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事故った【コラム】

2週間ほど前だったかな、私は初めての人身事故を起こした。

そのときの経緯や車について思うことを書いていこう。

事故概要

あれは昼間のこと。
私は片側2車線の道路を通行して雀荘に向かっていた。

前の車(緑)が飲食店の駐車場に入ろうと減速した。
お昼時だったので、ランチを食べにきたのだろう。

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あろうことか、私(青)はナビから流れるニュースをちらっと見ていた。
藤井聡太が初タイトルを穫れるのか…という特集だったと記憶している。

それにしても一瞬、ほんの一瞬のわき見である。

ピッピッピッ

アラームが鳴って、ハッとする。
どうにもならないことを観念したころに、

バキッ…

車は鈍い音を立ててぶつかっていた。

やってしまった。
10:0で私が悪い。

すぐに車を降りて、相手方の車へ駆け寄り、謝罪する。
(今思えば、もっと車を安全な位置に移動させてから謝るべきだったが、事故直後は二次災害のことを考えられる余裕はなかった。)

運転席にいたのは50代前後の女性。
Bさんとしよう。
助手席にいたのはその母親だろうか、もっと高齢の方がうずくまっていた。

大変なことをしてしまったな…という実感が徐々に湧いてきて、とにかくひたすら謝った。

次に怪我がないかを聞いた、怪我があったら救急車を呼ぶ必要があるからだ。
現状目立った怪我はないとのこと。

その後で

「とりあえずあそことあそこに停めましょう」

と言って、2台とも飲食店の駐車場に車を移動させた。
その間に、警察への連絡と、保険会社への連絡を入れておいた。

110に電話するのは初めてかもしれない。

雀荘へはマスターに
「事故りました遅れます」
とだけLINEを送る。


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その日は炎天下だった。
容赦ない日光が照りつけるアスファルトの上で、Bさんと名前・住所・連絡先・免許証のナンバーを交換する。

交換する間もひたすら謝り続けた。
母親と思われる方はずっと助手席で俯(うつむ)いている。

飲食店はしゃぶしゃぶのお店だ。
親子で優雅なランチのひとときを楽しもうと思っていたのだろうか。

その楽しくなる筈である時間を、私の不注意で台無しにしてしまった。
私は私でこれまで好きに生きてきたが、人様に迷惑をかけるのは本当にダメだ。
俯いている高齢の女性を見て、激しい罪悪感に襲われる。

連絡先を交換した後は、互いの車内で待機。
20分くらい経った頃に、ようやく警察が到着し、事故の概要を聞かれたり、免許証と車検証を提示したり、連絡先を記入したりした。

保険会社に被害者の連絡先を伝え、そうしてこの件は終わった。
それでも事故の瞬間から2時間くらい、炎天下に親子を拘束させてしまった。

経過・感想

私はちょうど車を買い換える時期だった。
ディーラーによると、今乗っているエクストレイル(日産)は5年乗っていて、100万で売れるところを、80万くらいに価値が下がったという。

保険で修理代だけもらった方が得なので、そうすることになった。

ただ、来年からの保険代が結構あがってしまうだろう。

もの凄く反省しているし、あの親子に対しての申し訳ない気持ちはとても大きい。
ただ、ラッキー…というと語弊があるか。不幸中の幸いと呼べることもいくつかあった。

まず、Bさんがとても優しかったことだ。
愚痴愚痴言われたり、気の荒い男性なら恫喝されてもおかしくない。
ぶつけた瞬間にはそれを覚悟した。

例えば、自分が逆の立場だったらどうだろう。
腹は立ったろうし、嫌味の1つくらいは言ったかもしれない。

それなのにBさんは、最初こそショックで言葉が少なかったが、最後の方には
「互いに大きな怪我もなくて何よりです」
と、なんと逆にこちらの体を気遣ってくれた。

たしかに自分も気が昂っていて、ずっと動悸が激しかった。

あるいは私の誠心誠意の謝罪が通じたのかもしれない。
ぶつけた瞬間は、これは全力で謝る場面だ、ということで謝っていたが、途中から本当に悪いことをした実感が湧いてきて、心から謝り続けたからだ。

私の気持ちが収まらないのでって出した「しゃぶしゃぶ代」の20000円も、受け取れませんって、頑なに拒否された。

次に幸いだったのが、大きな怪我がなかったことだ。
Bさんたちはその日のうちに病院に行き、診察したが、軽い打ち身程度で重大な怪我はなかったという。
その報告で本当に安堵とした。

イヤな思いをさせ、ちょっと手間をとらせてしまったが、これで私の保険料が上がり、違反点数が加算されるだけで済む。

人身事故は一発免停かもしれないが。
多分講習を1日受ければ済む程度になると思う。


私はクズだ。
どんな物事でも、経験をしないと覚えることができない。

教習所でいかに
「人をひいて人生終わった」
という映画を見せられても、2日間くらいは
(そうだよな、気をつけなきゃいけないよな)
という気になるが、3日目くらいからその気持はどこかへいってしまう。

