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似顔絵

似顔絵


このぜんぜん似ていない似顔絵。しかし、鏡で顔と並べると嫌になるほど似ている。私が描く似顔絵は、鏡で見てはじめて似て見える書き方をしている。いやいやいや、そうではない。鏡の方がゆがんでいて、それにあわせた計算をして描いている。というのも少しニュアンスが違う。わずかなゆがみが絵筆とシンクロしているような、むしろ画用紙の方がうねるのか。光の当たり方と角度、天候。力の入れ方と質感の測り方。その再現性と回数。気温湿度。音量。似顔とはなに。ふと考える。似顔文など成り立つのかどうか。文字で描く絵とは違う方法。なるほど。ひらがな。かたかな。自由度。いろいろな組み合わせ。半分は描写で、半分は様々な文字で。白い顔。非対称。減算。乗。位置。動く。何が。眉。頬。眼球。その光彩。鼻の穴。輪郭。特に顎。そこから続く首筋に。研磨された金属をさらにひっかく鉄筆のつもりでいくつか線を引いていくと、乱れ、揺れる,掻き毟る。と、すぐに収まる。簡単な顔。しかし、並べてみたところで全く別になっているその書き物はライクア風景。夏前の風景画。かかれた季節とまったく関係のない花や椅子のかかれた広場。

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