世間話の裏側【sideミィレン】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:バロックさん
 
 
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 イエローチームでよかったと思うべきか悔しいと思うべきか。戦う意志を明らかにしていたイースーの視線から目を反らせば、適当な男が適当なことを口にする。裏しかない適当な軽口の応酬にはすっかり慣れたものだ。慣れた自分に、辟易せざるを得ない訳だが。
 ああ、しかしこの場に嫌いな類の男が二人集まってしまったのが実に頂けない。以前勢いよく頬を引っ叩いてやったというのに飄々としているフォンミイにはあの話題でしかこちらが有利性はとれないが、今その話題を突く気にもなれない。何故なら横にもう一人面倒くさい男がいるからだ。
 正直この場から離れたい。そう思った矢先のことだった。
 
 何でだとか何をしているんだとか、色々と口出ししたいところはあったし、そんなに早く走ったら危ないだろうとか言いたいことは沢山頭に浮かんだが。これがチャンスだと思えば彼らには感謝せざるを得ない。
 ベイシャンとともにレッドチームから距離を取れば、わかりやすくバロックたちも距離を取った。フォンミイに対しては若干胸がすいたので、私も相当に性格が悪くなったなと再確認した。
 
「ベイシャン、大丈夫よ」
 
 距離を取って歩き始めてから、私の腕に引っ付いていたベイシャンの頭を撫でてやる。コンジュ程とはいかないがこの子はバトルは得意ではなく、争いごとや悪人を恐れる。撫でられて安堵したのか、私の腕を握りしめる力が微かに弱くなり、彼女は穏やかに微笑んだ。
 
「とても懐いていらっしゃいますね」
「あなたのトゲピーとは大違いね」
 
 横を歩くバロックに嫌味を言っても、ただ笑みが返されるだけだ。トゲピーの進化条件は懐きだ。即ち、バロックの手持ちのカルアが進化していないのは仲の悪さの何よりの証拠ともいえる。
 歩き続けていればバトルの喧騒が聞こえる。このイベントに参加して、純粋に楽しんでいるのだろうトレーナーとポケモン達を思えば嬉しいと思うのに。いつからだろうか。純粋なポケモンバトルを出来なくなったのは。純粋に楽しいと思う感情が死滅してしまったのは。
 十分といえる程に強くはなれた。ポケモンバトルにおいても、自分自身においても。けれども、何も嬉しくはない。
 
「レディ?」
「……何?」
 
 思考しながら歩いていると、不意にバロックから声がかけられる。何かと視線を向ければ、男の手は先を指差した。
 
「チェックポイントについたようですよ」
 
 指示された方を見れば、そこには小さな村だったであろう廃墟が広がっていた。耳に意識を集中させてみれば、ゴーストポケモン達が小さく囁く声が鼓膜を擽る。ここの試練は確かゴーストポケモン達とのかくれんぼや鬼ごっこだっただろうか。ゴーストポケモン達がいたずらをしすぎないように見張らなければと思いつつも、思い出すのは一人の依頼者の言葉だ。
 
「ねえ、バロック」
「はい、何でしょう?」
「あなた、ブルンゲルは好き?」
 
 何故そのようなことを、なんて惚けるか本当に忘れているか。どちらだって問題はない。私はただの世間話の体で尋ねただけなのだから。

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