人からRTAを預かるということ

RTA in Japan 2023 Summerに出場したのでレポート書きます。
攻略などははてなブログに書いているけど、会場使わせていただいた義理もあるので今回はこちらに。


事の始まり

2022年12月31日のこと、オーディエンスの一人としてRTA in Japanを観戦しに行った。初代F-ZEROと初代マリオカートとメトロイドフュージョン見れるのも嬉しかったが、ありがたいことに持ち込んだゲーム機を遊べるスペースでオクトパスカルさん所有の64DDを触らせていただいた。「ジャポン難しいなー、動画で見た想像以上だ」なんて思っていた。
そこで思いがけない一言を頂いた。

「良かったらこれでRTAしませんか?ソフトと本体貸しますよ」

正直なところ、非常に迷った。F-ZEROコミュニティにも所有者がいるが、貴重なものであることは当然わかっているので、RTA in Japanに出たいというエゴのために貸してくれなんて言えるはずもないし、預かることの重さは理解しているつもりだ。
・・・でもこのチャンスを逃せば、二度とやってこないかもしれない。

「わかりました、やりましょう」

下準備

もちろん当日持ち帰り。まずやるカテゴリーではあるが、Beat All Staff Ghostsに決めていた。これは2021年でXのGPはもう見せたこと、DD版限定のスペシャルエンドを見られること、GPよりも難易度が高いことが理由だ。

F-ZEROタイムアタックコミュニティの同志(と私は思っている)でありDDカップのタイムアタックもしていたRichard Taroさんが残してくれた動画のおかげで走りを真似出来たので、DD1,2カップのスタッフゴーストは元日中に攻略できた。貴重な動画を残していただき本当にありがとうございます。
タイムアタックコミュニティ出身なので、どうしても各コース攻めたくなってしまうが守りの走りが必要になるのはわかっている、どうにかして少ないトライ回数で完走できるように落とし込む必要があるが・・・

そんな中2月11日にRTAハッカソンの開催告知があった。静岡のRiJexの応募が出来なかったので次は夏になる。先延ばしにするとダラダラするのは目に見えていたので、この期間中に1回は完走して動画を作っておこうと思った。

応募

前提として、オフライン開催であれば応募と考えていた。
これはオフの場でオーディエンスの前で披露することが私の悲願だったから。
オンラインだけであれば冬に応募するつもりだった。また、夏冬両方とも落ちたらハードはオクトパスカルさんに返し、自分で資金を工面してハードとソフトを揃えるつもりでいた。

無事当選して3連勝。Oengus全勝である。


本番までの調整

ゲームプレイ面に関しては、実は特別意識してやってない。普段からやってることなので。

ただ仕事の都合上、夏は冬に比べて時間が取れないので、通せる回数は少ないだろうなと思った。やってて思ったのは、40分程度攻めるのと1時間攻めるのは体感的に大きな違いがあるということ。前回のXよりも更に抑えめで行こうと思った。が、結局移動日までにノーミス通しは出来ず。

では何を重視したか


・・・だがそれ以上に重視したのは、本体と自分自身の体調である。貴重なものを借りている以上、破損するわけにはいかないし応募が通っても本番に披露できなければ本末転倒である。
何せ今回は自分が出たいから応募したのではなく、受けた恩を返すために出たのだから。
当日が迫るにつれてコロナの感染者が増加傾向ということも聞いたので、極力かからないよう対策もした。

東京入りから直前まで

10日は新幹線の乗客が少ないであろう早朝に名古屋から東京入り(でも指定席はほぼいっぱいだった。流石夏休みである)。
実は2021年に解説を担当して下さったYuzuharaさんと食事の約束をしていた。是非一度はお会いしたかったし、2年越しの慰労会もしたかった。

ゲームの話をはじめとしていろいろな話が出来たので、本当に楽しかった。やはり戦友との話は良い。
10日の午後に会場入りし一度練習、夕方には解説を依頼した貧弱さんとの原稿の打ち合わせ。

https://twitter.com/ZerokenFXGX/status/1689521277755875329?s=20

11日、12日も練習、休憩、練習・・・の繰り返しである。
11日はシャワーじゃなく湯船にゆっくり浸かりたいと思ったので、ホテル近くの銭湯に行った。

本番当日、体調不良無し、OK。貧弱さんとの本番直前練習時は抑えめに走りタイマーで測ったが、1時間8分。
実は裏ESTとして1時間10分を定めていたのだが、行けそうな手ごたえを感じた。

