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ファジアーノ岡山vs清水エスパルス マッチレビュー 【0-1】

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手負いで勝てる相手ではない


ルヴァンカップ2回戦から中3日の連戦で迎えた清水エスパルスとの3位vs2位という上位対決。昇格レースを占ううえで重要な6ポイントマッチでしたが、残念ながら岡山は0-1で敗れる結果となりました。気温28度を超える真夏のような暑さの中、14000人と史上8番目にお客さんの入ったゲーム。なんとしても勝ちたかった。しかし、手負いの岡山で対峙するには個の力が全ポジションにおいて高すぎた。いまは、とにかく、辛抱するしかない。6月の再戦までにチームの力を回復して取り返したいところです。




スタメン



現時点で、鈴木喜丈・田部井涼・高橋諒・高木友也・吉尾虹樹・太田龍之介・シャビエルと主力クラスをごっそりケガで欠く岡山の台所事情は大変に厳しいです。ルヴァンもベンチにGK2人入れたり、ユースを4,5人入れたりしてなんとか穴を埋めている状況。

そんな中迎えた清水戦の大一番。なんとかスタメンには戦えるメンバーをそろえてきました。岩渕・木村、輪笠・藤田の中盤4枚は運動力も豊富でおそらく守備力の面ではもっとも期待値の高い組み合わせ。しかしながら、ルヴァンで長い時間プレーしてこの試合も出る選手が多く、この試合のあともアウェイ山形戦が続く連戦。やりくりは窮屈を極めるな、というところ。

清水は442のフォーメーションで乾は欠場。代わりのなじみ深い矢島慎也が左SHで出場ということで岡山サポーターをよろこばせるスタメンとなっていましたね。この点については図を使って解説しておきたいと思います。


ゲームの流れ


岡山は後方からロングボールを右サイドに送り柳(貴)vs山原の高さのミスマッチを活用したり、通常通りグレイソンの高さにシャドーを反応させていく形がメイン。清水は、442のポジションを少し変えて左SH矢島慎也の立ち位置を工夫することで岡山の守備を困惑させることに成功していました。

前から行ってもはがされる。そして、タテパスを刺し込まれて前線の選手に受けられる。こうしたプレーが積み重なることでだんだんと前に行けなくなり押し込まれる傾向の強かった前半だったように思います。混戦の中から意味不明なハンドを取られてPKを与えてしまう大ピンチ。ここはブローダーセンが完璧な読みでキャッチしてチームを救います。流れが変わりそうな気配はあったが・・その後、中盤でのセカンドボール争いで機先を制した清水のクオリティのとても高い攻撃で先制を許してしまいます。

後半は清水の前線の守備が弱まり、岡山が落ち着いてボールを握れる展開に。主に左サイドを押し込んでニアゾーンをとり得点の気配を漂わせると、柳(育)と竹内涼を投入してここでギアを上げる。

しかし、対する清水の打ち手も素早く原を投入し3バックへとシフト。541のブロックを敷いて、岡山の勢いを消しにかかります。3バックにシフトしたあとも岡山の構成は続きましたが次第に事態は沈静化していき。最後の15分あたりになると清水からボールを奪えない状態に。そのまま試合を閉じられてしまい0-1で敗戦と。

大観客の試合、ホームチームに振りすぎるジャッジを繰り返す意味不明なレフェリー、機能不全のままあえぐチームと。なかなかに気持ちの切り替えの難しいゲームとなりました。


矢島ワンダーランド(ver清水)の成立


基本的には442のポジションでスタートする清水エスパルスですが、この試合においては攻撃時に立ち位置を変化させてきました。特に大きな役割を担っていたのが矢島慎也、ルーカス・ブラガの両SHです。


左SHの矢島はサイドよりも中に入り、もはやボランチの一角といってもいいような位置でプレーすることが多かったですね。一方のルーカスも矢島が低い位置でプレーするのとは対照的に高い位置をキープしつつ中よりに立ちます。そうすると、442からある種433ぎみのような立ち位置になっており、この立ち位置の変化が岡山の右サイドの守備を困らせます。


左SBの山原に右WBの柳(貴)を基本的にぶつけて守らせたい。ところが、そうすると、矢島が低い位置でボランチのように振舞うので柳(貴)の背後でフリーになってしまうんですね。この矢島を捕まえられる選手はいません。よって、山原からパスを受けると矢島が前向きにパスを蹴れる状況を作られてしまいます。これが矢島ワンダーランド(ver清水)。といっても、この試合の矢島のパスはまあまあだったので助かりましたが。わかった、なら矢島は柳(貴)が見るわ!とすると・・

前プレの不発と、落ちてくる清水の前線の選手


このように最終ラインで清水の4バックvs岡山の3トップになり数的不利、なおかつ清水はGK権田も使えますから。清水のSBは最初から高い位置を取らないのでこのような格好になることが多い。これではなかなか前から追いかけても難しいだろうというところです。


なおかつ、左SB山原から斜めにタテパスを刺し込んでいく。そして岡山のボランチ周りに落ちてきた北川やカルリーニョスがボールを引き出す、と。しかも彼らはどうみてもJ2レベルの選手じゃないので簡単にストップできません。ミスらない。奪えない。こうなるとDFはなかなかいけなくなってしまう。そうすると下がるしかないので、余計に前プレにも行けず、という循環になっていたかなと思います。

