あるものは喜び【sideミー】
▼夏祭りのお話
■お借りしました:ジェスティーさん、(お名前出ていませんが)サーシャくん、グレナデアさん、パルストくん
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何が彼女のためになるのだろうか。相談し合った手持ち達によって、賽は投げられた。
ミーは初めて身に纏うこととなる浴衣。それを着付けてもらった彼女は普段とは異なる装いに大層御満悦のようだった。
「可愛い〜!」
「とっても似合ってるわ」
勿論着付けの知識も経験もないミーに浴衣なんて一人で着れる訳もないし、浴衣を所持していた訳でもない。本来の彼女であれば何度も職業の都合上身に纏ってはいたのだろうが、そうであったことすらミーは知らないのだ。
鏡で自身の姿を確認してから、着付けを施してくれたジェスティーにミーは向き直る。
「ありがとうジェスティー!ミー、すっごい嬉しい!」
「そんなに喜んでもらえるとこちらもお手伝いした甲斐があったわ」
ありがとうの気持ちを最大限に伝えるためにか。それとも無垢な少女性が喜びをそう表現したかったのか。ミーはジェスティーへと軽く抱きついた。それをジェスティーも微笑んで受け止めてはくれつつ、少し崩れちゃったわねと帯を直してくれたのだ。
ホアンシーを抱き上げて祭り会場を歩き回る。人が多いため、こうしていないと小さなホアンシーとはぐれてしまう可能性があるからだ。
「ね、ね、ホアンシー。お祭り初めて来たけど楽しいね!」
ホアンシーはいつもの笑顔でこくこくと何度も頷く。彼女が祭りに来るのは初めてではないことなど、嫌という程知った上で。それでもホアンシーは笑い続ける。ベイシャンがそういった負の感情は担当する。ホアンシーが担当するのは喜びなのだから。必要なのは、それだけだ。
ふと、ミーが足を止めた。どうしたのかとホアンシーがミーの顔を覗き込めば、わかりやすく顔を明るくしていた。何か興味を惹かれるものでも見つけたのだろうかとミーの視線の先へとつられてホアンシーも顔を向ける。そこには、一人の子どもと二匹のポケモンがいた。サザンドラは気遣うように団扇を仰ぎ風を送り、シズクモはサザンドラの上に乗りつつ周囲を見ている。
ああ、と。ホアンシーはどうしてミーが彼等に意識を向けたのかすぐに合点がいったし、この後ミーが何をするかも簡単に予想出来た。
「ね、ね、こんにちは」
「……こんにちは」
即座にミーがその子に声をかけにいけば、急に見知らぬ女性に声を掛けられたその子はきょとんとしてから愛らしい笑顔を浮かべた。完璧すぎるまでのそれだ、と思うのはミィレンの役割であってミーの役割ではない。
「ミーね、ミーって言うの。君と同じ子が仲間にいるからついお話したくなっちゃった」
「同じ子?」
「うん!」
ミーは懐からハイパーボールを取り出すと軽く宙へと放り投げる。開閉音と共に光が溢れ、ボールがミーの手元へと戻る頃にはウーイーが姿を表していた。
突如として外に出されたことにウーイーは首を傾げたが、同族を見れば笑顔を浮かべた。サザンドラが出てきたことにより”同じ子”の意味を理解した子どももああと納得の声を零す。
「それに、とっても素敵に浴衣を着こなしてる君が気になっちゃったから」
だから我慢出来なくて声掛けちゃった、とミーは笑った。笑う。
ただ、心の底から彼女自身はそう思って、笑うのだ。
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