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火災保険の「不払い問題」について鑑定人の手口と対処法を教えます

火災保険は「住まいの総合保険」として、さまざまな被害の補償をしてくれる強い味方です。壊れた住宅の修復や建て直し、被害を受けた家財の流離や買い直しなどができ、かつ何度活用しても保険料が上がることはありません。しかし、火災保険の評判があまりよくないのは、2017年に大きく報道された「不払い」という問題です。現在は改善されつつあるものの、保険会社にとって火災保険は利益の減額にほかならず、意図的に不払いへと持ち込む鑑定人がいるのも事実です。

火災保険の「不払い」とは?

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損害保険でいる「不払い」とは、保険会社が正当な理由なしに契約者に支払うべき保険金を支払わない行為のことです。契約者に、何かと不払いになる理由をでっちあげて、保険金を支払わらないようにして、保険会社の利益を確保するのが狙いです。

このような不払いは、損害保険業界の中で存在するものですが、特に火災保険で多いといわれています。これは、火災保険はそのほかの損害保険よりも専門性が高く、一般の人々にはなじみがないことを逆利用しているものです。ちなみに、火災保険の支払い率は2%弱といわれています。

2017年には、30万件以上にも及ぶこれまでの不払いが表沙汰になったことがありました。このような酷い状況が放置されてきたのは、保険会社が大手マスコミの大スポンサーになっていることが挙げられます。多額のスポンサー料を支払われているマスコミは、保険会社の悪口を報道するわけにはいきません。つまり、良くないことですが、保険会社とマスコミの持ちつ持たれつの関係が、火災保険の不払い問題が放置されていた大きな原因です。しかしながら、30万件以上の不払いが行われてきたために、刑事訴訟などが頻発してしまい、マスコミも報道せざるを得なくなったというのが事実です。

保険会社の実態

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では、そのように不払いを野放しにしてきた保険会社とは、どのような存在なのでしょうか。保険会社は、あくまで民間企業であり、ほかの業界と比較しても利益を追求するためには強硬手段を取りがちな「完全利益追求型」の企業体質であることが多く、契約者から預かった保険金で不動産投資などを行っています。

そのため、街中には保険会社の名前がついたビルが多く建設されています。その額は年間2兆円とも言われており、その投資に回す金額を減らさないためにも、保険金を少しでも支払わらないようにしていた……、というのが実態です。

火災保険の不払いの手口と対処法

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ここからは、保険会社の不払いの手口と対処法をそれぞれ紹介していきましょう。

電話口で受け付けない方向に持っていこうとする

印象付け

保険会社のコールセンターに、自然災害により雨漏りが起こったことを報告したケースです。オペレーターが「火災保険を使って屋根を修理するつもりなのか」という感じで、保険金を請求することが「悪」かのような印象付けを行ってきたということです。

もちろん、保険を活用することは契約者の権利です。火災保険は、火災以外の自然災害(風・雨・雪・雹など。地震・噴火・津波は除く)も補償に含まれています。しかし、オペレーターは火災保険という名前を逆手にとって、火事の被害にしか申請できないような印象操作を行ってきたという事実があります。

このような背景があったため、厚生労働省からは保険会社に「火災保険」ではなく「住宅総合保険」と名称を変更するよう要請があったのですが、あまり浸透していないのが現状です。

■このケースの対処法
印象操作は無視して、「申請用紙の発送を依頼します」と告げましょう。

鑑定人による不払いへの誘導

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オペレーターの印象付けはスルーして「火災保険を申請して自宅を修理したい」という趣旨を伝えると、現場を調査し請求金額が適正かを査定するために、保険会社から「鑑定人」が派遣されてきます。

第三者機関からやってくるという触れ込みのこの鑑定人(鑑定士)ですが、裏では保険会社とつながっていることが多く、信用できないケースも少なくありません。というのも、そもそも鑑定人の資格は保険会社が発行しているものですので、保険会社は鑑定人に事前に不払いに持ち込むよう依頼していることがあります。しかも、その「報酬」も発生しているといいます。

