解けた先にあったもの【sideレフティア・キノス】

こちらこちら流れをお借りしています。
 

■お借りしました:テオさん、アメリーちゃん、アニーニケさん、ルシオラくん
 

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 落ち着くまで、と答えてくれた彼に嬉しさと、寂しさを覚えてしまったのは何故だろうか。
 テオの答えは正しい。自分とテオはお互いにお祭りが終われば元の生活に戻るのだから。だからこそどこにもいかないで、という私の素っ頓狂な願いに対してそう答えた彼は最適解で返したといって違いない。
 やさしい彼のことだからこそ、泣いている女性を放置することなんてしないだろう。わかっている。わかっているのに、寂しさをどうして抱いてしまうのか。
 その理由を、私は知らない。
 
 不意に黙り込んでしまったテオに不思議に思った。やはり迷惑をかけすぎてしまっただろうか、と。
 幼い時から、どうしても人の顔色を窺ってしまう癖があった。誰かが私にそれを強要した訳ではない。私の周りにはやさしい方達しかいなかったから。ただ、私自身があたたかすぎるやさしい場所から追い出されたくなくて、嫌われたくなくて、いい子でいようとしているだけだ。
 
「テオさま……?どうか、されましたか……?」
「……っ、なんでもないよ」
 
 私の問いかけに彼はやさしく微笑んで、また頭をやさしく撫でてくれる。その手の温もりと、声音と、表情に。どうしようもなく___安堵した。
 
 
***
 
 
 必死に自らのトレーナーの弁明をしてくれるアメリーにキノスは大丈夫だよ、の意味を込めて頭を撫でる。いっぱいいっぱい頑張って、拙くも説明をしてくれる彼女は余程トレーナーのことが好きで、そう思われる程にトレーナーはいい人なのだろうという確信が得られてしまう。
 彼女のトレーナーもレフティアのことを好きだとテオの手持ちである彼女が言うのなら間違いないのだろうとキノスは嬉しさと、安堵を抱く。その好きがレフティアと同じものかどうかまでは流石に今見掛けたばかりの状態では理解できない。それでも、レフティアが好んだ相手から嫌悪されていないという事実だけで胸があたたかくなる。
 レフティアと同じ好きであればいいのに、と。ついうっかり、キノスは願ってしまいはしたが。感情というものは強要するものではない。だからこそ、祈ることしか出来ない。けれども祈るだけでも許されたいと。
 ___過去の主を思い出して、そう、願ってしまうのだ。
 
『抱っこは平気かな?』
『!』
『!俺も!』
 
 テュッキュに抱き着かれていたアメリーにそう問いかければ、ぱあと明るい表情が返される。ついでにというかやはりというか、テュッキュも食い付いてくる。二匹のその様に思わずキノスは微笑みを零して、その大きな腕でアメリーとテュッキュをやさしく抱き上げたのだった。
 
 
*** 
 
 
 そういえばテュッキュとアメリーはどこへいってしまったのだろう。涙が収まってくれたおかげで、漸く周りの状況に視線を向けられるようになった。そう思い視線を巡らせた瞬間、馴染みある姿が腕の中に飛び込んでくる。
 反射で抱き留めれば、その子、ルシオラは嬉しそうな鳴き声をあげてくれる。自分にこんな風に抱き着いてくれるニューラはこの子しかいない、と思って周囲を見渡せばやはり大好きなアニーニケの姿を見つける。この子がいるのならば絶対に近くにいると踏んだのだが、きっと迷子になった自分を探しにきてくれたのだろう。
 
「アニさま」
「ようレフ探したぜ!!」
 
 はきはきとした快活な声は耳通りがよくて爽やかな気持ちになる。案の定探しにきてくれたアニーニケに、自然と嬉しさから微笑みが零れてしまった。
 
「申し訳ありません、はぐれてしまって……」
「いいっていいって。えーっと、そっちは……」
 
 アニーニケの視線は私の横にいたテオに向けられる。空でも見ていたのだろうか、テオは視線を下げてからアニーニケとルシオラを見遣った。
 
「テオさまです。迷子になったわたくしと一緒にいてくださったんです」
「はじめまして、テオです」
 
 穏やかに微笑むテオも、自分にとって兄のようなアニーニケも、どちらも好いた人物に違いはない。二人も仲良くなってくれたらいいな、と甘えてくるルシオラを撫でながら笑みを零した。
 
 
 
 
 その好きの違いに気付けるのは、果たしていつになるのだろうか。


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