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キラッとプリチャンVSアイドルタイムプリパラ!~友情!!ダイヤモンドタッグマッチ!!~第3話「尽き果てることなしその流星!!」

・赤城財閥特別控室。あんなとえもの二人がオメガマンアリステラ型の自動木人と組み手をしている。

「黄色いの!!ステップが遅れていますわ!!相手が本物のアリステラだったら2度はオメガハンドを受けていますわよ!!」

「だぁぁぁっ!!わかってるよそんなこと!!と言うか!!試合前なのにこんなハードなトレーニングしていいの!?」

「何を言っていますの。相手はあのめると白鳥アンジュですのよ?確かに半年前に戦ったアイランジュよりかは戦力的に劣るでしょうが、それでもあの時相手できたミラクルスターの3分の1、わたくしとあなたの二人で挑む必要がありますわ。友情パワーを発動できていなかったとはいえあなた達ミラクルキラッツ3人掛かりでもアンジュさんには歯が立たなかったじゃないですの。それに、めるも悔しいですがタイマンでの勝負ではわたくしよりかも勝率は上。わたくしもめるには数度しか勝ったことがありませんわ」

「……う~ん、あたしは一回少しだけめると戦ったことあるけどあの時はほとんどお遊びだったみたいなものだし。ぱぱ~っと双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)でめるだけ先に倒してアンジュさんに備えるのはどう?」

「馬鹿おっしゃい。めるがそんなに甘い相手だと思わない方がいいですわ。言っておきますが、アンジュさんはおろかめるにだってもしかしたら二人掛かりで挑んでも勝てないかもしれないんですのよ?」

「……あの子、そんなに強いんだ……」

「さ、続きをなさい。レヴォリューションコンビネゾンを完璧に仕立て上げないと今回勝ち目はありませんわよ」

「う、わ、分かったわよ!」

・一方。ブラックフォレスト経由のパープルプライド控室。

「……そろそろいい頃合いかしら」

アンジュが紅茶を飲み干す。ちょうど、目前のカプセルが開かれ、中から全裸のめるが姿を見せた。

「……これでめるめるは……」

「ええ、そうよ。友情パワーはもしかしたら使えなくなってるかもしれないけど我慢してね」

「……うん。すごい力を感じる。これならアンジュだけじゃない、神アイドルだってめるめるは勝てそうだよ」

「……それは面白いわね」

「約束だよ、アンジュ。めるめる達が優勝したら世界で一番強い相手と戦わせてくれるって!!」

「ええ、約束はちゃんと守るわ」

そうしてアンジュはめるを抱きしめた。

・特製リング。

「レディースエーンドファイターズ!!いよいよ第3回戦を開始いたします!!」

めが姉ぇのアナウンスで観客が盛り上がる。

「まずは、赤コーナーより!!ツインテールズの入場です!!!」

同時に、3600キロメートル離れた海。海保が巡回をしていると突然に異常な信号をキャッチした。

「What's happen!?」

「t,that's!!!]

「That's....a,AKAGIGENSUI!!!!」

1000人もの海保隊員が驚きの声を上げる中水上に姿を見せたのは一隻の潜水艦。全長3600メートルの超巨大原子力潜水艦「赤城元帥」の浮上である。

「……」

メイドのエリちゃんがミサイル発射ボタンを押す。すると、赤城元帥の背面にあたる部分が左右に分かれ一発のミサイルが姿を見せ、そして直ちに発射される。

「!何かが秒速26キロの速さでこの会場に迫ってきています!!」

「何ですって!?まさかアイドル超人達を狙ったテロ!?」

ユヅルの報告を受けためが姉ぇが驚いて数秒、特製リング上空にミサイルが飛来。同時に特製リングから一筋のレーザーが発射されると、飛来したミサイルを爆砕する。

「アンナァァァッ!!!」

野太い謎の効果音が空中に響き、そして、発生した大爆発を貫いて何かがリングに落下する。それは、

「お~っほっほ!!お待たせいたしましたわ!!」

「あ、あれは!!赤城あんなちゃんです!!萌黄えもちゃんもいます!!なんとこれら一連の事件はテロではなくツインテールズのエントリーだったぁぁぁぁっ!!!」

「……いや普通にテロだと思うよ?これ」

パラシュート着地をしながらえもが遠い目でつぶやく。

「続きまして!パープルプライドの入場です!!」

めが姉ぇのアナウンスと同時に今度は会場全体が、いや町全体が大地震に見舞われる。

「こ、今度こそ何かのテロ!?」

叫ぶめが姉ぇ。しかし次の瞬間、キラ宿タワーが真っ二つに分かれ、キラ宿キャッスルが出現。真っ二つになったキラ宿タワーの残骸は一度粉々になり、しかしやがて長大な階段に再錬成されてキャッスルから特製リングまでの道のりを作り出す。そして真昼の屋外にもかかわらず空が暗くなり、やがてキャッスルから白と紫の輝きがゆっくりとリングに向かって接近を始めた。

