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アル・アインvs横浜Fマリノスを観て思ったこと 【1-5】


普段J1クラブの試合を見ることはほとんどないんですけども、どういうわけだかACLの決勝に進出したマリノスのことが気になって朝早く起きて見逃し配信で試合を見ました。

いやあ・・・残念。

やっぱり日本のクラブに勝ってほしいという気持ちがふつふつと沸いてくるし、負けると悔しいもんですね。マリノスの試合を見るのは個人的に十数年ぶりだと思うので、なんだか懐かしさもあってすごく不思議な感覚に陥りました。

最後に見た記憶がある試合は久保竜彦の決勝ヘッドですからね。岡田監督のときの。って、もう20年以上前じゃねーか!実はJリーグを見はじめたころ最初にファンだったのは横浜マリノスだったんですよ。だから、どこか里帰り感みたいなものもあって。どうもチケットの手配をめぐって相当大変だったみたいですし、マリノスに勝たせてあげたいなと思って観ておりました。

※私ゼロファジはどちらのチームのサポーターでもなく、なおかつ事前情報も調べているわけではありませんので、内容について粗いところがあろうかと思いますがその辺はご了承くださいましな


スタメン



一応DAZN提供のスタメンを貼り付けておきます。当然ながらアル・アインのほうで知っている選手は0。しかも、1stレグの試合も観てないので全くNO情報。どういうチームでどういう強み弱みがあるのかさっぱりわからない状態。おそらくは1stレグの結果を受けてなんかしらやってくるであろう2ndレグでしたが、こちらもふたを開けてみないとわからないという感じでした。

一方のマリノスは、畠中、渡辺、植中あたりはJ2でやってたよね?という感じ。あとはアンデルソン・ロペスは札幌ドームで落ちた人だよね?くらいの認識。しかし、GKポープがいた!ポープは岡山ではじめてフルシーズンスタメンGKとして戦い、それから大分→町田→マリノスとキャリアを積んでいるので、よく知っている選手です。中林洋次、一森純と、なぜだかex岡山のGKは横浜にたどりつく系譜があり、ポープもその道を進んでいてなんだか不思議な感じがします。


「大差がついた=マリノス弱い」なのか?


結果的には1-5ということで大差がついたゲームとなりました。うーん、マリノスが主導権を握れた時間はほぼなかったと思うので、序盤からハーフタイム、リードされてから終盤と、どの時間帯においても基本的にしんどい試合運びを余儀なくされた試合だったかなぁと思いました。

こういう大差がついたゲームにありがちな話として「Jリーグが弱いんじゃないか?」とか「マリノスが弱いんじゃないか?」みたいな煽りとか悲観の声とかもあったようですが、個人的にはそうは思わなかったですね。

だいたいまぐれで決勝にはまず来れないですし、同じ相手に1stレグでは逆転勝ちしてるわけですからね。勝てない相手じゃなかったよね?ってことじゃないですかつまり。

ただ、サッカーって怖いよなって思うのがこういうタイプのゲームで。均衡が崩れてしまうと一気に坂を転がり落ちるようにワンサイドに転がってっちゃうみたいな。そういう怖さを再確認させられるゲームでもありました。

よく「たらればは禁物」と言われますが、それは希望的な観測で相手の実力を軽く見積もったり、自分たちの力を過信したりするのがよくないってわけで。戦前、戦後はむしろ大いに「もし〇〇だったら?」を考えていくほうが実りが多いんじゃないかな?と思います。

そういう意味では、この試合でマリノスが引いたシナリオは相当によくなかった。しかし、もし違ったシナリオで進行していたら0-0で優勝!とか1-0で優勝とか普通にあり得た話だったかなと思います。

良くない流れでありながらも、一時は同点に追いついていましたし、決定機もなくはなかった。なので、もうちょい落ち着いて戦うことができていればわからないゲームだったのかなあ?と。

ただ、「落ち着く」のが難しかった。


「落ち着いて戦う」がむずかしい


退場者を出して後半を迎えた時点ではトータルスコアはイーブンでしたから、そこから耐えてわずかなチャンスに活路を見いだしていく、と。たしかに、勝ちあがる過程で退場者を出しながらも踏ん張って打倒してきた実績はあったとはいえ、不利なことに変わりはなくて。できることならば後半も11人で戦うことができれば・・・というところでしたが、あそこでポープが倒さなかったらリードを奪われていた可能性も相当高かった。難しいもんです。

試合を難しくしていた一番の要因はアル・アインのロングボール攻撃と超強力なアタッカー陣の火力の高さでした。これは後ほど詳しく触れたいと思いますが、とにかく前線の選手の個の力がとても高い!さすがにアジアの頂点とか取ろうってチームはすごいですね。これで世界的名手をそろえまくったサウジのチームとかに勝ってきてるんですもんね。

