夢は続く【sideリピス】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:アニーニケさん、プリシラさん
 
  
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 トトが弱い訳ではないし、わたしのトレーナーとしての判断が悪すぎたという訳でもない。わたしもトトも今出せる全ては出し切ってバトルに望んだし、自分の力不足を嘆く必要などない。それ程までに相手が強かったのだ。割れたアイスフェイスの氷すらも無駄にしない使い方に、こちらが判断した一番の策を瞬時に潰しにかかる判断力と決断力と技の威力。それら全てに、完敗だ。
 わたし達はまた負けた。けれども、やっぱりそこに悔しさは残れど不快感はない。だってわたしもトトもまだまだ強くなれる可能性があると、彼らはバトルを通して教えてくれたのだから。
 
「なあリピス」
 
 アニはわたしのことをそう呼んだ。バトルを終えるまではそうは呼んでいなかった彼がわたしのことをそう呼んだのは、わたしを”一人のトレーナー”として認めてくれたからだろう。
 こちらを対等に見てくれて認めてくれていることがわかるうえに、またを望んでくれた彼に好印象を抱かない訳がない。
 差し出された握手も、こちらを対等に見たうえでの態度なのだとわかるからこそ嬉しくて仕方がなかった。握りしめた手はわたしよりも一回りは大きいしっかりとした男性の手だ。
 いつか、こうなりたいと思った。
 
「そうだわ、アニ」
「ん?何だ?」
「一つ相談があるのだけど、いいかしら」
「そりゃ勿論。どんな内容だ?」
 
 わたしの相談にアニは快く応じてくれた。それに感謝しつつ、わたしは落ち込むトトを宥めるプリシラを見守りながら告げる。
 
「エンペルトのメガシンカは発見されていない、という認識であってるかしら」
「ああ、そうだな。俺も聞いたことねえや」
「なら、この子はあるのよね」
 
 ボールの中で休ませていたシンを外に出せばアニは少し考えた素振りを見せてからすぐに頷く。
 
「アブソルなら発見されてる」
「……必要なものはキーストーンとメガストーンと……後は、絆であってるかしら」
「ああ。メガストーンとキーストーンと、あとはトレーナーとポケモンが強い絆で結ばれてることが前提条件だ」
「わかった。確認させてくれてありがとう。参考になったわ」
 
 こちらの話を静かに聞いていたシンの方を向けば、相も変わらずの無表情がこちらを見抜く。正直な話シンがどうしてわたしを守ってくれたのだとか、わたしについてきてくれているのかはわからない。けれども時たま、シンからは見守るではなく見定めるような視線を感じることがあった。図られている。それがどういう真意かはまだわからないが、応えられるなら答えたいと思うし、わたしもシンのことを知りたいと思う。
 
「リピスなら大丈夫だと思うけどな」
「あなたがそう言ってくれるなら心強いわ」
 
 シンの頬を撫でるわたしにアニが笑って言葉を落とす。そこには何の皮肉も込められていないからこそわたしも素直に返すことが出来るし、さっぱりした彼の性格はとても心地いいと思った。
 
「またね。フィンブルジムで、よろしく」
 
 トトをボールに戻しながらシンの背中に乗った。わたしの推測と予想から発された言葉にアニは一拍きょとんとしてから、快活に笑った。その様にわたしは自分の考察が間違っていなかったことを理解してつられて笑う。
 この地方のジムリーダーと四天王とチャンピオンの名前と顔は把握している。けれどもアニの顔はそこにはなかったことと、氷タイプの扱いに長けていることやこちらの成長を確かめるような最初の態度から考えられる予想は一つだった。
 
 グリトニルジムでのジムリーダーへの再戦に、フィンブルジムでのジムトレーナーへの再戦。
 楽しみがまた一つ増えた。まだまだわたしの旅は終わらない。
 
 軽く手を振るアニにわたしも手を振って、シンと共にわたしはその場を後にした。

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