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Stanford e-Japan ~“興味のアンテナ”を広げてみませんか?~

  Stanford e-Japanは2015年からアメリカ・スタンフォード大学が日本の高校生に無料で提供している、オンラインコースです。私はこのプログラムに昨年10月から参加していました。今回はタイトルにもある通り、「高校生活で自分の考え方を広げてみたい!」と感じる方に、Stanford e-Japanでの学びをお伝えしていきます。

1. 自己紹介

 プログラムについてご紹介する前に、まずは私自身について軽くお話しします。私は現在、都内の高校に通う高校一年生です。英語学習は中学入学時から始め、海外に住んだ経験もありません。英語資格は英検二級を持っています。

 このプログラムに参加しようと思ったきっかけは、中三の英語の授業で先生が見せてくださった、アメリカの高校生が原爆投下についての考えを話している動画です。たった数分間の動画ですが、日米の原爆に対する意識の違いがありありと分かり、この違いはどこから生まれるのか疑問に感じて、日米関係について深く学べるStanford e-Japanへの参加を決めました。(以下がその動画です。興味のある方は是非ご覧ください。)

(動画に出演している日本人は、当時福岡県の高校3年生だった古賀野々華さんという方です。古賀さんの留学先、米・リッチランド高校のある地域では、第二次世界大戦中に核兵器の製造が行われていました。そのため、高校のシンボルマークは”きのこ雲”であり、動画内で生徒は自らのことを"bomber"と称しています。)


2. Stanford e-Japanとは

 プログラムの内容を一言で表すと、「アメリカ(日米関係)についてとことん詳しくなる全編英語プログラム」です。
 全5か月のプログラムの流れとしては、
>一週間に1テーマのペースでアメリカについて学ぶ  全12回程度
(与えられた読み物・動画に関する課題、掲示板でのディスカッションを通し知識を深める→毎週土曜に専門家の方による90分程度のオンライン講義を受ける)
>興味のあるトピックについて、英語で1600語ほどの論文を書く

といった感じです。テーマは、日米同盟・第二次世界大戦やシリコンバレーの起業家精神、またアメリカの教育事情から留学まで、さまざまです。課題やディスカッション、論文はどれも成績がつけられ、特に最終論文は全成績の50%を占めます。最終論文は約三か月かけて完成させ、スタンフォード大学の雑誌に掲載されるため、最も大変な課題といっても過言ではありません。

  また、Stanford e-Japanに興味がある方の多くが気になっているのが、必要とされる英語力ではないでしょうか。あくまで私個人の考えですが、そこまで卓越した英語力というのは必要でないと思います。もちろん英語力が高いことに越したことはないですが、というのも、たとえ帰国子女であってもプログラムをサラリと遂行することは難しいからです。掲示板で議論する質問はどれも即答できるものではなく、英語力よりもむしろ、多角的な視点が求められていると感じました。私自身、英検二級と決して特別高い英語力を持っていなかったのですが、プログラムのメンバーや学校の先生方に支えられ、最後までやり遂げることができました。

そのため、もし英語力に自信がなくて応募を迷っているという方がいらっしゃったら、ぜひ挑戦してみてほしいです。


3. 受講前後の変化・どんな人におススメ?


>“ものの見方”の変化 →自分の視野を広げたい人
  記事タイトルにもある通り、これが最大の変化だと思います。皆さんは、”Insider, outsider perspective” という言葉を聞いたことがありますか(下図)。慣れ親しんだ”home”の内部の人”insider”の状態から、未知の世界である”away”に行くと、はじめは馴染めず外部の人間”outsider”の状態ですが、徐々に”insider”となっていきます。そして、”home”に戻ると今度は”away”からの視点を兼ね備えた”outsider”になっており、身近なことが新たな視点から見られる、というわけです。
  私は、この”insider, outsider perspective”こそが、Stanford e-Japanの大きな狙いではないかと思います(実際に、コース内ではこうした異文化理解についての講義も行われました)。日本と関係の深いアメリカのことを、ともすれば私たちはそれなりに理解していると感じるかもしれません。しかし、各方面の専門家からの講義、多様なバックグラウンドを持つ仲間とのディスカッションは、そんな考えを大きく覆します。そうして、アメリカについて教養を深めるうちに、慣れ親しんだ日本に対する視点も変わっていきます。例えば、ニュースを見るにしても、「菅首相とバイデン大統領が初めて電話会談を行い、両国の更なる連携強化を確認した」、という内容なら、「バイデン大統領はどういう意図をもって日本と交流するのだろう」、「日本はアメリカの核の傘により依存するようになるのか」というように、次々に好奇心が生まれます。

