきましょう」
「お、おいフォルテ!!」
桝藤が止めようとするが構わずフォルテは瞬間移動の亜GEARを用いてその場にいた全員を学校の屋上へと移動させた。
「あそこは狭いのでね」
「……まさかアカハライダー達と戦うつもりなのか?」
「ええ」
「もうお前は敵ではないと知った。ならば戦う必要がどこにあるんだ?」
「そうですね。今のままではどうしようもありません。ですがあなた方がせめて私程度を倒せるだけの力があると認めればスライト・デスへ反旗を翻すと言う案も復活出来ましょう。……ああ、そこの彼は今回なしで」
フォルテは大を指さす。
「彼は私の天敵。しかし他の四天王とは相性は発生していない。彼で私を倒せても意味はないので」
「……けど紅葉さん達を殺そうとしたならば手は出させてもらうぜ」
「ええ、ご自由に」
フォルテの特殊な笑み。大はやや納得いかなさそうに一歩下がる。代わりに紅葉と詩吹が前に出た。
「そうそう。時間制限の撤廃だけでなくあなた方にはいくつか新しい力を用意しておきました。それも見せていただけると嬉しく思います」
「……分かりました」
紅葉と詩吹がそれぞれ脱臭炭とブレスレットを身構えた。
「あかはら・めもはら・らりろれはりぴょ~ん(棒)」
「ジャックオン!!」
「「経営幼女戦士アカハライダーズ、ダブル変身で只今見参!!」」
二人同時に変身。姿はまるで変っていないがエネルギー出力がやや上がっているように見える。そして、3分間しか戦えないと言う時間制限が確かに消えていた。
「では、始めましょうか」
闇のマントを広げ、フォルテが嘲笑う。


・一方、木漏れ日ヶ丘学園を中心に東西に位置取った伊藤と海藤。
先程から何度か戦闘が起きていることは音で分かる。校長達が襲撃を受けたのも土煙などで推察できている。しかし、まだ動かない。
「……」
正直伊藤はあまり気が進んでいなかった。恐らくこの作戦は成功するだろう。しかし、フォルテを破壊してもし万一今自分が持っている亜GEARまで失われてしまったら。
今、この場に部下はいない。それに一昨日右足を切断されたばかりだ。何とかつながってはいるが神経はまだ。こんな状態で亜GEARまで失ってしまえばその辺のチンピラにだって勝てる見込みはない。いや、亜GEARが無事でも今のこの状況でも厳しい。いくら見つかりにくい茂みの中とはいえ自分の支配エリア外で自分ひとりで行動するのは危険すぎる。今はまだしも作戦が発動すれば最大出力の一撃を放つ必要がある。かなり派手で見つかりやすいし見つかってもこの足ではろくに逃げられない。
「……せめて誰かほかにつれて来るべきだったな」
「本当にな」
「!」
声がした。振り向くとそこには大川がいた。それを認めると同時胸に強い衝撃が走った。
「がはっ!!」
血を吐き、膝を折る。大川の手には拳銃が握られていた。いや、大川の手そのものが銃となっていた。
「どうしてこんなところにいるのか知らないがいい恰好じゃないか伊藤秀吉さんよぉ」
再び発砲。今度は左肩のあたりを銃弾が貫通した。既に右肺を破壊されているうえ左肩からは激しく出血が起きる。
「ぐっ、お前……大川彩仁だったか……?」
「そうだ。が、もうお前が言葉を喋る必要はない」
3発目。喉の下あたりを貫かれ、伊藤はそのまま後ろに倒れる。自分が流した地で作られた水たまりに沈んだ伊藤は、そのまま動かなくなった。
「次はあの楯の奴だ。平井の情報からするにこの近くにいるはずだ。探し出して惨めに殺してやる」
痰を伊藤の死体に吐き捨て、踵を返そうとした時だ。前方に見える校舎の屋上にいくつかの人影があることに気付いた。
「……あれは、」
右手をスナイパーライフルへと変えてスコープを使って様子を窺う。
「あの楯野郎……こんなところにいたのか。しかも、いいポジションだ。が、須田の野郎までいる。アイツがいる限り即死させないと傷を治しちまうからな」
今度は左腕もスナイパーライフルへと変える。そして右の銃口で須田を、左の銃口で果名を狙う。
「じゃあな」
そして2発同時に発射された。
「!」
音か、殺気か。反応を示して僅かに体を反らした果名の左肩を銃弾が貫通した。さらに同時、もう一発の銃弾が須田の右胸を貫く。
「っっ!!!」
「郁美!!」
後藤の胸に飛び込むように倒れる須田。そして視線の先、200メートルほど先にある隣の山の茂みの中に硝煙を見た。
「……大川か!!」
「……あそこには伊藤がいたはずだ。殺されたか」
表情を変えずに果名が茂みの方を睨む。
「……どういうことだ?」
大川は姿勢を低くしつつスコープで様子を見ていた。須田の方は即死に近いレベルだ。自分自身を治せるとしてもあの重傷の中傷を治せるとは思えない。十中八九あのまま死ぬだろう。しかし問題は果名だ。少しずれたとはいえ着弾はした。左肩を中心から撃ち抜いた。急所ではないから殺せはしないだろう。しかし、消耗が見られない。それに出血もしているようには見えない。
「……もう一発撃つか?いや、警戒はされている。それに何か後ろの方で見たことない奴らが戦っている。あれに相手をされたらまずい。伊藤と須田の二人を始末できただけで上出来か」
大川はもう一度痰を伊藤の死体に吐き捨ててから低姿勢のままその場を離れた。
「……大川はやったかな」
反対側の山。その茂み。平井がいくつかの銃声を聞いて邪悪な笑みを浮かべる。今、彼女の体重は木に支えられていた。
「……秀吉を始末したのは褒めてやる。だが、雌犬のくせに俺にまで手を出そうとしたその罪は重いぞ」
その先には海藤がいた。右手から伸ばした光の刃は平井の体を大木に串刺しにしていた。そしてその平井もまた両腕と下半身を失っていた。既に失血死寸前の状態だった。
「……秀吉がいなければ相転移であそこを消し飛ばすってのも無理そうだな」
「……」
「っと、」
平井がブラックハンドを伸ばしてきた。しかし、それをビームで相殺。そのまま再びビームが発射されて平井を大木ごとドロドロに溶かした。
「さて、もうこんなところにいても無駄だな。帰るとするか」
松葉杖をつきながら海藤はこの領域から去っていった。

------------------------- 第114部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
104話「エクシードプラズマー」