サッカーって不思議なもので自分たちの思う攻撃や守備ができていると自信が出てきて、より冷静にでも大胆にプレー出来たりするんですけど、逆に上手くいってないとどうにも不安定でふわふわした感じになっちゃうんですよね。それでいくと、明らかにマリノスの守備は問題を抱えていて、前半から決定機を作られまくっていたなと。まずは、ここをなんとかしたかった。

解説の水沼さんもずっと「落ち着いてやることが大事ですよね」って言ってましたけど、まずはアル・アインの出方がマリノスの予想を超えていて動揺していた印象が強かったですね。

ましてやアジアの頂点を決めるビッグマッチ、しかもどアウェイの大観衆に煽られる環境。仲間の声も聞こえない、思いどうりにいかない。そうした状況で上手く立ち回るのが難しかった。

ハーフタイムまで逃げ切れられたら・・


こういう状況で一番いいことは、とにかく前半を無事に終わらせることだと思うんですね。相手の出方が予想外でどうにもうまくいかないと。これはやられるかもしれんと。そういう状況であるなら、なんとか無事に前半を終えてハーフタイムまで逃げ切ってくる。

試合中も監督は指示を送って修正をしますけど、当然声なんて聞こえないしチーム全体で情報共有はできない。ところがハーフタイムで一度試合を切って、チームが集まって話ができるチャンスを持つことができれば「相手はこう来てるから、じゃあウチはこうしよう」と方針を定めて後半に出ていけるんですよね。

しかし、前半に修正が追いつかないままたとえば0-2とか0-3とかリードを広げられてしまうと、後半の巻き返しで取り返しても追いつかない可能性が出てくる。なので、仮に被弾したとしても最小限で留める。傷を負うにしても致命的な痛手だけは受けずにいれば、後半でなんとか!と望みをつなげることができる。

なので、マテウスのゴールまではほんとよかったんですよ!これでトータル同点だ!ってなったじゃないですか。あれだけ良くない前半過ごしていたのに、ミスから点取り返して折り返せるなら全然わからなかった。あそこでそのまま何事もなく前半を終えられていたらまだ監督はじめコーチングスタッフに考える余地があったと思うんですよね。

カタールW杯のドイツ戦とかもそうだったでしょ?前半ボコボコにされていて「こりゃダメかな?」と思っていたらドイツの想定外の変化を見せて、日本が蹴落としてしまった。ドイツは対応できなかったじゃないですか。実は前半上手くいっているチームって後半修正しにくいんですよ。なぜなら悪いところがなかったから。なおすところが明白ならそこをなおせばいいですけど、特に問題ないならそれでいいよねって話で。

なので、前半のアル・アインの出方をマリノスが致命傷にならない範囲で受け止めて前半をターンして戻ってくることができれば、後半マリノスの変化に今度はアル・アインがうろたえるシナリオもありえたんじゃないかなぁと。

ところが・・・という。

うーん。まあでも、それだけエルナン・クレスポ率いるアル・アインの前半が素晴らしかった。そこは認めるしかないかなぁと思いました。試合後泣いてましたもんねクレスポ。ここで敗れていたら彼とて批判されるでしょうし、相当なプレッシャーだったことでしょう。


アル・アインの前半の振る舞いを観てみよう


ということで、やわらかフットボールのコーナー!

私ゼロファジがやってますサッカー観戦術入門講座『やわらかフットボール』でお伝えしている知識を使いながら、今回はアル・アインの前半の攻勢についてチェックしてみたいと思います。

サッカーチームが試合中に起こすアクションは、
「運ぶ」・・・ボールを前に運ぶこと
「防ぐ」・・・相手に運ばせないこと
「奪う」・・・ボールを奪うこと
と3つあります。

このうち攻撃は主に「運ぶ」で表現され、守備は主に「防ぐ」というアクションで表現されます。では、この試合の前半アル・アインの「運ぶ」やり方やマリノスの「防ぐ」やり方はどういうものだったか?をみていきましょう。

まずは、わかりやすいのでマリノスの「防ぐ」からいきましょう。


マリノスはこのようにかなり相手コートの深い位置からアル・アインの組み立てを邪魔しに行きます。こういう守り方を「前プレ(前からプレッシャー)」や「ハイプレス」と読んだりします。

こうしてプレッシャーをかけることで相手のボール回しに圧力をかけてミスを誘う、あるいはロングボールを蹴らせてマリノスボールにする。もし、高い位置でマリノスボールにできればそのまま攻撃に転じるチャンスになります。そうした攻撃を「ショートカウンター」と呼びます。


こうした守り方は相手がショートパスをつないでくる場合に有効とされていて、相手はつなぎたいのに邪魔されてつなげない。しかも下手すると奪われる。じゃあ仕方ないからボーンと大きく蹴ってしまうしかない!となる。そうすると、平面でパスをつなぎたいという目論見は砕かれてしまうので、やりたい攻撃ができないよねってことになります。

実際、こういうシーンも全然ないわけじゃなかった。なので、マリノスの前プレがよくなかったのか?というとそう言い切るのも難しいかなと。というのも、アル・アインのGKとDF陣にはちょいちょいミスが見られていたので、うまくひっかけてショートカウンターに入れるシーンも0じゃなかったんですよね。

では、これに対してアル・アインの「運ぶ」はどうだったか?