「あ、あれは!!白鳥アンジュさん!!そして紫藤めるちゃんです!!!これもまた天変地異ではなくパープルプライドのエントリー演出でした!!」

「……いや十分天変地異だと思うよ?これ」

少しずつ元の晴れた昼下がりに戻りつつある空の下でえもが遠い目をする。

「これで両チームのエントリーが終わりました!!まずは!!先日のオメガの民との戦いで超人強度8000万パワーを誇るパイレートマンに勝利を収めた萌黄えもちゃん、身長150センチ、体重35キロ、超人強度88万パワーと、あのキン肉マン・スーパー・フェニックスすら破ったオメガマン・アリステラと互角以上に戦った赤城あんなちゃん、身長147センチ、体重32キロ、超人強度は同じく88万パワーからなるツインテールズ!!!ツインテールズは先の戦いでスーパーフェニックス及びさらちゃんを破ったアリステラ、マリキータマンのコンビであるオメガ・グロリアスにも勝利している実績がある名チームです!!!」

「お~っほっほっほ!!!」

「……本当に体重まで言っちゃうんだ……」

高笑いのあんなと赤面のえも。

「続きましては!!あの神アイドル春音あいらの二番弟子にしてキラ宿最強のプリチャンアイドル超人!!!先のオメガの民との戦いには不参加でしたがその前の完璧超人始祖との戦いではまさかのネプチューンマンに魅入られて完璧超人への転生を果たし、”完白”の二つ名を戴いた上でペインマン、シングマンと完璧超人始祖を2名立て続けに破った超常超人!!!身長166センチ、体重58キロ、超人強度は7100万パワーの白鳥アンジュさんと、キラ宿が誇るアイドル超人グループ・ミラクルスターで最も超人強度が高く、完璧超人マーベラス、ピーク・ア・プー、完璧超人始祖のジャスティスマン、オメガの民のギヤマスターまでも打ち破った期待の新星……いえ、流星!!身長152センチ、体重43キロ、超人強度は135万パワーの紫藤めるちゃんのコンビであるパープルプライドです!!」

「めが姉ぇさん、少し情報が違うよ?」

「え?めるちゃん、どういうこと?」

「めるめるはもう超人強度135万パワーのアイドル超人じゃないよ。……めるめるは完璧超人”完才”、超人強度は8300万パワーのニューハイパーめるめるだよ!」

「!何ですって!?」

「おおおっと!!とんでもないカミングアウトです!!!まさかのめるちゃんが完璧超人への転生を果たしていたとは!!しかもその超人強度は8300万パワー!!あのパイレートマンを上回り、アリステラにさえ迫るほどの凄まじい超人強度となっています!!」

「……める、どうして完璧超人に……!?」

「あんあん、めるめるは強くなりたいんだよ。さららも言っていたようにメルティックスターをもっともっと強いチームにするために限界を超える必要があった。そのためにはアイドル超人でも悪魔超人でも足りない。だからめるめるは完璧超人なったんだよ」

「……そんな……」

「める……、でも完璧超人なったら感情がなくなっちゃって友情パワーは使えなくなるんでしょ!?」

「それより強ければ問題ないよ」

3人が会話している間にアンジュがリングアウトする。

「……わたくしが先にやりますわ」

「……いいの?」

「ええ。わたくしがやらないといけませんわ」

「ツインテールズの先鋒はあんなちゃんのようです!!パープルプライドの先鋒はめるちゃん!!それでは、見合って見合って……試合開始っ!!」

試合開始を告げるゴングが鳴り響く。同時にリング中央であんなとめるの二人が激突する。

「くっ!うううう……!!!」

しかし、手四つの勝負であんなはひどく後退していた。否、めるの力が強すぎて押されているのだ。

「あんあん、この程度じゃメルティックスターは前に進めないよ?」

「める……!!」

ついにはリングロープにたたきつけられるあんな。しかし、あんなはロープの弾力を生かしてめるの股下を潜り抜けてめるの両手足をまとめて自身の両手足でホールドする。

「フルムーンクラッチですわ!!」

「おおっと!!あんなちゃんサブミッションだ!!形状としては先ほどしゅうかちゃんが行なったスパンコールアウシュビッツのリバースと言えるでしょうか!!」

「しゅうかのと比べると、決めてる場所が少ないよね、あれ」

「……でもそう変わらない難易度でありながらあそこまですんなりと……よほど使い慣れているみたいですわね。習熟度も高いと見えます。あれだけ完璧に決まっていれば単独でほどける超人は……」