【本文】
GEAR104:エクシードプラズマー

・木漏れ日ヶ丘学園、屋上。二人のアカハライダーが宙を舞い、フォルテと格闘戦を行う。
「郁美ちゃんが……!!」
「よそ見はいけませんよ」
撃たれた須田。それに気を取られていた紅葉に電撃を放つフォルテ。
「きゃあああ!!」
「先生!!」
詩吹がブレスレットを槍に変えてフォルテに突撃する。しかし、その刃は指2本で止められそのまま投げ飛ばされる。
「くっ!」
「どうしました?この程度ですか?まだ新機能を全く試していないのでしょう?」
分身の亜GEAR。それを用いて4人に分身したフォルテが二人を前後から襲う。
「なんの!」
紅葉は前後からの飛び蹴りを手首のスナップだけで受け流し、同時に脱臭炭を左足に装着した。
「オーロラプラズマ返し!!」
プラズマを纏った電速の一撃が前後のフォルテをまとめて両断する。
「ほう、」
両断されたものを含め3体のフォルテが消え、残った1体が飛翔して両手から相転移のビームを放つ。
「まだっ!!」
紅葉はプラズマが消える前にビームに向かってもう一度回し蹴りを打ち込む。しかし、激突を果たせたのは数秒だけでプラズマエネルギーが消えた紅葉は後ろに吹き飛ばされる。
「はあ……はあ……」
受け身をとってから立ち上がった紅葉は脱臭炭を髪に結い直す。
「ふむ。少しばかり出力を上げたとはいえ威力だけなら下の3人の合計よりやや上と言ったところですかな」
意外そうな声。しかし満足には至っていないと言う声。
「バルトフォーム!!」
シュールストレミングスを髪に結いつけると姿が変わる。
「はああああああっ!!」
ハンマーを何度も振り回してフォルテを狙う。最初は防いだフォルテも、手に若干のしびれを感じると回避行動に移る。と、今度は詩吹が槍をブーメランに変えて投げてきた。
「こちらはまだまだのようですね」
そのブーメランを指で止めるとそのままそのブーメランでハンマーの攻撃を止める。そして空いた片手から放たれた電撃が紅葉を襲う。
「くううううううう!!サリィィィスタァァァフィッシュ!!」
距離をとった紅葉。その体を守る貝殻上の装甲が体から離れるとヒトデのような形状に変形し、不規則な、しかし目にもとまらぬスピードを以て一斉にフォルテに襲い掛かった。
「ほう!」
感嘆。迫りくるヒトデを電撃や炎で迎撃するフォルテ。しかしヒトデは放たれた攻撃を大きく開けた口でのみ込んでしまう。
「いい攻撃ですな!」
フォルテは徒手空拳に切り替えては、全てのヒトデを一撃で粉砕していく。が、粉々になったヒトデは残骸が集まっていき、1つの大きなヒトデとなって大きな口でフォルテを呑み込もうと迫る。
「ふっ!」
フォルテは左右の手から相転移エネルギーの塊を錬成するとそれをぶつけ合うようにしてヒトデの口の中に放り込む。
「!」
ヒトデの口の中でぶつかった二つのエネルギーは化学反応を起こし、小さな核爆発を生んだ。爆発が終わるとヒトデは今度こそ跡形もなく消し飛んでいた。が、ハンマーを持った紅葉が急接近していた。
「響輝奏光!!バルトロメガインパクト!!」
黄金に輝くハンマーでフォルテを全力でぶん殴る。
「空蝉(うっせみ)の亜GEAR!!」
フォルテの背中から新しいフォルテが出現して距離をとると同時、攻撃を受けたフォルテは跡形もなく光の中に消えていった。
「惜しいな。けどあいつ何でもありだな」
胡坐をかいてフェンスの陰に隠れながら大がつぶやく。
「フォルテにも紅葉さんにも言えるのがまた、な。しかしエネルギー制限も時間制限もなくなった紅葉さんは強いな。シンとライが二人掛かりで挑んでも全く歯が立たなかったフォルテを相手にある程度互角に渡り合っているぞ」
「……ところで果名、さっきは撃たれたのにどうして平気だったんだ?」
「ん?ああ、これだよ」
果名はいきなり自分の左腕を外した。
「……義手?」
「ああ。義手の損傷も俺のGEARで一瞬で直せるからな。もし撃たれたのが左手以外だったらやばかった。……で、須田の方はどうだろうか」
果名が視線を前方に送る。須田は倒れたままだ。必死に自分の亜GEARで傷を治そうとしているが明らかにマイナスの方が多い。後藤や舛崎があたふたしているが状況は厳しそうだ。
「……フォルテ!少し待て!!」
「灯様、なんでしょうか?」
「お前は全ての亜GEARを使えるんだろう!?だったら治療の亜GEARでこの子を治せ!」
「……はい。かしこまりました」
フォルテは二人のアカハライダーを手で制し、もう片方の手を須田に向ける。
「治療の亜GEAR」
それにより、少しずつだが須田の傷がふさがっていく。窮地を脱したからか須田はそのまま気を失った。
「では、続きと参りましょうか」
フォルテが礼をすると二人はまた走り出した。
「……律儀な奴だな」
「……なあ、聞いていいか?」
「あ?」
桝藤が果名に問いかけた。
「なんであの人はフォルテが与えたって言う新しい力を使わないんだ?」
「……まだ使い方が分からないんじゃないのか?脱臭炭だけで通常形態に変身、シュールストレミングスでバルトフォームに変身。……3番目の姿もあるらしいが室内戦限定らしくて俺もまだ知らないがきっと何か装置が必要なんだろう。物理的にではなく精神的に」
「……それを引き出さない限りフォルテに勝ち目はないか」
実際、ヒトデを失い、そしていまハンマーも破壊されて紅葉は打つ手段がなかった。詩吹が支援してくるがフォルテはよそ見をしたまま片手間に対応する。このままではフォルテのお眼鏡には適わず、戦う意味がなくなってしまい、人類は残り20年の寿命を黙って迎え入れることになってしまう。
どうするかと果名が迷った時だ。
「うああああああおおおおおおおおおお!!」
床を下からぶち破ってスカーレッド、エンジェル、シュバルツが屋上に姿を見せた。
「シン!!」
「はあ……はあ……怪人200体全撃破してきたぞ……!」
「あれは、この前の……!」
「フォルテって奴か。結局戦うことになってるようだな」
「いや、待てお前達」
果名が3人の前に立つ。
「あいつはまだ敵じゃない。だが、超えるべき壁だ。そこでお前達に頼みたいことがある。紅葉さんと詩吹にどうやって力を引き出すのか教えてやってほしい」
「力?」
「そうだ。あの二人は道具と言うか武器に頼った性能だ。けど、それだけじゃアイツには届かない。炎とか電撃とかみたいに体の内側から出る力がどうにか必要なんだ」
「……内側から出る力って言うなら俺達は亜GEARをよく目にしているからな」
「……亜GEAR……!?だったら、おい!アカハライダーズ!!亜GEARを使うんだ!」
「あ、亜GEAR!?」
「む、無理ですよ!私達は亜GEARを使えません!学園都市にいる人間が全員亜GEARを使えるわけではありませんから……!」
「だったらフォルテ!そこの二人に亜GEARを与えろ!それくらい許されるだろ!」
「ふむ。少々虫が良すぎる気もしますがね。まあ、感覚を掴むだけと言うのなら仮契約でもしますかね」
「仮契約ってそんなのあるのかよ」
舛崎がぞっとする。その前でフォルテは二人に亜GEARを与える。
「お試し期間で一週間だけ。その一週間の果てに一度与えた能力は消えてその際に再び同じ能力を得るか或いは能力を捨てるか選べます。亜GEARそのものは所詮人間同士が殺し合うだけの子供だましのようなものですので私のようなスライト・デスには通用いたしませんのであしからず」
「……亜GEAR……」
二人が手にする。同時に何か心や体から湧き出るものがあった。
「殺し合え……殺し合え……その憎悪だけが未来を守り、天をも貫く力になるのだ……」
「!」
声が聞こえた。とてつもなくおぞましく重い声。最初はフォルテのものかと思ったがまったく違う。これはフォルテのような人工の声ではない。人間の声だ。言葉を聞いて抱くのは恐怖ではなく聞いた通りの憎悪。血管や神経の全てが疼き、この世のすべてが醜く、目障りで義務感にも近い破壊の欲求に心が満たされていく。
「があああ……ああああああああああああ!!!」
「おや?」
様子の変化にフォルテが驚く。二人のアカハライダーは尋常ではない殺気を周囲にばらまき、プラズマが付随する。
「……亜GEARを受け取ると誰でもあんなふうになるのか?」
「いや、そんなはずはない。もっと自然に受け入れられるものだ。俺自身も含めて10人以上その瞬間を見てきてるがこんなのは初めてだ」
舛崎、後藤が驚きの表情を作る。それはフォルテも同じだった。
「おい、フォルテ。何か様子がおかしくないか?どんな亜GEARを与えたんだ?」
「いえ、灯様。私はただ一般的な炎の亜GEARを与えただけなのですがどうしてこのようなことになっているのかは私にも理解が出来ません……あっ!!」
その時、
「……そなた達は違う……」
声が聞こえたと思ったら二人の前に突然錠前が出現し、二人から亜GEARを奪い、姿を消した。
「……亜GEARが消滅している……!?何だ今のは!?」
フォルテが広域サーチを始めるが一切情報がない。他人から亜GEARを奪うなど自身にも不可能の事だ。
「……あ、」
果名が見る。それは紅葉と詩吹の姿。
「はあ……はあ……」
二人とも新しい姿となっていた。紅葉はプラズマーフォームにそっくりだが全身に稲妻のような黄金のラインが入っていて何よりその手には黄金の剣が握られていた。また、詩吹は左手のブレスレットが消えていて代わりに全身を銀色の甲冑が覆っていた。さらにその手にはライフルが握られていた。
「……出来ました……魂の表現……エクシードプラズマーフォーム……」
「私のは……違うみたいです。……敢えて言うならフルメタルジャック……」
両者はかなりの疲弊を表しているがしかし先程のような憎悪は既になく、いつもの様子に近い。
「……では、早速その力を試させていただきましょうか」
フォルテは身構えた。正直先程の現象やあの錠前の存在は気がかりだが今はこちらの方が重要だ。
「エクシードソード!!」
紅葉が剣を閃かせ、フォルテに向かって接近して振るう。移動速度は先程の倍近い。
「ぬ、」
フォルテは剣の亜GEARを用いてこれを防御。しかし、予想以上の威力に作り出した剣はいともたやすく粉砕され、切っ先がフォルテの肩口から胴体を大きく切り裂く。
「おおお……!!」
「ジャックバースト!」
次に詩吹。ライフルの銃口からエネルギーの塊が発射される。速いが回避できない程ではない、そう見たフォルテが飛翔して回避した直後、その塊は16に分裂してビームとなってフォルテの手足と腹を貫いた。
「はあああっ!!」
間髪入れず、紅葉が跳躍してプラズマを纏ったエクシードソードを振り下ろす。
「疾風怒濤!!」
そしてフォルテの目にも映らない程超光速の一撃が放たれ、フォルテの体は真っ二つとなった。
「……お見事。スーパープラズマー回路に心の力……ソウルプラズマーの力が合わさった力:エクシードプラズマー……、まだまだ未熟ではあるがこれなら或いは……」
聞き取れないほどの小さな声。それを残してフォルテは空中で大爆発して消滅した。

