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奴隷のいたみ

奴隷のいたみ

しろい
木綿の
ワンピースを着た
女たち
年齢はさまざま
髪型も
化粧も
百人ほども
いるだろうか
公園の中央広場に
集まって
本を読んだり
踊りを踊ったり
寝転んだり
向かい合ったり
歩き回ったりする

風が吹く
ワンピースの
肌に接していない部分は
風にひかれて
風下へ
ふくらむ

みんな
動きをやめて
風の方へ
一斉に向き直る
わたしたちは
風に向かう
という
メッセージに
見えるかもしれない

風が止むと
多くの女たちは
手櫛で
髪を直しながら
恥ずかしそうな
笑顔を見せる
そのとき
目じりにわずかに
しわができる
もうすでに
しわになっている
年代の人ですら
新たに
細かくしわが
よる

つづいて
彼女たちに
ちいさな
白いハンカチの
つつみが
彼女たちのうちの
数人から
手渡される

つつみをひらくと
中に塩が
入っている
精製されて
同じ粒子に
揃えられた塩
つまり
普通の

あいずもなしに
彼女たちは
一斉に塩を
手から中空へ
放る
遠目からみると
中央広場が
一瞬
白くかすむ
近くで見ると
彼女らは
塩まみれになっている
とりわけ
髪の隙間に
塩が入り込む

そこに
さっと雨が
降ってくる
自然に降るのか
どうかはいい
彼女たちは
雨に濡れ
塩が流される
塩水は
地面に滲み
木綿の
ワンピースを
びょぴょにする
当初からの
約束のように
一人が
ゆっくりと
ワンピースを
たくしあげる

ワンピースを
脱ぐ動作は
円状に
広がり
全員が
脱ぎ終わると
雨が止む

彼女たちは
足の裏を
ぬかるみで
土色に染め
ふくらはぎ
すねを
泥はねで
汚した

はじかれた
雨水で
自然と
流される


そのまま
乾いてゆく


題名と
中身が
全く違ってしまうことも
ある
イメージの練習
と題しようと
思ったら
もう題名が
ついていた

広場を
撤収する
時間となって

そのまま
彼女たちは
広場から
離れる

いくばくか
一律の
紙幣を受け取り
彼女たちは
各々の部屋に
帰っていく

そこまで
記録する必要
なかった
のでは
ないか

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