控室。芋ご飯をくいながらゆいとしゅうかが観戦している。その中で動きは訪れた。

「あんあん、サブミッションってこうやるんだよ?」

「!?」

「おおおっと!!めるちゃん、力ずくで両足のホールドを解除!!さらには前屈した状態でありながら腕の力だけであんなちゃんを持ち上げて、目前のリングロープに吊り下げ……逆さまになったあんなちゃんの両足を自身の両手で、あんなちゃんの両腕を両足でホールド!!ロープを挟んで放たれためるちゃんのサブミッションは一気にあんなちゃんの両手足の関節を決めた!!」

「……だけじゃないですね。ロープはしなりますが決して柔らかくはない。それをあのような形で胴体に押し付けられると内臓にもダメージが行きます」

「仮にあの技から抜け出せても高確率で頭からリングの外に落ちますしね。リングの中はマットが敷いてありますけどリングの下はコンクリートの地面。二段構えの威力の高いサブミッションホールドだと思います」

「ああっと!!えもちゃんがサインを出しました!!えもちゃん介入の印です!!」

「このぉぉぉぉっ!!!」

「えもちゃん!!ロープの弾力を生かして反対側のロープにいるめるちゃんに向かってフライングボディプレスを決行!!このままでは真後ろを向いているめるちゃんに炸裂……し、しません!!!」

「え、えも……!?」

「駄目だよえもえも。ただの88万パワーじゃめるめるには歯が立たないよ?」

「何と!!めるちゃんはえもちゃんの攻撃を後ろを向いたまま片手で受け止めました!!!片手を離したというのにあんなちゃんへのホールド、全く緩みません!!これが完璧超人となっためるちゃんの8300万パワーなのでしょうか!!」

「モニタでの計測によると現在のめるちゃんの握力は推定600キロ。片手の握力だけであんなちゃんを完璧にホールドできますね」

「600キロ、す、すごいですね。カズキさんでやっと700キロくらいなのに……」

「でも確か前にえもえものツインテールを骨ごと引き抜いたサイコマンの握力は2トン。それに比べたらめるめるの握力はまだまだ。でも、それじゃダメダメなんだよね」

「なんと!めるちゃんそのまま片手でえもちゃんを持ち上げてあんなちゃんの後ろ側にかぶせ、二人まとめてロープ越しにホールドを開始しました!!!」

「……超人強度だけで言えば今のめるとマリキータマンは互角。しかし、純粋なパワーだけならいまのめるの方が上かもしれない」

医務室。さらがモニタ前で難しい顔をしている。

「……でも、いまのめるちゃん全然可愛くありません」

「……める、あんな……」

「あ、さらちゃん!!どこへ行くんですか!?まだまともに立って動いていい体じゃないですよ!!」

「でも、行かなきゃいけないんだ……!」

「なら、すずが手を貸します!」

「すずくん……!」

「すずにだってわかります。今のめる先輩が普通じゃないってこと。それをあんな先輩はどうにかしたいと思っていても何かが原因で出来ない。けどさら先輩ならどうにかなるかもしれない。どうにかしてあげたい。……ですよね?」

「……ああ、助かるよ」

「いいですって!!」

「すずちゃん。まりあはまだ動けそうにありません。さらちゃんをお願いします」

「……うん。まりあは安静にしてて」

そうしてすずの肩を借りてさらが医務室から移動を開始した。

特製リング上。めるの圧倒的ホールドから逃れられず四肢と胴体に亀裂を走らせるあんなとえも。

「大会公式ルールに則り、60秒以上サブミッションを解除できなかった場合にはKO扱いとします!!残り40秒!!」

「ほら、あんあん。えもえも。もう40秒しかない。このまま負けちゃうの?」

「くっ……ううううう……!!」

「あんなちゃん、力を込めますが全くホールドが解除される気配がありません!!このままKOに……ああぁぁっ!!!」

「……めるも、あんなも全然えもくないよ……」

「める?」

「……あなた……」

「こんなの全然えもくないよ……。あたし、いつも明るくて元気で、何事も興味を持って楽しくしてるめるが好きだった。ライバルの一人だけど、でもあたしはそんなめるが大好きだった!!」

「おおおっと!!!えもちゃん、全身からとてつもない炎が燃え盛りました!!これは炎の友情パワーです!!!」

「超人強度計測……3000万パワー……いや、4000万パワー!!どんどん上がっていきます!!」

「たったひとりだけ強くなってそれのどこが友達なのよ……友達と笑えなくなって何が楽しいの……!?あたしはそんなの全然えもくないっ!!!」

「つ、ついにえもちゃんがホールドを打ち破りました!!!現在超人強度は6600万パワー!!いやまだ上がっていきます!!!」

めるのホールドを破り、リング外に真っ逆さまに落ちるえも。しかし体勢を立て直し、両足から着地。その衝撃を利用してすぐさま大跳躍。1秒とかからずにめるの背後に着地。

「このぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

「あああああっ!!!!えもちゃん!!ついにめるちゃんのあんなちゃんへのホールドも払いのけ、めるちゃんをドラゴンスープレックスで真後ろに投げつけたぁぁぁぁっ!!!」