自分の興味のアンテナを広げたいと思う方にとって、このプログラムはとても面白く実りあるものになるはずです。

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>“一つのことをやり遂げる覚悟” →自分が熱中できるものを見つけたい人


 このプログラムは、相当の時間と意識を割く覚悟がないと、最後まで成し遂げることはできません。私は週7、8時間ほど課題やディスカッション、講義やその準備に費やしていました。最終論文を書くときは、文献を探したり、専門家の方にコンタクトをとったりと、さらに時間が必要でした。参加者は、学校の課題やテスト、部活動などとの両立が求められます。しかし、見方を変えると、ここまで日系アメリカ人や公民権運動など特定のトピックについてじっくり考える機会はなかなかありません。特に、最終論文で扱うテーマ、私は核兵器廃絶について書きましたが、その方面については約三か月かけて調べるので本当に詳しくなります。プログラムの中で、きっと一つは自分の琴線に触れるテーマがあるはずです。

>英語力の飛躍的向上(特にReading/ Writing) →英語力を上げたい人


 テーマごとに課される読み物や動画、それらについてのディスカッション、講義まですべて英語で行われるため、Reading, Listening, Writing, Speakingの4技能全てが向上することは間違いないです。
  特に私が大きな変化を感じたのが、「長文読解」「英文を書く(思いつく)スピード」 でした。課題となる文章は確かに語彙のレベルも高く、量も多く、はじめのうちは苦戦したのですが、だんだんと段落ごとの要旨をとらえることができるようになりました。また、英文を英語のまま理解できるようになったことで、読むスピードも速くなりました。日常的に英語を読むことがいかに大切かを強く実感した経験です。
  Writingに関しては、ディスカッションボードでメンバーと英語で意見交換したことが活きました。掲示板に自分の意見を投稿すると、誰かしらが目をつけて、意見に賛同してくれたり、新たな疑問を投げかけてくれたりします。どんな反応が返ってくるか楽しみで、コメントが返ってきたときはより多くのことを話したくなり、筆(パソコンなのでタイプですが)が乗ります。さらに、最終論文では1600語の文章を、それも何回も推敲して書き上げるので、論文完成後は英語がスラスラ書けるようになっていることを実感できました。

4. 最終論文の内容紹介


  私が全プログラムの中で最も力を入れて完成させた論文です。
  タイトルは、『New Education in Japan for “a World without Nuclear Weapons”』。皆さんは、今年の1月22日に核兵器禁止条約が発効されたことをご存じでしょうか。おそらく知らない方が大半だと思います。
  唯一の戦争被爆国である日本では、政府と国民がそれぞれ核兵器廃絶を遠ざけるような課題を抱えています。国民の課題は、広島・長崎と他地域の核兵器に対する意識格差を主とした、「中途半端な関心」です。一方の政府は、「日米同盟・核の傘と戦争被爆国としてのふるまいのバランス」です。
  そこで、私は日本の非核化を目指すにあたり、まずは国民の関心を引き付けることが重要だと考えました。その手段が、「新たな“客観的”平和教育の実現」です。従来の「核兵器や戦争は悪いものである」と半ば押し付けがちな日本の平和教育と異なる点は、歴史の事実について学生が議論し、目指すべき未来のカタチを、それを創る当事者の観点から考えるというところです。若者が主体的に核問題について考える機会を、多くの人々が受けられる「教育」の中で提供することで、前述した地域間の核兵器に対する意識格差も改善していけるのではないでしょうか。

5. 最後に


  ここまで記事を読んでくださった方、ありがとうございます。有益な情報を提供し、Stanford e-Japan参加のよい判断材料になったのならば、とてもうれしく思います。また、多くのコース修了者がそれぞれの体験を公開しているので、ぜひ他の方の体験談も参考にしてプログラムについて知っていただければと思います。最後になりますが、このプログラムは最後までやり遂げる覚悟をもって向き合えば、必ず身になります。記事を読んで少しでも興味を持った方は、ぜひStanford e-Japanに挑戦してみてください!

(ご質問・ご感想などありましたら、ぜひコメントしてください。)


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