------------------------- 第115部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
105話「大いなる戦いの始まり」

【本文】
GEAR105:大いなる戦いの始まり

・フォルテとの戦いから2週間が過ぎた。
学園都市の領域内にスライト・デスの反応は一切なく、学園都市の状況はひと段落を迎えた。
木漏れ日ヶ丘学園を新しいアジトに校長は紅葉達の体や回路の様子を探る。
「……ふむ。確かにスーパープラズマー回路は大きく変化を遂げている。出力が今までの5倍以上。時間制限もなくなって体力の続く限り変身していられる。さらに、紅葉君はエクシードプラズマーフォーム、詩吹君はフルメタルジャックに変身が出来るようになった。学園都市からスライト・デスは消え、フォルテプログラムも機能の復帰にしばらく時間が掛かるため新しく亜GEARが誰かに与えられることもなくなった。……至れり尽くせりだな」
しかし、作戦前にはいたメンバーが何人か姿を見せていなかった。
大川からの狙撃を受けた場所。そこをくまなく探したら伊藤の死体が発見された。究明するまでもなく大川の仕業だろう。また、正反対の場所に待機していたはずの海藤も姿を消していた。近くには海藤が何者かと争った形跡があったが誰の死体も発見されなかったため真相は謎のままだ。
「……なんかいつの間にか増えてるし」
果名がシャワーを浴びてからリビングに戻ると狂子と目があった。
「どうも。初めまして。石原狂子と申します」
「ああ、うん。黒主果名です。よろしく」
「……ん?」
後ろから牛乳瓶片手にやってきた大と舛崎は狂子と視線が合うと何故か急に表情を青くして走り去っていってしまった。
「……何か面識でも?」
「いえ?でも懐かしい顔ぶれですね」
「……?」
何かありそうだがしかし触れずにいた方がよさそうだった。
「ところでこの後私達はどうなるのでしょうか?もうこの学園都市でやることは終えたのでしょう?」
「ああ。けど校長の車は壊れて使えなくなったし、食料の補給も必要だ。大きな問題は終わってもまだ学生同士の殺し合いは続いているわけだからな」
「それなんだが」
そこへ校長がやってきた。傍らには紅葉とそして見慣れない顔の少女がいた。
「彼女は?」
「うむ。つい先ほどコンタクトを求めてきたのだ」
「……白百合蛍と申します。あなた方に依頼があってまいりました」
「……依頼って言うとトリプルクロス……俺達宛か」
窓辺にいた切名やお茶の用意をしていた借名が顔を向けてくる。
「報酬は惜しみませんのでどうか、グレートシティに来ていただけないでしょうか?そこでは私の仲間もいるのですがあなた方の力が必要そうなのです」
「詳しく聞こうか。グレートシティで何をどうするって?」
「……私達は元々グレートシティを拠点に放浪者たちを集めてレジスタンス活動をしていました。相手がグール……天死に殺されて脳を失い、ただ徘徊するだけの亡者となった人達を駆逐して都市を取り戻そうと。ですが最近になって新たなる敵が姿を見せたのです」
「……スライト・デスか」
「はい。彼らには亜GEARもGEARもほとんど通じないので困っています。そこで学園都市を支配していたスライト・デスを倒したと言うあなた方の事を聞いてやってきたと言うことです」
「……ただそうなるとスライト・デスを倒せる力が必要ってことになるな。つまり紅葉さん達の」
果名は視線を紅葉に向ける。
「はい。私は構いません。先程詩吹ちゃんにも話をしたところ快諾してくれました」
「エクシードプラズマーの力は証明されている。それにフォルテの話が本当ならグレートシティには奴らの幹部はいない。決して楽ではないが不可能でもなさそうだな」
「……引き受けていただけますでしょうか?」
「俺としては任務遂行が可能であり、報酬が頂けるんなら断る理由がないね」
「……よかった」
ほっと胸をなでおろす蛍。その左手を果名が見た。
「……君も義手か」
「……え?」
「いや、何でもない」
「……ところで果名君。確か私が依頼を頼んだ時にも報酬を求めていたが君は何を求めたいのだ?」
「……ん?ああ、それは」
「……女の子よ」
果名の代わりに切名が答えた。
「は?」
「お、おい、切名……」
「何恥ずかしがってるのよ。……紅葉さんでも詩吹でも桜子でも狂子でも燦飛でも美香子でも愛名でも紀香でも蛍(あなた)でもいいから女の子を二人用意するといいわ」
「……果名君、君は何をするつもりかね?」
「い、いやぁ、その……」
「……何となく分かった気がする。でも私は彼女以外と寝るつもりはないから」
「お、君はそっち派か!」
「……単純に抱きたいって言うならともかくもしかしてだけどあなた、女の子同士のエッチを見たいわけ?」
「…………はい」
あまり接点のない紀香に言われるとどうしようもなく居た堪れなくなってつい座り込んでしまう。
「……別に私はもう慣れてるから抱かれてもいいんだけど。流石に女の子同士は初めてだし、相手次第よね」
「あの、何の話してるんですか?」
と、そこで美香子がシャワーから出てきた。


