「レーザー技術で世界に挑戦する品格あるベンチャー企業」前編 株式会社NISHIHARA 代表取締役 中山 孝良さん
本記事は2017年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。
●ご挨拶と出演者紹介
宇都宮:はい、こんにちは。本日は千葉県柏市に来ております。第143回MMS、MCは株式会社enmonoの宇都宮でございます。本日のゲストは社名が変わったばかりのNISHIHARAの中山さんでございます。自己紹介をどうぞ。
中山:はい。第10期卒業生の中山です。今レーザー関連含め新しい戦略をどんどんお出ししております。宇都宮さん、三木さんには色々とご指導いただきまして、今非常に会社が活気づいてるような状況です。
宇都宮:よろしくお願いします。
中山:こちらこそよろしくお願いします。
●西原様の自己紹介と会社紹介、これまでの取り組みの紹介
宇都宮:最初は中山さんがどういった方か簡単に自己紹介いただいて、西原電子という会社がどういうことをされてるかちょっとご説明いただければ。
中山:簡単に説明させていただきますと、個人で最初に会社をやり始めたのが1999年、2005年に法人という形で有限会社西原電子を作りました。今年12年目になるんですけれども、今年1月から有限会社西原電子を株式会社NISHIHIRAと社名を改めました。
宇都宮:まだ言い慣れない感じが…(笑)
中山:はい。時々西原電子と言ってしまうんですけどNISHIHARAです。うちは元々は電子機器の開発をしておりました。マイコンを中心に制御系のシステムを組んだり基板を起こしたりソフトを組んだりということで、色々なものを他社さんから請負としてやっておりました。
宇都宮:受託で電子機器の開発とかそういう?
中山:はい。ここにきて3年前ぐらいから自社製品を少しずつ作り始めて、今ようやく少しずつ売れ出してきたかなというようなところです。
宇都宮:それは受託じゃなくご自身たちで研究テーマとか開発までして企画して?
中山:そうですね。レーザー関連の装置を自分たちで作り始めました。
宇都宮:それは3年前ぐらいから?
中山:実際には有限会社西原を作って1年目の2006年からです。もう10年ぐらいレーザーのモニターというのをOEMの形で作っておりまして、その後に国の助成金をいただきまして独自開発を始めたという感じになります。
宇都宮:それはどういうものがある?
中山:一番最初にやり出したのはレーザーのモニタリング装置ですね。レーザーっていうのは非常に品質がよくて安定している装置なんですけども、パワーが強すぎて本当に小さいところに大きなエネルギーを入れますので、溶接の不良を起こしたり穴を開けてしまったりということが起きてしまうので、そういうものを検出できないかということで始めました。
宇都宮:レーザー溶接のモニタリングという表現でいいですか?
中山:はい。加工に近い部分でのモニタリング装置っていうのはあまりなかったので、その辺を大阪大学と一緒に研究し始めたということです。
宇都宮:業界的には色々?
中山:はい。車関係と電子部品関係と色んな用途に使われてます。
宇都宮:レーザー溶接にどんどん切り替わってきてる事情とかあるんですか?
中山:はい。車関係はもうほとんどレーザーでやってると思います。非常に機械で持っていくので角度的にも色々自由になるというのが1つありますし、先ほど言いましたレーザーっていうのは安定している装置ですので、非常に色んな意味で使われていると思います。
宇都宮:そういったところに向けた製品を色々提供していて、今回自社ブランドでやるのもそういったところを狙っているんですか?
中山:そうです。周辺機器を作るということで、レーザー装置本体を作っているわけではないんですけども、その周辺という形で色々なモニタリング装置を作ったり制御系を作ったりというのをやっております。
宇都宮:そのレーザーの溶接装置のどこをどう制御しているんですか?
中山:自分達がやろうとしてるのは、レーザーの制御というよりはモニターをやっておりますので、出力されたものをその反射光を取ったり熱エネルギーを取ったり…
宇都宮:レーザーメーカーはあんまりやってないんですか?
中山:やってないです。モニタリングの必要性っていうのはだいぶ前から言われてるんですけど、非常に難しいのも確かです。というのは、レーザーそのものの照射の時間というのは0.01秒ぐらいのほんの瞬間的なものになりますし、その中にいっぺんにエネルギーを入れますので色んな現象がいっぺんに起きてしまうということになる。それを正しくモニターできる装置って割と少ないので、そこのところが難しくてなかなかやっていないのかなと。
宇都宮:そのすごく難しくてなかなかやっていないものをうちだったらできるぜっていうことなんですか?そこはもっとカメラ目線で強い目力で言っていいとこじゃないですか?
中山:そうですかね(笑)?
宇都宮:うちでしかできないんですよっていうことですよね?
