2018 J2 第20節  讃岐 vs 岡山  レビュー




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讃岐(22位) 0 -0  岡山(6位)

2018年6月23日(土)18:03KO ピカスタ


◎試合全体の流れ


讃岐のペースで進んだゲームでした。岡山のプレスを回避しサイドを攻略してくる讃岐に対して守備で後手に回った岡山でしたが、攻撃ではサイドチェンジを軸にいくつかチャンスを演出したものの前半はスコアレス。後半は疲労の見えはじめた讃岐を岡山が押し込み優勢に進めましたが、勝負どころの交代策で讃岐が決勝点を挙げます。その後パワープレーも含め讃岐を攻めたてましたが追撃も及ばず。最下位の讃岐相手にダービーで手痛い敗戦を喫しました。


☆今回のレビューのトピック

◎讃岐のサイドアタックとボールを収めまくる原一樹

◎讃岐の攻撃に対する岡山のリアクション

◎讃岐を苦しめた岡山のサイドチェンジ

◎一瞬のタイミングのズレが勝負を分けた交代策


それではまず、両チームのフォーメーションから確認していきましょう。

岡山のフォーメーションは3142

讃岐のフォーメーションは4231

次に、両者のフォーメーションのかみ合わせをチェックします。

讃岐の方は最終ラインでSBが余りそうな気配。4231でトップ下にがいるフォーメーションなので、岡山の中盤と最終ラインの間で浮いてくる可能性もあります。岡山はCBが余りますから後方から組み立てはやりやすそうな格好になっています。



◎讃岐のサイドアタックとボールを収めまくる原一樹



毎回対戦時にこちらの良さを消して戦力差を縮めてみせる讃岐の北野監督。今回の対戦では果たしてどう出てくるか?と思っていましたが、讃岐の大きな攻撃の軸は2つありました。



まず一つ目は構造的な問題を活用したサイドアタックです。

前述のとおり讃岐4バックに対して、岡山は2トップですから讃岐の両SBは比較的プレッシャーを受けにくい傾向があります。岡山が讃岐のSBから自由を与えないようにするには、FWが2度追い(プレスを2人続けてかける)するか、他の選手がチェックにでるかしないといけません。岡山の場合、通常SBに対してはWBが前に出て対応する決まり事になっています。


SBアレックスがボールを持っているので、WBの椋原がプレッシングに出ると背後にいわゆる”3バック脇”のスペースができますが、ここに讃岐はSHの選手を送り込むことでポイントを作ることができます。


さらにボールを受けたSHにCBがプレスに出ると、この図のように今度は濱田と塚川の間のスペースが生まれます。


ここに浮いているトップ下の木島が走りこむと、サイドの奥のスペースを奪うことができるので、そこから中央で待つ原や逆サイドの佐々木匠に決定的なパスを供給して仕留めると。前線で時間が作れるようであれば、ここにボランチの渡邊や永田も後ろから飛び出してきます。そしてもう一つ大きな特徴として讃岐はSHとトップ下のポジションチェンジをかなりやってきますから、そもそもマークにつきにくいトップ下というポジションにSH⇔トップ下の入れ替えまで加わってくるので、岡山としてはマークの受け渡し等もう一つ難易度の高い対応を求められました。このようにフォーメーションの構造上のかみ合わせを活用してうまく岡山のサイドを攻略するのが讃岐の攻撃の軸でした。



そして、もうひとつの軸は原一樹へのロングボール


長澤監督:トップのところで非常に収まっていて、それに便乗してセカンドボールに勢いをもって入られたんで、そこの部分でペースをつかまれた。



岡山のプレッシングにひっかかってボールを自由に動かせない場合、讃岐は迷わずにロングボールを蹴りこみます。それを受けるのは1トップに入る原一樹ですが、今年対戦したFWの中では一番ボールを収められてしまいました。主に対応したのはCB濱田ですが、彼は大型で強靭なFWがごろごろいる中、非常に信頼のおけるパフォーマンスを発揮しておりボールを自由に収めさせない守備力があります。しかしながら、この試合ではかなりの回数原に収められてしまい、讃岐の選手が前向きにボールを扱う回数が増えました。岡山としては讃岐に自由を与えると構造的な問題を活用され、プレスにいけばロングボールで逃げられて原に収められてしまうとなかなか難しい試合でした。




◎讃岐の攻撃に対する岡山のリアクション



長澤監督:全体的にボールを取りに行くスタートラインが中途半端で、くさびが何本も入っちゃう場面があって、そこで少し相手を躍動させた部分があった。スタートポジションをはっきりと揃えるか、相手のボール保持のコンディションが悪いときに出ていくか。そこのジャッジが曖昧で自分の気持ちだけで出ていった部分があったので、しっかりと状況判断して連動していくことが大事だと思いますし、そこに関しては(試合途中から)しっかりと収まったと思っています

主に讃岐のサイドを使った攻撃に対しては、プレッシングの整理を行ったということですね。状況を見ながらプレスに出ていくことと味方と連動すること。そして運ばれた場合でもマークを再確認することで守備は安定しました。

これまで通り左SHに対してはそのまま塚川がマークして、浮きがちだったトップ下の木島(あるいはポジションチェンジした重松)には中央の濱田が持ち場を離れてもそのままついていきます。こうすることにより、讃岐のアタッカーにボールが入っても継続的にプレッシャーを与えることができるのでそこから先の攻撃はストップできます。相手が攻めあぐねている間に濱田が空けたスペースへボランチが戻って埋めることで態勢を取り戻す。このように守備を整理したことで後半に入っても讃岐の攻撃をうまく防ぐことができました。