・寝室。特別に設けられた部屋。ベッドの上には下着姿の落合姉妹がいた。
「あの、お姉ちゃん……」
「今は私達だけ。そう思いなさい。それに、この先いつ必要になるか分からない技術だから早めに慣れておくといいわ」
「……うん」
緑のブラジャー、パンツ姿の紀香と白いシャツにパンツの美香子。そしてその薄暗い部屋を無数のカメラが撮影していた。
「……いひひ」
リアルタイムで様子を確認しながら果名は自室でワインを飲む。
撮影している画面の中で姉妹は動き出した。
「……これを飲めばきっと理性が飛ぶんでしょうね」
「どういうこと?」
「楽になれるって事」
言うや否や用意された媚薬を紀香は口に含んだ。やがて数秒するともう一度口に含み、そのまま美香子の唇に重ねる。
「!」
姉妹で互いに唇を重ねながら口内の液体を相手に移しては互いに喉を動かす。喉から流れる熱量は次第に胸を下腹部をそして子宮の奥をも疼かせる。
「ん……んんん、っは、美香子……んんんっ!!」
「う、ううううん……おねえちゃ……んんん……っ!」
下着越しに合さる胸。サイズの違う姉妹の胸だがしかしその先端は同じ現象をあらわにしていた。下着越しからでも分かる先端の怒張。いつしか夜の帳の中に露わになっては互いに直接こすり合っていた。
「……すごい、美香子のかわいい……。まだ男どころか自分ひとりでもやったことない感じ……」
重ねた唇を離し、今度は妹の先端に近付き、舌を這わせた。今までにない敏感な衝撃に腰を震わせ淫らに啼く妹の声を耳にしながら今度はその手を下着の中へと入れていく。割れ目に合わせて指を添わせれば入れてくれと言わんばかりに小さく震える。自分がもしも男ならばこの震えに全力で答えてやれたのだろうが意味のない仮定だ。ならばせめて妥協くらいはさせてやろう。小さな蕾を這わせていた舌を収め、右手を入れていた妹の下着を優しく丁寧に下ろした。
「あ、お、お姉ちゃん……」
内またをもじもじさせて可愛く啼く妹。どうしても可愛くて仕方がない。それに自分もそろそろ疼きが限界だ。自分もまた下着を下ろす。髪の色と同じ陰毛を妹の前にさらした。それを見るのは初めてなのか妹の視線はそこだけに注がれていた。その愛しくて仕方がない妹を今一度壊れるくらい強く抱きしめる。小さな背中を撫でてやれば腰まである亜麻色の髪が踊り、まだまだ幼くて可愛らしいヒップが顔を覗かせる。そのヒップのふくらみを優しく撫でてやればびくりという反応。そしてその反応が当たらな反応を呼んだ。
「っ!」
後ろからの衝撃が来れば前に出る。そう。まだ滴ることもない幼い妹のそこが自分の同じ部分と重なったのだ。まだ滴ることの出来ない妹の代わりに自らが疼いた証の汁で妹のそこをも濡らし、厭らしい摩擦音を響かせる。あとはもう止められない。
共にベッドに体を投げ出し、ただただ快楽のままに互いの一番感じる場所をこすり合わせ続けた。
「……満悦」
酔いも深まり、ご満足そうな果名が笑い上戸になりながらベッドの上で腹を抱える。
「……楽しそうだなぁ」
隣の部屋。雑魚寝している他の男子組が不満足そうにため息を零した。


・ここはセントラル軍領地。既に滅んだ文明。しかし現存していたいくつもの兵器や技術を用いた兵士達が幽閉と言うレベルでそこには居住している。その施設の最重要機密エリア。
「……ふん、」
一人の中年男がその中の部屋に入っていく。中には誰もいない。しかし、通信機器があった。
電源を入れ、自分しか知らないパスワードを入れる。と、数秒後に電気が点き、画面の向こうに見覚えのある顔が浮かぶ。
「キングスト・グランガルトガイツよ」
「……ゴースト将軍か」
「地球はどうなっている?先日2度ほどフォルテの反応が途絶えたのだが」
「奴の事だ。人間相手に遊んでいるのだろう。奴は死ぬことはない。それでも奴が死ぬことがあればその時はこの星が終わりを迎えるだけだ」
「……ふむ」
「……もったいぶってないで言いたいことを話せ」
「……では、言おう。面白い話が入った。近々私が地球へ向かう」
「……ほう?」
「この男も連れてな」
画面の先。見慣れない顔の男がいた。それは銀色の服に身を包んだ地球人だった。
「……貴様は、」
「やあご無沙汰していますね、キングスト・グランガルトガイツ」
「……パラディン……!」
その男、祟(パラディン)が不敵な笑みを浮かべていた。

------------------------- 第116部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
設定資料集6

【本文】
<年表>
西暦1945年:第二次世界大戦。ここから調停者によるループが始まる。
2010年:矛盾の安寧、終焉。
2170年:第三次世界大戦勃発。20以上の国家が滅ぶ。
2200年:フォルテ作成、枡藤、泪はコールドスリープ。
2203年:第三次世界大戦終結
2253年:スライト・デス襲来。この時期、一度だけボディビルダーと宝子山が出会う。
2300年:現在。


<登場人物>

黒主(くろす)果名(はてな)
年齢:19歳
身長:169センチ
体重:65キロ
所属:十路川。実質無所属。
GEAR:名を果たすGEAR、錬金のGEAR
属性:中立・中庸・林火
好きなもの:百合、魚、ラーメン
苦手:特になし
世界階級:12
レベル:55/90
才能:剣術2
出展作品:X-GEAR(プロット版)
第二部における主人公。プロット版では正式な主人公。ヒエン同様普通の人間ではない。あれほどぶっ飛んでもいないが。
天使界で作られた妖刀・黒龍牙の持ち主。本人も覚えていないが過去の出来事により左腕を失っていて本人のGEARによる義手で生活している。この義手で黒龍牙を使うと一発で義手が壊れる。
重度の窃視症(スコープトラグニア)であり、他人同士、特に少女同士の性行為を見るのが何よりも好きであり、本人が行為に及ぶのよりも何倍も好き。トリプルクロスとしての依頼の報酬はほぼ100%これを要求している。普段は切名と借名にしてもらっている。自らも交えた3Pに発展する事は邪道だと思っている筋金入り。
GEARは二つ。1つはオンリーGEARである「名を果たすGEAR」。他人がGEARを発動し、その効力が完了したのを見計らって発動することで対象のGEARを破壊して消滅させる。分かりやすく言えば「効果は無効に出来ない」が「自身の効果も無効にされず対象の相手を除外する」効果となった「天罰」のようなもの。また常時発動タイプ相手にも通用する。GEARでも亜GEARが相手でも問題なく発動し、相手の抵抗を許すことなくほぼ確実に殺せるため事実上人間相手では無敵に近い。本編主人公であるヒエンの零のGEARが防御面で無敵なのに対してこちらは攻撃面で無敵である。両者が戦った場合は名を果たすGEARの方が勝利するがこの力でオンリーGEARを殺してしまった場合自身の魂に強い負担をかけてしまい、寿命の激減か半身不随か免疫不全症など重態になる可能性が高い。また、自身のようにGEARを複数持っている相手の場合片方しかGEARを殺せず本人の命までは奪えない。
もう1つは錬金のGEARであり、触れずしてあらゆる金属を動かせるGEAR。かなり使いこなしているため動かすだけでなく様々な金属製品などを作り出す事も出来る。以前は1つしか対象に取れなかったが現在では複数同時に操作できる。義手からバイクなど様々な製品をこのGEARで生み出している。
前述通りプロット版の主人公であり、作品世界においてはジアフェイ・ヒエン並みに重要人物である。一応プロット版でもヒエンとは共闘していてほぼ同じ関係になる予定。正体に関しても同じ。
プロット版通り最初の章ではGEARを使用しない。本作では何度か使おうとはしていたけども。と言うか一回だけ使ったけど。