中山:うちでしかっていうのもあるんですけど、その溶接現象を捉えながら波形の出力の変化を見ていくという意味では非常にうちとして自信を持ってそこの部分は言えるところかなと思います。
宇都宮:そういうことにエンジニアさんが着手されてずっとノウハウを貯めてきてっていうところなんですかね?
中山:そうです。
●起業、独立のきっかけと会社経営について
三木:中山さん元々どういうお仕事をされてたんですか?
中山:私は元々最初に入った会社は医療機器系です。同じ測定器なんですけども、血液を測ったり尿比重を測ったり。
三木:エンジニアだったわけですね。
中山:そういう測定器を作るのが好きだった。それで転職をして、そういうレーザーメーカーのほうに就職をしてということです。
宇都宮:そこでレーザーと関わるようになって?
中山:そうです。
三木:サラリーマンがいきなり独立するってなかなかハードルが高いと思うんですが、その辺は何かきっかけがあったんでしょうか?
中山:今考えるとよく独立したなと思うんですけど(笑)、結構怖いモノ知らずだったっていうことがあって、マイコンとかが非常に好きだったので、自分の腕で食っていけるんじゃないかぐらいで始めたもので、何を作りたいということではなくて…
三木:その時にはもうお客さんが付きそうな感じはあったんですか?
中山:そうですね。色んな会社さんから特にマイコン関係のプログラムを作ってくれとかそういったものはきておりましたので。
三木:そのサラリーマン時代に「個別にお願いします」みたいな?
中山:そうですね。はい。
三木:なるほど。そういうお客さんがもうありそうだということで?
中山:そうですね。
宇都宮:独立して会社ご案内して仕事はついてきて順調に立ち上がった感じなんですか?
中山:そうですね。私は1人でやるのが好きだったので…
宇都宮:(笑)そうなんですか?でも会社組織にもなってるしHYEP(ヒュープ)という連携組織も運営されているじゃないですか?1人でやるのが好きそうな人じゃない雰囲気が漂っている気がしたんですけど(笑)
中山:でも元々は時間に囚われないで自由にその時間を自分の技術に使えるというところで独立したのは確かなんですけど、少しずつ人が集まってきてくれて今の組織になりました。
宇都宮:でも没頭できなくなるじゃないですか?人が集まってきたりとか連携したりすると。そこは何か折り合いがつくような感じになってきたんですか?
中山:zenschoolの時にもお世話になったんですけど、自分の自由な時間をなるべく作って、そういうモノを作るための時間を作ろうと。今はもうみんな合わせて11人いますので、そういった意味では皆さんの生活を考えてこういうモノをというところを選択できるような形で社長業をやらせてもらってる感じですね。
三木:段々人が集まってくるっていうのは特に募集とかしてるんですか?
中山:いや、口コミです(笑)ただ、自然と…
三木:自然と(笑)
宇都宮:でもどこの中小企業さんもなかなか人が集まらないところよく聞くじゃないですか。自然と集まるって何か秘訣はあるんですか?
中山:秘訣っていうのはあんまり考えたことないんですけど、ただ基本的に技術屋さんが好きだということで、「こういう技術を持ってるなら一緒にやらないか?」っていうことで、一度は会社を辞めてった方達を誘ったっていう形になりますので、会社に所属している人をヘッドハンティングしたことは1回もないんですけど。
宇都宮:どこで声をかけるんですか?
中山:仲間内とか、それから前にいた会社であったりとか、その前にいた会社であったりとか、そういうところから自然と…(笑)
宇都宮:自然と(笑)すごいですね。
中山:普通に付き合いをしててたまたまそういう機会をいただいて、「どうせなら一緒にやらないか?」という…
三木:お人柄なんじゃないですか?中山さんの。
中山:ただ、そういう形でこれをやろうと本当に思い始めたのはここ何年っていう形になりますので、それまでは結構苦労してます。
宇都宮:今はそういう声をかけて一緒にやろうよっていう何か目標が見えてきたっていう感じなんですか?中山さんの中で。
中山:業界にいてこういうモノを作れば売れるんじゃないかというようなモノが少しずつ出てきたということ、色んな会社さんと付き合うようになったので、「こういうモノを作ってくれないか」とか「こういうモノができたらおもしろいね」っていうようなモノがあったので、「あ、それであればうちで作りたい」っていうモノがありますし、うちのほうでも売り上げの半分以上はOEMという形になりますので、色んな会社さんとお付き合いさせていただいてます。
宇都宮:楽しい感じなんですか?色んなことができるようになってくると。1人じゃできないことができるようになるじゃないですか。そういう仲間が集まってくると。
中山:今うちのスタッフは非常に頼もしいですね。
宇都宮:社長としてはワクワクしてる感じなんですか?
