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プリキャプチャンス・プリパラ5話

夕方4時。ここからまたあたしの時間が始まる。
けど、今日はいつもとは違う。プリズムゲートを潜ることなくプリパラでの活動がメインとなる。
「あ。来た来た」
「……ここが待ち合わせ?」
そこは普段通らないようなプリパラの裏通り。何でもマスコット達が普段出入りしている事が多いためか道のサイズが小さい。
小学生であるらいむやちりならともかくあたしには少し厳しいかも。
「くうらは?」
「おっぱいの大きなくうらちゃんにこの道は通れません」
「……あ、はい」
確かに俺様ガールなくせに出てるどこは出てたな。
「で、どこ向ってるの?」
「来れば分かりますわ」
ちりが先導し、そして到着したのは
「……ネコの店?」


第5話:天使と怪獣と運命と


「入りますわよ」
「あら珍しいお客様ネコ」
小さなカウンター。そこにはマスコットのネコ姉さんがいた。どうやらマスコット用の飲食店……と言うかバーらしい。
ちりはおもむろにネコ姉さんに歩み寄ると、
「あの子たちはどこにいるのかしら?」
「あの子たち?」
「ガァルマゲドン……いえ、きっとこう言っても分からないでしょうね。みかんとガァルルはどこですの?」
「あの子達なら今日もプリパラのどこかで憂さ晴らしをしているわよ」
「憂さ晴らし?」
「ええ。何でも、何かが足りない気がしてならないとかで。でも理由が分からない上にやることが少し派手になってきてるから心配ネコ」
「……ちり、もしかして……」
「……ええ。お察しの通り。存在が消えたのは真中らぁらやのんだけじゃありませんわ。
悪魔・天使・怪獣が組み合わさったチーム・ガァルマゲドンも黒須あろまが消えた事で消滅していますの。他にも何人かいない事で消滅したチームはいますわ」
「……」
あたしが女神に聞いた話では真中らぁらと夢川ゆいだけだった。でも実際には真中のんや黒須あろままでいなくなっているなんて……。
「それって各チームのリーダーがいなくなってるって事?」
「一応共通点としてはそうですわね。けどトリコロールの紫京院ひびきは健在ですわ。逆にリーダーじゃないのにあの生意気なオカルトアイドルも存在が消えている」
……生意気なオカルトアイドル?そんなのあろま以外にいたかな?……いや、そうだ。ミーチルだ。マイドリームの。
「……これは一体何が起きてるの……?」
「こっちが聴きたいですわ」
「そみあちゃん、ちりちゃん」
「どうしたのらいむ。確かにここなら密室だから脱いでも誰も気にしないけどそんな時間はないわよ」
「そみあちゃん?連日私を露出狂アイドルにしないでくれるかな?……いまくうらちゃんから連絡入ったんだけど、みかんちゃんとガァルルちゃんと今ライブ対決してるって」
「……場所は!?」
「そんなに遠くないよ」
「……向かいますわよ」
あたし達はネコ姉さんのお店から去っていった。
「……悪魔の審判が下るかはてさて女神の審判か。運命はどちらを選ぶのかしらね
ネコ姉さんはグラスを磨きながら小さく呟いた。


プリパラミュージアム前。
「よくも昨夜は俺様のライブをめちゃくちゃにしてくれたな!!」
「じぇる?」
「何の話ガァル?」
くうらがみかんとガァルルを追い詰めていた。おまけにみかんには壁ドンしている。
「お前達がいらないことをしたから観客の目が俺様に向かわなかったんだ。そのせいで俺様があんなちびちゃんずに負けることになったんだ。
 腹いせにお前達の操を戴くぜ」
「みさお?それどんな食べ物なの?」
「食べるのは俺様で食われるのはお前達だ!!ライブで勝負しろ!!」
「……いいなの。けど、みかん達もちょっと最近物足りないなの。ちょっと暴れさせろなの」
「ガァル!!」