このように、法律上あってはならないことですが、保険会社と鑑定人では不払いにすることでwin-winの関係性が成立しているため、鑑定人が不払いの方向へ誘導していくことがあるのです。

■このケースの対処法
鑑定人の派遣自体は保険会社が選択することなので、対処法は鑑定人が来てからになります。

鑑定人による「経年劣化」という主張

経年劣化判定

鑑定人はあの手この手を使って、火災保険金を不払いにしようとします。そのひとつが、自然災害による被害を「経年劣化」だと決めつける方法です。明らかに自然災害による被害が出ていて、修理が必要な箇所を「経年劣化」として報告するのです。この経年劣化とは、自然災害や事故ではなく、住宅自体が古くなることで劣化することで、火災保険の補償対象外となっています。

鑑定人が経年劣化だと判断する判断基準は、かなり適当で、はっきりとした理由がないことも多くあります。実は「経年劣化の住宅は火災保険を引き受けてはならない」という内容が保険法にも書かれています。

もし、鑑定人がいうことが正しいのであれば、違法なのは経年劣化の住宅の火災保険を引き受けた保険会社ということになります。鑑定人は、整合性の取れていない言いがかりによって、不払いに誘導しようとしているのです。

■このケースの対処法
災害直前に撮った写真があれば、そちらを証拠として抗議。写真が無い場合は見積もりを作った施工業者に説明を依頼、または火災保険申請を利用した修繕実績が豊富な団体に交渉を依頼する等の方法があります。

鑑定人が契約者の不安を煽る

不安を煽る

この経年劣化以外にも、鑑定人は依頼者に対してさまざまな方法で不払いに持ち込もうとします。例えば「火災保険は保険金の詐欺が多い」などと吹き込み、遠回しに依頼者が詐欺をしているかのような心理戦を挑んできたり、実際に「この被害で申請すると詐欺になる」といいたりして、依頼者を不安にさせようとします。

火災保険を正当な理由で活用することは、まったく問題がないことですし、逆に法律で守られているものです。鑑定人がそのような不安を抱かせることの方が、脅迫になる可能性すらあります。実は、2017年の火災保険の大量の不払いが発覚した際には、鑑定人の恫喝がボイスレコーダーで録音されていて、それが世に出てしまったというエピソードもあります。

■このケースの対処法
最近のスマホには標準搭載されているボイスメモ機能を使って、やり取りを記録しておき、見積もりを作成した業者や火災保険申請を利用した修繕実績が豊富な団体に相談すると良いでしょう。


鑑定人が査定の日を指定する

受付拒否

鑑定人が査定を行う日は、双方の都合を聞いて決めるのが筋ですが、いきなり日程を指定されることがあります。それ以外の日は受け付けない、という強硬な態度で来た場合は注意が必要です。

■このケースの対処法
あくまで、保険料を支払って火災保険の補償を受けるのは申請者である契約者です。依頼者が鑑定人の都合に合わせる必要はまったくないので、強気に希望する日時を指定してください。

鑑定人が申請者に道具を準備させる

道具は不要

ちょっとびっくりする事例ですが、鑑定人から二階へ上るハシゴを用意するように依頼された事があったようです。ハシゴは鑑定人にとっては大切な商売道具のはずなので、これを用意させるということは相当馬鹿にされているという証拠です。「ハシゴが用意できなければ行けない」というような、筋が通らない話をしてくる悪徳鑑定人もいるそうです。

■このケースの対処法
「ハシゴは用意できません。そちらで用意していただくのが筋だと思いますので、お持ちください」と伝えましょう。「ハシゴはありません」と一言言うだけでも十分です。このようなケースでは、国民生活センターに苦情をいうことも可能ですし、鑑定人を変えて再鑑定を依頼することも可能です。ここは強気に出てよいタイミングです。


保険がおりる基準は「時期」と「症状」

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火災保険が下りるか下りないかの基準は、住宅の「古い」「新しい」は関係なく、すべては「時期」「症状」で決まります。つまり「いつ」「どのように」被害を受けたのかが判断基準になるというわけです。この2つの基準を証明できれば、火災保険は下ります。

時期については、大きな台風が通過した時に被害を受ける事が多くなりますが、春一番などの突風により被害を受けることも珍しくありません。

そして、症状についてですが、住宅が被害を受けている様子をさまざまな角度から写真を撮影して、保険会社に提出しなければいけません。この写真撮影は、火災保険金を決定する際の大きなポイントになるので、後述する火災保険を活用した工事に慣れている専門業者に依頼するのが良いでしょう。特に、屋根に登る必要がある場合は危険が伴いますので、必ず専門業者に撮影してもらうことをおすすめします。

経年劣化の印象付けに気をつけて!