中山:そうですね。「これからこういうのを作ろう」「ああいうのを作ろう」というのと、それに合わせてここ2、3年で売り上げが上がってきてるというのは確かですね。
宇都宮:将来有望な感じなんですか?
中山:そうですね。もっともっと色んな金融業者さん含めて戦略は練りたいと思ってます。
宇都宮:すばらしい。
●自社ブランド商品の営業とレーザー溶接について
宇都宮:OEMが売り上げの半分とおっしゃってましたけど、残りの半分は自社商品とかとなってくると…
中山:あと開発があります。
宇都宮:開発受託?
中山:まだそれは続いておりますので、開発自体もやってます。
宇都宮:自分達のブランドの商品を作って売る時ってやっぱり営業がしてるじゃないですか?そこはどういう戦略というか…
中山:非常に営業については苦労してます。
一同:(笑)
中山:自分が営業をほとんどやっていると。
宇都宮:そうですよね。トップセールスじゃないとなかなか…
中山:やっておりまして、色々な会社さんとの付き合いの中ではいいんですけども、個別に売りに行くっていう意味では非常に苦労していました。そこに関して最後に採った人間が営業マンでその業界に通じてる方がうちに来ていただいたので。
宇都宮:心強い感じ?
中山:はい。非常に。今ある商品の原型的なモノはその営業マンが色々なところに行って「これを作ってあげますよ」というような形のモノを少しずつ形にしてきたという感じです。
宇都宮:できた製品を売るだけじゃなくて、他の受託の仕事も口コミの中で営業されてくるって感じ?
中山:そうですね。最近少しずつ増えているのが、これだけレーザー装置の資源がありますので、ジョブ加工ですね。「こういうモノを溶接してくれないか?」もしくは「こういうのを溶接したいんだけど」というモノに関して少しずつお客さんが増えたりとか…
宇都宮:そうすると製造委託というかそういう方面も?
中山:そうです。ごく一部ですけども、「レーザー溶接でここのところをくっつけたい」というようなのも小ロットでもうちは全然問題なくやりますので、1個2個の試作から溶接可という…
宇都宮:面倒くさくないんですか(笑)?
中山:おもしろいですよ。元々溶接のモニターというのをやった時に色んな材料の色んなモノをやってましたので。
宇都宮:ノウハウも貯まってて?
中山:そうですね。おもしろいと思いますね。お客さんが「こういうの付けられない?」とかこういう条件出してきたりとなると…
宇都宮:「そういう方面もできるよ」って言うと結構引き合いが来たりしてるんですか?
中山:そうですね。結局最終的に結び付けたいのがモニタリングというものを、こういうモニタリングをしていくとこの溶接は良かったけどこの溶接は悪かったというのが、この条件であれば見つかるというのがありますので、そうするとどんどんうちのモニターというものがお客さんのところで使われてくるという…
宇都宮:実際自分も元々スズキ自動車の中で生産技術をしていたので、溶接条件ってあるじゃないですか?でもコントローラーのほうで溶接条件を入れるだけで、付いたかどうかも鏨(タガネ)チェックして見なきゃいけない。でも理想を言うとやっぱりその先で何が起きてるかまで分かったほうが技術屋さん的には安心感があるという提案になるんですか?結局コストダウンにもつながってくるじゃないですか。消費エネルギーの問題とか溶接不良が起きなくするような管理とか。
中山:非常にバラエティに富んでいます。溶接自体が色んなところに使われてますし、最近はスポットよりもシームというか、ずっと溶接しっぱなしでいく…
宇都宮:ローラーでウィーンとやるやつ?
中山:あれがレーザーでずっと流していればいけますね。
宇都宮:テーラードブランクなんかもそうですよね。
中山:ああいったものに対してモニターをしていって時々値がポンと上がったりポンと下がったりということを高速のカメラと組み合わせて、「こういう現象が起きたから高くなったんです」「こういう現象が起きたから低くなったんです」ということをお客さんに説明することによって、頭で考えてたものが実際に自分で見えて「こういうのがあったからこういう波形になったんだ」ということが分かってもらえると非常にお客さんのほうも安心するというのがあって、それをうちはセールスポイントみたいな形にしてます。
宇都宮:品質保証が課題じゃないですか?量産する会社にとっては。口で言っても絶対その先のエンドユーザーは納得しないので。そこに1つエビデンスになるみたいなものですかね。
中山」:そういうふうに思ってます。
宇都宮:全世界ですよね。対象は。
中山:そうです。特に最近はロボットだけじゃなくて、人間が扱って溶接する場合でももうレーザーが使われてる。ちょっと前だとアーク溶接とかなんですけども、今はレーザーでも同じようなことができるというふうになってます。
宇都宮:結構シビアじゃないですか?レーザーって。位置精度とか。
中山:うまく使う人間に合わせてコントロールができるので。
宇都宮:リアルタイムでセンシングしてるってことですか?
