似た者同士な天邪鬼【sideサラギ】

この話の後の話。
 
■少しだけお借りしてます:イチカちゃん
 
 
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 初心者向けのポケモンなのだと、何かと常識を求める父は俺にそのポケモンを連れてきた。家庭教師と問題を起こし完全に引きこもっていた俺を別方面から唆そうとしたのだろうか。何にせよ父の思惑なんてどうでもよかったし、渡されたツタージャだってどうでもよかった。
 それはツタージャの方も同じだったようで、俺の方なんて一切見なかったし俺の前で食事だって行いすらしなかった。別にそれでもいいしさっさと野生に戻ればいいと思っていた。それはそれで面倒を見る手間というかは、父が様子を見に来てその相手をするとかいう面倒なあれこれがなくなるからだ。
 
 意識を失うペチカの毛並みに彩りを添えるように花を挿し込むロイヤルの姿に、当時の一匹を望んだ姿などどこにもなくあいつも変わったのだなと感心する。
 問答無用で、野生ポケモンと同様だとしか思えない威力で俺に攻撃してきた時のことを思い出す。赤く腫れた手の甲。痛むその手で容赦なくツタージャの首根っこを掴んで壁に投げたんだったか。最も綺麗に受け身をとられてしまい反撃を喰らったのだが。
 
 正直あいつと俺の相性は最悪だ。今だってそう思う。あいつは俺を嫌っているし、俺だってあいつを好いている訳ではない。
 ただ互いに相手が最も不快なことをしないようになったからこそ、こうして共にいるだけだ。
 互いが互いを許容したきっかけがいつの時だったかなんてもう思い出せない。俺はあいつを一生愛さないと告げたし、あいつもそれでいいと頷いたのだけは確かだ。どちらも互いに求めたものは、互いの利便性だ。
 
「サラギ?」
「何」
「いや、こっちの台詞。ロイヤル達の方ずっと見てるから」
「別に」
 
 どうでもいいくだらない過去のことを思い出していただけにすぎない。俺は首を横に振って、取り出した煙草を口に銜えた。
 
 俺はいつだってあいつに捨てられておかしくはないし、俺もあいつをいつだって手放したって問題ない。それでもあいつが、ああして好む存在を作り愛するのなら、その存在の傍にいる俺の手元から離れることはないのだろう。
 
 変なところが似てしまったことだけは不快だとは思うが、これだけ長く共にいれば似るのだって納得だ。最も、俺もあいつもどちらも認めないだろうが。

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