マリノスは前プレに出るため、その分自分たちのコートに広大なスペースができます。したがって、常に裏のスペースは豊富にある状態。


だから、ショートパスをつなぐというよりもむしろどんどん裏のスペースをめがけて蹴ってくる。そして、アタッカー陣が走り込んでいくという形ですね。でもそれならそれでいいんですよ。蹴らせているので。マリノスのDF陣がボールを回収できれば「奪う」が成立して、マリノスボールになるので。


ところが、ボールの到着点でのマリノスのCB陣とアル・アインのアタッカー陣でのデュエル(1対1)でめちゃくちゃ苦戦してたんですよね。まず、ハイボールに強い。そして、体も強い。なおかつ、スピードがある!飛べて、競れて、走れて、とめちゃくちゃ厄介な選手がそろってました。だから、ロングボールを蹴らせても相手がボールを前に「運ぶ」のを邪魔しきれない。

マリノスのCB陣も決して能力が低いとは思いませんが、ちょっとアル・アインのアタッカー陣の個の高さは目を見張るものがありました。彼らはスピードがある上に、どんどん裏のスペースに走ってくるのでマリノスのDF陣は戻りながら対応しないといけない。スペースが広いので、広い分だけ相手と追っかけっこ勝負に持ち込まれやすい。


仮にマリノスのDFがなんとか押さえてこぼれ球になったとしても、アル・アインの2列目が前向きにボールを回収しに来る。そして、彼らも場合によってはどんどん背後のスペースへ抜けていく。そうすると、マリノスの中盤が振り切られてボックスに侵入されてしまう。アル・アインの1点目のシーンもそういうニュアンスが詰まった得点だったかなあと思います。

では、アル・アインがこういうやり方で来たのでマリノスとしてはどう「防ぐ」をやればよかったのだろう?と考えるわけなんですけど、もう相手はノリノリなわけじゃないですか。「自分たちのやり方にマリノスが浮足立っていて対応できていない」っていうのがわかっているわけで。

ならば、彼らのやり方をくじいて「あれ?上手くいかないな?」ってしないとなかなかペースは取り戻せない。そのためにはどうするのがいいのか?


たとえば、前プレをやめてみるという選択肢もあるのかなと。守備ブロックを敷いてもう少し低めに構えてボールを持たせる。そうすると、相手はマリノスサイドのスペースが広いところを突いてきていたわけですから、そこをふさぐことができます。

しかし、実際のところこういう守り方でいきなりゲームの開始から入ることができたか?というと難しいだろうなとも。ゲームの最初をあんまり守備重視で入るとどうしても心理的に受けに回るというか、ずっと耐える時間みたいなことになってそれはそれで難しいということにもなりかねない。しかも、大観衆のどアウェイで煽りに煽られるでしょうし。

あとマリノスのスタイル的にもどうなんだろう?というのもあります。詳しくはわからないですが、引いて守って辛抱強く守って強みが出るタイプなのかどうか。そのあたりチームのキャラクターとの兼ね合いもあるだろうと思います。

もし、大きな方針と変えずに守ろうというならばやはりもう少し相手のFWに対してマリノスのDFがねじ伏せる力が欲しかった。もし、そこでロングボールを蹴ってもアル・アインのFWがなんもできません!ってなったら向こうの目論見が外れるわけですしね。

実況解説を聞いているとアル・アインの出方はかなり予想外だったようですし、状況を把握したらなんらかの対応をしたかったところでした。少なくともマリノスの選手たちがもうすこし浮足立つことなく戦うベースを与えてほしかったなぁと。そこがほんとに一番悔しいというか。たぶん、もっと戦えるのに戦わせてもらえてない!みたいな。そういう印象が強かった。

なので、前半のうちに修正ができないのであればせめてハーフタイムまで無事に!と願っていたんですが・・・・という前半だったかなあと。


ということで、20年近くぶりに横浜Fマリノスの試合をフルマッチ見させていただきました。なんだか懐かしいような気持ちと悔しい気持ちと、もうちょいのびのびプレーさせてあげたかったなという気持ちがごちゃまぜになった試合でしたが、準優勝は立派な成績だと思います。

思いがけずきっかけをもらったので、またマリノスの試合もみてみたいと思います。


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やわらかフットボールチャンネル
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