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「……あ、いた」
ミュージアムに到着するとそこではくうらとみかんとガァルルがアメイジングキャッスルでライブしていた。
そう言えば存在が消えたはずなのにその人が関わった歌は消えてないんだね。
「一応ソラミスマイルとかマイドリームとかの歌も消えてはいないよ。ただ、誰も存在を覚えてないから歌えないだけ。でもこうして覚えているアイドルが歌うことは出来る」
「……そうなんだ」
「くうらが勝てばあの二人も大人しくなるでしょう。そうしたらどうしてわたくしとペッパーの邪魔をしたのか問い詰めますわ」
「……なんとなくだけど、あの二人は関係ないんじゃないかな?」
「どうしてですの?」
「ネコ姉さん言ってたじゃん。何か物足りなさを感じてるって。きっとあの二人はいたずらして暴れまわることであろまと一緒にいた頃の記憶を取り戻そうとしているんだよ」
「……あの場にいたのは偶然だと?」
「多分ね。……あ、ライブ終わったよ」
いいねの数が集まっていく。くうらはそれをウキウキしながら見てるけどみかんとガァルルは違う。
「……じぇる」
「……何だか分からないけど違う気がするガァル。この歌をこうして3人でライブしたことはある。けど、それはこの子とじゃない気がするガァル……」
表情は見えない。けど、その雰囲気には悲愴が含まれていた。
「へっ、俺様の勝利だぜ!……けどお前達も全然本調子じゃなかったみたいだしな。かしにしといてやるぜ」
「……」
二人には全然聞こえていない。これは事情も聴けそうにないな。
「……やはりもう一度地下パラに行って今度はわたくしがトライアングルに挑むしかないようですわね」
「……ごめん。あたしたち全然頼りにならなかった」
「構いませんわ。チームじゃないのに3人で挑ませたのはわたくし。負けて当然ですもの」
「……ちりには言っておかないといけない事があるんだ」
「何ですの?愛の告白なららいむにしなさいな」
「え!?やっぱりそみあちゃんって……」
「ないない。どっちかって言ったらちりの方が好みだから。ファンだし」
「……うわ」
「そこ引かない。……で、昨日ちょっとだけだけど話が出来たんだ。トライアングルのかのんと」
「かのんと!?」
「そう。かのんは言ってたよ。まだお姉ちゃんには会わせられないって」
「……それって」
「少なくともかのんは、真中のんは姉の居場所を知ってるし、今回のアイドル消滅事変にも何かしらの関係がある。……けどそれってあたし達じゃなきゃ駄目な気がするんだ」
「……どういうことですの?」
「のんは何かを待っている。もし、ちりがそれに必要ならもっと早くに声をかけてると思う。だからもしちりが今地下パラに行っても問題は解決しないと思うんだ」
「……」
「かのんちゃんは地下パラでランキングを競ってたんだよね?って事は何かアイドルとしての実力が高い子を探してるんじゃないかな?」
「……多分そう。それも今までプリパラに名を残してきたチームじゃない、新しいアイドルでしかもトライアングルを倒せるだけの実力を持ったアイドルを」
「……あの子は歴史改変でもしてると言うんですの?けど、もしそうなら……」
そこでちりの頭に何かが落ちてきた。それは手紙だった。
「手紙?……………………こ、これは……!!!」
「え?何?どうしたのちりちゃん」
「……わたくし、少し席を外しますわ。追って連絡いたします」
「あ、ちり!」
言うや否やちりはすぐにどこかに走り去っていってしまった。
「……あれ?くうらは?」
そして、気付けばミュージアムにくうらの姿はなかった。


「……ここはどこだ?」
気付けばくうらは見たこともないステージの上に立っていた。
「ステージって事は俺様とまた誰か勝負がしたいって事か?いいぜ、相手になってやる」
「その意気やよし」
「!」
声。聞いたことのない少女の声が暗闇のどこかから聞こえる。
「ア・ローマ預言書新説第二章:弾かれた運命に立ち向かえる少女なれば、失われた悪魔の力と対することが出来るであろう」
そして、その少女がくうらの見える場所までやってきた。
「喜べ神崎くうら。そなたはこの黒須あろまが相手になってやるぞ」