ギターを磨いて
ギターを磨いて
暇なものですから
思い立って
ギター
磨く
外国の
いいギター
何本か
持ってる
自分へのご褒美
と
将来の値上がりを
期待
少し投資で
利が出ると
せっせと買った
ギター
百本
たいして弾けないのに
ですよ
憧れの
名機は
かなり手に入れた
美しいな
ギター
なまめかしいな
ラッカーの
つや
この
ラッカー
曲者
すぐに
ひび割れ
くすみ
むかしは
日当たりのいい部屋に
置いとくと
ぱしん
と割れることも
あったらしい
よく聞くけれど
実は
レアケース
だと思う
車磨きと
要領は同じ
磨き粉を
徐々に細かくして
こすっていく
磨けると
きゅきゅと
鳴る
力入れすぎても
入れなくてもダメ
へたすると
ムラになる
高いギターほど
そうなる
3000番の
粉から
傷消し用だから
傷の周り全体が
削れる
7500に
番手を上げる
ここでやめても
まあいいのだが
鏡面仕上げ
9800番
で鏡にしたい
ステージの上で
ライトを反射して
まぶしい
ステージにたぶん
上がることはないけれど
楽器もやはり
才能なのかな
いくらやっても
一流になれない
心が折れる
というより
ぐんにゃりと
スプーンのように曲がる
楽器は
放置され
くすんでゆく
いずれ
ギターなど
弾けなくなる
そのあとの変化の方が
ギターをもっと
なまめかしい音にする
火事でもなければ
事故でもなければ
私よりずっと生きて
私よりずっと
よく鳴るだろう
磨いていくと
スポンジが
ボロボロになってきた
どうしたものか
恐る恐る
手でこすってみたところ
当たり
被膜が
角質がポロポロ
剥がれ落ちるように取れて
つるんとギター
ひと皮むけた
手を
粉白くして
ギブソンJ45
マーチンD35
磨いた
ぱっと見たところ
新品
しかし
大きな塗装ひびが
何本か
入っている
これが
高いギターの証です
50年たてば
粉々にひびて
磨いても仕方なくなる
弾くたびに
塗装が粉々に
落ちていく
その代わりすごい音で鳴る
どすっと
腹を殴りに来る
しかし
一説には
木の鳴り響きは
ある年限を過ぎると
死ぬという
百年という人もいる
もっと短いと言われたりもする
そのあとは
響きが死んで
さらさらとした音が
零れ落ちるように
鳴るのかもしれない
そろそろ
その音が聴ける
頃だ
まもなく
百年ギターも
出回る
バイオリンなど
どうだろう
何世紀も前に
その響きは
ピークを迎えて
いるかもしれない
人の一生は
短いよ
聞こえる音
と響
もどのあたりの
鳴りなのか
わからないという
事だね
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