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中山間地のSS過疎地問題・ガソリン価格日本一。長野県が行った取り組みについてお話を伺いました。

長野県の令和5年度11月補正予算事業「給油所経営合理化支援事業」において、ゼロスペックのスマートオイルセンサーが対象設備となりました。この「給油所経営合理化支援事業」は給油所の経営合理化を促進するため、事業者向けセミナーを開催するとともに、効率的な灯油配送体制 の整備に向けた取組を支援するものです。

補正予算事業による支援が決定するまでの背景や課題について、長野県産業労働部 産業政策課の浦澤仁様にお話をお伺いしました。

給油所過疎地の支援として、石油商業組合とチームを組まれた背景からお伺いできますか?

長野県は、市町村内のSSが3か所以下である「SS過疎地」の割合が全国で2番目に高く、また、県土が広く中山間地を多く抱えており、災害発生時に孤立集落となる懸念がある地域が広く分布していることから、地域住民の燃料供給拠点という生活インフラとしてのSSの維持が課題となっていました。

そこで、各地域において行政を巻き込んでSSの維持について考えていただけるよう、県と長野県石油商業組合(以下、石商)が連携して、市町村サポートチームを起ち上げ、支援に当たることになりました。

県と石商による支援は、どのような狙いで進めているのでしょうか?

市町村に対し、SS過疎地対策の検討を促すことを主な目的として取り組んでいます。

今回、両者で市町村に向けた専用相談窓口を設置し、共同作成した検討の手引きをもとに、地域の問題として主体的に考えていただけるよう、市町村に呼びかけを行いました。市場原理に任せたままでは経営が持続せず、廃業せざるを得ない給油所が存在するからです。特に、給油所が1か所しかない地域については、どのような支援ができるのか一緒に検討していくことも考えております。

県内77市町村のうち、SS過疎地は35町村が該当し、全国的にも高い割合です。このような課題に対応するため、先回りした検討や議論が求められる一方で、各市町村においては人的リソースの不足もあり、目の前の地域課題に対応するのが精一杯というのが現状です。

今年度については、コンサルタントの分析結果から緊急度が高いと判断された地域に対して、現地訪問によるヒアリングを行うなど、積極的な支援を行ってまいります。

長野県のガソリン価格が高騰する理由について、どのように分析されていますでしょうか。

昨年、本県のガソリン価格に関する話題が連日メディアに取り上げられ、関心が高まる状況を踏まえ、要因分析の調査を実施いたしました。

調査結果から、まず、運搬にかかるコストの高さが一因にあると考えております。油槽所からの距離が遠い地域や中山間地が多く存在するためです。さらに、販売量が少ない給油所が多いため、経済的なスケールメリットが働かず、コストが高くなりがちだということも見えてまいりました。

このような状況を鑑み、給油所の経営合理化をより一層進める必要があると判断しまして、補正予算事業により支援することにいたしました。

今回の補正予算事業でスマートオイルセンサーを対象設備としていただきました。どのような点を評価いただいたのでしょうか。

長野県は寒冷地であり、冬場の暖房用燃料として、灯油の需要が高い地域です。このため、灯油配達業務が給油所の経営コストに大きな影響を及ぼしています。この業務は事業者にとって大きな負担となっている一方で、やめるわけにはいきません。

スマートオイルセンサーは、このような経営コストの高さの一因となっている灯油配達業務の効率化が期待できます。具体的には、リアルタイムでの在庫管理や配達の最適化が可能となり、事業者の負担軽減に直結するところを評価しました。スマートオイルセンサーの導入により、地域における給油所の経営持続性の向上といった、SS過疎地対策としての効果も期待しています。

今回の補正予算事業を通して、長期的に目指している目標をお聞かせください。

今回の事業による効果を分析し、未整備の事業者にも導入を促すことで一層の経営合理化を推進してまいりたいと考えております。また、今回の事業で経営合理化セミナーも実施しておりますので、業界内で経営合理化の意識が広まったと思います。継続的に取り組んでいただくことで、ガソリン価格の安定に繋がることを期待しています。