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マンションの窓に・きみに言うさよならは・夕暮れの商店街に


マンションの窓に  大きな顔面が近づいてきて
窓に張り付き  窓を突き破り   目がドロリと垂れてきて
私を飲み込む

大きな顔面の眼の中で  全身の激痛に耐えている
恐らく落ちた時の痛みを
前借して空を飛んでいる






きみに言うさよならは  一度だけ  のつもりが何回も
言っている
言われている
お互い  言い言われ慣れたね  いつかさよならが途切れる
その時どうなっているだろうね
二人は







夕暮れの商店街には  揚げ物の少しくどくて  香ばしい匂いが漂う
不動産屋のご主人は  店先を棕櫚帚ではいている
狭い道幅いっぱいに  黒塗りの高級車が進入して  買い物客は道を開け
窓の中を覗き込む

とても小柄な老人を乗せた車が  商店街を微速で進む
向こうから歩いてくる地域猫の   あんなに嫌そうな猫の顔を
初めて見た


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