多頭飼い

<前回の話>

また、新しく猫が来ました。細かな経緯はあまりよく聞いていないのですが、急に母が連れて帰ってきました。どこかの野良猫が産んだ子どものうちの一匹のようで、他のきょうだいも別々の家に引き取られていったとのこと。家にやってきたのが日曜日の夕方だったことを何となく覚えています。またしても茶トラのオス。生後2ヶ月に満たないくらいでした。

先住の猫1は、いかにも普通の日本猫といった愛らしいずんぐり体型でしたが、新たにやってきた猫2のほうは中東や南の島にでもいそうな、シュッとした体型と顔立ちの猫でした。性格もかなり異なっていて、家に来た日から普通に触らせてくれたので「いきなり触らせてくれる猫もいるんだ」と思いました。

わずか一年足らずの間に、猫二匹、犬一匹が家族になりました。

来た日のことを書いた直後にする話としては、ちょっとあれなんですけども。近い時期に似たような寿命の動物をまとめて飼い始めると、同じようなタイミングで老いて、同じようなタイミングで病を抱え、それらが一気に来てけっこう大変です。動物の多頭飼いを夢見る人も、飼い始める時期や年齢は、ある程度分散させることをおすすめします。(それはそれとして、動物のきょうだいを同時に飼い始める状況を夢に見ているところはあります)

我が家の動物たちで、金銭的な面を含めて一番大変だったエピソードを一つ挙げると、猫のおもちゃを犬が誤飲してしまったことがありました。体のサイズに比して猫のおもちゃが大きかった(だから飲み込むわけがないと判断していた)ため、最終的には開腹手術をして猫のおもちゃを取り出しました。生命力があり、タフだったおかげで彼女は生き延びましたが、その生命力がゆえに、その後も体だけは丈夫で晩年は介護が必要となったので、それもまた大変でしたね。

当時、次々と犬や猫が増えていったのは、父が見つけてきたこの一軒家に「どうやらもうずっと住めるらしい」と、少なくとも私たち家族は聞いていたからでした。急遽動物が増えることになったけど、家は広いし、まあ飼えるだろうという感じでした。

が、しばらくして、暗雲が垂れ込めてきました。

具体的には、借金の取り立て的な人が来たり、得体の知れない若い夫婦がこの家へ突然内見に現れたりなど、どうやらこの家もまた長くないと感じさせる不穏な出来事が立て続けに起こり始めました。

最初は月額○○円でいいよと言われていた家賃が、持ち主側の都合なのか、父が何かをしでかしたのかで、急に釣り上げられたというような話をチラッと聞いた気もしますが、正確なことは私にはわかりません。結局、動物が飼い放題の広い家に住んでいられたのは、1年とちょっとでした。

困ったのは、すでに猫二匹、犬一匹を飼ってしまっていることで、新たな家探しに難航しました。それでも比較的近所に、また別の一軒家を見つけ出すことができたので、追い出されるようにそそくさと引っ越しました。家の広さは一気に半分以下になり、10畳くらいあって持て余していた私の部屋は、0畳になってしまいました。

家族四人にしては間取りが悪く、各人のパーソナルスペースを確保するためお互いに気を遣う必要がかなり多く発生するなどの悪条件が揃ったことで、この頃の我が家は史上最も空気が悪く(またお金が最も無く)、それでも動物たちがいることで、とりあえず最低限の雰囲気が取り持たれている感じでした。

この頃から、父がまったく頼りにできないと悟った母は精力的に働き始めるようになり、そのおかげで生活はなんとかなっていきました。

私にとって二つ目の一軒家となったこの家は、桜の名所である某公園が真裏にあるなど、いま考えるとロケーション的には悪くないのですが、壁が薄くてとにかく寒く、公園の池が近いため湿度もあり、崖から転げ落ちるような形で入居することになった状況なども相まって、全体的に厳しい思い出となっています。

<次の話>

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