冬の土地の一日【sideレフティア】

■お借りしました:ゴーシェさん、アニーニケさん


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 すべてをうしなったきみだからこそ、このしろきとちはふさわしいのだろう。


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 しんしんと雪が降る。フィンブルタウンにとっていつもの光景であるそれを眺めて、レフティアは僅かに鼻を赤くして微笑む。
 レフティアがこけないようにと彼女の手を取っているキノスはレフティアが用意したマフラーをぐるぐるに首元に巻き付けている。それでもやはり寒さは凌ぎきれないもので、寒そうに身を震わせている。

「キノス。わたくしに気を遣わず……ボールの中に入っていてよいのですよ?」

 ふるふる、寒そうにしながらもキノスは首を横に振る。そんな彼の様がやさしさからきていることは知っている。だからこそ無下には出来ず、レフティアは苦笑を零した。

「わかりました。では少し寄り道をしましょう」

 寄り道?と不思議そうにキノスが首を傾げる。

「ええ」

 ふわりと微笑んで、レフティアは歩む方向を変える。変えたその先は、レフティアに卵を授けてくれた人がいる場所だ。


***


 確かこの辺りにいる筈だとあたりをつけてきてみれば、案の定そこにはレフティアが探していた人がいた。

「(あら)」

 しかし予想外だったのはそこにもう一人、見知った人物がいたということ。しかし彼もまたスポーツを好み、あの人と親しいのだから共にいるのは何もおかしいことではない。
 レフティアが声をかけるよりも早くに、二人がこちらに気付いて手をあげた。控えめに手をあげて揺らせば、笑顔が返される。

「ゴーシェさま、アニさま」
「レフ!はは、キノスは寒そうだな」
「レフティアじゃないか。どうしたんだい?」

 ゴーシェとアニーニケ、二人同時に声を掛けられる。その快活さと凛とした声も酷く好きで、レフティアは自然と微笑んだ。

「キノスもスポーツに参加させてもらえないかと思いまして」
「キノスを?」
「運動をすればあったまると思ったのです」

 そういうことだったの?と言いたげにキノスはレフティアを見たが、キノスはスポーツが嫌いな訳では無い。むしろ好きな方だ。これは逆に彼女に気を遣われてしまっただろうかと苦笑を零す。しかし彼女の好意も嬉しいものであり、キノスはゴーシェとアニーニケも好きなのだ。お願いを嫌がる理由とてありはしない。

「よかったら是非」

 キノスの手を握りしめながら穏やかに微笑んだレフティアに、人のいい二人は明るい笑顔を返してくれた。

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