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松本隆 風街オデッセイ第二夜(前半)

風街オデッセイの第一夜は主に歌謡曲のヒット曲を中心に、第二夜はマニア心をくすぐるナンバーが並んだ。オープニングはナイアガラトライアングルの「A面で恋をして」。vol.1から伊藤銀次さん、vol.2から杉真理さんが登場。大瀧さんのパートをだれが担当するのかが謎だった。出演予定者の追加ありとのインフォメーションがあったので、おそらく佐野元春さんだろうと思っていたが最後まで追加のアナウンスなし。登場したのは鈴木茂さんでした。これまたレアなトライアングルになりました。いや、このコンサート、どこを切ってもレアだらけなので、もういちいちレアと言いません。めちゃ楽しいナンバーですから、細かいことなしで存分に楽しみました。

茂さんが退き、銀次さんと杉さんで「Do You Feel Me」を演奏。ところで杉真理さんは松田聖子ちゃんの「真冬の恋人たち」でナンパする役を演じていて、聖子ちゃんファンからイマイチ印象が良くない。しかし、そのおかげで彼が飛んで来て丸く収まるのだから、感謝されてもいいと思う。彼女の前で得意のスケートを披露したい男心と、それよりも側にいて手を取って欲しいと願う女心の微妙なすれ違いからの軌道修正。一曲の中で映画のワンシーンを浮かび上がらせる松本さんの歌詞の世界に脱帽せざるを得ない。って、また脱線してしまいました。

続いて安部恭弘さんが「CAFE FLAMINGO」「STILL I LOVE YOU」の2曲を演奏。80年代、オシャレな時代の空気を運んできました。これ、シングルのA面とB面ですよね。どちらも甲乙つけ難い出来。そう、松本隆さんは当時から、シングルのB面も、シングル以外のアルバム収録曲も、一切手抜きなし。全てに全力投球してきました。今の若い人たちは知らんじゃろうが、昔のB面やアルバム収録曲なんてものは、安易なカバーや捨て曲しか並んでおらんかったのじゃよ。フォッフォッフォッ。と、いきなり村の長老みたいになってしまいましたが、松本さんの「日本の音楽界を俺が変えてやる」との決意は、具体的にこういうところにも表れているのです。ああ、何回脱帽すればいいのでしょうか。

安部さんとおそらく同世代、稲垣潤一さんが登場。「バチェラーガール」と「恋するカレン」を当時と遜色のない高音で披露する。2人とも、あれから40年くらい経っているにもかかわらず、衰えることなく、いい年齢の重ね方しているなあ。考えてみると、大瀧さんのナンバーを違和感なく歌える男性歌手って、稲垣さんしかいないのではないか?貴重な存在です。

待ってました、南佳孝さんによる「スローなブギにしてくれ」です。フィニッシュのジャンプと着地、見事成功させて拍手喝采!(歌じゃなくてそっちの感想かい・・・。)続いて「スタンダード・ナンバー」。終演後、近くのカップルが「あれって薬師丸ひろ子のメイン・テーマじゃないの?」「そうそう、同じ曲なんだけど歌詞がちょっと違っててさ・・・」と話していて、その会話に加わりたかったなあ。

佳孝さんがステージに残り、鈴木茂さんと林立夫さんが登場し、ティン・パン・アレーの「ソバカスのある少女」を演奏。これ、名曲であるのみならず、鈴木茂さんの世界そのものですね。松本さんの歌詞と佳孝さんの声を借りているとはいうものの、どこを切っても鈴木茂印の金太郎飴。バンドを解散後、いち早く自分のサウンドを構築した姿がジョージ・ハリスンに重なる。佳孝さんが去り、「砂の女」と「微熱少年」を演奏。初日のオープニングも衝撃的だったが、今思うと前日の演奏は、オープニングということで少々緊張があったか。この日はウォーミングアップも万全で、申し分なし。

ここで登場したのが小坂忠さん。いつもの帽子、ダンディな姿。記憶が定かではないのですが、茂さんが去って、林立夫さんが残ったような記憶が。小坂忠さんといえばこれで決まり、「しらけちまうぜ」です。ジャニーズ所属タレントは全員歌えるという奇跡の作品。続いて「流星都市」。歌は完璧だったのですが、実は歩く時に足を引きずっているように見えたので心配していました。後日、ネットで知ったのですが、10月に手術し、退院したばかりだったそうな。ひええ〜。松本さんに迷惑をかけないよう、命懸けのステージパフォーマンスだったんですね。お大事に。

とうとう出ました、新宿二丁目から駆けつけた(?)星屑スキャットによるスリー・ディグリーズの「ミッドナイト・トレイン」です。あの〜、大丈夫ですか?歴史的イベントが別の意味で歴史を刻みそう。そんな心配をよそに、これがまあ、素晴らしいのなんのって。風街ばんどのホーンセクションが炸裂し、武道館がモータウンサウンドに占領されました。コーラス隊のサポートを得て、星屑スキャット、圧巻のステージでした。ストリングス隊の美女たちも大喜びで、やんやの喝采を送っていました。好きなのね、こういうのも。心配なのは楽屋で松本さんが三人娘(?)からキス攻めにあったのではないかという点だけです。

大興奮のステージを鎮めたのは堀込泰行さん。原田真二さんの「てぃーんず ぶるーす」です。堀込さんの歌声、クールで繊細でいいよねえ。一時期、キリンジを聴きまくったなあ。堀込さんはこの1曲で一旦退きますが、アレの時に再登場します。ふふふ。

続いて藤井隆さんが登場し、「代官山エレジー」を歌います。このメロディー、ダンディでカッコいいんだけれど複雑怪奇で何度聴いても覚えられない。藤井さん、よく歌えるなあ。藤井さんのアルバム「ロミオ道行」は全曲松本隆さんが作詞を担当し、作曲陣は豪華絢爛な名前がズラ〜ッと並んだ奇跡の名盤。お笑いから離れて、おそらく藤井さん本来の姿であろう、シャイで真面目な、傷つきやすい青年像を浮かび上がらせました。松本隆さんが普通の作詞家と異なるのは、作詞家の垣根をひょいと超えて作品のプロデュースまでこなしてしまう点。70年代前半の「金色のライオン」「摩天楼のヒロイン」などを手掛けたのち、一旦プロデュース業から離れる。その後、プロデューサーの冠こそついていないものの、太田裕美さん、松田聖子ちゃんのアルバム群はそれぞれ一貫したテーマがあり、松本さんのカラーに染められていた。「ロミオ道行」もしかり。もう脱帽するのにも疲れてしまいました。

長くなりましたので、続きは後半で。

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