問【sideホアンシー・フォカロル】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:メイジーちゃん、ララくん
 
 
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 変な人だった。バトルを終えた後、ミーに対してグリモアが思ったことはそれぐらいだ。それでもミーは満足していたし、キマリスはグリモアの意図をわからないままに終れた。
 何もかもが不器用なのは血縁といったところだろうか。全てを知るホアンシーはただ微笑んで見守ることしか出来ない。常日頃から笑っていて、狂っているからこそ。誰にも、違和感を気付かれることはない。
 ああ、でも他者の感情の機微に聡い種族であるララにだけは違うのだろうか。もしも気付かれていたらどうしようか。もしもそうなら、その時までだ。だって何をしても、ホアンシーは変わらない。ずっとずっと、狂ったままだ。
 
 だからこちらを捕まえられるなんて、有効活用出来るだなんて思わない方がいい。
 もう二度とミィレンをそんな風に使われてなるものかと、狂った自分がそう決めた。
 
 
***
 
 
 ゆったりとした抵抗感の中手と足を動かして深く、深く潜水していく。視界に移る透き通った海中の景色には水ポケモン達や海藻が溢れている。それらを美しい、と感受性が豊かなものであれば思ったのだろう。
 岩陰に隠れていた上物の貝や、金になりそうな類のそれらを手にしてグリモアは海上へと浮上する。顔に張り付いた髪を避けるついでに海水を簡単に拭って、酸素を吸い込む。燦々と照り付ける太陽の陽射しはこういう日にはもってこいだ。
 
 グリモアの後に続いて見守っていたフォカロルも海上へと頭を出してグリモアに近寄る。寄りかかれという合図なのだろう。グリモアは相も変わらず無表情ではあったが、フォカロルのやさしさを甘んじて受け入れた。
 手を伸ばしてその身へと腕を回せば、フォカロルはグリモアが振り落とされない程度の速さで岸に向かって泳ぎ出した。
 海から上がれば、やはりというかなんというか視線を感じた。その視線の主は故意であっても、トレーナーは無意識なのだろう。
 
 夏祭りの後、グリモアは普段通りの旅に戻った。勿論キマリスも連れてだ。夏祭りでキマリスやベリトが随分と強請ったものだから資金を溜める必要が出てきて、今こうして金銭になりそうなものを採取していたところだ。
 同じ方向に来続けているというのはここまでこれば中々におかしなものだ。グリモアがフォカロルを見遣れば、フォカロルはこくりと頷く。
 
 視線を感じた方へ、少し離れた場所の茂みへと。フォカロルが軽く水泡を放てば、そこからは見覚えのあるキルリアの姿が出てきた。勿論当てる気などはなく、ただ姿を露わにさせたかっただけだ。
 その後からは慌てたようにこれまた見慣れた少女の姿が露わになる。夏祭りで出会い、ともにバトルをしたメイジーだ。
 きっとメイジーは気付いていない。ただ誘導されているだけだ。グリモアの後を追っているだなんてこと。
 だからこそフォカロルは問うた。こちらの後を追ってきているであろうララに。
 
『何か用か』
 
 フォカロルの後ろで、グリモアは水滴を拭いながらララとメイジーを何の感情も灯さない瞳で見ていた。

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