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デジタル化された「指差し」の価値について


いまさらですがワンピースのアニメをNetflixで初めて見てはまっています.
私のような起業家初心者の目線で見ると,ルフィーのチームビルディングメソッドやビジョン・ミッションの設定,海賊王カンパニー(あえてこう呼ばせてもらいます)の成長過程など非常に勉強になります.

ところで,ワンピースの「ウォーターセブン編」14話 (全編の242話)で,傷を負ったアイスバーグが寝室にパウリーを呼び出しある指示を出す場面が出てきます.

社長室のデスクの真下,そのじゅうたんをめくるとそこに金庫がうまってる

ワンピース「ウォーターセブン編」14話

この場面で.金庫の場所を示すためにアイスバーグは39文字の言葉を発しています.
ここでもし
「『ここ』に金庫がうまってる」
と,「ここ」という指示語が使えれば,約70%発話数を省略し,12文字の言葉だけで金庫のありかを示すことができ,意思疎通がすばやくできたことでしょう.


この指示語を使ったすばやい意思疎通手段が全く使えなくなったのがコロナ禍でのオンラインビデオ会議でした.そこで2020年にオンラインでも指差しで指示語を使えるように作ったアプリが「ココソコ」です.

これを元に,プロダクトとして昨年の11月にCoMADOをサービスローンチしました.
CoMADOをこれからたくさんの人に使ってもらい,デジタル化された「指差し」の価値を多くの人に知ってもらいたいです.

この記事では,そもそも「指差し」はコミュニケーション手段としてどういう意味を持つかを切り口に,指差しをデジタル化した「デジタル指差し」の価値や展望について整理してみたいと思います

指差しについて

発達心理学的視点

みなさん,言葉が通じない国でメニューを指差してオーダーしたり,騒音で人に声が届かない時に指差しで方向を示すなど,言葉を使わない情報交換手段として指差しを使ったご経験あるのではないでしょうか.
指を差して他者に注意を促すことを共同注意(Joint attention)といいます.共同注意の研究は,発達心理学を中心に人間の発達,ロボットとのコミュニケーション等,人間理解を深める学問として古くから研究されています.
ある対象物に対して注意を促したり,他者が向けている対象物への注意と同調するなど,「指差し」は人間が成長する初期段階,つまり赤ちゃんの時に獲得する基本的身体動作の一つと考えられています.

遠隔作業支援的視点

コンピュータ支援による共同作業の研究(CSCW)では,遠隔地同士の人たちが作業を一緒に行う時に共同注意を使って誘導することの重要性について下記のように説明しています.

共同注意の過程において特に重要なのは,対象物に向けられた視線や指さしを相互に認識することである.」
「Joint Attentionを実現する実物体参照に対する技術的な支援では,単に音声・画像通信が提供されればよいわけではない.」

電子情報通信学会「知識ベース」S3群8編5章「CSCWの応用」市村哲 2010.1

このように指差しは人間同士がコミュニケーションをとる上で,実世界であってもデジタル世界であっても重要な情報交換手段であることがわかります.

デジタル指差しの価値

デジタル世界であっても重要なコミュニケーション手段が指差しであることがわかりましたが,さらにデジタル指差しならではの特性は,いつどこで誰が指をさしたのか定量的に計測できるセンサーとしての役割を持つことだと思います.

センサーとしてのデジタル指差しの使い方の事例として,CoMADOの事例を2つ挙げてみます.

これは,CoMADOを使い街歩きをしている最中にT字路にぶつかった時に次に左右のどちらへ進むべきか,オンライン参加者の希望をとり多数決で決めた時の写真です.現地の様子を見ながらオンラインの人たちが投票し行動指針を決定した事例でデジタル指差しならではの投票方法と言えます.

左右どちらの道を進むべきか,オンライン投票で決定!


2つ目の事例は,CoMADOの指差し・LIKEが参加者の興味,関心を定量化するセンサーの役割を果たすケースです.(下の写真)
空間情報のどこに何人の人が興味を持ったのか指差し(LIKE)として記録ができるので,何にどれくらいの人が興味を寄せたのか,興味・関心度として指差し(LIKE)の数として定量的に振り返ることができます.
ちなみに下の写真は東京すし和食調理専門学校の入り口です.中で調理されている方の姿も見えて開放的な素敵な構えでオンラインでみなさん興味を示していました.

指差しの数やLIKEの数で人々の関心を定量化(2名の指差しと2名のLIKE)

デジタル指差しの展開


さらにスマートフォンやタッチパネルが普及した現在,ディスプレイに映し出された映像の上を指でタッチすることでその先のデジタル空間上に指差しアイコンが表れるので,自分の指がディスプレイの先の世界に拡張され映し出されているような感覚を持つことができます.
身体拡張と呼ばれるこうした人間の身体性をデジタル化する試みはメタバースの進展でさらに今後の発展が期待されます.デジタル指差しはまさに指の身体拡張と言えるでしょう.

指差しを通してデジタル空間に拡張された身体


CoMADOではこうしたデジタル指差しの可能性をCoMADOのコミュニティーメンバーのそれぞれの視点でリサーチレシピとしてまとめる活動を行なっています.ぜひCoMADOのリサーチレシピをご一読ください.

よろしくお願いいたします.

参考記事

CoMADOの共同事業者であるACTANT代表の南部さんのCoMADOに関する記事です.


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