「あなた……」

何とかリングに踏みとどまったあんなが見るリング中央でえもとめるが手四つでぶつかり合う。

「……すごい、すごいよえもえも。この感じからして7000万パワーは超えてるよ……!」

「そんなものじゃない!!友達のために戦うための力は、どこまでまでだって湧いてくるんだからぁぁぁぁっ!!!!」

「えもちゃん、めるちゃんを再び持ち上げ、そのまま跳躍!!この体勢はキン肉バスターでしょうか!?」

「違う!!」

空中で逆さまにめるを肩の上に乗せたえものツインテールが触手のように蠢き何倍もの長さにまで伸びてめるの全身を締め上げる。

「これはあたしの、えもめきバスターだぁぁぁぁっ!!!」

「えもちゃん渾身の一撃がいま、マットの上に炸裂ぅぅぅぅ!!!!激しい土煙や爆炎が巻き上がります!!!これはめるちゃん耐えられるか……え、えぇぇぇっ!!!めるちゃん、無傷です!!!」

「……っ!」

「すごいね、えもえも。今の一撃はマリキータマンやアリステラでも耐えられたかどうかわからないと思う。でも、めるめるには通じない」

「なんとめるちゃん!!空いていた両手で着弾の瞬間にえもちゃんの両手を払って両脚へのホールドを解除、そうして空に浮いたことで着弾の衝撃を空中に逃がしていた!!しかも両手でえもちゃんの顎をクラッチして着弾の衝撃をいくつかえもちゃんの顎に集中!!これは手痛いカウンターです!!!」

「え、えも!!」

あんなが見る前でえもはゆっくりと倒れ、吐血。めが姉ぇによるダウンカウントが開始される。

「……これはかなり厳しい状況ですね。ツインテールズは片方がダウン寸前。もう片方もそこそこダメージを負っています。対してパープルプライドはめるちゃんは多少ダメージを受けていますがそれだけ。アンジュは無傷のまま。場合によってはこのままめるちゃんだけでツインテールズの二人が倒されて敗北と言うことも考えられます。何よりえもちゃんは正式なタッチを受けてリングインしたわけじゃありませんので今あんなちゃんがタッチしたとしてもダウンカウントを消せるわけじゃありません。えもちゃんが自力で立ち上がらない限りえもちゃんのKOは必至……!!」

「完璧超人始祖さえ倒すほどの力を持ったアイドル超人が完璧超人に転生するとここまで強いだなんて……。以前確かプリパラタウンでも紫京院ひびきさんが似たようなことをして、ソラミドレッシングとファルルちゃんの7人掛かりで何とか倒したそうだけど、もしかしたら今のめるちゃんはあの時のひびきちゃんを超えているかもしれない」

「7!8!ナイ……おおっと!!えもちゃん立ち上がった!!」

「……はあ……はあ……はあ……」

肩で息をしながらえもは立ち上がる。口元の血をぬぐいながら、しかし確かに前方のめるを見据えている。

「えも……」

「あんな!!あんたそれでいいの!?めるが二度と笑えなくなっても!!あんたのためだけにアメリカに留学して落ちない流れ星を見つけて帰ってきためるが、こんな、こんな……二度と笑えないまま友達を嬲るだけの完璧超人になってもいいっての!?めるに対して一番友情パワーを発揮できるのはあんたでしょうが!!!あんたの友情パワーがあれば、めるを元に戻すことだってできるかもしれない!!友情パワーで奇跡の1つや2つ起こせなくて何が正義を司る正義超人なのさ!!!」

「おおおおおっと!!!!えもちゃんの炎がさらに激しく燃え盛ります!!あれだけのダメージを受けておきながら現在の超人強度は7900万パワーまで跳ね上がっています!!!これが友情パワーの力なのでしょうか!?」

「来てよ、えもえも。もっとめるめるを楽しませて?」

「……わかったよ、める。絶対にあんたをまた笑顔にさせてもっともっと楽しませてあげるから……だから、いま、あたしはここですべての力を出し尽くす!!あんなには負けるかもしれないけど、でも、でも!!!あたしだってめるの友達で、大好きなんだからぁぁぁぁぁっ!!!!」

