決まり切った決まり文句【sideグリモア】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:テラーさん
 
 
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 リングの振動。それが指し示す答えは一つだ。
 
 グリモアは触れていたリングから指を外し、影が近付いてきたことに気付いて顔を上げる。自分の近くに来ていたのは緑色の腕章をつけた長髪の人物。濡れ羽に差し込むように煌めくターコイズの色は太陽光を浴びて輝く。長いからこそ、風に揺れればその美しさは更に際立っていた。
 
 お嬢さんと言われたことで自らの恰好を思い出す。今回はベリトが可愛いからという理由でこのシスターの仮装を選び、服に無頓着なグリモアは特に抵抗することなくベリトの我儘を受け入れたのだ。バトルメンバーには入れてやれなかったので、それぐらいの我儘は受け入れてやろうというグリモアなりのベリトへの良心だったのかもしれない。何かずれているが。
 別段自らの性別のことを機にしたことがないため、男性の恰好をするのも女性の恰好をするのもどうでもいいと思っていることはある意味問題ではあるのだが、グリモアにもグリモアの手持ちにもそれを指摘する存在はいない。
 ひとまず否定をするのも面倒だと今回はお嬢さんでいこうとグリモアは内心で考える。なお、グリモアの脚に引っ付いてワンピースの裾の中に潜り込んで遊んでいたキマリスはグリモアの性別が女だったのかもしれない疑惑に衝撃を受けていたが、それはまあ今はどうでもいい。
 
 腕章をつけているのだから今回の催し事の参加者に違いない訳で怪しくはない。セクハラを受けているつもりもないからセクハラでもない。そう答えてやればいいというのに、コミュニケーション能力が見事に未発達なグリモアはようやっと喋れないのかといった問いかけに否定をするだけに終わる。もっと言うべきことがあるだろうに。
 
「……良ければ、ちょっと遊んでこーぜ」
 
 ムーンボールを構え、テラーと名乗った人物の声は酷くやさしい。グリモアという人間は敵を作りやすい。だからこそ、慣れているのは冷たい声。故にやさしい声音だけはすぐ理解出来るのだ。もっとも何故相手がそんな風に接してくれるのかの理由は人の心を理解するのが苦手なグリモアにはわからずじまいだが。テラーの傍にいる相棒と思わしき存在なら、その理由をきっと理解しているのだろうか。
 しかし、そう告げられればこちらの回答はたった一つだ。そのために自分もこの場に訪れた。それに何より。
 
「バトルオアトリート」
 
 テラーの言葉に頷いて、グリモアはモンスターボールを取り出して宙に放り投げた。ブルーチームのグリモアと、グリーンチームのテラー。その図が成り立ち、遊ぼうと誘われればグリモアの返しはこうに決まっているし、
___ポケモンバトルが最もグリモアにはやりやすいコミュニケーションだ。
 
「シングル、五個でいい?」 
 
 そんな淡々とした問いかけの中、宙で開かれたボールからは光とともにイポスが姿を現す。炎のように揺らめく紫の羽が淡く光り、彼はこの場にいる皆を見下ろす。そして、静かに溜息をついていた。
 また名乗りもせずにバトルをはじめようとしているグリモアの礼儀を欠いた姿に____。
 
 
 
 
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▼参加登録ポケモンより、「イポス(ヒスイウォーグル♂)」でシングルバトルを挑ませて頂きました!
 賭けチップ数は5個にさせて頂いております。
 不都合がありましたら断ってください!

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