人間にはどうしても「慣れ」がある。
「慣れ」は悪いことばかりではない。
「慣れ」は大切だ。慣れないと運転なんかできない。

交通事故の半数は高齢者によるもの…と言われているが、それは単に高齢者が多いだけだ。
10万人あたり、と人数を揃えて見てみると…

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(2019年 警察庁のデータ)

昨今の道路整備や車の能力(エアバックや自動ブレーキなど)により、全体的に減少傾向にあるが、16~19歳の事故率が突出しているのがわかる。
次はだいぶ下がって20歳代で、その次にようやく80歳代・70歳代となっているのがわかる。

若者に事故が多いのは、ひとえに慣れていないだけだと思う。
いくら自動車学校で学んでも、実際の道路でたくさん運転しないと慣れることはできない。麻雀と同じだ。

よく
「最初は中古の軽にしとけ」
という。

どうせぶつけるからだ。

私も最初の頃は、駐車場の柱などによくぶつけたし、人をひきそうになったこともある。ヒヤリハットのヒヤリは全ての初心者が経験していると思う。

そこでひくかひかないかは、もう運としか言いようがない。
だって慣れていないんだから、仕方ない。

初心者は、どこを見るべきなのかわからないし、操作の手順もいちいち頭で考えないといけない。

毎巡ブロックを数えているようなものだ。

麻雀においては、事故って放銃しても点棒を払えば済むが、交通事故はそうはいかない。ときに人生が終わることもある。

私はその初心者の内の誰もが通るデンジャラスゾーンを、柱にぶつける程度で、人を傷つけずに切り抜けた。
これはラッキー以外の何物でもない。
このゾーンでアンラッキーなことに、事故に当選した方が先ほどのデータに計上される。

そうして運転しているうちに数年経つ頃には、考えずとも操作できるようになり、車幅感覚が完全に身に付く。

車幅感覚というのは、左のタイヤがここを通って、左前のヘッドライトがここを通って…というようなことを感覚的に把握することだ。
こういう空間認識能力は男性の方が得意とされている。

しかし、その車幅感覚というのは、当然車の形状によって変わる。
これを操作すらおぼつかない初心者に把握しろということは無理である。

1年目は運ゲー。

これはさきほどのデータにも裏付けられている事実だと思う。

で、慣れてくると、頭で考えずに操作できるようになる。
例えば毎日操作していると、ドアを開けてエンジンかけて、サイドブレーキ解除して、シフトレバーのパーキングからドライブに入れて…という一連の動作を、1mmも思考せずに操作できるようになるのだ。

麻雀で言うと、122345と持っていて4をツモって1を切るのに、いちいち考えていないよねって話だ。
初心者の頃は(これはもしかして1を切ればいいのでは!)と思考が入るし、気付かないと4をツモ切ってしまう人もいるだろう。

当然それらに思考を使わないと、他のことに思考が回せるようになり、運転にも余裕が出てくる。ゼロ秒思考ってやつだ。

しかしそれが油断へと繋がる。

運転に慣れすぎると、運転席に座った時点で、なんかゲームの画面を見ているような、マリオカートを操作しているような、そんな錯覚に陥るのだ。

しかし当然、現実は現実として存在する。
車の外では確実に社会とつながっているし、そこには他の車もいて、血の通った人間も往来している。
慣れるとそういう意識がどうしても薄れる。

それが2週間前の私だった。

そういう意味で、初の人身事故が、無事に終息して本当によかった。
ぶつけたのが優しい相手で、その優しい相手を大きく傷つけること無く、無事に終息した。

私はクズだ。
どんな物事でも、経験をしないと覚えることができない。

でも経験をすればクズでもこれはダメだと心に刻むことができる。
今回の一件で、もう二度と「ながら運転」はしないぞ、と気を引き締めることができた。

もう二度と人様の人生を邪魔したり、傷つけたりしたくないと強く思えたし、心の底から反省した。

どんな動画や経験談よりも、自分の経験が一番効く。
相手方に対してはもちろん、自分にとっても時間とお金の無駄でしか無い。

これがもし高速道路だったとしたら…と思うとゾッとする。

おそらく私はもう二度と事故を起こすことはないだろう。
初心者の内のデンジャラスゾーンも、慣れてきてからの油断ゾーンも、無事切り抜けたからだ。

Bさんには謝りっぱなしだったが、今は「ありがとうございます」と伝えたい。
「ありがとう」とは礼儀でも相手を気持ちよくさせるための言葉でもない。
「ありがとう」とは「有難う」と書く。

「有ることが難しい」という意味だ。

Bさんのおかげで、当たり前のように生きてきたことが、実は難しいことなんだと知ることができた。
Bさんのおかげで、これからも当たり前のように平和に暮らせる日々に感謝して、生きていくことができる。

これからも「ありがとう」の気持ちを忘れずに、過ごしていきたいと思う。

車の話題になったので、余談を2つほど。

最近の車の高さ

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