「えもちゃん動いた!!リング中央でめるちゃんと手四つでぶつかり合う!!今度は互角の勝負です!!!その証拠に二人が全体重とパワーを踏み入れているマットに亀裂が走っています!!しかしそれもえもちゃんから滲み出る炎を受けて瞬時に再生!!破壊と再生を繰り返す戦場で今、二人が最大の激突を果たしています!!!」

「うおおおおおおおおおおおおあああああああああああ!!!!!」

「えもちゃんまためるちゃんを持ち上げて跳躍!!今度はさっきよりかも倍以上の高さにまで飛び上がりました!!!」

「えもめきバスターならめるめるには通じないよ?」

「だったらそれを超えていけばいいだけの話じゃんか!!!あたしの超人魂、なめるなぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「えもちゃんが吠えた!!!空中でめるちゃんの頭を下に向けて自身の両足をめるちゃんの脇の下に踏み入れる!!これはキン肉ドライバーか!?」

「それでもめるめるには通じないよ!!」

「めるちゃん!!!脇に入れられたえもちゃんの両足を脇で挟みつぶす勢いで力を込める!!その手がえもちゃんの太ももを掴み、両足を引きちぎらんばかりのパワーでホールド!!!早くもえもちゃんの両足の骨に亀裂が走る音が響きます!!!」

「そんなものでぇぇぇぇぇ!!!!!」

「えもちゃんのツインテールが再び動く!!!めるちゃんの両手を手上にかけるようにがっちり巻き付けてホールド!!!さらにそのまま伸びてめるちゃんの顔面をグルグル巻きにして視界と呼吸をふさぎます!!!」

「これがあたしに出来る最大のぉぉぉぉぉぉぉぉぉえもめきドライバァァァァァァァァァァァだああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

落下速度は音を超えた。まるで稲妻のように空気を貫き、えもはめるを頭からマットの上に叩きつける。

「す、すごい一撃です!!!とんでもない一撃がめるちゃんにぶち込まれました!!!瞬間最高超人強度は9100万パワー!!!現状今大会最高値です!!!」

「はあ……はあ……はあ……」

めるから飛び降りたえも。その体を包む炎が徐々に徐々に小さくなっていくと、やがてしりもちをつく。

「えも……」

あんなが歩み寄り、えもに手を貸す。その前方。めるがゆっくりと立ち上がる。

「あれを食らってダウンカウントすらなしか」

「……でも、ものすごく痛かったよ、えもえもの全力。今のめるめるでも正直言って倒れそうだよ。だから少しだけ休憩させてもらうね」

「……と言う事は……」

あんなとえもに背を向けて下がるめる。そのタッチを受けて白く輝く無傷の白鳥アンジュがリングインする。

「……えも、少し休んでなさい」

「……いいの?相手は強敵だよ?あんたはめるのために残っておいた方がいいんじゃないの?」

「何を言っていますの。あなたもうほとんど体力残ってないでしょうに。今戦っても一撃でダウンですわ。少しでも体力を回復していざと言う時にわたくしのために活躍なさい」

「……何よ、その言い方」

「心配しなくてもいいって事ですわ。……えも、あなたのおかげで流石のわたくしも既に、とっくに!!!エンジン全開になっているんですから!!!」

「おおっと!!あんなちゃん、えもちゃんの代わりに炎で燃え盛る!!!現在の超人強度は7200万パワーです!!!」

えもがリングの外に出ると同時、両者が走り出しリング中央で激突!力比べは互角……いや、わずかにあんなの方が上だった。

「流石ね、ミラクルスターの中ではめるちゃんの次に神アイドル級に近い存在。まだまだ私も修行不足だって教えられるようだわ」

「あなたには言いたいことはたくさんありますわ。でも、リングに立って言葉をたたきつけても意味がありません。わたくしもあなたも超人だというのでしたらリングの上で魂を込めてぶつけ合うのは言葉以上にこの拳ですわ!!!」

「おおおっと!!あんなちゃん!!手四つで力比べしながらアンジュさんに超至近距離ドロップキック!!!さらにただでは倒れずに閂にして背後に巴投げ!!!」

「ふっ、」

「あぁぁぁっと!!!しかしアンジュさん空中でアクロバティック!華麗な体捌きで方向転換!!投げられたにも関わらず立ち上がったばかりのあんなちゃんの背後で着地して……手刀です!!!」

「くっ!!」

「私の手刀、ガードできると思わない方がいいわ」

「そう!!白鳥アンジュの手刀によるフォーチュンカラットは相手の特性を書き換えてしまう恐ろしい技なのです!!過去には緩衝材で出来たペインマンや地球上のあらゆる物質、エネルギーでは破壊が不可能とされている宇宙隕石で出来たシングマンでさえもその性質を無力化して撃破している文字通り伝家の宝刀!!!あ!!あんなちゃんが回避した背後、鉄柱が衝撃波だけで飴細工のように溶けていきます!!」