黒主(くろす)切名(せつな)
年齢:18歳
身長:161センチ
体重:48キロ
3サイズ:81・58・83(D)
所属:十路川、天使界
GEAR:名を切るGEAR、天才
属性:混沌・善・風
好きなもの:読書、夜更かし、ラーメン
苦手:運動、爬虫類
世界階級:13
レベル:48/100
才能:勉学1、裁縫1、料理1、暗記1、フェンシング1
出展作品:X-GEAR(プロット版)
新しいメインヒロイン。クーデレ系。ゴスロリを着る金髪ロングのお嬢様。しかしなかなかアクティブ。
遅寝遅起きがメインの少女。果名の嫁。口ではなんだかんだ言いながらも果名には従っている。
GEARは2つ。1つは名を切るGEARであり、触れている相手がGEARを発動した場合そのGEARの内容を「全力で自傷する」に書き換えるGEAR。攻撃系のGEARだったならそれを使って自らを攻撃させるため場合によってはそのまま相手を自殺させられる。
もう1つは天才。あらゆる場面で模範となるような優秀さを発揮すると言うもの。これがあるため運動が得意ではない彼女でもそれなりのレベルの格闘戦を行うことが出来る。
果名がヒエンに関係あるように彼女は赤羽と関係がある。赤羽のモデルに少し彼女が混じってもいる。ただし男二人が面識があるのに対してこちら二人に面識も直接的な関係もない。ある意味赤羽以上に出生には秘密があり、第二部中に明らかになる予定ではあるが正直複雑のため完全な理解は難しいかもしれない。

黒主(くろす)借名(かな)
年齢:15歳
身長:154センチ
体重:40キロ
3サイズ:76・56・74(C)
所属:十路川
GEAR:名を借りるGEAR、炎
属性:中立・中庸・林
好きなもの:果名、切名、兄
苦手:雪、兄、静寂の夜
世界階級:13未満。場合によっては10。
レベル:19/50
才能:奉仕1、サバイバル1
出展作品:X-GEAR(プロット版)
果名、切名に仕えるメイドの少女。他二人とは違い、唯一自分達の正体を知っている。でも話さない。今で十分だから。
プロット版では読みは一緒だが名前が「仮名」だった。それに伴いGEARも変わっている。
黒主家での家事などは基本的に彼女がすべて担当している。他二人と違って戦闘は苦手。
GEARは2つ。1つはオンリーGEARの「名を借りるGEAR」。名前のように他人の名前を借りて完全にその役割を担うことが出来る。さらに他人のGEARをそのまま使用する事も出来る。作中最初の時点では以前出会った他人から調理のGEARを奪ってその効果を適用していた。新しいGEARを適用させる場合古いGEARは使えなくなり、もう一度使う場合はまたその本人に会わなくてはならない。その上オンリーGEARのコピーは不可能。
もう1つは炎のGEARで、自在に炎を操ることの出来るシンプルなGEAR。実は炎のGEARは他に使用者がいるのだが……。
当人はこれで3つ目の名前だったりする。GEARによる戦闘は出来なくはないが身体能力はあまり高くない。
上二人と同じように久遠と関係がある……ように見えて実は全くない。敢えて一番近い関係性があるのは絶賛行方をくらませ中な巫女さんくらい。会えば滅茶苦茶驚かれるだろう。姿も変わってないし。

赤原(あかはら)紅葉(もみじ)
年齢:内緒。外見年齢は13,4歳程度。しかし経歴を見返すと……?
身長:147センチ
体重:40キロ
3サイズ:71・54・70(B)
所属:学園都市、経営教師
GEAR:経営戦術
属性:秩序・善・林
好きなもの:経営、ウサギ
苦手:戦闘、セクハラ
世界階級:変身前は13未満、変身後は4~12程度。
レベル:8/10
才能:経営2
出展作品:アカハライダー
ボディビルダー、ジョギングマン、露出民族少年に続く4人目の味方ライダー。変態ではない。
基本的にあわあわびくびく系な女性。しかし覚悟を決めて変身すると正義感溢れるヒロイックな性格になる。
可愛い外見とは裏腹に経営戦術に関してはガチであり、博士号も何度かとっている秀才。
スーパープラズマー回路を搭載した脱臭炭を装着するとアカハライダー・プラズマーフォームに変身する。ただしスーパープラズマー回路では3分間しか持続しない。
GEARは経営戦術。才能にあふれているため個人経営の小さな店でも大手企業にまで成長させられるほど。しかしあまりにも荒廃したこの世界では意味がない。
1年前からアカハライダーとして戦い続けている。既にヴラドフォームまでは変身したことがある。先輩変人ライダーたちとは違って能力はあまり高くない。555程度。ただし最強フォームは別。また、エクシードプラズマーフォームは今作オリジナル。

アカハライダー
身長:147センチ
体重:46キロ
パンチ力
プラズマー:2トン バルト:6トン ヴラド:2トン エクシード:5トン
キック力
プラズマー:4トン バルト:10トン ヴラド:5トン エクシード:10トン
ジャンプ力
プラズマー:10メートル バルト:3メートル ヴラド:100メートル エクシード:30メートル
走力/100メートル
プラズマー:6秒 バルト:9秒 ヴラド:3秒 エクシード:3,3秒
変身アイテム
プラズマー:脱臭炭 バルト:シュールストレミングス ヴラド:かぼちゃのお面 エクシード:エクシードプラズマー回路
必殺技
オーロラプラズマ返し:プラズマーフォームの必殺技。脱臭炭を右足に装備しなおして繰り出すプラズマの回し蹴り。威力は15トン。飛び蹴り版も存在する。
稲妻重力落とし:プラズマエネルギーを刃に変えて踵に纏って繰り出す踵落とし。威力は10トン。
バルトロメガインパクト:バルトフォームの必殺技。プラズマエネルギーをハンマーに集約して繰り出す一撃。たいていの相手は電子にまで分解される。威力は20トン。
ヴェノムインヒューズ:ヴラドフォームの必殺技。全身のいたるところから電撃を放出する。威力は7トン。
ブラッディストリーム:電撃の鞭で何度も相手を叩く。威力は5トン。
エクシードプラズマ返し:オーロラプラズマ返しの強化型。左右連続で繰り出すプラズマ回し蹴り。威力は30トン。

赤原(あかはら)詩吹(しぶき)
年齢:16歳
身長:163センチ
体重:55キロ
3サイズ:80・61・81(C)
所属:学園都市
GEAR:金運
属性:中立・中庸・林
好きなもの:麻雀、ボードゲーム
苦手:運動
世界階級:変身前は13未満、変身後は7~12程度。
レベル:16/40
才能:麻雀1、経営1、銃撃戦1
出展作品:アカハライダー
もう一人のアカハライダー。通称:アカハライダージャック。父親の開発したスーパープラズマー回路搭載型万能ブレスレットで変身する。苗字は一緒だが紅葉との血縁関係はない。
学業などは優秀なのだがいまいちサボり癖のせいで目立たない。
GEARは金運。きっと紅葉と組んで店を出せばとんでもないことになる。彼女同様この世界ではもう何の意味もないが。
特技も合わせて賭け麻雀でもやれば一生食っていけそう。
変身後は体術はあまりせず、備え付けの銃器やブレスレットを変形させた武器や特殊能力を用いて戦闘する。通常時のプラズマーフォーム、全身フル装甲のフルメタルジャックフォームに変身可能。ちなみにアイテムを交換すれば紅葉のアカハライダーとなれるフォームなども交換できる。

須藤(すどう)発(あきら)
年齢:16歳
身長:199センチ
体重:110キロ
3サイズ:138・120・135(B)
所属:学園都市
GEAR:力
属性:中立・中庸・風
好きなもの:紅葉、詩吹、プロレス、ゲーム
苦手:特になし
世界階級:12
レベル:88/100
才能:プロレス2、空手2
出展作品:アカハライダー
紅葉の生徒の一人。ものっそいマッチョな少女。無気力系。握力は200キロ近くある。権現堂より強い。GEARのせいもあって並大抵の人間じゃ相手にならずスライト・デスの怪人相手にも生身である程度戦えるレベル。ぶっちゃけ必殺技使用禁止だったらプラズマーフォームのアカハライダーにも勝てる。
本人はプロレスしかやったことないが空手もかなりの才能があり、雷龍寺や剛人レベル。この人を第一部につれてきたらかなり状況は楽になっていたかもしれない。ただ一応普通の人間のためダハーカには無力。
GEARは力。鎌や雷牙と同じで尋常ならざる怪力を出せる。ただでさえ人間として限界近くまで鍛え上げた体でパワフルなのにさらにパワフルになる。
無口と言うほどではないが目立ちたがり屋ではない。原作ではオチ担当。紅葉と詩吹が好きだが百合的な意味かは本人にも分かっていない。

