一目惚れ【sideリピス】


■お借りしました:ダイゴロウ(ゆめきち)さん

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 調査も終わり、ジムバッジも手に入れたことだしとリピスはノアトゥンシティを離れることに決めた。そうとなれば善は急げ、次はどこへいこうかと地図を確認しながらノアトゥンシティを出たところだった。

「何だ?こいつ」
「さあ……」

 突如としてリピス達の目の前に一匹のポケモンが立ちはだかったのだ。それはあまり野生ではお目にかかることのないポッタイシ。堂々と現れたものだから襲い掛かってきたのかと思いきやそういう訳ではないことは、ポッタイシが手にするそれが物語っている。
 ポッタイシはリピスの前に跪くと、手にしていたそれを差し出した。大きな一枚の葉には器用にも淡い桃色の花と紫の花がいくつも包まれている。人間の花屋がやってくれる花束そのものだ。それをリピスに差し出し、ポッタイシは片目を閉じている。所謂ウインクというものだ。

「これ、わたしにくれるの?」

 リピスの問いかけにポッタイシはこくこくと何度も頷く。不思議そうにしながらもリピスは花束を受け取り、淡い桃色の花を撫でた。淡い桃色の花。ポッタイシ。それに、ふと少し前のことを思い出した。
 そういえば以前、海に誤って落ちてしまって泣いていた際に、自分を助けてくれたであろう一匹のポッチャマが淡い桃色の花を差し出して消えてしまったのだ。
 目の前にいるのはポッタイシだが、とリピスが視線を動かせばポッタイシは明らかに喜んだ様子を見せた。

「よかったなァ、モテてるぞ」
「流石にポケモンから花を貰うのははじめてだわ」

 からかうようにリピスとポッタイシを見下ろすダイゴロウに、ポッタイシはわかりやすく嫌そうな顔をした。実に失礼だ。しかしそれをリピスが指摘することもなく、気になっていたことを率直に尋ねた。

「あなた、あの時わたしを助けてくれた子よね。どうしてこれをくれるの?」

 問いかければ、ポッタイシは少しもごついた様子を見せてからリピスの鞄を見た。僅かに開いたそこには、まとめ買いした時に貰ったプレミアボールが覗いている。

「……?」

 首を傾げて、リピスはプレミアボールを取り出してポッタイシの前に差し出した。そうすれば一切の躊躇いなくポッタイシはプレミアボールの開閉口を嘴でつつき、……中に収まった。
 リピスの右手には草花の花束、左手には勝手に収まったポッタイシの入ったプレミアボール。後ろには訳がわからないもののひとまず笑っているダイゴロウ。
 唐突すぎる出来事ではあったし、懐かれた理由もさっぱりわからない。それでも旅の仲間が増えることはいいことだ。リピスはプレミアボールを見下ろして、小さく呟いた。

「仲間になってくれるのなら喜んで。よろしくね、トト」

 将来皇帝になるであろうその子を見越して、リピスはやはりネーミングセンスのなさすぎるNNをつけたのだった。

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*新しく手持ちに加わったポケモン

■トト:ポッタイシ♂(プレミアボール)
【性格】ずぶとい
【特性】げきりゅう

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