「そんな、今回用意した特製リングは始祖同士が戦ったとしても損傷しない程度には頑丈に作らせているのに……!?」

「お忘れかしら?私の手刀は始祖を2度葬っている」

「ああっと!!白鳥アンジュ!!!手刀の連打です!!風切り音だけでも地球の自転速度が縮んでいきます!!純粋なパワーでは上回ったあんなちゃんであっても直撃すれば命はありません!!!」

「ならば!!」

あんなは手刀を回避するとアンジュの懐に潜り込み、

「アームロックですわ!!」

「無駄よ」

「あああ!!!あんなちゃんが掴もうとしたアンジュさんの腕!!しかしアンジュさん、それを見越していたようにステップで回避し、ついにあんなちゃんに手刀が炸裂してしまったぁぁぁぁぁ!!!!」

「あんな!!!」

リング外で叫ぶえも。アンジュの手刀は袈裟斬りにあんなの上半身を切り裂く。肩口から鮮血が火柱のように吹き上がる。指先は既に右肩から左わき腹までを深く切り裂いている。しかも、切り裂かれたところから肉体の抗生物質が腐食していき、血生臭い匂いと生ごみのような匂いが会場全体に漂い始める。

「アンジュのあの技、完璧超人になってさらに磨きがかかってるわね」

「あいらさんはあの技をどう対処していたんですか?」

「当たるとおしまいだからとにかくよけ続けて出来た隙に大技をぶつけて一撃必殺。あれに当たったことはないのだけれど、でも今のアンジュだったらそれも無理かもしれない。恐らくまだ私の方が実力は上だと思うけれども、圧勝は無理だと思う」

「……あいらさんがそこまで評価するなんて流石は白鳥アンジュですね……」

「でも、まだあの子は私に勝ったことはないわ。私の弟子たるもの、私を超えてもらわないと。そうすればあの子は遠くない未来で神アイドル超人に覚醒できる筈」

あいらが見据える。リングの上で直撃を受け、大ダメージを受けたはずのあんなが、しかし倒れなかった。

「!?」

「やっと捉えましたの」

「あああっと!!!あんなちゃん自身を切り裂いたアンジュさんの腕を自分の体の切り口で挟み込んでホールドしている!!!」

「そんな……!!」

「キラ宿出身のトップアイドル超人・白鳥アンジュ。こうしてほぼ一騎打ちで戦えたこと、光栄に思いますわ。でも、今はあなたに用はないんですの!!」

「な、なんと!!あんなちゃん自分に腕が刺さったままスライディングでアンジュの股下を潜り抜けた!!これは先ほどのあれが来るか!!!」

「フルムーンクラッチですわ!!!」

アンジュの背後。その両手と両脚を体育座りした状態で下段にホールド。身動きを封じながら腰に威力を集中させるサブミッション。

「だけじゃありませんわ!!」

「!?」

「何と!!!あんなちゃん、ホールドした状態のアンジュさんを両手だけで持ち上げた!!!アンジュさんはホールドがほどけずに腰を曲げて手足を封じられた状態です!!」

「えも!!」

「あんな!!!」

「えもちゃん!!再びサインを出し、リングに飛び込んだ!!!同時にあんなちゃんも跳躍!!!これは来るぞ!!あの技だ!!!」

「「レヴォリューションコンビネゾン!!!」」

「決まったぁぁぁぁぁっ!!!空中でえもちゃんがアンジュさんの腰に跨り、両足で首を絞めつけ、後頭部の靱帯を猛烈にストレッチする!!!その上で仰け反り、えもちゃんは両手であんなちゃんのツインテをがっつりホールド!!!その状態からさらにえもちゃんのツインテが伸びてあんなちゃんの股下を通ってアンジュさんの両手足首をあんなちゃんの手首ごと二重にホールド!!!さらにさらにあんなちゃんが両足をアンジュさんの両足に引っ掛けて……今、アンジュさんの両足からマットの上に3人分の体重を乗せて激突する!!!!」

「……っっっっ!!!!!」

あんなの両足により逆関節に決められた両足から着弾。その衝撃は両脚はもちろん、アンジュの腰に最も大きなダメージを与えた。それでもあんなとえもがアンジュに乗っかりながら絶妙にバランスを取り合う事でアンジュは倒れることが出来ず、この状態のまま静止するしかない。

「……アンジュ……」

めるが見る中、やがて両足と腰がへし折れたアンジュは後頭部、腰、両肩、両足から吐き出すように血を放ってからその場に崩れ落ちた。

「白鳥アンジュ撃沈!!!アリステラをも打ち破った双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)は、キラ宿最強のアイドル超人でさえも撃沈させた!!!」