鑑定士は、火災保険が下りるような被害の場合でも「経年劣化による被害だ」だと主張し、不払いに持ち込もうとすることがよくあります。これは、保険会社からの意向を受けているためで、住宅を見るとすぐにいろいろな箇所の「古さ」を主張することで、自然災害による被害ではなく経年劣化だと印象付けようとします。

しかし、そこで住宅が古いことを認めてしまうと相手の思うつぼです。このようなケースでは、住宅が古いことと自然災害による被害は別物であることを主張しましょう。鑑定人は、全員が全員ではありませんが、保険会社の方を向いて仕事をしている人も多いため、マイナスになりそうなことは話さない方が良いのです。

鑑定人がよくする質問

鑑定人が依頼者によくする質問に「この被害にいつ気付いたのか」というものがあります。これに対する答えは「周りの住宅が被害にあって修理をしていたので、我が家も被害が出ていると思いチェックを依頼しました」というのが無難です。

また「工事業者をどのように選んだのか」という質問に対しては「知り合いのつてです」というのが基本的な回答のようです。もしも、訪問営業を受けて申請を行った時も「訪問営業で来た業者です」という答えは避けましょう。ただ実際に、火災保険の世界では訪問営業をしている業者は詐欺や虚偽の報告で保険金をだまし取ろうとする業者が多いので、関わらないのが吉です。

そして大切なのは、知人からアドバイスを受けた場合でも、自ら申請に動いたことを伝えるということです。このことで、保険会社も契約者の意向を無下にできなくなるというわけです。

第三者機関も信用できない…火災保険申請に慣れた専門業者へ!

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このように、鑑定士は第三者機関から派遣されてくることが前提となっているものの、実は保険会社と関連があったり、子会社だったりとなかなか信用できないケースも多々あります。保険会社と契約者の調停をするために設立された第三者機関ですが、その裏では保険会社とべったりということが多いので、保険会社に都合の良い調停結果になることがほとんどです。このような場合、保険金が出ない(無責、といいます)、保険金が少ないなどの問題が発生したときに交渉することは難しいのでしょうか。

保険会社は、保険金を支払わないために多くの機関を巻き込んで、組織的に対応しているため、その組織力に対抗する必要があります。保険会社の組織力に対抗し、満額の火災保険金を勝ち取る方法、それは火災保険を活用した修理に豊富な実績を持っている専門団体・企業に依頼するという方法です。

保険会社も、住宅の症状を診断・分析するプロフェッショナルの作成した書類には文句は言えませんし、そのような業者は火災保険申請のことを知り尽くしています。そのため、どうすれば保険会社に文句をいわれない書類になるのかがわかっているので、法律違反が全くない完璧な資料を用意します。このような書類が提出されると、保険会社としても文句をつけようがないため、保険金が下りる確度が高くなるというわけです。

保険会社に下手に出る必要はない!

まとめ

依頼者が保険会社に対して下手に出る必要はありません。保険会社はその多くが莫大な利益を上げて、不動産投資ができるほどの経営状態を保っています。最近は報道の論調も、火災保険を活用して住宅を修理しようというものに変わってきています。そもそも、火災保険を活用することは合法ですので、遠慮する必要はないのです。

最近は自然災害が増え、火災保険を活用できる被害も増えてきています。もちろん、火災保険の補償対象にならないような虚偽の申請はいけませんが、専門業者に依頼して正しい手続きで火災保険を活用することは推奨されています。心当たりがある場合は、火災保険を上手に活用して住宅・家財を補償してもらいましょう。

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