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もっとも難しいことは

「普通」って難しくないですか?

自分にとっての「普通」
あなたにとっての「普通」
わたしたちの「普通」
かれらの「普通」

みんなそれぞれ「これが当たり前でしょ?」って思っているのに、実はその中身は大きく異なっていたりして。一体「普通」ってなんなんだろう?「普通」ってほんとに難しい。もしかしたらもっとも難しいことかもしれない。

離婚寸前

実は、自分たち夫婦は離婚寸前でした。

妻に落ち度はなく、一方的に自分がよくなかった。夫として、父親として。あきらかに自分は失敗者でした。

妻はそんな自分の落ち度を我慢して我慢してずーーっとやってきてくれたんですけど、ちょっとしたきっかけがあって「もうこれ以上はむり」と。まさかそこまで彼女を追い込んでしまっているとは・・・いや、薄々気がついていたかもしれない。でもなんとなく彼女の我慢に甘んじてしまっていたのです。ほんとに情けない話です・・・。

正直に告白すると自分には「夫」や「父親」ということがどういうことなのかわかりません。結婚して、子供が生まれて、自分の立場が変わっていくのに、そこにいまいちアジャストできていない違和感をずっと抱えたまま過ごしてきました。どうするのが正解で、どういう気持ちでいればいいのだろう?それがわからないのです。

明確な答えを持たない自分は、それまでの独身の時の「普通」な暮らしをそのまま結婚生活に当てはめて暮らしていくことになります。そして、それが「普通」だと思いこむことにしたのです。すると自然と摩擦や衝突が生まれることになっていきます。妻の方は「妻」「母」としての「普通」に移行しているのに、こちらはそうでないわけですから。お互いの「普通」をぶつけ合うような形になり、その都度妻の方が諦めて我慢してくれていたのです。

自分としては自分なりに家族のためにと思って頑張ってきたつもりでした。しかし、それはあくまで40年生きてきた中で積みあがった自分の中の「普通」の文脈においてのこと。それは妻からすれば身勝手で、思いやりのかけた「普通じゃない」ことでした。それに自分は気がつかなかった。だって、これが普通だと思い込んでいたのですから。

もしかしたら、その時々で自分は夫婦としての「普通」や親子としての「普通」を意識して、新しい「普通」に自分を変えていく必要があったのかもしれません。しかし、自分にはそんな発想はありませんでした。

自分の中の「普通」は普通じゃなかった

「みんなちがって、みんないい」
「ひとそれぞれ」

と、言えば聞こえはいいですが取りようによっては都合のいい言い訳にもなります。「あなたのうちではそうだったかもしれないが、うちではそうじゃなかった」は自分の中で一番便利な逃げ口上でした。

しかし、離婚寸前まで行って初めて自分の「普通」が「普通じゃない」ことに気がつきました。おれはやっぱりおかしい。おれが40年もやってきたことはきっと、まるっきり、おかしい。

思えば自分の両親もよくケンカをしていました。母は父の至らなさをことあるごとに指摘してそのたびに口論していたのを覚えています。自分はとくに不思議に思うことなくそういうもんなんだろうと思ってきました。

もしかしたら自分が過ごしてきたそういううちの「普通」はおかしかったのかもしれない。そう思って母に聞いてみました。「おれの思ってる普通はもしかして普通じゃないの?」と。

・・・母はすべてお見通しでした。

聞けば「こういうことになって、あんたが離婚して戻ってくることを想定していた」というのです。そして、内々に妻に「あなたは何も悪くない。悪いのは全部息子の方だから」と伝えていたそうです。

結局、自分の「普通」が間違っていることをしらなかったのは自分だけだったのです。40年以上も。なんと、恥ずかしい・・・。自分の中の「普通」がガラガラと音を立てて崩れ去っていき、自分に対する情けなさからガックリ崩れ落ちるような心境でした。

新しい「普通」をもとめて

幸いにも妻は自分に少しの猶予を与えてくれました。

自分の「普通」は普通じゃない。

それがわかった以上、自分を変えなければなりません。妻と娘と別れて暮らしたくはありません。ですからこれまで「普通」と思っていたことを疑い、新しい「普通」を見つけていくしかない。大変かもしれないけど、努力して良くしていくことを許してもらえたのがほんとうれしい。妻にはほんとに感謝です。

でも、どうやったらいいのか?それがわかりません。自分は「普通」の感覚を持っていないので一人で考えていてもらちがあきません。いわば、家族一年生みたいなもんだと思うので、一からやりなおそうと思いました。ということで、まずは本を読むことからはじめてみました。

いくつか読んでみたところ、この本で紹介されているお話はとてもわかりやすく「どうしたらいいの?」という疑問を解消するのにとても助けとなってくれました。

そして、家族ということをいったん客観視して、自分のスタンスを見つめなおすうえでとても助けになってくれたのはこちらの人気ドラマ。

他人同士が契約結婚という形で同棲し、夫婦関係を雇用関係としてスタートするという内容なんですが、ついつい身内にもたれかかって甘えてしまう自分の背筋を伸ばしてくれるとてもいい作品でした。ドラマとしても最高に面白かった。結婚する前の気持ちを思い出しました。

こうして自分なりに学んでみると、いかに自分が妻に依存して彼女の自由を奪っていたのかについて思い知ります。そりゃ一緒に暮らせないよな自分でも嫌だわと反省するばかりで。

まだまだ勉強の途中ですが、やってみると「ここも変えていける」「ここも良くしていこう」とどんどん改善点が見つかるんです。いかに、それまでの「普通」がおかしかったのかという話なんですが、その反面少しづつ自分を変えていけるワクワク感みたいなものを感じています。

永遠なのか 本当か
時の流れは続くのか
いつまで経ってもかわらない
そんな物あるだろうか
見てきたものや聞いたこと
今まで覚えた全部
でたらめだったらおもしろい
そんな気持ちわかるでしょう

THE BLUEHEATS 「情熱の薔薇」

「これまでのこと全部でたらめだったら面白いわけないじゃんヒロト!」ってずっと思ってたんですけど、なんとなくこの歌の意味がわかるような気がしています。

照れくさいけれど、妻に「これまでいろいろありがとう」と、そして「娘をいい子に育ててくれてありがとうあなたのおかげです」と伝えようと思います。そして、母には「40年間ずっとありがとう」と。

新しい「普通」をもとめて、旅は始まったばかりです。

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