◎上田伊藤のダブルボランチ化と武田のシャドー化




イ・ヨンジェ離脱以降の岡山は攻撃においては赤嶺へのロングボールを中心とした攻撃が主体でしたが、前節伊藤大介がスタメンに復帰してからは少し路線に変化が見られ始めました。この試合は特にそうでしたが、FW齊藤へのロングボールはゴールキック時のみに限られ、以前とはスタイルの違いを如実に感じさせる内容となっています。具体的には、上田・伊藤が中央エリアで前を向き、FWやインサイドハーフが相手のブロックの間でボールを受ける形です。


讃岐は442で守りますが、はっきりいって守備はかなりルーズで、多少上田康太からは自由を奪いたい意図を感じさせましたが、徹底しているとまでは言い切れない感じでした。ですから、岡山はピッチの真ん中まではほとんど自由にボールを動かすことができます。そこで、讃岐の2トップ脇のスペースに位置した選手が前を向いて前線にボールを供給していく。前節もそうでしたが、上田ー伊藤コンビは実質ダブルボランチ状態になっており、上田が警戒されることに対する対策にもなっています。そのかわり、もう一人のインサイドハーフである武田はほぼ3421のシャドーのような役を担い、2トップに近い位置でプレーします。


伊藤や上田がボールを出せる状態になりそうなのを察知して、仲間が動き出し讃岐のブロックの間でボールを引き出します。そしてワンタッチでフリックして齊藤や武田に落とし前を向いて最終ラインを攻略するフェーズに入る。まだチャンスには結びつけられていませんでしたが、新しい攻撃の手段としてこのような攻撃を模索しているのがわかります。




◎讃岐を苦しめた岡山のサイドチェンジ




この試合で岡山が最も有効に攻撃できていたのはサイドチェンジを使ったサイドアタックでした。讃岐は442で守りますが、守備がルーズでサイドチェンジを食らった時のスライドも遅い。そこを狙った攻撃。

片方のサイドを押し込むと、讃岐のブロックもボールサイド(ボールのあるサイド)にぎゅっと寄ってきますから逆サイドに位置するWBがどフリーになりやすくなります。そこでサイドチェンジを入れるとかなり自由にWBがプレーできるのですが、そうさせないように讃岐がサイドチェンジを読んで素早くブロックをこの図では椋原の方へスライドさせていけばいいのですが、その動きが鈍いために前半は岡山のWBのところでかなりチャンスを作ることができましたね。

後半これに対し讃岐はSBをあえてブロックから少し離して位置させ、サイドチェンジのボールがWBに渡るころには距離を近くして守れるように修正しました。これにより特に左WBの三村と右SBの武田が後半やりあうシーンが増えましたが、三村にはもっともっとDF一枚剥がしてのチャンスメイクがほしかったところです。



◎一瞬のタイミングのズレが勝負を分けた交代策




長澤監督:一手違いになったんですけど、そこを修正するために手を打とうとして、塚川を前に出そうとしていました。ドリブルが怖いんじゃなくて、ドリブルに入られる初動のところを抑えないといけない。スピードに乗らせてしまうとややこしい対応になるので。時間経過とともにドリブルの最初のスタートのところを割とフリーでやらせていたので、もう一回圧をかけ直そうとしていたんですけど、打ち手として入れ違っちゃうような形になった。


交代策についての長澤監督のコメントですが、まさにここが勝負の分かれ目となってしまいましたね。先ほど讃岐の特徴のひとつにトップ下とSHがポジションを入れ替えることがあると述べました。おもに左サイドの重松とトップ下の木島のポジションチャンジが多かったのですが、ここで問題になったのは右サイドのポジションチェンジです。70分にそれまでトップ下に入っていた木島に代えて11番森川が投入されます。

森川はそのままトップ下の位置に入りましたが、この交代の後、森川とポジションを入れ替えて佐々木匠が頻繁に中央から左サイドまで顔を出すようになります。佐々木匠は岡山陣内でボールを受けドリブルしつつスルーパスを通したり、自ら運んでボックス内へ侵入するようになっていて讃岐の新しい攻撃の形を作る立役者となっていました。


これに対して、長澤監督はCB後藤を準備していました。

後藤を3バックの右に入れ、そこに入っていた塚川を中盤に挙げ佐々木キラーとしてぶつけようというのが狙いでしょう。しかし、次のプレーが切れたら後藤を入れて塚川をマンマークで付け佐々木を消そう!というまさにその直前のタイミング。左サイドを突破した佐々木匠がそのままボックス内に持ち込みシュートを突き刺して決勝点を叩きこんでしまいます。まさに一歩遅かった交代策が勝敗、明暗を分けてしまう結果となりました。




最下位の讃岐相手に内容的には互角の力で進めたゲームでしたが、交代策で刺されて敗れてしまう結果となってしまいました。優勝を目指すチームとしては全然物足りない内容と結果と言わざるを得ません。チームは春先に見せていたトップフォームからするとかなり競争力を落としていて、その証拠に順位がだんだんと維持できなくなってきています。いろいろと工夫をして苦労はしていることを感じさせますが、相手の脅威となるような実力を身につけるには程遠いのが現状です。もうすぐ折り返しとなりますが、何かきっかけをつかみたいですね。新しいヒーローが必要だと思います。




それではまた。




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