宝子山(ほうしやま)ランスロッド
年齢:68歳
身長:180センチ
体重:73キロ
所属:学園都市
GEAR:経営
属性:秩序・善・山
好きなもの:経営、育児、発明、紅葉
苦手:特になし
世界階級:13未満
レベル:15/60
才能:経営3、発明1、体術1
出展作品:アカハライダー
紅葉の育ての親にして義父。彼が新米教師だった頃にまだ幼かった彼女を養子に拾った。学園都市のとある学園の校長をやっていたが完全に荒廃して崩壊した現在では無意味。しかし現状を嘆いていて己の生涯を全てかけてでも現状を打破しようと望んでいる。その手始めとしてスーパープラズマー回路を発明した。本来ならば自身がアカハライダーとして戦う予定だったが寄る年波には勝てないためか紅葉に託した。また、石原狂とは昔なじみ。
原作ではここまで深刻な事態には陥っていないためか基本ギャグな人物。
GEARは紅葉同様の経営。才能が紅葉以上のため彼女以上の経営的手腕を持つ。事実、原作では年商1000億円以上の大企業をいくつも持っている。
自らのアジトにおいて保護した学生達に勉強を教えてもいる。自分の専攻である経営はもちろん国語数学理化社会などの基礎的なものも含んでいる。

甲斐(かい)心(シン)
年齢:18歳
身長:176センチ
体重:68キロ
所属:学園都市
GEAR:希望
亜GEAR:炎
属性:秩序・善・火
好きなもの:愛名、友情
苦手:戦闘
世界階級:変身前は13未満、変身後は10前後。
レベル:28/50
才能:料理1、体術1
出展作品:心愛戦隊エターナルF
夢は世界一のラーメン屋!愛名と一緒に幸せな未来を目指す青年。心の力でスカーレッドに変身する。
本来ならやや根暗だが情熱家な性格なのだが世界が世界のためかなり暗く落ち込んでいる。ラーメンが大好物なのだが食べたことはない。
GEARは希望。男性主人公にほぼ共通している絶対に諦めない意志そのもの。亜GEARは炎。炎を自在に操る基本形。
スカーレッドに変身してからは積極的にスライト・デスと戦う戦士。そもそも本来原作における宿敵だし。スカーレッドでの戦闘は某カズマやRX78-2をイメージしている。
苗字は甲斐だが、ヒエンや爛達とは何の関係もない。

姫宮(ひめみや)愛名(あいな)
年齢:18歳
身長:162センチ
体重:55キロ
3サイズ:89・62・86(E)
所属:学園都市
GEAR:浄化
亜GEAR:飛行
属性:中立・中庸・風
好きなもの:シン、ラーメン
苦手:戦闘
世界階級:変身前は13未満、変身後は11くらい
レベル:8/24
才能:家庭菜園1
出展作品:心愛戦隊エターナルF
シンの嫁。荒廃した世界ではあるが原作通りに巨乳。彼女だけ原作とは名前が違う。
原作でもあまり明るい方ではなかったが今作では輪に掛けて暗い。それでも根っこは根明。愛の力でエンジェルに変身するが原作以上に出番は少なめ。変身すると亜GEARを使わなくても空を飛べるようになる。武器としてレイピアを使用する。……愛でレイピア装備の女性型でナース。モデル&原作での本名は察しろ。
原作ではシンがラーメン屋の屋台やっている間自身は医大に通っていた。
GEARは浄化。原作通りスライト・デスを倒すカギになる。亜GEARは飛行。空を飛べるようになる。これで空を飛べるヒロインは何人目だろうか。

黒山(くろやま)ライ
年齢:18歳
身長:181センチ
体重:74キロ
所属:学園都市
GEAR:友情
亜GEAR:瞬間移動
属性:秩序・善・風
好きなもの:仲間、魚
苦手:カラス
世界階級:変身前は13未満、変身後は11程度。
レベル:24/30
才能:体術1、サバイバル1
出展作品:心愛戦隊エターナルF
友情と雷を司る3番目の黒い戦士シュバルツ。原作ではシンと愛名の幼馴染。モデルは某フロンティアの雷のブリッツやボルグな5人目。あれをスタイリッシュにした感じ。
クールでやや根暗だが友情には厚い熱い男。
GEARは友情。友を守るために限界以上の力を出すGEAR。この世界では既に絶滅寸前。そのため通常以上の出力になっている。
亜GEARは瞬間移動。しかし見える範囲に限られる。GEARとリンクすればもっと遠くまで瞬間移動が可能になる。
変身後のシュバルツは電気を操れる以外に特殊能力がない分、純粋な戦闘能力に優れる。

舛崎(ますざき)世一(よいち)
年齢:14歳
身長:157センチ
体重:41キロ
所属:学園都市、非戦派
GEAR:数学
亜GEAR:ニュートンコントローラ
属性:秩序・中庸・火
好きなもの:数学
苦手:暗記系
世界階級:11
レベル:57/71
才能:数学1、戦術1
出展作品:Sforza
Sforzaシリーズ主人公。中学3年生。原作よりも小柄になっている。原作以上に仲間が多いが原作以上に経験を積んでいる。
数学の才能を持つが世界が世界故にほとんど生かせていない。生身での登場は久しぶり。未来での相方の親には会えるかどうか。
GEARは数学。いずれの世界でも14,5歳より年上にはなれていないがフォルテのシステムに巻き込まれなければ将来は数学の教授か学者になれるほどの才能の持ち主。
亜GEARはお馴染みニュートンコントローラ。可視不可視関わらずあらゆる力やそのベクトルを自在に操れる亜GEARの中でもかなり優秀で強力な能力。その優秀さは学生同士の殺し合いだけでなく未来においての人外相手にも証明されている。
当然ながら未来での記憶はもちろん経緯が違うためか原作での記憶も持ち合わせていない。実戦経験を積みまくっているからかカードなしでのニュートンスフォルツァとは互角に戦える。
ちなみに未来の作品では「桝崎」名義だが「舛崎」でもどちらでも構わない。

落合(おちあい)美香子(みかこ)
年齢:12歳
身長:140センチ
体重:28キロ
3サイズ:65・51・64(A)
所属:学園都市、非戦派
GEAR:頑丈
亜GEAR:水
好きなもの:安らぎ、植物、姉
苦手:戦闘
世界階級:変身前は13未満
レベル:23/40
才能:育児1
出展作品:Sforza
原作以上に小柄な後輩。中学1年生。メインヒロイン?ややヤンデレ?でも基本優しい女の子。
原作ではギリギリでどの作品でも最終決戦には参加できていない。能力者としては舛崎よりも長い。今作ではやはり原作以上に戦い慣れている。とは言え原作よりも身長は10センチ以上縮んでいて栄養失調レベル。ちゃんと生き残るとは思うけれども。
GEARは頑丈。名前の通りで外見以上に頑丈で、かなりしぶとい。だからっていじめないで上げてください。
亜GEARは水。既に存在している水はもちろんまったく水のない空間でも空気中の水分などを使ってある程度戦える。原作ではただの水圧でしか使ってこなかったが本作では色々搦め手も使えるようになっている。
余談だが原作において非同人作品では初めて濡れ場のあったキャラクター。と言っても自慰程度だが。本作ではどうなることやら。と思ったら最終話で姉妹でレズセしてた。