本番

本番。操作し始めても過去と違って緊張による震えが無い。多分、休憩時間にラウンジで色々な人と話せたのが良かったと思う。いい意味で気が紛れた。これはオフラインならでは新たな知見だった。
ジャックカップの6コースは速くないながらもノーミスで抜けられた。
「速くはないがマシンコントロールは出来ている。行けるぞ」そう思っていた矢先の7コース目のことで事件は起こったのである。

セクターアルファで開始と同時にドリフトする。

左の壁に当たる。

「膨らみすぎたか?」最初はそう思った。

しかし次の壁ドリフトがおかしい

「適切な角度をとってニュートラルに放置すれば速度が勝手に上がるはずだが上がらない。それにマシンが左に直ろうとしている。まさか」

次の直線で確かめてみよう。

勝手に左に寄る。ニュートラルがイカれたことは明らかだった。

1か月前にスティックを交換したばかりだったので予想外だった。
裏話だが、練習中にコントローラーが壊れたことを想定してパーツ取り用とドライバーセットを持ち込んでいた。だが本番に壊れるのは流石に予想外だ。
しかし20年以上も前のハードなのでおかしいことではないし、ほとんど使っていないニュートラルもしっかりしている予備コントローラーを持ってきたので事なきを得、継続。

余談だが、聞いた話だと2022冬と静岡のexでもコントローラー壊れた方がいるらしいのだがRiJは何かに取り憑かれとるんか?

これでセクターアルファのDTDがダメだったら更に抑えよう。基礎技だけでも走り切れる。で、実際にやると思った以上にコントロールが取れていたので当初のプラン通りプレイすることにした。

途中ミュートシティ3、レインボーロード、スペースプラントでDTDがズレてリトライしたものの、他は概ね及第点だった。特にDD1、2はノーミスでマシンをコントロールしきり、コントローラーの交換込みで裏ESTの1時間10分以内に終わることが出来た。

終わった時は、出来がどうこうよりも無事に終わったことに本当に安堵した。最後の右手の人差し指を掲げたポーズはそれが現れたものだと思ってる。

心がけたこと

絶ッッッ対にバズることに魂を売らない。

申し訳程度に笑わせる要素は入れたが、RTAが本領なんだから、プレイパフォーマンスで魅せるのが私のあるべき姿だという思想を持っているので。
貧弱さんに解説を依頼したのも、ゲームのやり込みに関する思想が一致しているから。

クリップされたが

走者ならば当たり前のことです

・・・実はこれは謙遜のつもりで言ったが、後で見直してみると啖呵を切っている言い方にしか見えなかった。自分自身を奮い立たせたかったのもあるかも知れない。

また「いつもとやっている環境が違うからダメでした」「コントローラーいつもと感触違うからダメでした」は通用しない。わかっていること、予想できることで同じ境遇の人だっていたし、何より言い訳にするのは最悪にカッコ悪いことである。いつもの環境がいいというならオンライン限定で応募すればいいでしょって話にもなる。そういった心がけも現れている。

要するに、走者として選ばれて出たのだから、どんな状況にもかかわらずRTAそのものでオーディエンスを魅せるのが筋であるという考えである。

終わった後

たくさんRTAを見てきたであろうワイズさんから推薦いただいた。オーディエンスからの反響が良いと嬉しいのは勿論だが、同業者から評価いただき、自分のスタンスを貫いてきてよかった。本当に思う。
撮影班や他の走者からも「カッコよかった、見入った、うまかった」と言葉をかけていただき、オフラインで自分のスタイルを評価いただき、本当に嬉しく思う。

そしてオクトパスカルさんからも言葉を頂いた。

「Zerokenさんにエクスパンションキットを貸して本当に良かった」

もう一度言うが、今回は自分が出たいから応募したわけじゃない。恩を返すために出た。パフォーマンス、ハード、体調管理といった独特のプレッシャーもあったが、この言葉を頂きやり切ったと言える感触を得た。

人からRTAを預かるということ、なかなか経験できることではないが、だからこそ得られない感慨深さだった。

このゲームを続けてきて本当に良かった。心からそう思う。


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