またいつかを夢見て【sideリピス】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:ロニーくん、メイジーちゃん
 
 
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 不可思議、謎の残る誘い。けれどもそれは解が判明する夕暮れ時の魅惑的なもの。断る理由なんてある訳がない。
 慌てながらも懸命に頷くメイジーを横目に、ああ、誘われた時はああいう反応をするのが一般的な子どもらしいのかしら。なんてひねくれた思考は隅において。ムムにつけてくれた花飾りをそっと指先で撫でてから、わたしは紳士さんを見つめた。
 
「勿論よ。楽しみにしてるわね」
 
 あなたの名前も、あなたが何者なのかも。木曜日の夕暮れ時。その時までのお楽しみ。
 
「わたしとメイジーどっちが先に会場に辿りつくかしらね」
「えっ?」
「?会場で待ち合わせしてから一緒に行かないの?」
 
 一緒に誘われたのだから、そりゃあ勿論一緒にいくものだとばかり思っていた。とはいってもわたしはユメキチと共に旅をしている訳だから、その旅にメイジーも一緒にというのは酷な話だ。メイジーはきっとユメキチに怯えてしまう。だからこそ会場についてからは共に向かいたいと思ったのだが。
 首を傾げてメイジーを覗きこめば、彼女はやはり慌てた様子を見せる。けれども、その反応が嫌悪ではないことは一目瞭然であって、可愛らしいなあと思う。
 
「い、行くっ」
「決まりね」
「ふふ、お二人でいらっしゃるのを楽しみにしていますね」
 
 ぎゅうと大切そうにブローチを握りしめるメイジーの小指を軽くなぞってから、わたしの小指と絡める。軽く何度か振ってから、今度はその小指で紳士さんの小指にも指を絡めて、軽く振って放す。
 
「約束ね」
 
 約束をする時はこうするのだとママが教えてくれた。怖いおまじないは抜きにして、ただ誓いを切る。再会の約束を。二人にまた会う時を楽しみに、わたしは笑った。
 
「さて、後はわたしと紳士さんの手持ちの子を探し……」
 
 メイジーが探していたココは見つかった。後はわたし達の手持ちを見つけるだけとなったのだが、わたしの目はそれを捉えた。捉えてしまった。ころころと転がっていく白い塊、つまりはわたしの手持ちであるササの姿を。ころころと転がり続けるその子はいとも簡単に人混みの中に紛れ込んでしまう。
 ああ、もう!本当にあの子はわたしの手を焼かせるのが上手いんだから!
 
「ごめんなさい、ちょっと追いかけないと」
「えっ?」
「それなら僕達も一緒に……」
「あの子転がるの早すぎるの!またね!」
 
 おいで、とビビを抱き上げたままだったトトを手招きして、わたしはムムをしっかりと抱き直して走り出した。
 一瞬だけ振り返って、この場で出会えた紳士さんとメイジーの素敵な二人に手を振って。また会えますようにと願いを込めて。

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