落合(おちあい)紀香(のりか)
年齢:17歳
身長:161センチ
体重:50キロ
3サイズ:80・59・79(C)
所属:学園都市
属性:中立・中庸・林
GEAR:懸念
亜GEAR:無力化
好きなもの:妹
苦手:世界
世界階級:13未満
レベル:9/11
才能:性技1
出展作品:Sforza
美香子の姉。原作ではちょい役。多分この時点で原作よりも出番多め。あと死んでない。死なないかは不明。
当初から美香子の食事を用意するために強い男に抱かれたりしていた。6年前に美香子とははぐれてしまい、互いに生死不明と言う状態だった。それから3年間はとあるグループに娼婦として拾われていたが抗争に巻き込まれて再びさすらいの身に。その間に子供を産んだが栄養失調のため仕方なくその子供で飢えをしのいでいた。そしてそれから詩吹と出会う。
GEARは懸念。この時代では珍しいが、特に戦う力もないのにここまで生き延びていたのはこのGEARのおかげかもしれない。
亜GEARは原作通り無力化。直接触れた相手の亜GEARを3時間無力化するもの。これで寝た相手を殺したりもしていた。


後藤(ごとう)一也(かずや)
年齢:14歳
身長:160センチ
体重:51キロ
所属:学園都市、非戦派
GEAR:回復
亜GEAR:アウトホール
好きなもの:肉、須田
苦手:防衛戦
世界階級:13
レベル:55/62
才能:ハンドボール1、勉学1
出展作品:Sforza
Sforzaαにおける主人公。舛崎の頼れる先輩。同い年だけど。どちらかと言えば未来世界の舛崎は後藤に近い性格。
原作では両親同士の不仲を解消するために戦いに臨んだ。本作では願いがもはや存在しないためかただただ仲間を守るために戦っている。また、原作では投げ飛ばされた金属バットを回し蹴りでへし折ると言う紅葉並みの事もしでかしていたり。
GEARは回復。しかし自覚していないため自分の体力のみ且つ少量ずつしか回復できない。
亜GEARはお馴染みアウトホール。チャージした時間だけ小型のブラックホールのようなものを生み出す能力。攻撃にも防御にも使える汎用性の高い能力。原作では当初使いこなせておらず120秒溜めて120秒間使用と言う定型だけだったが原作よりもさらに経験を積んでいるため小出しに出来るようになっている。

須田(すだ)郁美(いくみ)
年齢:14歳
身長:162センチ
体重:54キロ
所属:学園都市、非戦派
属性:秩序・中庸・林
GEAR:再生
亜GEAR:治療
好きなもの:平和
苦手:戦闘
世界階級:13未満
レベル:8/20
才能:治療1
出展作品:Sforza
後藤の嫁であり幼馴染。回復専用。非能力者を戦いに巻き込まないと言う願いを叶えた原作の英雄であるが今作にはそれはない。マミった人。平井とは仲が悪い。
非戦派における医療チームの頭であり、ある意味舛崎や後藤と言った直接戦闘組よりも多忙な生活を送っている。
戦えばほぼ間違いなくそのまま犠牲者が出る原作ではともかく、常時サバイバルで戦いを終わらせるために捕らえた者の治療も担当しているため原作同様かなり平和に貢献している。
GEARは再生。亜GEARでは本来不可能な欠損部位などの再生なども可能。
亜GEARは治療。原作と違って再生のGEARなしでは欠損部位の再生などが出来なくなったが複数を対象に取れるようになり、治療速度も速くなっている。
初期案では最新作「そしてカメは覇者になった」と同じ魔法が使用可能な世界観にするつもりだったため攻撃魔法を覚えて戦闘でも役に立つようになる予定だった。今作でも死ぬかどうかは未定。

桝藤(ますふじ)灯(あかり)
年齢:15歳
身長:166センチ
体重:55キロ
所属:木漏れ日ヶ丘学園
属性:秩序・中庸・風
GEAR:発明
好きなもの:泪、バイク
苦手:魚
世界階級:13未満
レベル:18/30
才能:レース1 発明2
出展作品:SforzaZERO
全ての始まりとも言えるフォルテプログラムを作成した人物。泪とは幼馴染。100年以上前にフォルテを作成後、時間の止まった木漏れ日ヶ丘学園の校舎内に封印されていた。
女みたいな名前だが普通に男子。基本的に金属バット片手にバイクで走りながら戦う人物。フォルテの生みの親であるため亜GEAR能力による直接的な対象にはならないと言う特殊な権限がある。しかし本人も亜GEAR能力が使えないと言う弱点が。
愛車はホンダゴールドウィング。無免。元々は兄の物。
GEARは発明。泪と協力してフォルテを作り上げた。
舛崎、後藤の1年先輩。名前は二人の名字から。こちらは「桝」藤であっている。
荒廃した世界で育ったわけではないためちゃんとしたガタイをしている。

辻原(つじはら)泪(なみだ)
年齢:15歳
身長:157センチ
体重:50キロ
3サイズ:79・56・80(C)
所属:木漏れ日ヶ丘学園
属性:秩序・中庸・林
GEAR:発明
好きなもの:枡藤、犬、発明
苦手:猫、パソコン
世界階級:13未満
レベル:2/80
才能:プログラミング2、宇宙科学2
出展作品:SforzaZERO
フォルテ開発者の一人。枡藤を下の名前で呼ぶ唯一の幼馴染。パソコンは苦手意識はあるものの才能には恵まれている。枡藤同様100年以上木漏れ日ヶ丘学園に封印されていた。枡藤同様フォルテの開発者権限で亜GEARの対象には直接選ばれない代わりに亜GEARを得ることはない。枡藤同様荒廃する前の時代の人間のため健康的な肉体をしている。
GEARは発明。荒廃の時代に多いのは皮肉か叛逆か。枡藤と合同で力を使うことでフォルテと言うチートってレベルじゃない生体プログラムを作成できた。
陽翼や来音とは仲良くなりそうだが共演できるかどうか。

大川(おおかわ)彩仁(あやひと)
年齢:13歳
身長:149センチ
体重:39キロ
所属:学園都市、大川派、伊藤派
属性:混沌・善・火
GEAR:不明
亜GEAR:火力
好きなもの:殺し、女
苦手:自分以上の実力者。
世界階級:13
レベル:38/38
才能:戦術1
出展作品:Sforza
Sforza世界のある意味便利屋。学校にテロリスト要因。後藤、舛崎にトラウマを刻んだ張本人。トリガーハッピー。
それなりにカリスマも実力もあるのだが本物と比べると悲惨。下の名前は初出だが原作でも一応同じ。本人は女みたいな名前を嫌っているため部下には苗字で呼ばせている。
亜GEARは火力。桃丸、雲母と同じで武器を召喚して扱える。原作ではとにかく攻撃力の高い武器だけをやたらと使用していたが本作ではやや小回りが利くようになっている。が、亜GEARに頼りすぎのためかGEARは未覚醒。


平井(ひらい)芽吹(めぶき)
年齢:14歳
身長:150センチ
体重:40キロ
3サイズ:69・55・70(A)
所属:学園都市
属性:混沌・善・火
GEAR:未覚醒
亜GEAR:ブラックハンド
好きなもの:戦闘、殺戮
苦手:強者
世界階級:13未満
レベル:29/29
才能:身軽1
出展作品:Sforza
大川とよくセットで登場する女戦士。作者の作品としては珍しく仲間にならない完全に敵な女性。
生まれも育ちもひどかったため他の女性をことごとく嫌っている。殺す際には頭部をよく狙う。
大川とはよく同盟を結ぶが性格的にも戦闘的にも相性が悪い。
GEARは未覚醒。亜GEARはブラックハンド。黄緑の牙・VICZERと似た能力であり、本数が一本のみ、吸収能力がない代わりに非実体でサイズを含めある程度形状を変えられる上何度でも再生可能な点が異なる。威力は大体同じだがこちらの方が熱を帯びているためやや破壊力が上。大体相手はこれで首から上を粉砕されて死ぬ。
自身の強さも弱さも知っているためか気に入らなくとも強者がいれば同盟を組んだり取り入れようとしたりする。