上手い選手たちが走る清水の強さ


岡山の選手は「いつもだったら相手がミスったりビビったりする」プレーをいつもどうりにやっていたと思います。ところが、この試合ではそれが思いどうりに行かず、取れるところで取れない、行けるところで行かせてもらえないというシーンが頻発していました。


ほぼすべてのポジションでJ2規格を越える選手を持っているチームなので、マジでしんどかった。とくにFW北川航也はどうにもならなかったですね。ポスト役も、裏抜けも、パスも、コンビネーションも、守備も、もうなんでもやるやん!というオールラウンドぶり。いや、そら代表とか呼ばれる選手だし、当然なんだろうけども。北川のみならず、カルリーニョスやルーカス・ブラガといった選手たちも技術も高いし献身性も高いんですよね。

そう、この清水は走るんですよ。だから困った。

技術の差を総力で上回ってカバーしよう!というのはどちらかといえば弱者の戦術だと思います。上手い選手をそろえているチームってなかなかアグレッシブに献身的に走り続けるのが難しいんですよね。上手いから。あんまりやりたがらないというか。

ところが、今年の清水は攻守の切り替えや守備の意識がとても高くて走ることをいとわないん印象です。これは困る。もうちょっと余裕をかましたサッカーをしてもらわないと隙がないじゃないか。

岡山の守備力はJ2トップクラスが証明された


あんまりせつない話題ばっかりだと嫌になってくるのでよかった面に目を向けていきましょう。まずはなんといってもこの点かなと。岡山の守備力は間違いなくリーグトップクラスだということです。

この試合負けはしましたけど、清水の決定機も結局2つくらい?なんですよ。めっちゃ少ない。つまり、それだけしのげているということです。これはなかなか簡単に作れるものではないし、岡山の順位を支える一番の要因です。清水なみに攻撃力を持つチームは他にもいるでしょうが、そんなビビらなくてもいいでしょう。たぶん普通に守れると思います。

もうひとつこの清水戦でポジティブな点は、ここから先、山形・徳島・長崎・甲府・仙台と戦っていくうえで、最も個の力が突き抜けたチームと早めに当たることができたという点です。「あ、自動昇格レベルってここなのね」を清水戦で体感できたことはきっと小さくない意味を持つと思います。

他のチームにも清水に引けを取らない選手をそろえているチームはあるでしょうが、11人全部エース並みみたいなチームなんて他にはないと思いますし。一番キツイところを体感しておけば「清水よりはマシか」って思えますからね。

岡山の攻撃についてどうみるか?


多くの人が「どうなんだろう?」と頭を悩ませているのが攻撃の部分だと思います。正直、リーグトップの守備力があるので先制さえできればどんどん勝てると思います。ところが、その先制点が死ぬほど取れない。ほんとに。

現時点で思う問題点をいくつか挙げると、やはり鈴木喜丈の不在が大きいかなと思います。そもそも岡山は左サイドの攻撃に比重が高いチームでした。ザックリ言えばサウスポーだったわけですよ。ところが、鈴木喜丈離脱後は左サイドで組み立てられないので田上を配してみたり工夫しましたがどうにも鈴木喜丈がいるときのクオリティに及ばない。したがって、右サイドに重心を移した攻撃が増えています。

でも、それって相手もわかっているわけで「はいはい、右からね」「ロングボールだよね?」ってことになる。グレイソンが強いのはもう十分わかってますから相手も場合によっては2人つけてきますからね。そうなると落としてシャドーが絡んでというのもなかなかきれいにはつながらない。

ただ、この清水戦でもサイドで4人5人が密集して抜けていったり、バイタルエリア付近で複数人がワンタッチでパスを繋げるシーンがありました。あのようなプレーが出せるところまでいけば、決して悪くはない攻撃を出せてはいるんですよ。グレイソンは単独で2桁取るタイプの選手じゃないですし、彼を含めた前線の選手、サイドの選手あたりに得点が生まれるようになったときがこのチームの攻撃が効いてきた証になるのかな?と思います。


ケガ人がいつ?どのくらいもどるか?がすべてのカギ


まだまだ連戦が続きます。今動ける選手が疲れていても無理くり使っていかないとゲームで力を出すのが難しい現状じゃないかなと思います。そうすると出ている選手に疲労が蓄積し、また故障しやすくなるというリスクはあります。でも、もうやるしかない。代わりはもういません。

ここ6試合で勝点6しかとれておらず、これは20チーム中16位の成績でした。つまり残留争いレベルです。たぶんここより悪くなることはもうないと思うし、悪くなったら自動昇格はおそらく無理でしょう。なので、ほんとに瀬戸際だと思うんですよね。

いつ?どのくらい?選手が復帰してくるか?がほんとに今シーズンの方向性を決めると思います。今、リーグトップの守備力を持っていますよね。でも、得点力はかなり低い。だからといって、リーグトップの得点力をつける必要はないんです。もうあと少しだけ得点が取れればこのチームはどんどん勝てます。そこの歯車がもう少し噛み合ってくるのがいつになるのか?今はとにかく辛抱して待つ。それしかないかなと思っています。


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