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大学院を修了した。

正確にはまだ在学しているけれど、先日修論発表を終えた。
とても長く感じた、しかし、ある意味ではあっという間の2年間の大学院生活を、無事走り切ることができた。

なんとなく、大学院で得たことって何だろうと考えた。
私の結論は、「挫折」である。


ーーー話は3年前、研究室配属面談に遡る。

先生に聞かれた。
「もし、この研究室に配属されなかったらどうする?」
全く考えておらず、言葉に詰まっていると、重ねて問われた。
「これまで何もかも思い通りだったの?」


………………そんなことはない。
わかりやすく見えるところでは、部活のコンクールで人数制限のためにメンバーから一人だけ外されたり、第一志望の大学に落ちたり。もちろん人間関係で上手くいかなかったことも色々あるし、要らない劣等感を拗らせたことも多々あった。


………………そんなことはないと反論したかった。
でも、反論出来なかった。どれも全く大したことないことのように思えた。


この問答は、私にとってかなり衝撃的なものだった。
これまで、物事には一生懸命取り組んだつもりでいたけれど、挫折のひとつもしていないのかと。なんて薄っぺらい経験しかしていないのかと。







さて。
そんな、21歳まで「何もかも思い通り」だった私も、研究室生活で困難にぶつかることになる。
後から思えば、私の立場では周りからの働きかけで成長することは難しく、かなり積極的に教えを乞うたりするべきだったのだが、それに気づくことが出来なかった。そのため、どんどん周囲に置いていかれ、また自分の目指したい姿からも乖離した。
要するに、研究が出来なかった。


これまで、大抵のことは人並みかそれ以上に出来た。
出来ないことはやってないだけのことだと認識していたし、人間関係などで上手くいかないことは運だと片付けてきた。
特に勉強は出来た。出来ない時は単に努力不足だと考えた。(大学に落ちたのも勉強時間が不足していただけと考えていた。不足していたのは事実だけれど)


それが突然、特に得意な勉強に近い領域の「研究」で、どうしたら良いのかわからない。
出来るようになりたいこと、成し遂げたいことはあるにも関わらず、どうしたらそこに辿り着けるのか全くわからなかった。

だから、とりあえず人の真似事をした。
たくさん実験してみたり、ゼミで質問してみたり、ネットで論文や記事を読んでみたり。
毎日「真面目に」通うことも大切にした。
周りと同じようにしていれば同じようになれると信じて。


………………空っぽだった。
毎日遅くまで実験しても、結果は出ない、そもそも実験量も積めてない。
何か読んでも頭にちゃんと入ってこない。
いよいよどうしたら良いのかわからなくなった。

これは本題から逸れるのだが、研究室の環境は良くなかった。
周囲の人々との調和を重視する私にとって、そこにいることそのものへのストレスも甚大だった。
そんな中で、このようなことを相談することもできなかった。正直に言って馬鹿にされ、ますます居場所を失うことへの恐怖の方が強かった。


研究のことで、何度泣いたことかわからない。
何故泣かなければならないのかもわからず、大した努力もしていない自分は泣くべきでないという思いも拭えず。


修論発表の半月ほど前も、どうしようもなくなって、執筆も実験もできなくなった。
一度休み、最後の頑張りで、なんとか提出と発表には漕ぎつけた。
自分のなりたかったものとは程遠いけれど、最後に潰れかけて、それでも最低限の発表は出来たということは、今では誇りたいと思っている。
だってそれは、研究のできない自分を受け入れた上で、研究そのものを「自分のやることではない」と否定はしなかった、ということだから。


これが「挫折」なのだと思った。
挫折とは何なのだろう。
今の私は、「努力の実感と結果に対する実感の乖離による無力感」と説明する。
私は自分の思いつく限りで努力をしたが、結果も出ず、能力が上がった実感も得られなかった。
「やっているけれど出来ない」という感覚がわかったような気がする。
よく挫折は克服した話とセットで語られるが、克服できない場合もあるーーーいやむしろそれを挫折と呼ぶのではないかと思う。


私はこれから、教育の道へ進む。
研究で挫折を経験したからこそ、「わからない気持ち」がわかるようになったと思う。
その気持ちに寄り添い、希望を捨てさせない教育者になりたい。
必ずしもわからなくたっていい、克服することばかり考えなくてもいい、でも、自分をダメだと思ってほしくないし、同様にわからない対象も嫌わないでほしい。


今、「これまで何もかも思い通りだったの?」と聞かれたら、たぶんこう答えるだろう。

「思い通りにいかないこともありました。そんな時は、それと向き合って、受け入れることが大切だと思います」

※次回からは、もう少し日常的なことも書こうと思います!

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