伊藤(いとう)秀吉(ひでよし)
年齢:19歳
身長:175センチ
体重:68キロ
所属:学園都市、伊藤派
属性:中立・中庸・林
GEAR:統率
亜GEAR:相転移
好きなもの:リンゴ、猛禽類
苦手:犬、数学
世界階級:11
レベル:63/80
才能:統率2、戦術2
出展作品:Sforzaα
学園都市トップクラスの強大チーム・伊藤派のリーダー。個人での実力もトップクラス。カリスマもある。非の打ちどころのないボスクラス。
多くのSforzaキャラが原作よりも経験を積んで大幅に強くなっているが伊藤の場合は人間的にも成長している。伊藤派も大幅に拡大されているし。
GEARは統率。自覚はしていないが発動自体はしていて原作とは比べ物にならない組織になっている。
亜GEARは相転移。物体の状態、液体・気体・個体などを強制変換。またはそのエネルギーをそのままぶつける、亜GEARの中でもトップクラスの破壊力を有する。強制変換中は原子がむき出しになるため相転移同士が勢いそのままに激突を果たすと小規模な核爆発が生じる。伊藤、海藤には科学知識がないために相転移を行う際に発生する無尽蔵のエネルギーを集約してそのままぶつける攻撃を多用するが科学者などが使えばいくらでも使い道があり、危険。ちなみに伊藤と海藤が最大出力で相転移の技をぶつけ合えばファットマン原爆20発分以上の威力となり、爛でも一気に体力を奪い尽くされて死亡する可能性が高い。

海藤(かいとう)一縷(いちる)
年齢:19歳
身長:181センチ
体重:76キロ
所属:学園都市、海藤派
属性:秩序・悪・火
GEAR:叛逆
亜GEAR:相転移
好きなもの:戦い、猫
苦手:柑橘類、女
世界階級:11
レベル:68/68
才能:戦術1、体術1
出展作品:Sforzaα
学園都市トップ派閥・海藤派のリーダー。伊藤とは幼馴染で同じ能力を持つ。
昔捕らえて犯した女にアレを噛み千切られて以来女性恐怖症。
伊藤がマフィアや会社など秩序と統制のとれた組織の頭に相応しいとすればこちらは盗賊やチンピラ達など力とノリで群れる集団の頭に相応しい。頭脳でなく勢いで侵略するタイプ。
GEARは叛逆で、自分より強いものに対して強い反抗心を持てば持つほど通常以上の力が発揮できるようになる。その力と強力な亜GEARを用いて一般男子から5年かけて今の地位にまで上り詰めた。しかし、既に上位の存在がいないため効果は停滞中。
亜GEARは伊藤と同じで相転移。得意の接近戦に合せて使用したり闇討ちなどに使用する事が多い。相手が室内にいる場合は建物ごと消し飛ばしたりなど手段を択ばずに使用する事も。
目下最大の狙いは目の上のたん瘤である伊藤の抹殺。


河原(かわはら)桜子(さくらこ)
年齢:15歳
身長:153センチ
体重:43キロ
3サイズ:77・60・77(B)
所属:学園都市
属性:中立・中庸・林
GEAR:回避
好きなもの:魚
苦手:特になし
世界階級:13未満
レベル:4/17
才能:習字1
出展作品:一撃必殺!
石原狂子の親友。しかし正体は知らない。原作では兄がいたが本作にはいない。原作では主人公の一人。しかし戦闘能力は一切持たないし、戦闘に巻き込まれること自体稀。
GEARは回避。攻撃の回避はもちろん、不幸や不運からの回避と言う事も可能。常時発動型なので自身で制御は出来ない。100%幸運と言う訳ではないのは本編での状況が知るところ。
原作では某ローゼンな人形のゆっきーと契約する上、3番5番のマスターである巻いたり巻かなかったりする少年が登場しないこともあってドール全員のマスターになると言う後の原作にも近い状態になった。もちろん版権ぶっちぎってるため本作ではそんな活躍はない。まあ、何かしら役割は持たせるつもり。

三重(みえ)燦飛(さんひ)
年齢:15歳
身長:154センチ
体重:44キロ
3サイズ:79・61・80(C)
所属:学園都市
属性:秩序・善・山
GEAR:力
好きなもの:おっさん
苦手:貧乏暮らし
世界階級:13
レベル:19/90
才能:料理1
出展作品:一撃必殺!
桜子の中学時代からの親友。かなりのお嬢様。しかし本作ではただの一般人。あまり見せることはないが極度のオジコン。
本作でも血筋は結構良家。だからか才能限界がとても高い。活かせる事はあまりないけど。ちなみに原作においてはその性癖を最大限刺激された際には敵を一人倒している。
GEARはお馴染み、力。無自覚だが上述通り性癖が刺激されて暴走している時には発動する。
桜子、燦飛、狂子の3人は原作でも仲良しの親友で燦飛もまた狂子の正体は知らない。しかしまだ未登場の4人目は狂子の正体を知っている。が、桜子と燦飛はその4人目の正体を知っていて、狂子は知らない。

小林(こばやし)大(まさる)
年齢:16歳
身長:166センチ
体重:57キロ
所属:学園都市、非戦派
属性:秩序・善・風
GEAR:キャンセラー
好きなもの:数学、特撮
苦手:国語、英語
世界階級:13。しかし危険度、脅威度は未決定。
レベル:45/100
才能:キャンセラー2
出展作品:ウルト○マンセイバーズ、イシハライダー
2番目主人公。キャンセラーの少年。熱血漢。M78の宇宙人たちとの共闘経験あり。
黒主零よりも先に誕生した2番目主人公。しかし投稿作品での出番はこれが初めて。原作では中学生で全寮制の学校へ行ったため一人暮らし。中学3年をM78から来た親友達との冒険に費やした後高校でボディビルダーに追い回された。
一応本作では原作の経歴はない予定だがギャグ的描写でたまに虚憶を引き出す。
GEARはキャンセラー。オンリーGEARであり、まだ調停者達にも明らかにされていない異例の力。GEARや亜GEARにかかわらずあらゆるベクトルやジュールを伴った攻撃を無力化する能力。主に右手を向けているがオンリーGEARの効果は魂含め全身に宿っているため構える必要も触れる必要もない。さらにキャンセラーの力が強まると、無効にした分のエネルギーを吸収して強くなったりもする。この最終形態では全長数百メートルの大怪獣すら素手で殴り倒せるほどのパワーになる。原作でもキャンセラーの謎は明らかにされなかった。時期が近いため幻想殺しのパクリとよく言われたが実際にはそれよりもっと前のゴミを木に変える力のレベル2がモデル。

フォルテ
年齢:100歳
身長:198センチ
体重:0
所属:スライト・デス、学園都市
属性:秩序・善・山
GEAR:フォルテ
好きなもの:無秩序な秩序世界、枡藤、泪
苦手:イレギュラー
世界階級:11、自身の支配内なら6
レベル:100/100
才能:戦術2 悪略2
出展作品:Sforza
Sforzaの始まりにしてラスボス。枡藤と泪が作り上げた宇宙への脅威に対抗するための空間支配プログラムの擬人化した存在。学園都市、ひいては人類の絶滅を阻止するために本来倒すべきスライト・デスの幹部になり、学園都市を己のステージにすることで人類を生きながらえさせている。やろうと思えばもっと平和的に人類を守る事も出来たのだが本人の性格が魔境のためかこのような形になった。しかし主人である枡藤、泪に対しては忠実であり忠誠心も本物。原作とは逆に亜GEARを与えることは出来ても消すことは出来なくなっている。
GEARはフォルテ。二人に開発された通りの性能を発揮するための物。全ての亜GEARを有している亜GEARの司界者のような性能であらゆる亜GEARを使用可能。さらに実体が存在しないためか本体であるプログラムが破壊されない限り何度でも復活する。
学園都市の外に出る事も可能だがかなり能力は制限される。学園内であればダハーカの時間制御も受けない。