「……あれではもう立てないでしょうね」

「ですね」

「あいらちゃんなるちゃんからのジャッジが下り、白鳥アンジュKO認定!!!まさかこの4人の中で一番最初に沈んだのはあの白鳥アンジュでした!!!」

「……これで残るは……」

アンジュから降りたあんなとえもがめるを見上げる。

「本当にすごいよ、あんあんもえもえもも。あれじゃ多分しばらくはアンジュは戦えないと思う。みらみらだいだいかりんりんみちみちかはわからないけども2回戦は多分戦えないよね」

「だったらどうする?める。降参でもする?」

「ううん、しないよ。あのアンジュを倒した二人をめるめるが倒す。それくらいのことはしないと完璧超人になった意味がないもん」

言いながらめるが再びリングイン。えもから受けたダメージは完全に消えたわけではないが、そこそこ回復している。逆にえももあんなもこれまでのダメージは深い。特にあんなだ。

「あんな、あんたもう下がった方がいいよ。何かすんごいことになってない?傷跡」

「……ええ、この傷は赤城財閥の医療でも治せるかどうかわかりません。でも、ここで退くわけにはいきません。流れ星が道を間違えようとしているのならそれを導くのはまた別の流れ星の役目!そしてあなたの言ったようにこの程度の事も出来ないのならこの、正義のレッドジュエルを授かるにあまりに不相応すぎますわ!!!」

「おおおおっと!!!あんなちゃんの全身が真っ赤に燃え上がる!!!これはただの友情パワーではありません!!!レッドジュエルの正義の力があんなちゃんの友情パワーを底上げしています!!!現在の超人強度は8800万パワー!!!いえ、まだ上がっていきます!!!」

「行きますわよ、める!!!」

「来て、あんあん!!!」

リング中央。再び激突するあんなとめる。手四つの力比べは互角!しかし大きな傷がある分少しずつあんなが押されていく形となる。が、

「あなた……」

「あたしだっているんだから」

「おおっと!!!めるちゃんに押されていくあんなちゃんをえもちゃんが受け止めた!!!そして今、えもちゃんの勇気のイエロージュエルまでもが輝きだす!!!こ、これは、超人強度が計測不能!!!つまり1億パワーを超えています!!!」

「そ、そんな……!?」

「める!!いい加減目を覚ましなさい!!!」

えもからの力が流し込まれたあんながめるをそのまま持ち上げる。

「っしゃぁぁぁ!!!」

「なんと!!!あんなちゃんがその腕でめるちゃんを真上に持ち上げ、背後のえもちゃんがあんなちゃんの肩に手を置いて倒立!!!あんなちゃんの頭上で背中同士を激突させました!!!い、いえ、それだけじゃありません!!!さらにえもちゃんが空中で、背中合わせの状態でめるちゃんの足を四の字にホールド!!!都合二人分の体重がかかっているあんなちゃんですが微動だにしません!!!これが正義と勇気、2つのジュエルの力なのでしょうか!?」

「すごいよ……ここまでなんて……!!」

両手足を決められているめるが目を閉じる。直後。

「あきらめちゃいけない!!める!!!!」

「え……?」

「……さら!?」

客席とリングの間。そこにやってきて叫んだのはすずに肩を借りているさらだった。

「さらら……?」

「める!!いいんだ!!!負けたくないって悔しくて、それで叫んでしまってもいいんだよ!!!無理に完璧超人になってまで負の感情を押しとどめなくてもいいんだ!!!あんなは強い!!それでもいい!!!えもくんも強い!!だから、それがどうしたというんだ!!!その程度で敗北を認めてしまうのが君だというのか!?僕とあんなが大好きなめるはいつも笑っているだけのめるだけじゃない!!!自分の感情に遠慮をしちゃいけないんだよ!!!君は、そんなに弱い子じゃない筈だ!!!そこで諦めるような紫藤めるは、僕達が知っているめるじゃない!!!!」

「……さらら……!!!」

直後、めるの体から紫色のオーラが燃え上がる。

「これは、知識のパープルジュエルの輝き!?」

「……めるめる、もっと上に行きたい。もっと強くなりたい。でも、めるめるの弱いところからめるめる逃げてた。弱いめるめる知るのが怖くて逃げてたんだ。でも、それじゃいけないんだよね……!弱いめるめるを知らなくて、めるめるはこれ以上強くなれっこない!!!」

「ああああっと!!!めるちゃん、ここで友情パワーに似た力を発動しました!!!イエロージュエルの力を発動させているえもちゃんの足四の字をほどこうと、あんなちゃんの頭上で背中越しの静かな大決戦が動き出しました!!!!」

