華やかな舞台【sideコルカール】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:フォンミイさん、イースーちゃん
 
  
------------------------------------------------------------
 
 
 コルカールというポケモンはシャッルの手持ちの中で、最も扱いにくい変態だ。言い表せれる表現はそれしかないといわんばかりに彼はいつも狂っていて、楽しんでいる。自己肯定感の塊であるクソポジティブシンキングなコルカールの相手はあのシャッルの手持ち達ですら面倒だと思う程なのだから。
 だからイースーが苛立つのは当然な訳だ。極めて冷静に戦況を眺めているシャッルは笑いながら風で乱れた髪を直す。
 
「本当に賢い子ですね」
「そりゃなァ。誰の相棒だと思ってンだ?」
「ええ、本当にその通りで」
 
 だからこそ金を払う価値がある。使えない情報屋に興味などない。心の中で酷くシャッルは冷めたことを考えるも、その表情は微笑んだままだ。
 一方でトレーナー達が和やかな談笑をする中も木枝の槍は雨となりコルカールへと降り注いでいく。先程シャッルからの指示は受けたコルカールがすることは一つだ。
 
『ああ、ああ!なんて素敵な雨なんだ!木の雨!いいね!新鮮だ!さながら流星群にも引けをとらない景色は美しい、うんうん、とっても美しい!』
『あんた本当に喧しいのよ!』
『レディは本当に素敵なレディだね。僕のためにこんなにも素敵な舞台を用意してくれるだなんて』
 
 顔を覗かせていたコルカールがただただ楽しそうに絶え間なく言葉を紡ぐ。その何もかもが見守っているキラーダにすら耳障りで仕方がないのだから、バトルの相手をしているイースーはたまったものではないだろう。可哀想にとキラーダが思っていることなど露知らず、コルカールは空に向かって体を持ち上げたかと思うと、己を守っていた外壁をなびかせるかのように回転した。
 くるくる、くるくる。舞うように回転しながらその外壁から放っただくりゅうを掬い上げて空に打ち上げる。降り注ぐ木枝を打ち落とすようにくるくる、くるくると何度も楽しそうに。
 その様にイースーが腹を立てたのは当然だ。何故なら普通にキメ顔を常にし続けているからだ。時たま打ち返し損ねた木枝をその身に喰らっていることからダメージは蓄積されているだろうに、何故キメ顔を崩さないのかは謎だ。考える時間も勿体ないだろう。
 
『とっても楽しいね!』
『苛々する一方よこっちは!』
 
 ついでとばかりに木枝を打ち落としつつ、時たまイースー目がけて打ち返してくるコルカールの攻撃を避けながら別の樹へとイースーは乗り移る。
 跳んで、落して、跳んで、打ち返して。
 コルカールだけが楽しい応酬にイースーの苛立ちが溜まっていくのを、シャッルはやはり楽しく眺めているだけだ。
 
「無茶苦茶な遠距離攻撃すんなァ」
「見世物としてはいいでしょう?」
 
 気付けば辺り一帯は砕けた木枝と落ちただくりゅうだらけだ。それのせいで大地は酷くぬかるみ、滑りやすくなっているうえに折れた枝破片まで散らばるという最悪な自然の罠が出来上がる。
 落ちてしまったら、の話だが。
 
『テニスも楽しいものだね!でもそうだなあ。そろそろ降りてこないのかい?』
『はあ?』
『だって近い方が僕の顔がよく見えるだろう?それに』
 
 イースーが飛び移り、コルカールを見下ろしていた現在の位置である樹の上。コルカールは容赦なく樹の根元にどくづきを打ち込んだ。生き生きとしていた樹が一瞬で腐食し、大きく傾く。
 
『怒った顔もキュートだけどさ!僕ね、僕の毒を喰らって苦しむ子の顔が何よりも大好きなんだ!』
 
 意気揚々とコルカールから発せられた言葉に、キラーダは心底気持ち悪いなあいつ、と感想を抱いていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?