中山:そうです。なおかつ安全性もというのを売ってますので、人に向けたりしたらワークから離れた時点で止まっちゃいます。
宇都宮:すごい熟練度がなくてもかなりサポートできるところまできてるってことですね?
中山:そうです。
宇都宮:溶接って結構職人技じゃないですか?特にアルミとか薄板やると付かないというか穴開けちゃいますもんね。そういうコントロールをしてるってことですか?
中山:はい。コントロールができるようになってます。
宇都宮:すごいですね。リアルタイムでモニタリングしながらコントロールしてるっていう?
中山:そうです。私が目指したいところは、モニターしたものをレーザー装置側に戻してコントロールをすることによって、今までできなかった溶接ができるようになるということ。
宇都宮:実際アークは難しいけどMIGとかTIGになると少しやりやすくなったといっても、それでもかなりワイヤーの送給が止まったりとか色々面倒くさいじゃないですか。ワイヤーばんばん切ってますもんね。
中山:そうですね。そういうのに比べるとだいぶ…
宇都宮:レーザーのほうが扱いやすくなってる?
中山:確かに熟練度っていうのは必要かもしれないですけども、それでもたぶん何回かやっているうちに慣れてくるとコツさえ掴めば、たぶんアーク溶接よりは簡単かなと思いますけどね。
宇都宮:対象っていうのは金属の部材はどうなんですか?色んな種類ができたりするんですか?通常今やってる溶接と比べて。
中山:そうですね。アルミとそれから鉄、あとステンもやりますし、一番危ないのが銅なんですけどね。反射率が高いので。ただその辺ももうだいぶレーザー装置は…
宇都宮:技術的に課題を解決し始めてるってことですか?
中山:はい。
宇都宮:異材溶接はどうなんですか?
中山:異材溶接もかなり進んできてますね。溶接レーザーはどんどんそういうふうに…
宇都宮:今後どんどん伸びますよね?そうなると。
中山:はい。出力もどんどん上がってますので。
宇都宮:そうすると中山さん自身が溶接機を作ろうという方向にはまだ…(笑)?
中山:いや、何年かのうちにやったりして…
宇都宮:それが一番効率が良いですもんね。
中山:そうですね。
宇都宮:できそうなリソースはあるわけじゃないですか。お金がつけばできるってことですもんね。どこか投資してくださればいいですよね(笑)
中山:今は銀行さんとか政策金融公庫さん。
宇都宮:VCとか?
中山:そうですね。
宇都宮:上場を目指して?
中山:いや(笑)それはあれですけどね。
宇都宮:でも世界中にデリバリーするっていうことはそのぐらいの市場規模はあるじゃないですか?
中山:あると思いますね。非常に大きな市場ですけど業界は割と狭いですね。
宇都宮:でも溶接ということだけでいうと業界は広いじゃないですか?その中のごく一部今レーザーっていうだけだけどでも大きくできるわけですよね?
中山:そうですね。自分達がやってるのは精密溶接に近いところがあるので、大きいものだと炭酸ガスレーザーとかああいうものは非常に大きな市場だと思います。最近レーザーで金型を補修したりとか、…
宇都宮:肉盛りもできる?
中山:そうです。肉盛りもできるようになってきてますので、非常に色んな範囲に広がってますし、最近は紫外線のほうですね。レーザーによる金属の3Dを作るのも今すごく増えてきてますね。
宇都宮:レーザー溶接の仕組みを使って盛ってくやつですか?
中山:はい。波長が紫外線波長で持っていければ金属で3Dができます。
宇都宮:そうすると普通は金属焼結もんですもんね。ざっくり言うと。
中山:はい。
宇都宮:そっちは研究レベルですか?製品としてまだちょっと…
中山:製品としてなってると思います。
宇都宮:日本であまり知られてない気がするんですけど、日本はあんまりまだ進んでない感じなんですか?既存のやり方で十分OKみたいな雰囲気が漂ってるんですかね?
中山:まだ装置自体が高いっていうのがありますけどね。でもこれから出ていくと思いますね。3Dプリンターと同じような形で。
宇都宮:だそうです。投資のお金がある方はぜひ中山さんとコンサルティング契約を結べば色んなことが得られますよね?コンサルはしないですか?
中山:いや、ちょっと自分で精一杯です(笑)
宇都宮:(笑)あ、そうですか。
▶後編に続く。
▶対談動画
▶中山孝良さんFACEBOOK
▶株式会社NISHIHARA WEBサイト
■「enmono CHANNEL」チャンネル登録ねがいます。
■MC三木の「レジェンド三木」チャンネルもよろしく
■対談動画アーカイブページ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?