ハワイで初めてサーフィンした日のこと。その2
青とエメラルドグリーンのグラディエーションが信じられないくらい美しかった。遠くにダイアモンドヘッドとホテル街が見える。サーフボードにまたがって、沖に出ている事実がほんとうに嬉しかった。海の上で「俺がパドル!パドル!って言ったら全力でまっすぐビーチに向かってパドルするんだ。スタンダップ!って言ったら四つん這いになって、ゆっくり立つ!いいな、1パドル、2四つん這い、3立つ!ワン、トゥー、スリーだぞ。」とインストラクターのおじさんが教えてくれた。
良さそうな波が来たらしい。おじさんの表情が変わった。「よし、パドルだ!パドル!パドル!パドル!パドル!・・・」言われるがまま、まっすぐホテル街の方を見て一生懸命パドルする。「スタンダップ!」と聞こえた。練習したよりも、ゆっくり四つん這いになる。この間、何か考える暇は一切なかったけれど、滑っている感じはわかった。立てるかも。恐る恐る左足を前に出して・・・立てた!!!わあ、思ったより高い!ワイキキビーチが一気に視界へ広がった。スピードもついてどんどんビーチへ向かっている。しかし、どこまで行けばいいか聞いてなかった。スピードも落ちなかったのでそのままボードにしゃがみ海へそっとダイブ。私の初テイクオフはかなり良い出来だったと思う。
必死でパドルして沖へ戻る。おじさんどこ?すでに腕に疲労がきてた。おじさんが満面の笑みでこっちへパドルして来た。「すごい!やるなあ!」とほめてくれた。そしたらすぐまた次の波が!おじさんがまた私のボードをビーチの方に押してくれて、「パドル!パドル!パドル!スタンダップ!」また乗れた!でも目の前にたくさんサーファーがいて途中で海へ落ちてしまった。さっきは他のサーファーが目に入らないくらい必死だったんだな。おじさんに「人とぶつかりそうで怖いんだけど」って言ったら、大声で「どけーーー!どけーーー!」と言ってくれた。笑。みんな笑ってた。このおじさん、ローカルで超有名みたい。また次の波が来た。さっきと同じ要領で、パドル→四つん這い→スタンダップを繰り返す。何回かはバランス崩して海へ落ちたけど、ほとんど乗れた。「君はとても優秀な生徒だ。初めから俺が思うように乗ってくれる。最高だ。」っておじさんも嬉しそう。周りのサーファーも微笑みかけてくる。なんて最高な時間なのだろう。子供の頃、初めて逆上がりができた日、自転車に乗れた日みたい。目の前のことに無我夢中になるなんて久しぶりだった。できないことができるようになるってなんて素晴らしい体験なんだろう。
何も考えずおじさんの言った通りにやってみただけなんだけど、それが正解だったみたいだ。ちょっとでも怖気づいたり、言われたこと以外のことが気になって体が違うように動いたり、目線が下を向いたりするだけで、テイクオフはできなくなる。だいたいはそうなる。でも、おじさんのこと信頼できたし、何となく気が合うし、安心して言われたままのことを素直に飲み込めた。頭で考えず言われたままのことをやるって大人になってからできなくなっていた気がする。自分の経験とか、こうなったらどうしようとか、どうしても邪念が入る。なんでだろうね。サーフィンをして、子供の頃に置き忘れた何か大事なことを思い出した気がした。安っぽい歌のセリフみたいだけど、こういうことって本当にあるんだなと思った。と、同時に「こ、これは・・・!見つけてしまった!人生を変える何かを。」と思った。
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