「……完璧超人は感情を捨てないとなれない……なんてルールはないのかもしれないわね」

「そうですね。めるちゃんは完璧超人になることで感情を封じたと思っていた。そう願っていた。でも、実際は違った。弱い部分も知らないと強くなれない、そのためのめるちゃんの知識を、さらちゃんの情熱とえもちゃんの勇気とあんなちゃんの正義が目覚めさせた……。これはまだまだ勝負がどうなるか分かりませんね」

「めるるるるるるるるるるる!!!!」

「おおっと!!めるちゃん奇声!!ですが、ついにえもちゃんの足四の字を解除!!ばかりかえもちゃんの両足を両足で挟み込んで持ち上げた!!!これであんなちゃん、めるちゃん、えもちゃんが一直線に縦に並びました!!!」

「行くよ!!めるめるのまだまだ知らない多くのもののために!!!」

「めるちゃん!!なんと!!!めるちゃんこの体勢から跳躍!!!!両手であんなちゃんを、両足でえもちゃんを掴んだまま大空を舞い上がります!!!」

「げっ!どんな力してるの!?」

「これがめるの全力!?」

「まだまだ全然だよ!!!それじゃ行くよ!!めるめる真拳奥義……インフィニティクラブロケット!!!」

「なんとめるちゃん!!!自分がくの字になることで空中でえもちゃんとあんなちゃんを激突させた!!!しかもその状態でジャイアントスイングのように二人まとめてマットの上に投げつける!!!」

「ぐふっ!!!」

「があああっ!!!」

「えもちゃんあんなちゃん揃って体の側面から落下!!二人とも吐血!!もう体力の限界が近いか!?」

「めるるるるるるるる!!!!!」

「着地しためるちゃん、全力ダッシュでその勢いのまま二人にボディプレスだ!!!」

「はさせないよ!!」

「を、えもちゃんが受け止めた!!!」

「読めてた!!」

「え?」

「ああっと!!めるちゃん!!!宙返り!!えもちゃんの背後に回り込み、両足で後ろからえもちゃんの両腕をホールドした!!!」

「これぞめるめる真拳・MLAP(メ・ラップ)だよ!!」

「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!」

「むごい!!無情!!!両腕を背後で両足で決められた状態でめるちゃんの落下のエネルギーを受けた事でえもちゃんの両肩の関節が粉砕した音が響き渡ります!!!」

「えも!!!」

「でもまだ!!!」

「あああああぁっ!!!えもちゃん不死身か!?両腕が使えなくなったにも拘らずツインテが動く!!!ツインテが動いてめるちゃんの両足をぐるぐる巻きにしてホールドした!!!」

「せっかくめるがやっとめるらしくなってくれたのにあたしが早々におねんねなんてばかみたいじゃん!!!ここで盛り上がれなくて何がガールズエールの申し子だぁぁぁぁっ!!!!」

「……えも……。だったらわたくしだってここであなた達に応えられなくて何が正義ですの!!!」

「あんなちゃん飛んだ!!!!両足がホールドされて空中で動けないめるちゃんの後頭部から肩車する形でとびかかる!!!これは、先ほどと一緒です!!!めるちゃんを中心に下にえもちゃん、上にあんなちゃんがいます!!!」

「けど、結果は同じにはなりませんわよ!!!」

あんなの声を合図にえもが跳躍。空中で激しく風車のように高速回転を開始。そして、めるを底辺に三角形を作り出した。

「「トライアングルテールズ・バスタァァァァァッ!!!」

えものツインテに決められた両足、あんなのツインテに決められた両腕。そして、えもとあんなの間から見えた空を走る一筋の流れ星。それを最後にめるは背中からマットの上にたたきつけられた。

「決まったぁぁぁぁぁぁ!!!!ツインテールズ第二の双極必殺技(ツープラトンフィニッシュホールド)!!!めるちゃんの背中に完全に炸裂しましたぁぁぁぁぁっ!!!」

「……める……」

あんなとえもがめるから降りてその顔を見下ろす。その顔は気絶こそしていたがしかし満足そうに笑っていた。

「再びジャッジが下りました!!!めるちゃん完全にノックアウト!!!この瞬間、チーム・ツインテールズの勝利が決定いたしましたぁぁぁぁぁっ!!!!!」

観客が沸く。リングとの間にいたさらもすずも涙を隠し切れずにいた。

「……完璧超人……それが限界でも答えでもない。……またあなた達に教えられちゃったわね……素敵ガールズ」

担架の上でアンジュがつぶやく。

「やったよあんな~!!」

「ま、まだ一回戦勝っただけですのよ……?……ぐすっ!!」

「何よ……あんたも……泣いてるじゃんか……」

「泣いてませんわよ……!!泣いてなんか……ううううぅ!!!うわああああああああああああああああああああん!!!」

そうしてリングの上で気絶したままのめるごと抱き合わせるようにしてあんなとえもが大号泣していたのであった。