絵葉書音楽序論

1928年と言いますか、昭和3年に日本初となるヒットしたポピュラーソング、流行歌のレコードとして有名な二村定一の「あほ空」(青空です。My Blue Heavenを和訳したカヴァー盤)ですが、この盤のカップリング、B面曲「アラビヤの唄」(こちらもカヴァー曲です)、この歌についてぼけーっと考えていました。

カヴァー曲といいながら、オリジナルの音源がYouTubeでは見つかりません。この曲は1927年のアメリカ映画「The Garden of Allah(邦題は『受難者』」)の主題歌でしたが全くヒットしなかったらしい事はわかりました。作曲者のディスコグラフィにも記載は無いのですが、当時販売されていた楽譜は発見できましたので、おそらくですが、録音音源としては残っていないと思われます(だって映画、サイレントだもの)。きっと当時のスタッフの誰かが楽譜として買い付けてきたんでしょうね。
「The Garden of Allah」といえばマレーネ・ディートリッヒが出ていた1936年の「沙漠の花園」が有名(?)ですが、この原作、三回も映画化されているんですね。

さて、日本語版「アラビヤの唄」。日本初の流行歌(のB面)にして、後年の久保田早紀「異邦人」、ジュデイ・オングの「魅せられて」やYMOの「シムーン」等につながる日本初のエキゾティック歌謡ですが、歌詞がちょっと面白いのです。

恋人よ、アラビヤのうたをうたおーよ
あの寂しい調べにきょーもなーみだなーがそおー

と、今聞いている曲が「アラビヤの唄」ではなく、アラビヤの歌を歌おうという歌。なのです。自己言及的っていうのかなこれ。じゃ、その「アラビヤの唄」ってどういう曲なんだろう?と疑問がわいてきます。
実はこれこそがエキゾティック歌謡と言いますか、ちょっと懐かしい言い方をすればモンド系、わたし的に名付けてよいのなら「絵葉書音楽」の構造なのではないのか?と、思い至りました。
続くかな?続きました

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