園芸学校
古くからある
珍しい
園芸学校
地域ではそう
呼ばれている
蝶を捕ったり
かぶとむしの
わなを仕掛けたり
一度
猫の
半ば白骨化した
頭があって
おぞけをふるって
逃げ出した
もちろん
それらの茂みも
りっぱに
研究対象と
思われる
友達と
三人
何を考えたか
深緑の
使われていないプール
に釣り糸を
垂らしてみた
手に細かい振動
釣り上げると
平べったくて
虹色に光る
魚
入れ食い
その時は
何の魚か知らなかった
まもなく
大人が
すっとんできた
逃げる
三人
翌日
友達二人が
夜
家に訪ねてきた
園芸学校のひとから
ひとしきり怒られた
という
嘘だ
何で
家がわかるの
しかし
ふたりは
怒られたの
一点張り
来るかもしれないからな
と言われ
しばらく恐怖
あの学校
いろいろな池があって
よく魚を釣った
小さな実験槽
フェンスに手を突っ込んで
それは
深くまで
掘ってあるらしい
水草が茂っていて
確かめられなかった
深さ
事務室
大きな酒瓶を
切ったような水槽が
窓際にあって
見えた
あの水草と
虹色の魚たち
それから
虹色の魚を
何度も断続的に
飼ってきた
水槽に入れると
虹色が消えて
地味な魚体
なぜ
事務室の魚は
あんなに鮮やかだったの
だろう
研究として
飼われていたのか
実験って
短く
終わるものもあれば
それこそ
人の生涯をこえて
引き継がれるものもある
というのを知った
自然科学と
縁がなかった
だから
近頃それを
知った
あの
珍しい学校でも
私が生まれる前から
取られている
データ
記録
あるとしたら
崖の上に広がる
ビニールハウスの
連棟の中かな
夜になると
裸電球が
灯ってオレンジ
あの中で
昔は板の上の紙
今はタブレットで
何かの数値でも
かきこんでいるのかも
しれない
たった四年で
意味も分からず
次の学生に
引き継がれ
その植物は
単に生えているだけなのに
手厚い保護が
あったとしても
いきなり
枯れてしまったりも
する
それがあるから
学校は
移転を免れている
らしい
百年後の
結果の
いかんにかかわらず
書いて誰に届け
たいか
あんまり意識して
無かったけれど
誰にでも届くとは
思えないし
そういう書き方もしてない
実験を
故意に台無しにすると
その世界から
追放
とのこと
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